ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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今回あんまり楽しい話じゃないかも…


明かされる因縁

あれから寄宿舎の倉庫の中に幽閉されていた学園長を救出した苗木は、ラバーソールの遺体を事前に連絡を入れておいたSPW財団に任せ、現場にいた77期、および78期生の皆を集めて学園長室へと集まっていた。

 

「さて、それでは約束通り全部話してもらうぞ」

「……」

学園長と隣り合って座る苗木に、生徒を代表して十神が問い詰める。霧切と学園長は、顔を気まずいのか顔を見合わせることなくお互い俯いたままであった。

 

「…分かった」

「!…いいのかい?」

「仕方ありませんよ、皆には知る権利がある。その状況を招いてしまったのは、僕なんですから…」

 

 

そうして苗木は語りだした。スタンド能力の事、ラバーソールの事、SPW財団とのつながり、そして己の出生の秘密とイタリアでのあの一週間の奇妙な冒険の事。皆反応の差こそあったものの、全てを話し終えた時には全員が信じられないといった表情をしていた。

 

「…これが僕、苗木誠の全てだよ」

「始めに言っておくが、今の話に嘘偽りは一切無い。これはSPW財団からの確かな情報だ。希望ヶ峰学園の学園長の名においてそれは保障しよう」

「…つっても、よお…」

「現実味がなさ過ぎて…なあ…」

「…でもよ、吸血鬼とかの下りに関しては信じられるかもしれねえ…」

混乱する生徒たちの中で、77期生の『超高校級のメカニック』左右田和一がそんなことを口走る。

 

「ん?どういうことかな左右田君?」

「お前ら、日向知ってるだろ?」

「…ああ!日向おにぃの事?当たり前じゃん!」

「…失礼、左右田君。日向というのは『予備学科』の日向・Z・創君の事かい?」

「ああ、そうですけど…」

「『予備学科』…?補欠組の奴の名前が何故ここで出てくる?」

と、十神がそう言った瞬間77期生の『超高校級の極道』九頭竜冬彦が掴みかかった。

 

「…離せ、何の真似だ?」

「日向馬鹿にしてんじゃあねーよこのボンボンが、アイツはテメエなんかが価値を決めていい人間なんかじゃあねーんだよ…ッ!」

童顔ながらもドスの利いた声で話す九頭竜の態度は、日向をただの補欠としてではなく一人の友人として見ていることの証明の様であった。

 

「…九頭竜よ、その辺にしておけ。今はこの話をまとめる方が先じゃあ…」

「…ケッ」

「…フン」

「…あー、続けるぜ?それでよ、アイツ日本人なのにミドルネームが入ってるだろ?」

「?それって前に聞いたけど、お婆ちゃんがイタリア人だったからでしょ?」

「まあな。…でよ、こないだ気になってZの正式な読み方を聞いた時にさ、こっそりアイツの家系について教えてくれたんだよ」

「家系…?」

「…アイツの本名な、『日向・Z(ツェペリ)・創』っつーんだと」

「ッ!!『ツェペリ』だって!?」

その名前に、苗木が大いに反応する。

 

「知ってるのかい?」

「ええ…。以前ジョセフ・ジョースターさんから聞いたことがあります。二千年以上の歴史がある『波紋』という流派の古い家柄で、かつてジョセフさんやジョセフさんのおじいさん…さっきも話したジョナサン・ジョースターと共に吸血鬼たちと闘った一族で、今はSPW財団の保護を受けていると聞いています」

「そうだ…その時にあいつ言ってたんだ…

 

『信じられないかもしれなけど、俺の一族はずっと昔からこの『波紋』の力で吸血鬼たちと闘ってきたんだ。例え世間が知らなくても俺はそのことを誇りに思っている。日本に帰化してもこのツェペリの名を残したのはその為さ。誰であろうとこの名前をけなすような奴は許さない。俺のツェペリ家としての誇りにかけてな…』

 

…ってな。アイツの言ってた吸血鬼って奴と話に出てきたDIOって奴が同じなんなら、その話も本当なんじゃあねーかって思うんだが…」

「…確かに、俺と違ってアイツが嘘をつくような人間には見えんしな…」

77期生の十神によく似た名前すら不詳の『超高校級の詐欺師』がそれに同調する。

 

「もしDIOとやらが吸血鬼だとするなら大体のつじつまは合ってくるしのお…」

「…真実、と考えた方が建設的ね」

「…とすればあの『ローマの悲劇』や『人類史上最大の集団幻覚』とやらは全て事実だったという訳か…」

『ローマの悲劇』とは、チョコラータの『グリーン・デイ』の能力である人喰いカビによる集団虐殺のことで、『人類史上最大の集団幻覚』は『チャリオッツ・レクイエム』の暴走による魂の入れ替わりの事である。

 

「…今回の事については分かったわ。もう一つ聞きたいのだけれど…それはあなたの態度となにか関係しているの?」

「…」

「普段の態度からあなたが『超』がつくほどのお人よしだということは分かっているわ。けれど、あなたはいつも私たちと必要以上に関わろうとしない…まるで無理しているみたいにね」

「そうですよ!中学の時はみんなの為に頑張ってましたしすごくフレンドリーだったのに…夏休みが終わったら急に冷たくなっちゃって…」

その問いに、苗木は絞り出すように答える。

 

「『スタンド使い同士は引かれ合う』…」

「…は?」

「僕らスタンド使いの間に共通する認識だよ。スタンドは人知を超えた力を持つ能力だ。どんなに秘匿していたとしても、同じスタンド使いの持つ『引力』とも言えるようなものによって自然と相対しあい…いずれ闘いになる。今回みたいにね…」

「苗木君は君たちを巻き込みたくなかったんだ。自分の持つスタンド使いとしての因縁に…だから」

「あなたには聞いていないわ」

「…はい」

娘に一蹴され押し黙る学園長をほっといて、苗木はしとしとと独白する。その言葉にはもうあの時感じた覇気のようなものはなく、頭のアンテナも下を向いてしまっているようであった。

 

「そもそも僕はこの学園に来るべきじゃあなかった。僕が居るだけでそこはスタンド使いにとっての一種の特異点となる。イイ奴にしろ悪い奴にしろ、これから多くのスタンド使いが僕に接触を図るだろう。あの『ホワイトスネイク』のこともあるしね…。だからせめて、皆は僕とできるだけ関わらない方がいい。それが君たちの為だろうから…」

苗木の言葉は、お人よしの彼なりの精一杯の拒絶の言葉だった。彼はギャングとしての生き方を心得ている。スタンド使いとしての覚悟も持っている。しかし彼はあまりにも優しすぎた。だからこそ、同じクラスメートですらも拒絶する道を彼は選んだのである。

 

「…フン、貴様に言われるまでもない。俺は貴様の為なんぞに死ぬつもりはない。クラスメートとしての最低限の義理は果たしてやろう。だから俺に面倒事を持ち込むような真似だけはしてくれるなよ」

「…あ。ま、待ってください白夜様ぁ!」

冷たく言い放ち十神、そしてその後を追って腐川が部屋を出て行った。

 

「……チッ」

「…すまんべ、苗木っち」

舌打ちをして大和田、申し訳なさそうに葉隠も退室する。

 

「…苗木君。僕は風紀委員として、君を見捨てるようなことは絶対にしない。…だが、今は少し時間をくれないか?あまりにも考えることが多すぎる…」

「私も今日のところは失礼しますわ」

「で、では僕も…」

石丸、セレス、山田もいそいそと部屋を出ていく。

 

「…あ、あの…気にしないでね。皆混乱してるだけだと思うから……僕も…そうだから…」

「苗木…、ごめん。苗木がいい人なのはわかってるけどさ、…やっぱり少し怖いんだ…」

「…苗木よ、そなたがそう望むのなら我は何も言わん。だが、力になれることがあればなんでも言ってくれ。…では、失礼する」

不二咲、朝日奈、大神も後ろ髪を引かれつつも部屋を辞する。

 

「…苗木君、私には分かりません。私の知っている苗木君と今の苗木君、どっちが本当の苗木君なんですか?私がずっと見ていた苗木君は、もうどこにもいないんですか?教えてください…苗木君…」

「…舞園さん。以前の僕も僕であったことは間違いないよ。…けれど、今の僕こそが僕が望んだ苗木誠の姿なんだ」

「……ッ!!ごめんなさい…ッ!」

「ま、舞園ちゃん!」

泣きながら部屋を飛び出す舞園とそれを追う桑田。

 

結局残ったのは、77期生の面々を除けば戦刃と江ノ島、そして霧切親子だけであった。

 

「…まあ気にすんなや苗木。俺だって入学したての頃はヤクザの跡取りだってんで煙たがられてたんだからよ」

「九頭竜が皆に受け入れられたのは、偏に日向の尽力があったからとも言えるからな。お前の場合はもっと大変だろうが、折れるんじゃあないぞ」

「まあなんかあったらワシに相談しろや!マネージャーとして力になって見せるからのう!」

「それとまたスタンド使いとかいう奴らが来たらオレに知らせろよ!今度こそぎったんぎったんにしてやるからよぉ!」

「…お前らさっき襲われたばっかなのに元気だよなぁ…」

「脳みそが筋肉でできてるんじゃなぁーい?」

「ふっ、俺と同じ宿命を背負ったものとして俺様は貴様を歓迎するぞ!共にこの世界を暗黒の世界より来たりし魔獣どもの闊歩する地獄に変えてやろうではないかッ!!」

「…苗木さん、気にしないであげてください。きっと皆どう接していいか分からないだけですから。…私たちも、日向さんがいなければきっと同じようなことになってたでしょうから…」

「わ、私たちは普通にしますから、元気だしてくださぁい…」

何とか苗木を元気づけようとする77期生の横で、学園長が78期生で残っている江ノ島、戦刃、霧切に問いかける。

 

「…君たちはどうなんだい?今の話を聞いて、苗木君とどう接するつもりだ?」

「んー?まあなんでもいいんじゃね?…少なくとも、彼の行動を近くで見ていれば決して退屈はしなさそうですしね。…精々暇つぶしになれば良いと思っただけの事だ!」

「私は、もう知ってるから。苗木君のそういうところを分かったうえでそれでも一緒に学校にいたいから。…だから今までどおりです」

「…私が探偵である以上、何も知らないままで終わるなんてことは許せないことなのよ。だから苗木君という人物を理解するまで、彼を拒否することはしないわ。…あなたのこともね」

「…そうか」

 

そんな話の最中、

 

「…ハァ」

苗木はずっと俯いたままでいた。ある程度予想はしていたものの、やはり相当堪えたようで立ち直るには少し時間がかかりそうである。

 

「しょげてんなって!そうだ!日向の奴にも紹介してやんなきゃなあ!明日になったら会わせてやっから、すこし元気になれや、な?」

「…すみません左右田さん」

 

こうして苗木の希望ヶ峰学園での一年は波乱の幕開けとなった。それは後に『希望ヶ峰学園史上最大に奇妙な一年』と呼ばれる一年間の始まりでもあった。

 

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