という訳で、1日予定より早く投稿します
…番外編進まなくてごめんね
ガラガラガラガラッ…!!
「ひええええええ~ッ!!?」
「ダッシュ!ダッシュ!…おら雄豚共置いてくぞコラァーッ!!」
「ちょ…待てって!あの姉ちゃんなんでキャラ変わると俺より足速えーんだよ!?」
「ジェノサイダーモードの腐川の嬢ちゃんを『常識』で考えない方がいいぜぇ~…」
「…我々の手に負えん筈だ」
瓦礫が絶え間なく崩れ去る地下鉄坑内をジェノサイダーを先頭に走り抜け、どうにか完全に崩れ落ちる前にホーム内へと逃げ込むことができたのであった。
「はっ…はぁ…っ、はぁ…。ま、間に合ったぁ…」
「あー…そろそろ『充電』切れそ、悪りーけどしんどいから寝るわ!んじゃバーイ!ガクッ…………は、はれ?いつの間にか助かってる?」
「さ、流石に…ビビッたぁ…」
「ヘェ…ヘェ…、ここで…くたびれたって…ゼェ…。言わねえ辺り…流石、朝日奈の姐さんの弟さんだ…」
「…しかし、これで完全に『退路』を断たれてしまったな…」
振り返った石丸の視線の先にあるのは、落盤により完全に塞がってしまった坑内。天井付近にまでうず高く積み上げられた瓦礫を見る限り、もう先に進むことは不可能であろう。
「君たちの友人の葉隠君も無事だと良いのだが…」
「ああ…まあ、さっきも言ったが死んでねえとは思うがな」
「…それより、今は自分たちの方を心配しなさいよ…」
「ああ…。これで、もう『脱出』の手がかりは無くなっちまったんだよな…」
「…そんな」
ここまで全力で走って来た疲労ともう逃げられないという絶望にこまるは膝を着いてしまう。
「ううっ…そんな…、ここまできて…あんまりだよ…」
「こまる姉ちゃん…」
「…フン。こんな簡単に逃げられるわけないなんて分かりきってたことじゃない」
「まあな…。『地上』の出入り口をあれだけ用意周到に塞いでたあのガキ共が、『地下』のことに気が付かねえ筈がねえとは思ってたがよ…」
「だが、本当にこれからどうすればいいのだ…?」
「ううっ…うっ…」
「…いつまでも泣いてんじゃあないわよッ!」
「でも…でも…!」
「泣いてたってなんにも変りゃあしないわよ。座り込んで駄々こねてる暇があったら、『次にするべきこと』を考えなさい」
「次にって言われても…私、どうすれば…」
「…あー、もう!だったら、アンタのそのスポンジよりもスカスカの脳ミソでも分かるよう『3択』にしてあげるわ。好きなの選びなさい」
「え…?」
「先ず一つ、『ガキ共に降参して助けてもらうようお願いする』」
「そ、そんなの無理に決まってんじゃあねえか!」
「アンタは黙ってなさい。アタシはこいつに聞いてんのよ。…二つ、『このままガキ共に見つからないよう逃げ回って助けを待つ』。…正直、期待はできないけどね」
「むう…」
「そして三つ目は…」
「三つ目は…?」
「…『ガキ共をブチのめして堂々とこの街から脱出する』」
「「「ッ!!?」」」
腐川の余りにも無謀な選択肢に皆は目を見開いて驚く。
「…お前さんがそんなことを言い出すとはねえ…」
「む、無謀すぎるッ!流石に無理だぞ!?」
「うだうだ抜かすんじゃあないわよ!…勝算が低いことなんて百も承知よ。けど、本気でここから出たいんだったら、それぐらいやる『覚悟』がないとそれこそ無理よ」
「…そんなの…無理だよぉ…!私は、お兄ちゃんとは違うんだよ…。お兄ちゃんみたいな、無敵のヒーローじゃないんだよ…!だから、そんなの…」
「『無理』とか『無駄』なんて返事が聞きたいわけじゃあないのよ。アンタがどうしたいかを言いなさい。『諦める』か、『何かに縋る』のか、…『立ち向かう』のか」
「わ、私は…」
カツカツカツ…
「…お、おい!アレ…」
暗闇より靴音が聞こえてきたかと思うと、向こうから『モニター』を担いだ二人のモノクマキッズが現れた。
「な、なんだ?」
「映画でも見せようって感じじゃあなさそうだなぁ…?」
困惑する一同の前で、モノクマキッズがモニターの電源を入れる。若干の映像の乱れの後に画面に『ある人物』が映し出される。
「ッ!?君は…」
『……』
「こいつら、あの飛行船にいた…!」
「ああ、『希望の戦士』という子供たちの一人…確か、『煙蛇太郎』と言ったか?」
「み、見るからに陰気くさいガキね…見てるだけで苛ついてくるわ」
「同族嫌悪か?…しかしこいつ喋らねえな。こっち様子を高みの見物か?」
『……』
『…あれ?もしかしてもう映ってる?』
「え?」
『ど、どうしよう!?せっかく言子ちゃんに『触りが肝心』って言われたばかりなのに、冒頭から緊張してるとこ見られちゃったよ!』
「…なんだコイツ?」
「どうやらカメラが回ってるのに気付かなかっただけのようだな」
「…前言撤回よ。こいつただのマヌケだわ」
『うう…せっかく見せ場を用意してもらったのに、どうして僕はこうもドジでマヌケで空気読めなくてド低能なんだ…』
「しかも盛大に自虐してやがる…ドMかコイツ?」
『まあそれはそうとして…久しぶりだねお姉ちゃん。友達が増えたみたいだね…。僕にはモナカちゃんと大門君と言子ちゃんと新月君しか友達がいないからすっごく羨ましいよ……あ、か、勝手に友達扱いして怒られないかな?』
「知らないわよ。…で、アンタなんの用なのよ?」
『あ、そうだね…お姉ちゃんたち、この地下鉄から『街の外』に出るつもりだったんでしょ?だから『忠告』しに来てあげたんだよ』
「忠告…?」
『そうさ…。お姉ちゃんたちは、どうやったってこの街から『出ることは出来ない』ってね』
「な、なんでお前にそんなことが分かるんだよ!?」
『それが『ゲームのルール』だからさ。君たちはこの『デモンズハンティング』の獲物なんだよ。ゲームのキャラクターがゲームの世界から出られないように、君たちはこの街から出られないのさ。…最も、出たところでどうせ『死んじゃう』けどね』
「死ぬだと…!?やはり、この『腕輪』になにかあるのか!?」
石丸が自身の腕輪を示すと、蛇太郎は意外そうに眼を丸める。
「あれ?『腕輪』のこと知ってたの?おかしいなあ…まだ『爆発』したなんて報告は聞いてないんだけど…」
「ば、爆発!?」
「やっぱりそういうことかい…」
「ま、マジだったのかよ…」
『あれ?やっぱり知らなかったの?じゃあなんで爆発するって…』
「…俺が昔似たようなもんを見た事が有るんでな、もしやと思って念を押してみただけの事よ。しかし、ガキの分際でおっとろしいモンを創りやがるぜ…」
『がーん…!なんてことだ…僕チンの世紀的大発明だと思ってた『モノクマリング』がまさか二番煎じだったなんて…。しかもあんなおじさんが知ってるぐらいに…』
「うだうだと面倒くさい奴ね…その暑苦しそうな『覆面』ぐらい外して話なさいよ…」
『だっ、駄目だよッ!僕チンがこのマスクを脱いじゃったら、余りの醜悪さにお姉ちゃんたちの眼が腐っちゃうよ!』
「おおげさな…」
『本当に困るんだよ…。お姉ちゃんたちにはその眼で見たものでもっともっと『絶望』して、僕チンの事を『嫌い』になってもらわないと…』
「…はぁ?何言ってんだコイツ?」
「安心しなさい…アンタの事なんか初見で嫌いになれたわよ…」
『え?ホントに?……』
「な、なによ…」
『…『嬉しい』ナァ!僕チンの事が『嫌い』だなんて!』
「へ?」
「君…何故嫌われて『喜んでいるのだ』?」
『僕チンは『嫌われ星人』だからね。嫌われれば嫌われるほど『安心』するのさ…ああでも、こういうのって『ツンデレ』って奴じゃあないかな?『嫌い』って言っておいて実は『好き』だとか、そういうのってあるよね?』
「仮にアンタとアタシが前世で夫婦だったとしても、向こう千年顔も見たくないわよッ!!」
「…ホントにコイツなんなんだ?『嫌い』って言うたびに嬉しそうに笑いやがって…」
「…成程、こいつは『そういう奴』か」
「え?ど、どういうことですか?」
モニターの向こうでへらへら笑う蛇太郎に、ホル・ホースは神妙な目つきを向ける。
「このガキはおそらく、親に散々に『存在を否定』され続けてきたんだろう。『産むんじゃなかった』、『顔も見たくない』…そういう言葉を日々投げかけられ続けてきたんだろうぜ」
「…酷ぇな」
「ああ、当然あんな子供がその言葉に耐えきれる筈がねえ。普通なら『壊れちまう』ところかもしれねえが…こいつはきっとそこに『安らぎ』を見つけたんだろう」
「安らぎ…?」
「そうだ。普通に奴は『好かれる』ことに安心を憶える。だがこいつは、現状を受け入れるために『嫌われる』ということに『安心』を憶えちまった…。理屈も糞もねえが、要するにこいつは常人とは『好き嫌い』の価値観が『逆転』しちまったっつー訳だな。…そうしなけりゃ、自分を保てなかったんだろうぜ」
「そんな…」
呆然とする一同の前で、蛇太郎は腐川に罵られるたびに笑みを深めていく。
『うふふ…僕チンのことがそんなに嫌いだなんて嬉しいなあ…。でも、後ろのおじさんやお姉ちゃんたちはあんまりそうじゃないみたいだね…。でもさ…『コレ』を見たら皆も僕チンのことが嫌いになるんじゃあないかな…!』
「え…?」
『ど蛇ぁ~ん!』
蛇太郎の合図と共に画面が暗転し、別の画面に切り替わる。映された画面には、薄暗い広間のような空間の奥になにかが鎮座しているような映像が映る。なにごとかと首を傾げるこまる達。とその時
バッ!
「!?」
♪~♪♪~
「…もの、くま?」
突如画面が明るくなったかと思うと、広間の奥に座っていたもの…『巨大なモノクマ人形』が軽快な音楽と共に踊りだした。モノクマの手前には、どこかぎこちなくも楽しそうに踊る『人影』のようなものも見て取れる。
「な、何…?ダンスパーティー?」
「これが一体…なんだというのだ?」
「へ、へへ…でも、なんかちょっとだけ楽しそうだなぁ…」
予想外に平穏な映像に拍子抜けするこまる達の前で、その映像を映すカメラがどんどんとモノクマの方へとズームしていく。
…そして、真っ先に声を上げたのは腐川と共になおも警戒していたホル・ホースであった。
「…ッ!やばい…なんかヤバいぜ、その映像ッ!お前ら、見るんじゃあねえッ!!」
「へ?ヤバいって…なんの…こ……と…」
こまるがその警告を聴いた時は、もう遅かった。
ポタ…ポタ…
カメラが近づくにつれ、音楽に混ざって何かが滴るような音が聞こえてくる。雨漏りか何かかと思ったが、すぐにその答えが明らかになる。
「……え?」
「なん、だ…これは…!?」
「う、うげぇ…」
カメラがモノクマに近づくにつれ、おぼろげだった『人影』のシルエットがはっきりと見えてくる。…しかし、その『真実』は余りにも残酷なものであった。
ある者は背中に背負わされた十字架状の板にこれでもかと『釘』で打ちつけられ全く動けないようにされ、
またある者は隣り合った男女同士で無理やり手を繋がされるように固定され、動くたびにあたかも楽しそうに腕を振っているようにされ、
またある者は必要最低限しか固定されておらずだらんと下げた手足が動くたびにアテもなく彷徨うこととなっていた。
よく見れば彼らが打ち付けられた『板』には『糸』のようなものが張られており、それは頭上のモノクマの手へと繋がって、モノクマが手を動かすとそれに連動し、まるで『マリオネット』のように無理やり踊らされるようになっていた。
そうした彼らの『傷口』から滴り出た血が、踊れば踊るほどに辺りに飛び散り広間を鮮血で染め上げていく。
そう、モノクマと共に踊っていたのは、無残に殺され文字通り『操り人形』にされてしまった『大人の死体』であった。
「あ…え……あ?」
『ぐふふ…どう?すごいでしょ!僕チンが作った『魔物ジオラマ』の出来!見てるだけで吐き気がするほど楽しそうだよね?』
「み、見ないわよ…絶ッ~…対に見ないわよッ…!」
「こ、この野郎ッ…!死体を、ソフビ人形みてーに…!」
『こっちの奴はコンビニで捕まえて、こいつはトイレに逃げ込んだところを捕まえて~…あ、そうそう!この壁に貼り付けてる奴見て!こいつ頭から『お花』なんか咲かせてたから背景の飾りに…』
「も、もうやめて…もうやめてよぉッ!!」
限界になったこまるがそう叫ぶと、蛇太郎は自慢げな表情から一変して突如真顔になる。
『…なんでやめてほしいの?時間がもったいないから?僕チンのことが十分嫌いになったから?なんかもう疲れちゃったから?もう疲れたくないから?……分からない、わからないよぉ…!僕チン頭が悪いからなんでなのか分からないよぉ…含みのある言葉は言わないでよぉッ!』
「こ、こいつ…どんだけイカレてるのよ…!?」
『…誰のせいで?』
「え…?」
『…まあいいけどね。僕チンとしては魔物の皆に『感謝』してるぐらいなんだ。僕チンが最悪で醜悪で最低な汚物だって教えてくれたからね。だから、僕チンはどうせなら汚物まみれの中で生きるんだ!オトナのいない、コドモだけの最高で天国のような『楽園』の、いちばん汚い所で、誰にも邪魔されずに暮らすんだ!ぐっくっく…うぇっへっへっへっへ!!』
ブツン…
蛇太郎の高笑いを最後に、モニターの電源が消える。それを確認すると、モノクマキッズは再びモニターを抱えて途方に暮れる皆に構うことなく去っていった。
「…どうやら俺の認識が甘かったらしいぜ。子供だからとか、大人が原因だとかでほんのちょっとでも『罪悪感』なんざ持つんじゃあなかった。アイツ等はもう『手遅れ』だ。自分のオツムでそうなったのか、『どこかの誰か』が植え付けたのかは知らねえが、もうアイツ等は俺たちの事を『人間』とすら思っちゃあいねえ。特にあの蛇太郎とか言うガキなんざ、大人の事を『昆虫採集の標本にするカブトムシ』ぐらいとしか考えていねえ。あの『エンヤ婆』と同レベルのクソッタレだ…!」
「…気持ちは分かるけど、聞いちゃあいないみたいよ」
「うっ…うう…ぐすっ…!」
「何故、こんなことに…我々が、一体なにをしたというのだ…」
「……う…」
比較的冷静な腐川やホル・ホースと異なり、こまる達は先程の映像と蛇太郎の言葉に打ちひしがれていた。ホル・ホースの推測からわずかに抱いていた蛇太郎に対する『憐憫』の気持ちなどもはや存在しない。
あるのは蛇太郎の暴挙に対する『怒り』と、それを遥かに上回って掻き消すほどの『恐怖』と『諦観』であった。
「…い、いつまでも子供みたいにビービー泣いてんじゃあないわよ。泣けば解決するとでも思ってんの?」
「アンタらもボケッとしてるとまたモノクマ共がやって来るぜ。とにかくまずはここから離れようぜ」
「し、しかしだな…これ以上、我々にできることなど…」
「仮にも警察官が最初から『可能性』捨ててんじゃあないわよ。…さっきも言ったでしょ、アタシ達には『降伏』か『待ち続ける』か『闘う』しか選択肢は無いのよ。けど、あのガキ共の様子からして降参したところで助かるとは思えないわ。それに、この場所がバレたところから考えても、助けを待って逃げ続けるなんてことも無理よ。だったら、『闘う』しかないじゃない…!」
「…『無理』だよ」
「…なんですって?」
「こんなの…勝てるワケないじゃん…!私は、ただの『凡人』なんだよ…!いくら頑張ったって、『一人』じゃどうしようもないよ…!」
「こまる姉ちゃん…」
「苗木さん…」
常軌を逸した子供たちへの恐怖で怯えるこまるに、己の力の無さを自覚している朝日奈と石丸も同意するような視線を送る。
「…おいおいおいおい、黙って聴いてりゃ随分『薄情』なこと言ってくれるじゃあねーか?」
そんな3人に、ホル・ホースと腐川が呆れたような顔を向ける。
「え…?」
「…誰も、『アンタ一人』で全部やれなんて言ってないでしょ?何のためにアタシらがいると思ってんのよ…」
「元々俺達ァ、お前さんらを助けるためにここまで来たんだ。本来ならお前さんらをおんぶにだっこして連れ帰るところを、ちょいと自分で走ってもらうようになったっつーだけだろ?俺たちは『大将』と約束してるんでな。お前さんらが『諦めない限り』全力で守って、諦めたとしても引き摺ってでも連れ帰るってな。…だからよ嬢ちゃん、もう少し『大人』を頼れや?」
「………いいん、ですか?」
「ん?」
「頼っても…いいんですか…?私に…力を貸してくれるんですか…?」
「…ったく、今更何言ってんだか。…死なない程度には協力してあげるから、べそかいてる暇が有ったら立ちなさい」
「う、うん…ごめん、腐川さん…!」
「…べ、別に謝らなくてもいいわよ」
「…男連中よぉ、嬢ちゃんがまだ頑張るっていってんだ。ここで退いたら男が廃るよなぁ?」
「…そう、だな。一番辛い筈の苗木さんが耐えているのだ。大人として、『警察官』として、ここで立ち止まるわけにはいかないな…」
「俺…おっさんや姉ちゃんたちみたいなスタンド能力もないし、ちょっと運動神経がいいぐらいしか取柄ないけど…それでも、俺やるよ!自分にできること、何ができるか分かんねえけど精一杯やってみる!」
「よく言った!それでこそ男だ坊主!」
「暑苦しいわね…とりあえず、もうこんな陰気くさい所に用は無いでしょ?さっさと地上に戻るわよ」
「あ…うん。……あの、腐川さん、ホル・ホースさん」
「あん?」
「…何よ、謝らなくてもいいって…」
「あの、そうじゃなくって……ありがとう、二人とも…!」
「…へっ」
「ふん…」
『結束』という微かな『希望』を抱きつつ、皆は地下鉄を後にするのであった。
今回ここまで
ニューダンVスリャァッ!楽しみですね。モノクマの声も含めてですが…