ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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ダンロン3の情報もほぼ出尽くしましたけど、なかなか面白そうな感じで何よりでしたね。…ただ今作では原作とは生き残りメンバーの立ち位置がかなり違うので、3の話をするにしてもアニメほど厚みのある内容にはならないでしょうね。たぶんやるとしたら「苗木一派VS宗像率いる希望ヶ峰OB]みたいな構図になるかも…戦力差ありすぎぃ!しかも流流歌、御手洗、黄桜ぐらいは苗木のことを直で知ってそうなので敵対する気が無くなりそう…まあ、アニメ見てみないとキャラが分からないのでまだお預けですけど

そしてジョジョ4部!毎週毎週じつに面白いッ!露伴、トニオ回、音石、吉良など楽しみな話も沢山あるんですが、アニメになったことで康一君の成長劇やミキタカやジャンケン小僧などのギャグ回も楽しみになってきた感じです!

今後とも原作にモチベーションを上げていただきながら頑張っていきます!…早く第2部書きたいですしね


ジェノサイダー無双

 遡ること、10分前…

 

 

 

 

 

 

ガコォン!

 

「地上…キターッッ!!」

「よっと…。ったく、どういう出方してんだよお前…」

 マンホールの蓋を跳ね飛ばして地上へと飛び上がったジェノサイダーに続き、ホル・ホースも梯子を上って地上へと出てきた。

 

「しかしよ、地上へ出たのは良いがお前さん嬢ちゃんの居場所を…」

「…あん?」

「…って、何見てんだお前?」

 こまるの所在を訊ねようとしたホル・ホースであったが、当のジェノサイダーは手にした『タブレット』を見て首を傾げていた。

 

「お前、そんなもん持ってたっけ?というか、なんだそれ?」

「あ、コレ?デコマルの腕輪の『探知機』らしいぜ。ここの『赤い点』あんだろ?これがデコマルの現在地ってワケ」

「…はぁ!?なんでんなモンをお前が持ってんだッ!」

「あのモノクマの仮面被ったガキ共がプレゼントしてくれたんだっつーの」

「何ィ!?増々訳が分からんぞ!」

「んなことより、これ見てみオッサン」

「ああ?なんだって…」

 ジェノサイダーに促され納得できないまま画面を見ると、画面上の赤い点…即ちこまるが今いる地点が動いていた。…ただ動いていただけならいいのだが、その『スピード』が異常であった。

 

「んだこりゃあ…?この尺図からしてそう遠くではねーみてーだが、それにしたってなんだってこんな『速く』動いてやがんだ?」

「んー、大体『時速60㎞』ぐらいで動いてる感じじゃね?『ハイウェイ・スター』かっつーの!ギャハハハ!」

「笑いごっちゃねーだろ…!…幸いこっちから離れて行ってる訳じゃねーみたいだ。どういうことかは見つけてから…」

 

 

 

 

 

…ガッ!バキッ!

 

「…あん?」

 ふと近くのビルの陰から聞こえてきた物音にジェノサイダーが反応する。

 

「おい、どうした?」

「…誰か向こうにいんぞ。どうやらなんかと『殴りあってる』っぽい感じ?」

「何!?…『生存者』かもしれねえが、どうする?」

「…ケッ!ほっといてもどーでもいいけど、後でデコマルにうだうだ言われんのも癪だしよ、メンドクセーけど助けてやんよ!」

「…だな」

 

 

 

 

 

「…ぬうんッ!!」

 

バギャアッ!

 

『ぐえ~…』

『イイゾー!もっとやれー!』

「…ぬう、キリが無い…」

 ビルの物陰では、鍛え上げられた肉体を襤褸同然の道着で身を包んだ白髪の男…『ケンイチロウ』が数体のモノクマと大勢のモノクマキッズたちに取り囲まれながら奮闘していた。周りにはケンイチロウによってスクラップと化したモノクマが何体か転がっており、今もケンイチロウにはかすり傷ひとつついていないが、尽きることのないモノクマの援軍と子供たちという手の出せない親玉の完全アウェーの状況に、徐々に追い詰められていた。

 

 と、そこに。

 

「…くたばれクマ公ーッ!!」

「何!?」

 

ザスザスザスッ!!

 上空から降り注いだ鋏の雨がケンイチロウの周りだけを避けてモノクマを含めた辺り一帯に突き刺ささり、モノクマ達はまるでウニのように全身に深々と鋏を突き刺され沈黙した。そしてそれを成した本人、ジェノサイダーはそのままケンイチロウの頭の上に着地する。

 

ドスッ!

「ぬむ…ッ!?」

「あ、ワリ。首グキッてねえ?」

「…心配は無用だ。女子一人に乗られた程度でどうなるほど、軟な鍛え方はしておらん」

「あっそ。…で、クソガキ共。お前らの玩具は全部ぶっ壊れたが、…まだやるか?アタシはコイツと違ってお前らに甘くねーぞ?」

 

『…逃げろー!』

 鋏を突き出すジェノサイダーに恐怖したのかは分からないが、モノクマキッズたちは蜘蛛の子を散らす様にその場から逃げ去っていった。

 

 

「…お、おい待てって…。って、もう終わってんのかよ…」

「オッサン遅せーぞ。またツマンネーもんを殺っちまったじゃねーか」

「どこの五右衛門だおめーはよ…」

「…お主等は、一体…?」

「ああ、俺達はお前さんを助けに来たんだよ。…もっとも、アンタがやったらしいあのモノクマの残骸を見る限り必要はなかったみてーだがな」

「…いや。お主等が来ておらねば私も負けないにしても手傷を負っていたやもしれん。『彼女』との約束の為に、この体は万全のままにしておきたかったからな。そう言う意味では、感謝させてもらう」

「…ん?約束ゥ?…オメーまさか」

 ケンイチロウの『彼女との約束』と言う言葉、そしてケンイチロウの右手にかかった『腕輪』を見て、ジェノサイダーはケンイチロウの『正体』を知る。

 

「…な~るほどね。アンタあの『オーガ』の彼氏か」

「…何!?」

「実際見るのは初めてだけど、…ギャッハッハ!な~るほどね、確かにオーガと『お似合い』だわ!チョーウケる~!」

「オーガ…まさか、我が友『大神さくら』のことか!?」

「何ッ!?…つーことは、お前さんが大神さくらの『要救助民』…!?」

「要救助民?…済まないが、どうか説明してはもらえぬだろうか?」

「…ああ。時間がねーから手短に言うが…」

 

 

 

 

 

 ホル・ホースはケンイチロウに自分とジェノサイダー…腐川冬子の身分と今の現状、そして大神さくらの最期を端的に説明した。

 

「…そう、か。さくらは…逝ったのか」

「…ああ」

「…アタシにとっちゃオーガは殺す価値もねーからどうだっていいんだけどよ。…まー君曰く、『誇りある最期だった』らしいぜ」

「…そうか。さくらは、『友』の為に…『希望』の為に死んだのだな。ならば…私にできることは決まっている。さくらの遺志が絶えぬよう、この肉体が朽ちるまで『絶望』と戦い続けるのみだ…ッ!」

「…大した奴だぜ。仗助風に言うなら、『グレートですよ』って奴かな」

「あらやだ、キュンと来ちゃった…殺人鬼的に」

「しかし、無理しなくてもいいんだぜ。自分の女が死んだんだ、ショックなのは当然だぜ」

「フッ…、その心配は無用だ。確かにさくらが死んだことは悲しい…。それこそ今この場でこの心臓を突き破り、さくらの元に向かうのも悪くないと思うほどにな。だが、それをさくらが望まないことは私が一番知っている。なれば、私がさくらの元に向かうときは、さくらの望んだ『希望』の為に殉じた、その時なのだと、私は信じているからな」

「…若けえのに随分達観してやがんなあ…」

「それと…さくらとは『そう言う関係』ではない。確かにさくらを『女性として』愛しているのは間違いないが、それ以前にさくらは私にとって『唯一無二の好敵手』であり同じ格闘家としての『戦友』なのだよ」

「…こいつらオーガ共々マジメンドクセーな…」

「ハハハ。…それに、お主等の仲間である苗木誠殿にはこの命を救ってもらった『恩』がある。その恩を返すためならば、例えさくらのことが無くとも協力させてもらおう」

「そいつぁ心強いぜ…っと、そういや…おいジェノサイダー、助っ人も入ったことだし早いとこ嬢ちゃん探しに戻ろうぜ。今どの辺にいるんだ?」

「あー?ちょい待ち……あん?」

 タブレットを確認したジェノサイダーは本日何度目かの怪訝そうな声を上げる。

 

「ど、どうした?まさかもう大分遠くに行っちまったか?」

「…いや、その『逆』だ。まっすぐこっちに向かってやがる」

「何!?…ど、どこだ!?どこに居る…」

 と、ホル・ホースがこまるを探して辺りを見渡していると…

 

 

 

ゴォォォ…

「…あれは…!」

 三人の頭上を通り越していったのは、塔和シティの全域を巡航している『モノレール』であった。ジェノサイダーはそれを見ると再びタブレットに視線を落とし、モノレールの進行方向と赤い点の軌道が『一致している』のを確信し、納得する。

 

「な~るへそ。…おいオッサン!デコマルはあのモノレールの中みてーだぜ」

「ッ!あれか…。しかし…どうするよ?俺達の足じゃあれには追いつかねーぜ?スタンドだって射程距離外だしよ…」

「ん~、どうすっか…別に行けなくもねえんだけど…お!」

 首をひねったジェノサイダーであったが、ふと隣のケンイチロウを見てにやりと笑う。

 

「…ねぇ~、『ケンケン』。協力してくれるんなら、ちょいと手伝ってくんね?」

「む?私にできることならば…」

「…あのモノレールまで、アタシを『ぶん投げて』届くか?」

「!…おいおい、マジかよ…」

「…ふむ、できなくはないな」

「できんのかよッ!」

「オッケー!んじゃさっさとヨロシク!」

「承知した…」

 ケンイチロウが腕を差し出すとジェノサイダーは手の上に乗るようにしゃがみこみ、ケンイチロウはそのままジェノサイダーを軽々と持ち上げて振りかぶる。

 

「お、おい!マジで大丈夫なんだろうな!?」

「ま、なんとかなんだろ!オッサンはケンケンと後から追いかけてきな!」

「行くぞ…ッ!」

「あいよ!」

「むぅんッッ!!」

 

ガオンッ!

 まるでが空間を削り取られたかのような轟音と共に、ジェノサイダーはケンイチロウという『砲台』によって『発射』される。モノレールの速度を遥かに上回るスピードで空を切るジェノサイダーは、あっという間にモノレールに追いつき勢いそのままに中へと突入した。

 

ガシャァァン…ッ!

「一名様、ご来店~♪…っと」

 ガラスを突き破って陽気に侵入したジェノサイダーを待ち構えていたのは…

 

 

『こらー!』

『大変だ大変だ!』

『ギシャァァァァ!』

 ガードモノクマやジャンクモノクマまでが入り混じったモノクマの『軍勢』であった。

 

「…あら~♡素敵なお出迎え…ならお返しに地獄をプレゼントしてやるよぉッ!『メタリカ』ァァァ!」

 

ドスドスドスッ!

 襲い掛かろうとしたモノクマ達が、ジェノサイダーの発動した『メタリカ』によって『内』からも『外』からも鋏によって切り刻まれる。

 

「この距離でアタシの『メタリカ』に勝てると思ってんじゃあねーぞポンコツがァ!おらそこのけそこのけ殺人鬼が通るゥ~ッ!!」

 

 

ギャギャギャギャギャッ!!

 モノクマ達が待ち構える車内をジェノサイダーは疾風のように駆け抜けていき、すれ違ったモノクマは全て『メタリカ』により全身から鋏で食い破られ沈黙していく。普段は近くにこまるやホル・ホースが居るために『メタリカ』の『鉄分操作』をある程度コントロールする必要があったのだが、周り全てが『敵』という今の状況ではその必要が無いため、ジェノサイダーは手加減なしに無差別に『メタリカ』を使用することができるのである。

 モノクマの妨害など意にも解さず突っ走って行くジェノサイダーはやがて先頭車両…今までとは少し趣の異なる扉の前までやって来た。

 

「ははーん…!ここがあのガキ共のハウスね!…んじゃーデコマル取立に行きますか!」

 その場所が目的地であることを悟ると、ジェノサイダーは扉にドロップキックをブチかまして蹴破った。

 

ガゴォォォンッ!!

「パンパカパーンッ!ハァ~イ、デコマル元気~…何それ、新手のプレイ?」

「ふ、腐川さん!?」

「あ、アナタは『ブサイクメガネ』のお姉さん!?」

「ちょっと何何?純情そうな顔して『触手プレイ』が趣味だった訳?将来は『魔法少女』系?」

「そんなんじゃないよッ!!」

「…ちょっと、私を無視しないでもらえます?『ブサイク』なお姉さんが私を無視するなんて許せませんよ…!」

「ブサイクじゃねーし!ちょっと顔の出来が『下の下』なだけだし!」

「ほとんど一緒じゃあないですかッ!もう我慢できません…キャワイイモノには『愛』を、ブサイクなモノには…『おしおき』をッ!」

 再び『入れ歯発射ガン』を手にした言子がその照準をジェノサイダーへと向ける。

 

「き、気をつけて腐川さんッ!その歯には『麻酔』が…」

 

 

 

 

 

シパァッ…!

 

 

「…え?」

「この歯が…なんだって?」

 こまるの警告が言い終わらぬうちに、ジェノサイダーは既に言子とすれ違っていた。

 

「な…!?い、何時の間に…」

「はい、テンプレ通りの驚きいただきましたーッ!ごちそうさまです!」

「お、お黙りなさい!まだ勝負はついてませんよ…!」

 驚きつつも再びジェノサイダーに狙いを定めようとした言子に、ジェノサイダーは呆れたようにため息をつく。

 

「…馬鹿かオメー。『勝負』なんざとっくについてるっつーの」

「何を言って…!?」

 

ズルリ…

 その瞬間、言子の手に持った『入れ歯発射ガン』の銃身が真っ二つに『ずり落ちた』。

 

「!?」

 それだけではなく、『入れ歯発射ガン』はまるで包丁で『輪切り』にされたかのように先端から切り落され、終いには持ち手しか残っていなかった。

 

「そ、そんな…」

「おいおい、驚いてるトコワリーけど…自分の『恰好』気にした方がいーんじゃあねーか?」

「え…?」

 そう言われ、言子が思わず視線を自分の体に向けると…

 

 

はらはら…

 『入れ歯発射ガン』だけでなく、いつの間にか自分の『服』までもが切り刻まれており、言子は現在あられもない『下着姿』にされてしまっていたのであった。

 

「…ッ!!?き…キャアアアアアッ!エッチスケッチワンタッチィィ~ッ!!」

「ハッ!オメーとは『闘いの年季』が違えんだよ!不二子ちゃんボディになって出直して来い『まな板娘』~ッ!」

「あなただって似たようなもんでしょうがーッ!…憶えてなさーいッ!!」

 若干半泣きでそう言い残し、言子はどこかに走り去っていった。

 

「…ケッ、これだからガキの相手は嫌なんだよ。さーて…よっすデコマル、迎えに来てやったぞ」

「腐川さん…来てくれたの…?」

「メンドクセーけどな。…あ、お楽しみの途中なら出直してくっけど?」

「楽しんでないよ!もしそうだったら私変態じゃん!」

「『ブラコン』な時点で変態なんだから今更じゃねーの?」

「ぶぶ、ブラコンじゃないよッ!!」

「ま、どーでもいいけど…」

 

 

「…アー?」

「あ?何だこの声…って、おい。デコマルそいつは…」

「あ…そうだ。この子…」

 こまるの背中にしがみつき、首の後ろから『緑色の赤ん坊』がジェノサイダーを窺い見る。

 

「なんだそいつ?デコマルとまー君のベイビー?」

「そ、そんな訳ないでしょッ!!覚えてるでしょ?地下で見つけたあの赤ん坊だよ!生まれたんだよ!」

「知らねー!…つーか言ってなかったけどアタシと根暗は『記憶を共有していない』んだよ!だから根暗が見たこともアタシは殆ど知らねーんだっつーの!」

「そ、そうなんだ…ゴメン」

「…けど、そいつ…ただのガキじゃあねーな。よくわかんねーけど…とにかく『ヤバい』ってのはよーく分かるぜ」

「そうかな?あ…そうだ、この子も『スタンド使い』なんだ」

「あらビックリ!で、なんつースタンド…」

 

 

 

ガゴォンッ!!

「きゃあ!?」

「わお!」

 突如としてモノレールが轟音を立てて大きく揺れ動いた。

 

「な、何!?」

「ん~…、アタシの経験から考えるにこの後起きるのは…」

「お、起きるのは…?」

 

「『激突注意!』…でございます♡」

「…え?は…えええええええッ!!?」

 ジェノサイダーの答えとほぼ同時に…

 

 

 

 

 

ドガァァァンッ!!

 モノレールは正面の『ターミナル』に入ると同時にバランスを崩し、横転しながらホームに突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おーい、おーい!デコマル、生きてっかー?」

「……ん、むぇ?」

 衝撃で気絶していたこまるが目を覚ますと、電車は斜めに傾いたまま停止していた。そして自分は床に寝かされており、真上から自分を見下ろすジェノサイダーの姿が見て取れた。

 

「あ…腐川さん。私、生きてるの…?」

「あたりめーだろ!…つーかあの程度でアタシが死ぬ訳ねーんだから、アタシが居るならオメーもまで生きてるってこったろ」

「…そっ、か」

 半ば茫然としながら立ち上がると、こまるはジェノサイダーに向き直る。

 

「…腐川さん」

「あん?」

 

 

 

 

「…ありがとうッ!!」

 

ガバッ!

「おおッ!?」

 万感の思いを込め、こまるはジェノサイダーに抱き着いた。

 

「助けに来てくれて…本当にありがとうッ!私、我儘ばっかりで…腐川さんを困らせてばっかりだったから、もう助けに来てくれないと思って…ッ!」

「なになに?ブラコンの次はレズ?キャー!デコマルってば性癖変態すぎー♡マジドン引きー♡」

「ち、違うよ!私は、本気で…」

「…あーあ、マジになってんじゃあねーよ。アタシはただまー君への『義理』を果たしただけだっつーの。オメーが『赤の他人』だったんなら、とっくに見捨ててるっつーの。…忘れんな、アタシは『殺人鬼』だ。テメーに『感謝』されるような人間じゃあねーんだよ」

「…でも、私は…」

「…あ゛ーもう!メンドクセーな。…そろそろ『時間』だからアタシは引っ込むぜ。後は根暗と話つけな。あばよ…」

「あ…!」

「……はッ!?…ど、どうやら…なんとかなってるみたいね」

「あ…うん」

 

 

 

「…おーい!嬢ちゃん、無事かー!?」

「腐川さん、返事をしてくれ!」

「!今の声…」

「ホル・ホースに…誰よこの声?」

 声の方向を見ると、後部車両の奥からホル・ホースとケンイチロウがこちらにやってきていた。

 

「良かったぜ、どうやら無事みてーだな」

「ホル・ホースさんも…来てくれたんですか。ところで…そっちの人は?」

「私の名はケンイチロウという。君の兄上に以前世話になった者だ」

「あ…お兄ちゃんの知り合いなんですか」

「ケンイチロウって…ああ、そういうことね。ところで、ホル・ホース。アンタどうやってここに来たのよ?よく分からないけど、今なんかとんでもないことになってんでしょ?」

「ああ、俺達はここのターミナルまで先回りしてお前さんたちを待ってたんだよ。…そしたらモノレールが急に横転して危うく轢かれそうになったんだよ。…で、ケンイチロウの旦那のおかげで助かったんだがホームの端に閉じ込められてよ、なんとか窓ガラスをぶち破ってモノレールの中に入り込んでここまで来たんだよ」

「そういうこと…。それなら、さっさとこんなところから逃げるわよ」

「いや、それがな…後ろの車両が何両か下に落っこちてよ、今このモノレールは半分宙ぶらりんな状態なんだわ」

「え!?」

「私一人ならどうとでもなるのだが、流石にこの人数を抱えて飛び降りるには少し厳しいな…」

「ああもう…ッ!最後の最後に面倒な…」

 

 

 

 

 

 

「…あれ?『あの子』が居ない…!?」

「あの子…?」

「赤ん坊だよ!さっきまでここに…」

 

「…アー!」

「え!?」

 こまるが声の方向を見ると、先ほどまで自分の肩の上に居た『緑色の赤ん坊』が車両の側面にある『扉』の前まで這って歩いていた。

 

「あ、あのガキ…!?地下道のあの気色悪いガキじゃないのッ!まさか…もう生まれたっていうの!?」

「こうして見ると…増々気味が悪いなあの赤ん坊…」

「…なんだ、あの赤子から感じる異様なまでの『プレッシャー』は…!?」

「こ、こら!危ないでしょ!」

 不気味なその容姿に3人が怪しむ中、こまるは急いで赤ん坊の下へ向かい優しく抱き上げる。

 

「君はまだ赤ちゃんなんだから、勝手にどこでも行っちゃメッ!…でしょ?」

「……アー」

「な、なによおまる…急に『母親』っぽいこと言っちゃって。そいつがどんだけ得体の知れないモノか分かってるでしょ?」

「それは、そうかもだけど…でも!赤ちゃんには変わりないんだから、守ってあげないと!」

「…にしても嬢ちゃんによく懐いてやがんな。動物は産まれて最初に見たヤツを親と思いこむらしいが…地下道の時といい妙に嬢ちゃんの事気に入ってる見てえだな」

「…ム!」

「ど、どうしたケンイチロウの旦那?」

「そこの赤子が向かっていた扉…その先から『風』を感じる。どうやらその先は外に繋がっているようだ」

「ほ、ホントに!?」

「じゃ、じゃあさっさと…」

「待て」

「こ、今度は何よッ!?」

「確かにその先は外と繋がっているのは間違いないが…風に交じって無数の『敵意』を感じる。どうやら待ち伏せされていると見るべきだろう…」

「待ち伏せって…腐川さん…」

「…この後の展開がある程度予想できるけど、行くしかないでしょ。それでも…」

「だよなぁ…。けど、どの道『退路』なんて無えんだ。やるしかねえだろ」

「……」

 ケンイチロウの言葉に嫌な予感をひしひしを感じながらも、こまるは赤ん坊を肩に乗せ扉に向き直る。

 

「…うし。ケンイチロウの旦那、そっちの扉頼んまぁ」

「承知した」

 ホル・ホースとケンイチロウが両開きの扉にそれぞれ手を掛ける。

 

「「せー…のッ!」」

 

ガラッ!

 勢いよく開かれた扉の先で待っていたのは…

 

 

 

 

 

 

 

『ワアアアアアアアッ!!』

「やっぱりね…」

「まあ、こうなるとは思ってたけどよ…」

「そ、そんなぁ…」

「むうう…」

 崩壊したターミナルの中に無理やり誂えたかのような『コロシアム』。先ほどの事故の影響かあちこちの『水道管』が破裂して水浸しになっているそこには、今迄と同じように多くのモノクマキッズたちが歓声を上げてこまるたちを迎え入れた。

 

「…洋服は新調できましたけど、お気に入りの『モノレール』と『入れ歯発射ガン』を台無しにしてくれたツケは高くつきますわよ?」

「あ、アンタ…ッ!」

 そしてこまるたちの向かいには先ほど逃げた言子が漫然と立ち塞がっていた。

 

「初めてですよ、ここまで私をコケにしてくれたおバカさんたちは…。絶対に許しませんのよ『虫けら』さん達、じわじわとなぶり殺しにしてあげますのよ」

「…アンタ、そんなにこやかな顔で言われたって台詞と表情が一致してないわよ」

「これは『お芝居』ですから。本音を言えば今すぐにでもあなた達を『粗挽きハンバーグ』にしてあげたいのですが、私は『淑女』ですから体裁は保ちますの」

「淑女ねえ…お前さんがそいつを語るにゃあ10年早いぜ」

「あらあら、誰かと思えば置いてけぼりを喰らったカウボーイのオジサン。それにあなたは…確か『ケンイチロウックス』でしたっけ?お姉さんに次いで高得点のターゲットでしわわね。筋肉モリモリマッチョマンの変態さんでしたからすぐに思い出せました」

「ぬ…私はそんな風に見られていたのか…」

「ところで…お姉さんさっきは『残念』でしたね?もう少しで『オトナ』と『コドモ』の見境もつかないようなキャワイイ姿になれたのに…」

「い、嫌だよそんなのッ!」

「あら、『キャワイイ事』への責任を放棄するのですか?それはズルいですよ。キャワイイ人っていうのは、皆にちやほやされる『権利』を持っているんです。…けど、それと引き換えにキャワイくない人たちから『ブス』だとか『死ね』みたいなことを言われて、身に覚えのない『妬み』や『怒り』を受ける『義務』があるんですよ。そうじゃないと…『割に合わない』じゃあないですか」

「…そういうの、『逆恨み』っていうのよ。舞園の奴、よくそんな世界でやって行けたものね。今だけは心の底から感心してあげるわ。…それと、おまるは人に言われるほど可愛くないわよ!精々『中の上』よッ!具体的に言えば、クラスで一番可愛い奴に彼氏ができてがっかりしてる時にふと『あれ、アイツ思ったより可愛くない?』…って思われる程度よッ!」

「よ、よく分からないけど…褒められてるのかな、それ…?」

「なんでオメーが男目線語ってんだよ…」

 捲し立てる腐川に対し、言子はどこまでも冷ややかに言葉を返す。

 

「逆恨み…?いいえ、違いますよ。それも全部『魔物』の仕業ですよ。私は、別にお金も人気も要らなかった。ただ、『普通の女の子』らしくできればそれで良かった。なのに…アイツ等は、私の気持ちに気づきもしないで分かった様な顔をして、コドモに自分の夢を押しつけて、一緒に『営業』までさせて…ま、求める方も求める方でしたけどね。わざわざ『親子セット』での『営業』ばかり希望する奴ばかりで…本当に『オトナ』っていうのは救いようのない存在でしたね。…あ、オトナじゃなくて『魔物』でしたっけ」

「…ホル・ホース殿。あの少女の言葉から察するに彼女は…」

「ああ…。どうやらあのお嬢ちゃん、『枕営業』ってやつをさせられてたみてーだな。ま、どこの世界にもそういう屑はいるもんだぜ」

「むう…」

「ホント、あんな奴らの言いなりになっていた自分が恥ずかしいですよ。けど…今は違います」

 冷め切っていた言子の言葉が、徐々に感情的になってくる。

 

「『何をすればオトナが喜ぶ』のかを知っている私は、『何をすればオトナが嫌がる』のかも知っているんです。その経験を利用して、魔物どもを徹底的に苦しめながらブッ殺してやるんでーす!」

「そ、そんな…!そんなことないよッ!『良い大人』だってたくさんいるよ、なのに…」

「だったらなんで私を助けてくれなかったんですかッ!!世界がまともだっていうなら、良いオトナがいるっていうなら…どうして私を助けてくれなかったんですかッ!!」

「ッ!!」

 言子の吐き捨てるような叫び。それは彼女にとって嘘偽りのない『本音』のようにこまるは感じた。

 

「…そんなの、知るわけないじゃない」

「…なんですって?」

「ふ、腐川さん!?」

 そんな言子の『本音』に応えたのは、腐川の容赦のない言葉であった。

 

「誰も助けてくれなかったっていうけど…アンタ、自分が殺した奴の中に『同じ境遇』の奴がいなかったとでも思ってんの?」

「……」

「アンタが感じているそれはね、人間なら皆思っている事なのよ。アンタと殆ど同じ境遇の奴だってきっとごまんといたわよ。けどね…それでも、皆『現実』と折り合いをつけて生きてんのよ。どっかの誰かみたいに、『願えば助けてくれるヒーロー』なんていなくても、自分ができることを目いっぱいやって、そうやって『大人』になっていくのよ。今のアンタは、それを『拒否』しているだけよ。自分の『運命』を呪って悲劇のヒロインぶったツラして、周りにその責任を押し付けてるだけじゃいの…ッ!」

「……ッ!」

「…お前さんの境遇に同情できねえ訳じゃねえさ。実際、辛かったろうよ。けどな…だからってそいつを『口実』に好き勝手していい理由なんか無いんだぜ」

「『因果応報』…そなたの行いはまさしくそれよ。そなたに下劣なことを強要した大人たちがそなたによって裁かれるのは詮無きこと。人を殺すことを肯定はしないが、そなたの怒りを身に受けるのは『自業自得』。だが…そなたがその後に殺め、傷つけた者達にはそなたに害される道理など無い。いずれそなたには、それに見合った『報い』が訪れるであろう」

「…前に、お兄ちゃんが言ってたよ。『復讐』という行為そのものは否定しちゃいけない。それはその人にとって『前に進む為のケジメ』になる時もあるからだって。けど…今あなたがやってるのは『八つ当たり』だよ!助けてくれなかったからって、その責任を大人の人みんなに押し付けるのは、間違ってるよッ!」

 

「……」

 皆の言葉に言子は俯いたままじっと黙り込み、やがて顔を上げる。

 

 

「…あ、もう終わりました?」

「…へ?」

「いやー、偉そうなお説教ご苦労さまでした!芸能界にいる間に覚えたんですよ、『人の話を聞いているようで聞いてないふり』。これだけは覚えていて良かったとつくづく思いますよ。新月君もお説教が長い時がありますから」

「なッ…なッ…!?あ、アンタねえッ…」

「だって…お姉さんたちのお説教を真面目に聞いて、それで私が『心変わり』したとして…それで一体なんになるっていうんですか?」

「…!」

「ブッ殺した魔物どもが生き返るんですか?それとも、昔の私をお姉さんたちが助けて未来を変えてくれるっていうんですか?…ほら、何も変わらないでしょう。だったら私は今のままがいいです。少なくとも、私たちの『王国』が完成すれば、私が嫌な思いをすることは二度とありませんから」

「…『馬に念仏』であったか」

「それに…そんな昔のことにいつまでもこだわっててもしょうがないですからね。今の私は『盾子お姉ちゃん』に救われてますから」

「ま、またその名前…!?あの『ケバ女』、どこまでアタシ達の足を引っ張れば気が済むのよッ!!」

「…おや?その言葉からするにブスメガネのお姉さんは盾子お姉ちゃんのことを知っているんですか?」

「ブスメガネッ!?こ、このガキ…アイツは、アタシ達の『元クラスメート』よ」

「なんと!?おーったまげーッ!…成程成程、つまりブスメガネのお姉さんは盾子お姉ちゃんの『引き立て役』だった訳ですね」

「なんでそんな設定になるのよッ!…ったく、アンタアイツにどんだけ『優しく』されたのかしれないけど、アイツにとっちゃそんなのただの『過程』に…」

 

 

 

 

「や、さし…く…?」

 腐川の『優しく』という言葉を聞いた瞬間、言子の様子が急変する。

 

「や、やざじいのは…やめまじょうよぉ…ッ!優じぐされると…わだじ…ビクビクってじでぇ…」

「な、何?」

「どうしたのアイツ…?」

「…これは、演技には見えんな。本心から『怯えて』いる」

「…チッ、趣味悪い野郎がいたもんだな。レディーを愛する男として吐き気がしてくるぜ…」

「ほ、ホル・ホースさん…。どういうことかわかるんですか?」

「…聞かねえほうがいいぜ。『女』の嬢ちゃんには毒だ…」

「え…?」

 

「や、優じくされると…うぐぐッ…!わだじは…優じいのは…ぼう、ビグビグって…じだくない…ッ!優じいのは…嫌なんでず…!!やざじいのだけは…やめまじょうよぉぉぉぉぉッ!!」

 

 泣きじゃくりながら言子が両手を打ち鳴らすと、またどこからともなく『コントローラー』が飛んでくる。言子はそれをひっつかむと無我夢中でそれを首にかける。

 

「やざじぐするのは…優じいのは…ッ、もう…嫌なんでずぅぅぅぅッ!!」

 悲鳴に近い叫びと共にコントローラーのスイッチを押すと、天井から轟音をたてて『何か』が飛来してくる。

 

「な、なんか来たよッ!」

「な、なんだアレは…!?」

 回転しながら地上に舞い降りたのは、『騎士』を思わせるような鎧兜のボディをしており、手には大ぶりな『戦斧』を担いだ、しかし操縦者である言子の趣味なのかどことなく可愛らしげな動きをするロボット、戦士ロボ『ハイランダー・ザ・グレート』であった。

 

「やざしぐするぐらいなら、優じぐするぐらいなら……してくだざいッ…!優じぐするぐらいなら…わ、わ、わだじ…わだじを…ッ!!ぶっ殺してくだざぁぁぁいッ!!」

 そして言子の狂気がそのまま乗り移ったかのように、ハイランダー・ザ・グレートは進撃を開始したのであった。

 

 

 

 

 

 

「…う、ばー…?」

『ビャォォォ…』

 




今回ここまで
緑色の赤ん坊の扱いが非常に難しい…アイツの耐久力がどんなもんなのか分からんからどこまでこまるちゃんにくっつけとけばいいのやら…?

あ、ちなみになんとなくわかるかもしれませんがケンイチロウのキャラは北斗の拳のトキを参考にしています
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