ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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本当は昨日更新予定だったんですが、ちょっと私事でそれどころじゃなくなってしまい、今日にずれ込んでしまいました。どうもすみません

先日お気に入り確認したらいきなりガバッと増えていてびっくりしました。このような作品をご愛読いただき、読者のみなさんには感謝に堪えません。ご期待に沿えるようこれからもがんばりますので引き続き応援よろしくお願いします。


戦士との決着、賢者の決意

「く、来る…」

「う゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」

 こまる達が身構える暇もなく、言子の操る戦士ロボは斧を振り上げ襲い掛かって来た。

 

「死ねええええええッ!!」

「ちょ、そんな…」

「ひ、ひいッ!?」

 

ガシッ

「え?」

「…ムンッ!」

 

ドォン!

 戦士ロボの勢いにたじろいでいると、いきなりなにかに体を持ち上げられ、次の瞬間一瞬の浮遊感と共にこまるたちはその場から姿を消していた。

 

ガスッ!

「!?ど、どこに…」

「び、びっくりした…」

「なッ…!?」

 不意打ちを躱され言子が周りを見渡すと、戦士ロボの『背後』にこまるたち3人を抱えたケンイチロウが立っていた。

 

「け、ケンイチロウさん…今のは…?」

「奴が攻撃をしてくる瞬間、皆を抱えて『天井』まで跳び上がり、天井を蹴って奴の後ろに着地しただけだ」

 ケンイチロウの言葉を裏付けるように、天井にはくっきりと足跡が刻みつけられ、摩擦熱による煙を上げていた。

 

「ま、マジか…。と、ともかくサンキュウ旦那」

「…アンタ、マジで大神並のバケモノね。一人でアレだってぶっ壊せるんじゃないの?」

「何、今のは我が武術のほんの『初歩』の技に過ぎん。…それに、私の技をもってすれば確かに奴の攻撃程度躱しきることはできるだろうが、私もまた奴に対する『有効打』を持たん。我が拳は『鉄板』程度ならば撃ち抜くが、『鉄の塊』となるとどれほど効果があるものか…」

「このッ…、死ねって言ってるんですよぉぉぉぉッ!!」

「ムッ!」

 

ガンッ!ガゴッ!ドガァッ!

 いきり立って再び攻撃してきた戦士ロボの攻撃を、ケンイチロウは3人を抱えたまま紙一重で躱していく。

 

「死ねッ!死ねッ!!私に優しくする奴は死ねッ!!私を哀れと思う奴も死ねッ!!私を惨めと見下す奴も死ねッ!!それができないのなら…いっそ私を殺せェェェェッ!!!」

「…なんと痛々しい嘆きだ…」

「く、狂ってるわね完璧に…」

「チッ、ヤケクソになって操縦が滅茶苦茶になってんのはいいんだが、ロボ自体が見た目からして力でごり押しタイプだから欠点になってねえ…。シンプルなほど強いって奴か…」

「ど、どうしよう腐川さん…」

「どうしようもなにも…このままおんぶにだっこされたままって訳にはいかないでしょ。…ホラッ!」

「わッ!?」

 小脇に抱えられた腐川が、反対側にいるこまるに『ハッキング銃』を投げ渡す。

 

「あ、コレ…!腐川さん取り返してきてくれたの?」

「アタシじゃないわよ…。多分アイツでしょ、…どうやってかは知らないけど。とにかく、こっちも反撃するわよ!」

「う、うん…!」

「…ならば、私があのロボットの注意を惹きつけよう。そなたらは攻撃に集中するのだ」

「おいおい…、大丈夫なのか?」

「何、直撃さえ貰わなければなんとかなるだろう。それに、苗木殿に繋いでもらい、さくらに託されたこの命、そう易々とくれてやるつもりはない。…頼んだぞ」

「は、はいッ!」

 

 攻撃を躱した隙に戦士ロボから距離をとると、ケンイチロウは3人を降ろしそれぞれ散開する。

 

「逃がさない…ッ!」

「そなたの相手は私だッ!」

「ッ!!」

 

 言子の注意が逸れた瞬間、ケンイチロウは戦士ロボの懐に潜り込むと顎目掛けて凄まじい掌底をブチかました。

 

ゴワァンッ!!

「キャッ!?」

「ひいッ!」

 戦士ロボの顎が跳ね上がり、まるで銅鑼を打ち鳴らしたような音が鳴り響くが、顔を戻した肝心の戦士ロボのボディには傷一つ入っておらず、ケンイチロウは眉を顰める。

 

「ムゥ…、やはり効かぬか。まだまだ修練が足らんな…」

「無駄なんですよ…!モナカちゃんがくれたこの戦士ロボが、そんな攻撃で倒せるとでも思ってるんですか…?だから…諦めて大人しく死になさいッ!!」

「そうはいかぬ。効かぬのであれば…『効くまで』撃ちこむのみッ!」

「やれるものならやってみなさいこの筋肉ダルマッ!!」

 ケンイチロウの行為を挑発と受け取ったのか、言子はケンイチロウに狙いを定め苛烈な攻撃を仕掛ける。ケンイチロウもまたそれを紙一重で躱しながら、『手動操縦』の隙をついて何度も何度も攻撃を積み重ねていった。

 

 

「す、すご…!」

「おいおい…、あそこだけ別の次元に行っちゃってんじゃあねえか?生身の人間とロボットのタイマンなんて日本のアニメでもそうはねえぞ…」

「感心してんじゃないわよ!アイツが気を惹いてる間に『弱点』を探すのよ!」

「弱点…?……あ、そうか!『モノクマの顔』!」

 勇者ロボ、僧侶ロボとも場所の違いはあれど『モノクマの顔』が弱点であった。こまるたちはケンイチロウと戦う戦士ロボを観察し、それを探すが…

 

 

「…あれ、無いよ!?」

「う、嘘でしょ…!?」

「チィ、もう対策されちまったって訳か…?」

 どこを見ても戦士ロボのボディにはモノクマの顔の箇所など見当たらなかったのである。

 

「ど、どうしよう…これじゃ…」

「さっきからウロチョロとうっとおしいですね…ッ!あなた方の相手はこの子たちですッ!」

 

『イヤッホーウッ!』

「も、モノクマッ!」

「援軍か!」

 言子の指示で客席から飛び出したモノクマが、戦士ロボの様子を窺うこまるたちへと襲い掛かる。

 

「もう…!こんな時に…」

 放っておく訳にもいかずハッキング銃を構えるこまる。

 

「…あれ?また『コトダマ』が増えてる…!」

 すると、ハッキング銃のコトダマの種類に先ほどジェノサイダーに渡されたメモリーチップにより増えた新たなコトダマ…『シビレロ』を見つけた。

 

「『シビレロ』って…『痺れろ』ってことだよね?だったら攻撃の弾だよね!なら…喰らえ!『シビレロ』!」

 

ドギュンッ!

 

シビビビビッ!!

『アガガガガガッ…!』

 『シビレロ』のコトダマを受けたモノクマは、『感電』したかのように全身からスパークを放ちながら悶え苦しむ。

 

「やった!そっか…、『シビレロ』って『電気』のことだったんだ!これなら…」

 

パシャ…

「!」

 と、再びコトダマを撃とうとしたこまるは、足元から聞こえた『水音』にハッとし思い留まる。

 

 

 

「痺れる…『電気』…足元に『水』…水は電気をよく通す…それに、見つからない『弱点』…もしかして…!」

 こまるは大急ぎでその場から『水に浸っていない部分』に移動し、大声で他の皆に伝える。

 

「腐川さん、ホル・ホースさん、ケンイチロウさん!ちょっとだけモノクマとロボットを『水の中』から逃がさないで!」

「あん?」

「水って…この水たまりの中からか?どうすんだ?」

「いいから!私を信じて!」

「…分かった、やってみよう…!」

「チッ、メンドクセーな…!」

 腐川たちはこまるの指示に従い、モノクマとロボットたちをコロシアム内の『水浸しになっている部分』に惹きつける。

 

「なにをするつもりかは知りませんが、無駄です…!私の戦士ロボに『弱点』はありませんッ!」

「お、おい嬢ちゃん、まだかッ!?」

「まだ…!もう少し、もう少し…ッ!」

 

 

 

ガンッ!

「今だッ!『シビレロ』ッ!」

 

ドギュンッ!

 戦士ロボの振り下ろした斧が『水の中』に突き刺さった瞬間、こまるは再び『シビレロ』のコトダマを戦士ロボ目掛けて放った。

 

シビビビビッ…!

「駄目だ嬢ちゃん!こいつらには『弱点』以外攻撃は…」

 

『●♯×bw△…!』

「むッ…!」

「なッ!?」

 コトダマを受けた瞬間、今迄ケンイチロウの攻撃を物ともしなかった戦士ロボが苦しむように悶えだす。

 

「『弱点』がない…?ううん、違うよね。『弱点』はある筈だよ。見つからないように『隠してある』だけだよね?例えば…その『鎧』の下とかに。けど『電気』なら、『鎧』の上からでも攻撃できる!そして…ッ!」

 

『アガガガガガッ…!』

「おおッ!?」

 戦士ロボがダメージを受けると同時に、同じ水たまりの中にいたモノクマ達も同じように痺れだす。

 

「水は電気を…よく通すッ!プログラムでも現実でも、それは一緒だよ!」

 

ドガァァンッ!

 『シビレロ』のコトダマにより回路がショートしたモノクマ達が一斉に爆発すると同時に、

 

 

ガコォン!

 戦士ロボの鎧の一部もまた弾け飛び、その下から隠されていた『モノクマの顔』が現れる。

 

「ああッ!!」

「ケンイチロウさん、そこが弱点だよ!」

「…応ッ!!」

 

ドゴォッ!

バジバジッ…ジジ…ッ!

 ケンイチロウの正拳突きが戦士ロボの弱点を強かに撃ち抜いた。まともにそれを喰らった戦士ロボはのけ反り、弱点から火花が散り煙が立ち昇る。

 

「や、やった!」

「よっしゃあッ!」

「ケンケンナイスパーッ!」

「いや…、これはそなたのお蔭だ。感謝するぞ、苗木こまる殿」

「えへへ…」

 

 

 

「…まだ、です…ッ!」

「!?」

「まだ…終わってない、終わらせませんよッ!!」

 言子がコントローラーを滅茶苦茶に動かすと、戦士ロボは再び動き出した。

 

「あの野郎まだッ…!」

「魔王の妹…ッ!せめて、せめてお前だけは…モナカちゃんの為にッ!!」

「…ッ!デコマル、逃げろッ!」

「え?」

 戦士ロボが斧を振りかぶると、上半身が回転してこまるの方へと向けられる。

 

「させぬ…ッ」

「死ねェーッ!!」

 

ブンッ!

 意図を察して妨害しようとしたケンイチロウよりも早く、戦士ロボは斧をこまるめがけて投擲する。

 

「あ…ッ!」

「嬢ちゃん!」

「こまる殿ッ!!」

「デコマルッ!!」

 咄嗟にホル・ホースが『エンペラー』を放ち、ジェノサイダーが『メタリカ』で斧の動きを操作しようとするが間に合わない。メジャーリーガーの球速をも上回る速度で迫る斧は、未だ反応しきれずにいるこまるを易々と真っ二つにする……筈であった。

 

 

 

「…ア、アァアアアアアアッ!!」

『ウバァァァァッ!』

 

 

 

シュルシュルシュルシュル…

 

 

コツン…

 

 

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

「………え?」

 

 その場にいた全員が何が起きたのかを理解しきれずにいた。結論から言えば、こまるへと迫っていた斧は間違いなくこまるに『命中した』。

 

 

 

 しかし、こまるとの距離が『ある程度』を越えた瞬間、斧が突如として『縮小』し始めたのである。斧はこまるに近づくにつれどんどん小さくなっていき…やがて全員の視界から『消えた』。正確には消えたわけではなく、『目視不可能』なレベルにまで小さくなってしまい、こまるに命中した時には『砂粒以下』の大きさにまで縮んでしまった為、こまるへのダメージは実質『0』に等しかった。

 

 

 そして、その現象が起こる直前に聞こえたこまるの肩に乗る『緑色の赤ん坊』とそのスタンドの叫び。言子とケンイチロウにはスタンドの姿は見えていなかったが、こまるへの攻撃を無効化したのがその赤ん坊の仕業であることを、その場にいた全員が感じ取っていた。

 

 

「い、今何が…?…あれ、でもさっきもこんなことが…」

「…アー、ブー?」

『アムゥ?』

「ッ!スタンド…!君…が、やったの?じゃあ…やっぱりこれが、この子の『スタンド能力』…?」

「な、なんなんですか…!?何をしたんですかッ!?さっきの事といい、その赤ん坊は『なんなん』ですかッ!!?」

「…アーッ!」

「ヒッ!?」

 眼前で起きた不可思議な現象に混乱する言子は元凶と思われる赤ん坊を指差すが、赤ん坊の無機質めいた、しかし確かな『敵意』の籠った瞳に射透かされ、『恐怖』を感じてたじろいでしまう。

 

(こ…殺さないとッ…!見た目が赤ん坊でも、アレは『コドモ』じゃない…ッ!『化け物』…、危険すぎるッ!例えモナカちゃんや新月君から嫌われても、アレだけは殺さないと…ッ!!)

 本能的に感じた『恐怖』に突き動かされ、言子は必死になってコントローラーを操作する。

 

「は、ハイランダー・ザ・グレートッ!早く動いて…ッ!早く、早く魔王の妹とあの化け物に止めを…ッ!」

 

 

 

キィン…ッ!

 しかし、戦士ロボがその願いに応える間もなく、甲高い音が鳴り響いた。

 

「…え?」

 

「…テメエは」

 ジェノサイダーの突き刺した鋏が戦士ロボのボディの『モノクマの顔』の奥、弱点である『赤いランプ』を貫き

 

ドォンドォンドォンッ!!

 

「いい加減…」

 立て続けに放たれたホル・ホースの『エンペラー』がその鋏をさらに奥へと押し込み

 

「…砕け散れッ!!」

 

バギャァァンッ!!

 

 ケンイチロウの放った拳がそれをさらに押し抜き、拳ごと戦士ロボのボディを突き抜けた。

 

 

『ガ、ガガ…』

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 弱点諸共機体を破壊された戦士ロボがそれに耐えきれるはずもなく…

 

 

 

「…フッ!」

 

ドゴォォォンッ!!

 ケンイチロウがその場を飛び退くと同時に爆炎を上げて木っ端微塵に爆発したのであった。

 

 

「よっしゃぁッ!」

「…終わったか」

「や、やった!……あ…ッ!」

 ロボットを倒したことに喜んだのも束の間、これまでの『希望の戦士たち』の末路を思い出したこまるは言子に方を向く。

 

 

 

「そ、そんな…ッ!?私の戦士ロボが…こんなところで…ッ!」

 目の前の現実に愕然とする言子の背後には、予想通り…

 

 

 

『……』

「…はッ!?」

 モノクマフェイスの眼を紅く光らせたモノクマキッズたちが、今か今かと待ち構えていた。

 

 

ズオオオオッ!!

 モノクマキッズたちは言子が敗北したのを確認すると、大門、蛇太郎の時のように『おしおき』を実行すべく言子へと手を伸ばす。

 

「や、やめ…ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

「…『メタリカ』ッ!」

 

ザスザスザスザスッ!

『!?』

 しかし、その瞬間言子とモノクマキッズたちの間から生えてきた『剣山』に行く手を阻まれてしまう。

 

「あ~れ~!?」

 逃げようと後ろへ退いてしまった言子はそれに驚いてバランスを崩し、立っていたステージから転げ落ちるようにコロシアムへと転がり込んでしまった。

 

「きゅぅ~…」

「ふ、腐川さん!?」

 遠巻きにその光景を見ていたこまるは、剣山を出現させた人物…腐川へと視線を向ける。

 

「ど、どうしてこの子を…?」

「…前の『激ダサマスクボーイ』ん時ぁ結局『口封じ』させられちまったからな。今回は二の鉄踏むわけにゃあいかねーだろ」

「え?」

「根暗が前にも言った筈だぜ?こいつらには『訊かなきゃなんねー事』があるってよ…!その赤んボのことも気になるが今は後回しだ…そーいう訳だ!この『マセジャリ』はアタシらが頂くぜ!文句があんなら…かかってこいや」

 ギロリとモノクマキッズたちを睨むと、モノクマキッズたちは委縮したかのようにそそくさと逃げて行ってしまった。

 

 

「ケッ!根性のねえ…いや、そういう『命令』だったってか?まーどっちでもいいけどね!…根暗、後は任せっぞ」

「…状況は飲み込めぬが、どうやら最悪の事態にはならずに済んだようだな」

「やれやれ、やっとガキ共から情報を聞きだせそうだな。…最も、こいつが聴取の相手じゃあなぁ~…」

 コロシアムの中央でひっくり返って目を回す言子に皆が集まっていく。

 

「おい嬢ちゃん、起きろ!起きろっての…!」

「…ハッ!?…き、キャア~ッ!私ったらなんてはしたない恰好を~ッ!?こんなの『R-18』ギリギリですよぉー!」

「目が覚めた途端にやかましい娘っ子だな…」

「…し、しかもいつの間にか囲まれているッ!こ、これはまさか…負けた敵将にヒワイな『プレイ』をするつもりですねッ!キャー!助けてーッ!」

「んなワケあるかいッ!俺は『16歳以下』はお断りだっつーの!」

「うう…『イケてる女幹部』ポジションな以上こうなる可能性は覚悟してましたけど…。でも、そんな目に遭うぐらいなら…殺しなさいッ!」

「…いつまでもふざけてんじゃあないわよ。こっちには訊きたいことが山ほどあんのよ…!」

「訊きたいこと…?」

「まずは白夜様の居場所…!そんであの女…『江ノ島盾子』になにを唆されたのかよッ!キリキリ吐きなさいッ!」

「そ、そんなこと…!あなた達に答える必要は…」

 

 

 

 

 

「…やれやれ、『コドモ』相手に寄ってたかって、『オトナ』の癖に情けないな…」

「「「「「ッ!!?」」」」」

 背後から聞こえた声に全員が振り返ると。

 

 

「いや、それでこそ『魔物』に相応しいか。コドモを寄ってたかって苛めるのは『魔物』の得意分野だからな…」

「し、新月君ッ!」

 そこには『希望の戦士たち』の『賢者』、新月渚が立っていた。

 

「何者だ…?」

「このガキンチョの仲間さ。…やれやれ、こんな時に連戦か…」

「ま、まだ戦うの…?」

 新たな『敵』の出現にこまる達は思わず身構える。が…

 

 

「…待て。僕はここに戦いに来た訳じゃあない」

「…え?」

 新月から放たれたのは『非戦闘』の言葉であった。

 

「て、敵じゃあ…ないの?」

「…信用できるとでも思ってんの?散々大人を殺しておいて、アタシ達にもモノクマやロボットを嗾けておいて…元々吹っかけてきたのはそっちじゃあないのッ!」

「…僕たちは、ただコドモたちが平和に暮らせる楽園が欲しかっただけだ」

「平和ねえ…。坊主よぉ、理想を語んのは結構だが、皆殺しが前提の『平和』が正しいと思ってんのか?」

「そ、そうだよ!こんなことしなくても…」

「…駄目なんだよ」

「む…?」

「殺さなきゃ…駄目なんだよ…!魔物を放っておいたら、僕らの楽園はいつか必ず壊される…ッ!そしたら、僕たちはまた酷い目に遭わされる…。魔物がいる限り、僕たちは真に『安心』なんてすることができないんだッ!その為にも…、僕らは絶対に魔物を全滅させなきゃならない…!僕たちの世界を、『守る』為にッ!」

「…ハッ。随分な『英雄思考』ね。アンタ達ゲームのやりすぎなんじゃない?あの『天然ゲーマー』だってもうちっとマシな思考回路持ってたわよ。マジにおかしくなってんじゃあないの?」

「おかしく…か。ああ、そうだろうな。きっともうとっくに『狂ってる』んだろうな、僕たちは。大門も、蛇太郎も、言子ちゃんも、僕も…モナカちゃんも。皆壊れて…おかしくなっちゃったんだろうな。けど…けどッ!そんな風にしたのは『オトナ』だろッ!僕たちを壊したのは、『オトナ』じゃあないかッ!!」

「し、新月君ッ!?」

 今まで冷徹だった新月の瞳に、微かに『怯え』の色が浮かびだす。

 

「…正直に言おうか。僕はオトナが怖くてしょうがないんだ。怖くて怖くて…アイツらの『足音』が聴こえただけでも眠れないんだ。アイツらという存在がいる限り、僕は決して『安心』することができないんだ…。もう、そういう風になっちゃってるんだよ…」

「…そなたらは、『大人』という『存在そのもの』を許すことができなかったのだな」

「そんな気は…していたよ。君たちは大人に酷い目に遭わされて、それでこんなことをしたのかもって…。でも、それでも…こんな、ここまでする必要はなかったんじゃあないの!?大人に酷いことをされたからって、大人全部を憎んで…そんなことをして傷つけあっても、誰も『幸せ』になんかならない!虚しいだけだよッ!」

「…だったら、僕たちに泣き寝入りをしろっていうのか?僕たちは…僕たちには、『希望』をもってなにかをすることなんて許されないって言うのか?」

「ッ!希…望…」

「……」

「…けど、もうそんなことをする必要は無さそうだ。魔王の妹、『お前のお蔭』でな」

「へ…?」

「お前の兄は『魔王』…オトナ達の『王様』なんだろ?だったら、そいつが僕らに関わるなと命令すれば、もうこれ以上オトナ達がこの街に来ることもない…。この街のオトナさえ全滅させれば、もう僕らはオトナと関わることは無くなる筈だ…!」

「そ、そうなの?腐川さん…」

「あ、アタシに訊かないでよ…。まあ、今のアイツの影響力は相当なもんでしょうからね。未来機関としても、パッショーネと事を構えることはしたくないでしょうし、アイツがやめろって言えばある程度はどうにかなるんじゃあないの?」

「そうさなあ…。俺も大将と戦えなんて命令された日にゃあ速攻『寝返る』自信があるぜ」

「うむ…。『個』であれ『軍』であれ、苗木殿と戦うのは『太陽』に弓を引く行為に等しいからな」

「そうなんだ…。で、でも誰がお兄ちゃんにそれを伝えるの?」

 

「…お前に決まっているだろう」

「…え?」

 

ピピッ

ガシャ…

「…あ…!」

 新月がリモコンのようなものを操作すると、電子音と共にこまるの腕についた『モノクマリング』が外れた。

 

「これで、お前は自由だ…。もう街の外に出ても危険は無い」

「し、新月君!そんなことをしたら…ッ!」

「構わない。『リーダー』である僕の判断だ」

「え、えっと…?」

「ちょ、ちょっと…!?アンタ何企んでんのよ?」

「企むもなにも、これが『答え』だ。お前はずっと街から逃げ出したかったんだろう?だから逃がしてやると言ってるんだ。その代り、街から出たらお前は『魔王』に今の事を伝えろ。赤の他人が頼むよりも、『妹』のお前が頼んだ方が魔王も聞き入れてくれるだろう?」

「で、でも…」

「おい坊主、マジで言ってんのかお前?お前さんたちは嬢ちゃんに執拗にこだわってたんじゃあなかったのか?なのにここにきて掌を返したみてーに逃がしてやるだなんて…どう考えたって怪しいぜ?」

「…こいつにこだわっていたのは、あくまで『魔王を倒す』ことをこのデモンズハンティングの『最終目的』としていたからだ。…けれど、雑魚だと思っていたお前にここまで被害を出されてしまった。この上魔王とまで戦うことになれば、『楽園』を創るどころの話じゃなくなる…!…だからッ!僕はもうこれ以上『失う』訳にはいかないんだよッ!コドモの楽園の為にも…例えモナカちゃんとの約束を破ることになったとしても、これ以上皆を失う訳にはいかないんだッ!!その為だったら、僕はなんだってやる…!『ジュンコお姉ちゃん』から貰った『希望』を守るためなら、僕は…ッ!!」

 

 新月はこまるたちの前で跪き、頭を下げて『土下座』をする。

 

 

「頼むから…ッ!!もうこの街から出て行ってくれッ!そして魔王に伝えてくれ…もう僕たちに関わらないでくれとッ!!」

「…ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

ジジ…ジー…

 そんな彼らの様子を、一人のモノクマキッズが遠巻きにカメラで撮影していた。

 

 

 

「…おやおや、これは予想外。面倒なことになっちゃったね。街に居ようが居なかろうが、君はどこまでも他人に影響を与えるんだね、苗木君…。けれど…いくら君が相手でも、僕の『計画』をおじゃんにさせられるのは困るんだよね…!」

 




ゲームやってて思ったけど、なんでシビレロのコトダマでこまるちゃん自爆するんでしょうね?ハッキング銃もコトダマの影響を受けるからなんでしょうか?
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