ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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ダンガンロンパ3、動いている映像が全く出てこないから全然想像がつかないんですよね。1.5部の終盤にちょこっとキャラを出しておこうと思っているんですが、早いとこ現物がみたいですねえ…


歪んだ絆

「頼むから…ッ!!もうこの街から出て行ってくれッ!そして魔王に伝えてくれ…もう僕たちに関わらないでくれとッ!!」

 水浸しの床に躊躇いなく土下座したまま、鬼気迫る声音でそう頼み込む新月に、こまる達は勿論仲間である言子ですらも困惑を隠せずにいた。

 

「…ど、どうしよう腐川さん…?私には、この子が嘘をついているようには見えないよ…」

「うむ…。この少年の言葉には偽りはない。彼は本心から大人を恐れ、仲間を守る為にこまる殿を逃がそうとしている。詳しい事情は分からぬが、彼の言葉は『信用』するに値すると思うのだが…」

「そ、そんなこと言われたって…ねえ?」

 助けを求めるようにホル・ホースへを視線を向ける腐川であったが、当のホル・ホースの返事はあっさりしたものであった。

 

「…別にいいんじゃあねえか?」

「…え?」

「俺達の目的はこまる嬢ちゃんたちをこの街から逃がすことだ。そもそもその為に俺達は塔和タワーから助けを呼びに行ったようなもんじゃあねえか。嬢ちゃんだけとはいえ、少なくとも今回はこいつらがそれを『保障』してくれるっていうんだ。だったら別に悩むこたぁねえだろ?」

「で、でも…ッ!他の連中はどうすんのよッ!」

「そいつに関してもどうにかなるんじゃあねえか?」

「へ?」

 ホル・ホースは新月へと向き直る。

 

「…おい坊主、お前さんたちが今やってる『デモンズハンティング』とかいうのは、そもそも『大人』をぶっ殺すためのゲームだったんだろ?」

「…ああ。発案者はモナカちゃんだが、このゲームはこの街の『オトナ』を狩り尽くすため、そしてそれを『外』の奴らに見せつけるためのものだ」

「だったらよ、嬢ちゃんがお前さんが言う魔王…大将にこの街に関わるなって約束させれば、もうそいつを続ける『理由』もなくなるよな?」

「……そうだな。外のオトナからの干渉が無くなるのなら、もう僕たちの敵はこの街の奴らだけだ。それだけなら、わざわざ僕らが出張らなくてもモノクマに任せておけば十分だろう」

「だったら、もう一つ『条件』を付けて貰おうか。…嬢ちゃんが大将にお前さんからの要請を確約させた時には、さっきお前がやったみてーにこの街に居る『要救助民全員』の腕輪を『解除』してもらう。そいつが俺達の提示する『条件』だ」

「んなッ!?」

 ホル・ホースの提示した条件に新月は目を見開き、腐川とこまる、言子は思わず声を出して驚く。

 

「ちょ、ちょっとおじさん!そんなこと勝手に決めていいと思ってるんですか!?」

「だから聞いてんじゃあねえか。坊主はお前さんたちの『リーダー』なんだろ?だから坊主に聞いてるんだよ」

「そ、それは…そうですけど…」

「ほ、ホル・ホースッ!」

「…んだよ?これで良いじゃあねえか。腕輪さえどうにかすりゃあ、少なくとも街の外に出ようとして爆発することはねえ。後はこの街の廃材で筏でも作るなり、嬢ちゃんが戻ってくるときに迎えを用意してもらうなりすればいいだけじゃねえか。要するに、この街から大人が『居なくなれば』いいんだろ?だったら出ていく分にはこいつらも文句はねえ筈だ。この街から出て行ってしまえばもう関わる必要はねえんだからな」

「そ、そうかもしれないけど…」

「…分かった。その条件を吞もう」

「新月君ッ!?だ、駄目ですよッ!モナカちゃんが楽しみにしていたデモンズハンティングを勝手に終わらせるなんて…」

「…そのことなら心配ない。ここ最近はモナカちゃんもデモンズハンティングの状況に殆ど興味を示さなくなってたからな。多分もう『飽きた』んだろう。なんとか説得すれば、多分納得してくれるはずだ。それに生き残ってるのは、もうジュンコお姉ちゃんから預かった連中だけみたいだしな」

「で、でも…」

「言子ちゃん、僕たちにとって一番大事なことは『楽園』を創り上げることだ。デモンズハンティングは、その『過程』に過ぎない。『過程』を成功させるために『結果』を蔑ろにしたんじゃ本末転倒だ。…モナカちゃんだってそんなことが分からない筈が無い。きっと分かってくれるはずだ。…そうだろう?」

「…は、はい…」

「…これで良いだろう?まだ何かあるか?」

「…いや、俺はもう何も無えよ。お前さんの言葉を信じさせてもらうぜ」

「私も特に反対する道理はない。こまる殿がこの街から逃げることに異論はない、それにいずれこの街から出られるのであればお主の邪魔立てをする必要もない」

「ホル・ホースさん…、ケンイチロウさん…」

「なら決まりだな…。これからお前を僕らだけが知っている『秘密の抜け道』まで案内する。そこから先は『お前一人』だけが行ってもいい。他の奴らは駄目だ」

「…構わねえが、道中ぐらいは同行させてもらうぜ。何があるか分からねえからな」

「ならば私も…」

 同行しようと言いかけたケンイチロウと手招きをして、ホル・ホースは新月たちに聞こえないよう耳元で囁く。

 

(ケンイチロウの旦那、アンタは悪いが先に避難所に戻って葉隠浩子って女にこのことを伝えてくれ)

(何?)

(場所はさっき教えたとおりだ、アンタならガキ共に悟られないよう行けるだろう?ただし、塔和灰慈って奴には聞かれないようにしてくれ。変なことをされても困るんでな…)

(構わぬが…何故今なのだ?)

(一応な…『保険』って奴だよ。向こうにアンタがいた方がこっちも安心なんでな、しばらくの間頼んだぜ)

(…そういうことなら、承知した)

 

「…では私はしばし別行動を取らせてもらう。話が決まるまでの間に、できる限りのことをしておきたいのでな」

「…勝手にしろよ。けど、僕が居る以上こいつがモノクマに襲われることは無い。多分無駄になると思うけどな…」

「さあて…そいつはどうだか…」

「…じゃあ、一緒に行くぞ」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよッ!」

 こまる達を連れ立って行こうとした新月を腐川が呼び止める。

 

「…なんだよ、まだ何かあるのか?」

「な、何かって言うんじゃあ…ないけど…」

「…あッ…!もしかして、十神さんのこと?」

「何?」

「十神の坊主がどうかしたのか?」

「えっと…私も詳しくは知らないんだけど、十神さん今『狛枝』って言う人に捕まってて、その人が十神さんを返して欲しかったら未来機関をこの街に呼ぶなって…」

「何ィ!?」

「…?確かに、僕たちは十神とかいう未来機関員を捕まえてるが、何故『召使い』の奴がそんなことを…?」

「え…?君たちの命令じゃないの?」

「アイツは確かに未来機関に対する『人質』だが、『召使い』の奴にそんなことを命令した覚えは無いぞ」

「そうなの…?で、でも…十神さんを置いて行くのはやっぱり…」

「…悪いがアイツの身柄だけは簡単には渡せない。アイツは『未来機関』と『魔王』、どちらにとっての『人質』になる存在だ。未来機関は元より、魔王だって僕はまだ完全に信用した訳じゃあない。アイツらが僕の要求をちゃんと守れると判断できるまでは、アイツは僕らが預からせてもらう」

「そ、そんな…どうしよう腐川さん…?」

「…そういうことじゃ、ないわよ」

「え?」

「白夜様の安全を私なんかが心配するなんて烏滸がましいにもほどがあるわ…ッ!白夜様はこの世で一番『パーフェクト』な存在なのよ…。アンタ達に捕まってたところで、どうってこと無い筈よ…!」

「じ、じゃあ何…?」

「私が、気にしてんのは…アンタの方よ、おまるッ!」

「え?」

 何時にない剣幕で、腐川はこまるに問いかける。

 

「あ、アンタ…本当に『ソレ』でいいのッ!?なんもかんもうっちゃって、この街から逃げ出してアイツに泣きついて…それでいいと、本気で思ってんの!?」

「そ、それは…」

「…良いに決まっているだろう。それがコイツの望みだったんだろう?」

「アンタは黙ってなさい…!アタシは今コイツに質問してんのよ…」

「で、でも…私がここに残っても仕方がないし…。それに、私がお兄ちゃんに言えば皆が助かるんだし…」

「そういうことを聞いてるんじゃあないわよ。アンタの『役目』だとか、何ができるかなんてどうでもいいことよ。…ただ、アンタがその『結果』で『納得できるのか』ってことよ。これだけ関わっておいて、肝心な部分を全部アイツに丸投げして…それでアンタが納得できるのかって言ってんのよ」

「私が…?」

「おいおい、そこまで求めんのは贅沢過ぎんじゃあねえか?今は一刻を争う時なんだぜ、多少のウダウダは我慢するしかねえだろ。さっきお前が言ってたじゃあねえか、『現実と折り合いをつける』ってよ」

「左様、そなたの言いたいことは分からないでもないが今は『ベスト』よりも『ベター』を選択するべきだ。個人の感情と人の命を天秤にかける訳にはいかぬ…」

「アンタ達も口を挟むんじゃあないわよッ!」

「……」

「お前の言いたいことは分かる。が…なんでそこまでこいつが街を出るのを邪魔したがるんだ?お前はコイツの『仲間』なんだろ?仲間の気持ちぐらい分かってやったらどうなんだ?」

「仲間の気持ち…?う、煩いわね…!アンタに言われたかないのよ…」

「…信用できないのは分かっているが、それでも信じてくれ。僕は『約束』を軽々しく破る様なことはしない。こいつは僕が責任を以て『秘密の抜け穴』まで連れて行く。それに嘘は無い」

「………」

「…さあ、もう行くぞ」

「し、新月君…」

「言子ちゃん、お前はついて来るな」

「で、でも…」

「モナカちゃんに…『嫌われたく』ないだろ」

「…ッ!」

「行くぞ…」

「あ…」

 立ち尽くす言子をその場に残し、こまる達は新月について外へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フンフフンフフ~ン~♪」

 その頃、希望の戦士の拠点である飛行船ではモナカが一人広間にて楽しそうに鼻歌を歌っていた。…その足元にはなにやら『魔法陣』のようなものが描かれており、その中央には『写真』のようなものが鎮座されていた。

 

「…お?随分ゴキゲンじゃあねーかモナカちゃん」

「うん!なにもかもがモナカの思い通りに動いてるんだよ、嬉しくってしょうがないよ!」

 やって来たクロクマにそう返答しながら、モナカは魔法陣の中央の写真に目を向ける。

 

「もうすぐみてーだな、アイツの『遺志』を継ぐ『二代目』の誕生…『二代目江ノ島盾子』か。そいつが生まれた時、全ての『希望』は『絶望』へと還る…。その時世界がどうなっちまうのか…今からドキドキワクワクって奴だなおいッ!ギャッハッハッハ!」

「うふふ…ところでクロクマ、さっきまでどこに行ってたの?」

「…っと、イケねえイケねえ。忘れるところだったぜ、モナカちゃんに報告しなきゃなんねえことがあってよ」

「ん?なーに?」

「まず、あのプッチとかいう奴の『目的』なんだが…やはりアイツはモナカちゃんの為に協力していた訳じゃなかったみてーだぜ」

「…ふーん、やっぱりね。それで…アイツは一体何が目的なの?」

「いや、それがよ…オレ様もちょこっとしか聞こえなかったからどういう意味かまでは分からねえんだけどよ…。なんでも…『天国』がどうとかって言ってたような…」

「…何言ってんの?」

「いやいや!オレ様がおかしいんじゃあねえぞ!アイツがそう言ってただけなんだっての!イヤ、マジでッ!」

「…まあなんでもいいや。邪魔さえしなければ別にどうでもいいし、もし『敵』になっても私の『スタンド』とモノクマちゃんがいれば敵じゃないしね」

「ま、そういうこったな。…で、もう一つなんだが…」

「今度は何?」

 

「…あの召使いのイン○野郎、どっか行っちまったぜ」

 

 

 

 

 

 

 ターミナルを出た後避難所へと向かうケンイチロウを見送ると、こまる達は新月の案内の下街中を進む。新月の言うとおり襲ってくるモノクマは全くいなかったが、ホル・ホースと腐川は警戒を怠る様子は無い。

 

「…いつまでそうやってオドオドしているつもりだ?さっきも言っただろう、僕が居る限りモノクマに襲われることは無いと…」

「そ、そんなこと分からないじゃないの…」

「分かるさ。モノクマは全部僕たちの『手下』なんだ。そのモノクマが、主人である僕を襲うわけが無いだろ」

「…そうは言うが、はいそうですかって受け入れる訳にゃいかねえんだよ。特に、これがお前さんの『独断』である以上な…」

「どう言う意味だ…?」

「嬢ちゃんを逃がすことがお前さんだけじゃなく、あのモナカとかいうお嬢ちゃんの『同意の上』でなら、俺達も少しは安心できるんだが…お前さんの『独断』な以上、気を抜く訳にはいかねーんだよ」

「…なんだよ、それ…?僕よりもモナカちゃんの方が信用できるっていうのか?僕は希望の戦士の『リーダー』なんだぞ。確かにモナカちゃんは嘘なんかつかないけど、それでも僕にだってリーダーとしてのプライドが…」

「…そいつは違うな」

「何?」

「『逆』よ…。あのモナカとかいうクソガキが『信用ならない』から、こうやって気を張らなきゃなんないんじゃあないの…ッ!」

「ぎゃ、逆?」

「おい…!モナカちゃんの悪口は僕が許さないぞ…ッ!」

「…おいおい、お前さんその子にホの字かい?」

「なッ!?ち、違ッ…僕は…ッ!」

「どうでもいいわよ…ガキの色恋沙汰なんて。アンタがあのガキにどんだけ惚れ込んでるかは知らないけどね、『アタシ達』にとってアイツは『危険』以外の何物でもないのよ…」

「ど、どういう意味だ?」

「…別にアンタが知る必要はないわ。ただ、一つだけ『忠告』しておいてあげるわ。アンタさっき、そいつは嘘をつかないとか言ってたけど、アンタが信じている『そいつ自身』が『嘘』かもしれないってことを、憶えておきなさい。後で痛い目に遭いたくなかったらね…」

「…お前の言っていることは、僕にはさっぱり分からない。けど、これだけは言える。…僕は、お前が嫌いだ」

「フン、アンタに好かれるなんてこっちから願い下げよ…」

「…フン。行くぞ…」

「…あ、うん…」

 険悪な雰囲気を残したまま4人は歩き続け、やがてある交差点までやって来た。

 

「こっちだ、ちゃんとついてこいよ…」

「…待ちな坊主。どうやら、『お客さん』のようだぜ」

「客?」

 『エンペラー』を構え警戒を強くするホル・ホースに新月が首を傾げていると

 

パパーッ…キキィッ!

交差点の四方からバスがやってきて、こまるたちを取り囲むように急ブレーキをかけて90度回転して止まる。

 

「な、何ッ!?」

「なんだ…!?一体誰が…ッ!?」

 

ヒョコ

『イエーイ!』

『ベロベロー!』

「お前らは…ッ!?」

 困惑する皆にバスから飛び出したのは、新月の仲間である筈のモノクマキッズたちであった。

 

「ちょ、ちょっと!アンタがいれば襲ってこないんじゃあなかったのッ!?」

「そんな…こんなハズがッ!?お、お前たちッ!一体なんのつもりだッ!?」

『べーだ!』

「そんな…、僕は…僕はお前らのッ!…う、ウワァァァァァッ!!」

「し、新月…くん!?」

「おまるッ!そいつの心配なんて後回しよッ!」

「…来るぞ!」

 

ガシャァーンッ!

『イヤッホォーウ!』

『ギシャァァァッ!』

 混乱する新月を嘲笑うモノクマキッズたちの指示により、バスの中に潜んでいたモノクマ達が襲い掛かって来た。動揺からかその場に蹲ってしまった新月を庇うように、こまるはハッキング銃をモノクマ達に向ける。…が

 

 

「…アー!」

『ウバァァァァッ!』

 

シュルシュルシュル…

『…アレ?』

『アレー?』

「んなッ…!?」

「ま、また縮んだわッ!?」

「…また君がやったの?」

「アー!」

『キョウゥゥゥン…』

 こまるの肩に上った緑色の赤ん坊がスタンドと共に一鳴きすると、襲ってきたモノクマ達は一匹残らず1/8程の大きさに縮んでしまった。

 

『ぎ、ギシャ…』

 

グシャッ!

「…如何にモノクマと言えど、ここまで小さくなっちまえば踏んづけりゃ終わりってか?呆気なねえなぁ…」

 小さくなっても尚襲って来ようとするモノクマをホル・ホースが片っ端から踏みつけて潰し回る。

 

グシャ!

「…ほい、終わったぜ」

「…で、まだやるの?」

『…逃げろー!』

 あっという間に全滅してしまったモノクマに、モノクマキッズたちもなす術もなく引き下がる他ない。しかし、モノクマキッズたちが去っても尚、新月はその場から立ち上がれずにいた。

 

「…新月君?」

「……」

「君と一緒に居れば、モノクマは襲ってこないんじゃあなかったの?」

「…こんなはずが無いんだ。コドモが一緒にいるのに襲うなんて、そんなことをする筈が無いんだ…!」

「ねえ…、本当に信じていいんだよね?」

「あ、当たり前だろッ!でなかったら、お前の腕輪を外すなんてことはしない…ッ!」

「…ハン。だったら、アンタの『裏切り』が向こうにバレたんでしょ?」

「裏切り…?ち、違うッ!僕は裏切ってなんかいないッ!」

「アンタはそうでも、お仲間はそうは思っていないみたいよ?」

「…違うんだ、これは裏切りなんかじゃない…。このままオトナと…魔王と戦えば、もっと被害が大きくなる。そうなってしまえば、『楽園』どころじゃなくなるんだ…!僕は希望の戦士のリーダーなんだ、皆の為にも、なんとしても『楽園』を…コドモの『希望』を守らなくちゃいけないんだ…。モナカちゃんだって…きっと話せばわかってくれるハズなのに…なんで…ッ!」

「…お前さんのその『責任感』には素直に感心するぜ。だがよ、今回はどうにもそいつを『利用』されちまってるみてえだな」

「利用だって…?一体、誰が…?」

「…それはお前さんが一番分かってんじゃあないのかい?」

「……」

「……」

「あ、あの…?」

「…行くぞ。もうグズグズしていられない…」

「え?あ…うん…」

「…やれやれだな」

「……」

 

 その後、押し黙ってしまった新月に続きこまる達は再び街中を移動する。途中、何度かモノクマの襲撃を受けたものの、そのたびに緑色の赤ん坊が自身のスタンドでモノクマを縮小させてしまっていた為こまる達は殆どまともな戦闘をせずに済んでいた。

 

「にしても…その赤ん坊も大概の変人よね。アンタにやたら懐いている上にアンタが危ない目に遭いそうになる時だけスタンド能力を使うなんて…」

「もう、そんな言い方しなくても…」

「アレじゃね?動物の赤ん坊が生まれて最初に見たヤツを親と思いこむ…『刷り込み』ってヤツ?」

「ホル・ホースさんまで…」

「アー?」

「…ッ!」

「…そうだ。ねえ腐川さん、そろそろこの子に『名前』ぐらいつけてあげようと思うんだけど…」

「名前?…やめときなさい。変に名前なんか付けて愛着持っちゃったら後で面倒なことになるでしょ」

「そんな、捨て犬か捨て猫じゃないんだから…」

「…けどよ、コイツはともかくスタンドの方は名前ぐらいつけといたほうがいいんじゃあねえか?じゃねえと後で報告するときにメンドクセェぞ?」

「…そうね。イチイチ能力からなにから報告書に書くより新しいスタンドとして報告した方が楽でいいわ。おまる、適当に決めちゃいなさい」

「適当って言われても…」

「…ウー?」

「…じゃあ、『グリーン・グリーン・グラス・オブ・ホーム』で」

「長いッ!てかなによその名前!?」

「ふ、腐川さんが適当でいいって言ったんじゃん!べ、別にいいでしょ!この子が緑色してるし、植物から産まれたんだし…それでなんとなくだよ!」

「…アアー!」

「ほら、この子もそれでいいって言ってる!」

「なんでアンタに分かんのよ…」

「ま、まあいいじゃあねえか。縮めて『G・G・G・O・H』とでも言っときゃあよ…」

「…ったく、兄妹揃ってネーミングセンスが長ったらしいのよ…。『ゴールド・エクスペリエンス』といい『イン・ア・サイレント・ウェイ』といい…もっとシンプルにしなさいよ、シンプルに」

「そんなぁ…」

 

「……」

「…おい坊主、大丈夫か?ショックなのは分かるがもうちっと肩の力抜いたらどうだよ?」

「…別に、もういいさ。お前を逃がしたらちゃんと誤解を解いてもらえば済むことだ。お前に心配される必要はない」

「でも…顔が怖いよ?」

「別に…ただ、さっきのお前の話で、少し考えてしまっただけだ」

「俺の?何だよ?」

「…さっきお前が言った、『刷り込み』…だったか?それを聞いて思ったんだよ…。もし、僕らがアイツらの事を『親』だと思い込んでいたのも、その『刷り込み』ってやつだったのかな…ってな」

「あいつ等って…キミのお父さんとお母さんの事?」

「…あんな奴ら、『親』なんかじゃあない…ッ!あいつ等こそ、正真正銘の『魔物』さ…」

「…随分な嫌いようじゃない。それで憎しみ余って大人全部を『魔物』だと思いこんだってワケ?根性ひねくれてるにも程があんでしょ…」

「…ねえ、どうしてそこまで『大人』を憎むの?さっき君が言った、『オトナが怖い』って、どういうことなの…?」

「……」

 新月はしばし押し黙った後、やがて重々しく口を開く。

 

「…少しだけ、昔話をしてやる。僕等が何故『楽園』を必要としたのか、それを知らせずに終わっても、後味の悪いものを残すからな…」

「……」

 

「…元々、僕たち『希望の戦士』は『希望ヶ峰学園付属小学校』のクラスメイトだったんだ。その中でも僕たちは、所謂『問題児』が集められるクラスに所属していた。…けど、それは間違いだ。『問題児』なんて言い方をされたら、まるで僕らが自分から問題を作っているみたいじゃあないか…。僕等が抱えていた問題は、僕たちのせいじゃあない。全部、オトナ達が…僕らの『親』が作ったものなんだよ」

「親…」

「大門の親は両親揃って酒癖が悪くギャンブルにのめり込んでいた。負けてヤケ酒しているとよく殴られたって言ってたな。そのせいで、アイツは人からの『敵意』に関して人一倍敏感になってしまったんだ。おかげでちょっとした言い合いでもすぐに手を出して必要以上に相手を痛めつけた。…もう自分を傷つけようだなんて思わないぐらいにね。けど、それは裏を返せばそれだけ他人に対して『臆病』だったってことなんだよ」

「…」

「蛇太郎は…大門の逆だな。家族の中で際立って顔が良かったせいで、それが気に入らない家族から謂れも無い暴言を浴びせられ続けてきた。そのせいで、アイツは他人の言葉を素直に受け入れられなくなったんだ。嫌われることが『愛情』だと思いこんだせいで、他人の暴言に喜ぶようになり、褒められることに慣れていないから言葉を捻じ曲げて捉えてしまう…。勝手だよな、自分でそうした癖に大人はそんなアイツをまるで『ゴキブリ』みたいな扱いをしてたんだ。…まあ、それでもアイツがピンピンしてたのはその性格のお蔭でもあったんだがな」

「…胸糞悪い話だな」

「言子ちゃんは、僕たちの中で一番『オトナの醜さ』を知っている。要領がよかったし何より自分の感情をコントロールするのがうまかったから、演技派子役としてちやほやされてたよ。…けど、後で言子ちゃんから教えられたんだ。その代償として、親の言いなりになってテレビ局の偉い人に気持ちの悪いことをされたって。だから言子ちゃんは、誰であろうと心を開いたりはしない。弱みを見せれば、そこに付け込まれるということを身を以て知っているのだから」

「…酷い」

「モナカちゃんは…ハッキリ言って『天才』だった。誰とでも簡単に打ち解けることができたし、人の上に立つことも、人の下になって働くこともできる『才能』を持っていた。…実の親が『嫉妬』するほどにね。モナカちゃんが何で車いすに座ってるか分かるか?…モナカちゃんの才能に嫉妬した『父親』や『歳の離れた兄』が、乱暴をしたせいでああなったそうだよ。でも、モナカちゃんはそれでも家族を責めたりはしなかった。凄いだろ…?モナカちゃんの方がその辺のオトナよりずっとずっとできた人間だと思わないか…?」

「……」

「それで僕だけど…僕はアイツらにとって、『ゲームの駒』みたいなものだった。僕の親は『研究者』でね、特に『才能』に関する研究をしていたんだ。その研究の一環として、僕は来る日も来る日も勉強させられ続けてきた。休む暇もなく机に向かわされ、ぶっ倒れたら栄養剤の点滴で無理やり叩き起こされる…。ゲームで良く有るだろ?レベル上げに熱中していたらいつの間にか朝になっていたって…僕はそれを『現実』でやらされていたのさ。でも、『家の中』だけならまだ良かった…僕はそれを『学校』でも強制させられたんだ。僕の父は『希望ヶ峰学園』の教師だった。父は僕を使って、『子供の才能の研究』をしていたんだよ」

「…成程ね、アンタの父親はあの胸糞悪い『計画』の関係者だったってワケね」

「…?お前、アイツのことを知っているのか?」

「アタシじゃないわよ…。前に苗木の奴が、希望ヶ峰学園の『地下』からそんな計画のことを調べ上げてきてね。結局アイツが動く前に計画自体は潰されちゃったけど、その関係者の一人がアンタの父親かもしれないってだけよ」

「…おい、それって…」

「察しの通りよ…」

「…フン、まあどうでもいいさ。そういう訳もあって、僕は毎日壊れる寸前まで追い込まれ続けた。限界まで追い詰められた子供の成長曲線を調べるとか言ってたけど…『観察する側』の人間なんてそんなものさ。『追い詰められる側』の気持ちなんか知ろうともしない…『動物実験』と同じさ。僕は所詮アイツらにとって『実験ネズミ』でしかなかったんだ。ハハッ、笑えるだろ…?」

「わ、笑えないよ…全然…」

「ま、僕が受けた苦しみなんて皆からすればどうってことはないさ。実験材料な以上、『死ぬ』ことは無かったからな。…けれど、あの時の僕らにはそんなことは関係なかった。実の親から、周りのコドモたちとは明らかに違う仕打ちを受けている…そのこと自体が、僕等にとってはこの上ない苦痛だった。けれど、それでも僕らはそれを口にすることができなかった。…『知らなかった』んだ。それを言葉にすることを、親を『恨む』ということを僕たちは知らなかったんだ。…そして、そんな僕等が行きつく先はシンプルなものだった」

「…まさか、お前ら…!?」

「僕らが出した答え、それが…この現実からの『逃避』だった」

「ッ!?」

 逃避、こまるはその言葉が比喩でもなんでもなく、その通りの意味であることを新月の言葉から察した。

 

「僕らにとって、それは『最後の選択』だったんだ。その頃の僕等は親を憎むことも、人を殺したり自分が死んだりすることもいけないことだという『常識』に縛られていた。だから、僕等にとってそれは最初で最後の『タブー破り』だったんだ。…けれど、そんな時に僕らに『逃げる』のではなく、『立ち向かう』ことを教えてくれた人がいた…」

 

 

『いらないんならさぁ、『それ』…ちょうだいよ』

 

「それが…『ジュンコお姉ちゃん』だった」

「…ッ!」

「お姉ちゃんは、僕等が捨てようとしていた『命』を欲しいと言ってきた。…僕らを、『必要』だと言ってくれたんだ。そしてお姉ちゃんは僕たちを攫ってくれた。友達だっていう『お兄さん』と一緒に、僕たちを誰にも見つけられないような場所に匿ってくれたんだ。『あの事件』が起きる少し前だったとはいえ、僕等の失踪は大した話題にはならなかった。お姉ちゃんが言うには、そのお兄さんが手回しをしてくれたおかげだって言っていた」

「…まさか、そいつ…」

「それからしばらくの間お姉ちゃんもお兄さんも見なかったけど、やがてお姉ちゃんは僕等の元に戻って来た。お兄さんは仕事が忙しくて来れなかったみたいだけどね。…それからの日々は、僕等にとって最高の幸せだった。ジュンコお姉ちゃんは『所有物』の僕らにたくさんの愛情を注いでくれた。何より僕らに『夢』をくれたんだ。オトナに怯えることのない、コドモだけの『楽園』を作るっていう夢をさ…」

「夢…『希望』…」

「…でも、一番感謝しなくちゃいけないのは僕等にいろんなことを教えてくれたことかな。僕等がオトナの下らない『常識』に惑わされないように、正しい『価値観』を教えてくれたんだ。その中で僕らは学んだんだ。…『オトナ』は『魔物』だっていうことにね」

「魔物…」

「アレは目から鱗だったよ…。その時初めて思い知らされたよ、この世界がどれほど『オトナ』にとって都合のいい嘘の常識で塗り固められたかっていうことにね。だから僕ら決心したんだ、こんな世界を作った魔物を倒して、僕たちが『正しい世界』を取り戻すんだって。…初めて魔物を殺したそれからしばらく経ってからだ。最初の一人は顔も知らないオトナだったけど、そんなことはどうでもよかった。『オトナを殺せる』…その事実が僕らにとっては何よりの自信になったんだ。ジュンコお姉ちゃんも僕らの行動と決断を喜んでくれたよ。『子供が大人を殺す。この構図だけで最高に絶望的だ』…ってね」

「そんな…滅茶苦茶だよ!」

「…フン。道理で大層なご題目掲げてる割にはやることが陳腐な筈だわ。『刷り込み』をやったのはアンタらの親じゃあないわ。あの江ノ島盾子の方よッ!アンタらは、あのケバ女が刷り込んだ『価値観』を信じきって、アイツの思い通りに動かされてるだけの、それこそ『ゲームの駒』でしかないのよッ!アイツはアンタらに『安心』を与えるふりをして、アンタ達を使い勝手のいい鉄砲玉に仕立て上げようとしてるのよ!」

「…だからなんだ?それに何の問題がある?」

「え…ッ!?」

「だ、だから…アイツのやっていることは、アンタらの親がやっていることと大差ないって言ってんのよッ!」

「そんなことは些細なことだ。さっきお前がそいつに同じようなことを言っていたが、肝心なのは僕等がそれに『納得』しているかということだ」

「納得…?」

「ジュンコお姉ちゃんは僕たちに教えてくれた…『納得は全てに優先される』と。思い返せば、僕等は親に言われたとおりのことをしてきたが、一度たりとしてそれに『納得』したことなどなかった。ただ、言われたことだから…仕方のないことだからと諦めていたんだ。でも、今は違う。僕等は今やっていることに微塵の後悔も無い。ジュンコお姉ちゃんは僕等を愛してくれた。そのジュンコお姉ちゃんが示してくれたことなら、僕たちはどんなことでもやる。それが『納得』ということだ。だから、例え同じことをやるのでもアイツらに言われるのとジュンコお姉ちゃんに言われるのでは天と地ほどの差があるんだよ」

 

「……」

 微塵も迷いのない新月の言葉に、こまるは言葉が出なかった。これまで当たり前のように『平穏』を享受してきた自分には、新月たちが感じた『絶望』とそこから救い出してくれた江ノ島に対する『希望』の感情を理解しきれずにいた。

 

 

 こまるは思った。『この子たちが辿りつく未来は、本当にこの子たちが求めた物なのか』と…

 




新月がやけに物分りが良いように見えますが、今回は原作と違ってこまるを「前哨戦」として見ているため、後に控えている未来機関とパッショーネとの戦いを考慮した結果、デモンズハンティングを放棄した方がまだマシという結論に達したからです。
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