ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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未来編10話視聴

天願さん…なんであんなことを言ったんだ?全員裏切り者って…どう考えても怪しすぎる…。宗方はあの時NG行動との関連性から事実だと思い込んでしまいましたが、我々の視点からすればどう考えてもおかしい…。まさか、これは未来機関「そのもの」が敵だという暗示…じゃあないですよね、どう考えても…
…でもそうなるとわざわざ支部長クラスがあそこに集まったのも、希望ヶ峰学園の時のように本部を「シェルター」として機関そのものから重要人物を守ろうとした…とか?なんちゃって…

宗方が気づいた悲しい事実。愛する者は「絶望」だった。トチ狂ったように皆殺しにしていたのはそういうことだったんですね。愛する女が死ねば、あまつさえ憎むべき「絶望」だとしたら男なら誰だって狂う、ここの苗木君だって狂う。…しかし、短絡的すぎたのは否めませんね

そして苗木君が意外と大健闘。防戦一方だったけど最後には頭を使って宗方を無理やり交渉の場に引きずりだしたのは霧切さんの教えの賜物ですね。最後の説得は感情任せの半ば惚気だったのはアレでしたが、さすが主人公と言うべきでしたね

そして朝日奈が見つけた霧切の遺した手がかり。襲撃者の正体とは?ジャバウォック島を離れる一隻の船…。アレに乗っているのはもしや…

ついに次週でいろいろ明らかになりそうですね。…早いトコオチが知りたいです。じゃないと交錯編が追い付けないよ…


遅れてきた英雄

ザワザワザワザワ…

 突如として現れた謎の青年の存在に、モニターを見ていた大人たちも思わず『殺せ』コールを止めざわめいていた。

 

「だ、誰よあのイケメン…?」

「苗木誠って…言ってたけど…」

「まさか、あの子がこまるっちの…」

 

 

「…あ、兄貴だぁぁぁぁッ!!!」

「どぉッ!?」

 混乱の中、悠太が感極まったようにそう叫び

 

 

「よっしゃ『勝った』ぁぁぁぁッ!!」

「ハァ!?」

 ホル・ホースが年甲斐もなく雄叫びを上げる。

 

 

「…間に合いましたな、苗木誠様。アナタは本当に最高のタイミングで来て下さる…!」

「ふぅ…ヒヤヒヤさせおるわい、我が孫の『旦那』は…」

「けどコレもう勝ったでしょ?そうだよね?」

「うむ…。しかし、油断は禁物だ。彼とて『神』ではないのだからな」

 アロシャニス、不比等、五月雨、ケンイチロウも先ほどの焦りはどこへやらと言った様子で胸をなでおろしていた。

 

「お、お前ら…何そんなに落ち着いてんだよ?アイツがどんだけ頼りになるのか知らねえけど一人増えたところで…」

「何言ってんの!王子クンなら大丈夫だって!」

 この街に来てから意気消沈気味であった羽山もこの上なくテンションが上がっている。

 

「まあ見てな。…大将ならきっと、こんな『絶望』跳ね除けてくれるぜ…!」

 

 

 

 

 

 そして広間では、苗木の存在に気付いた皆の視線が苗木に集中していた。

 

「だ、誰だテメエ…?」

「何時の間に…ていうか、どうやってここに…?」

「あの人…?まさか、もしかして…!」

 灰慈、花音は見知らぬ男に戸惑いを隠せず、言子はどこか既視感のあるその風貌に我が目を疑い

 

「な、苗木っち…?ゆ、夢じゃあねえよな?幻でも…」

「…残念ながら現実みたいだね。…まさか、本当に来るなんてね…」

「…た、助かったぁ~!」

 その男がそこに居ることを信じられない葉隠、狛枝、腐川はその存在を噛みしめ

 

「…ッ!」

 憎悪の叫びを上げたモナカが憎しみの籠った視線を向ける中

 

 

 

 

「…お、にい…ちゃん…?」

 打ちひしがれていたこまるがぽつりと呟き

 

「おにい…ちゃん…」

 ゆっくりと立ち上がると共に、虚ろだった瞳に光が戻り

 

「おにい…ちゃん…ッ!!」

 やがて潤んだ瞳から涙があふれ出し

 

 

「…お兄ちゃぁんッ!!」

 思わず走り出し、こまるは『兄』の…苗木誠の胸に飛び込んだ。

 

 

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!…お兄ちゃぁんッ!!」

「…こまる、よく頑張った。本当に、よく頑張ったな…」

「うん…!私、頑張ったよ…お兄ちゃんが…来てくれるって、ずっと、ずっと…信じてたよ!」

「…ああ。だから、僕はここに居る。お前のおかげだ、こまる」

「…ッう゛ああああああああッ!!」

 優しく自分の頭をなでる兄の手の温もりに、この街に連れてこられてから溜まり続けていた不安、寂しさ、悲しみ…その全てを吐き出すように、こまるは誠に抱き着き泣きじゃくった。

 

 

「…苗木、誠ォ…ッ!!」

 そんな『兄妹の絆』など知ったことではないとばかりに、モナカは絞り出すように仇敵の名を叫ぶ。

 

「…どうして、どうしてお前がここに居るッ!?通信衛星は破壊したはずなのに…!お前がこの街の事を知ることなど不可能な筈なのにッ!!」

「…そ、そうよ!アンタなんでここに来れたのよ!?」

 同じ疑問を持った腐川も問いかける。

 

「…確かに、この街で何が起きていたのかなんて知らなかった。もちろん通信が途切れたことを不審に思ったのもあるけど…ただ僕は、『直感』で動いただけさ。『虫の知らせ』…ってやつかな?」

「そんな…理由で…!?」

「別に不思議じゃないだろ?…狛枝さん、貴方ならわかるんじゃあないかな?」

「…成程。勘は勘でも、『超高校級の幸運』の『直感』という訳だね」

「ただの勘で塔和シティまで乗り込んで来るって…アンタも大概のシスコンね…全く」

「…そんな、あり得ない…ッ!」

 

「…お、『皆』も来たみたいだね」

「皆…?」

 

 

ドバンッ!

 突如荒々しく扉が開かれ、広間に雪崩れ込んでくる一群があった。

 

「モナカちゃん!」

「え?…だ、『大門君』!?」

「…よかった。まだ間に合ったみたいだな」

「うわぁぁああん!モナカちゃんも言子ちゃんも無事でよかったよぉ~!」

「『蛇太郎君』に、『新月君』まで…!?」

「…ッ!?なんでお前らまで…ッ」

 先陣を切って入って来たのは、行方不明だったはずの大門、蛇太郎、新月の3人。そして…

 

「おいお前ら!ガキだけで突っ走ってんじゃあねえッ!」

「お前だってアイツらと大差ねーだろーがよ」

「…友人が心配なのだろう。察してやれ」

「皆…こまるちゃん!」

「え……ッ!?む…むくろお義姉ちゃん!?」

「戦刃!?それに…エルメェス!ウェザー!…ついでにアナスイ!?」

「俺はついでかよテメー!ジョジョのダチだからってなめんじゃねーぞ!」

「…って、ジョジョ!?もう来てたんすか!?」

「ああ。僕は『外側』から『直接』ここまで来たからね」

「…流石だな」

「誠君…!間に合ったんだ…」

 子供たちを追いかけるようにアナスイ、エルメェス、ウェザー、戦刃も広間にやって来た。

 

「ど、どうなってんのよ…!?なんでそいつらが生きてて、戦刃たちと一緒に居んのよッ!?」

「…僕たちは、助けてもらったんだ。『お兄さん』…苗木さんに」

「え…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 苗木達がどうして塔和シティに来たのか、それは数日前…こまるが未来機関と連絡を取った頃にまで遡る…。

 

 

 

 

 

…未来機関十四支部の敷地内にある、『飛行場』…

 

「…管制塔より連絡入りました。まもなく、着陸シークエンスに入るそうです」

「…そう、ご苦労様」

 管制塔が受信した『謎のドイツ軍用機』からの着陸要請を受諾した霧切たちは、その日の夕暮に滑走路の近くでその来訪を待っていた。

 

「でも、ドイツの軍人さんがどうして未来機関に…?」

「ドイツ国防軍とは限らないわ。…飛行機は本物でも、『中身』は別ということもあり得るわ」

「…『絶望の残党』が飛行機奪って来てるかもしれないってことッスか」

「しかし、こうもご丁寧に着陸許可を求めてきておる時点で『テロ』の可能性はないじゃろう。…少なくとも、話し合う余地ぐらいはある筈じゃ」

「…ええ。そうだといいのだけれど」

 『支部長』としての仕事のある康一は一旦杜王支部へと戻ったが、仗助、ジョセフは十四支部に残り霧切たちと共に飛行機を待っていた。

 

 

…キィィィィィ…

「…あ!見えました!」

「どこどこ?…あ、アレだね!」

 舞園が指差した先には、空のかなたからこちらにやって来る一機の飛行機が存在していた。

 

「…飛行機はとりあえず本物みたいね」

「そういやオレこんな近くで飛行機の着陸見るの初めてッスよぉ~!なんかワクワクしてきたぜぇ~!」

「さて、鬼が出るか蛇が出るか…」

 

 

ゴォォォォォ…!

 そうこうしているうちに、飛行機は滑走路へと降り立ち、やがて減速の後停止する。それを確認すると、霧切たちは飛行機の近くへと向かっていく。

 

「…こちらは未来機関、第十四支部の者よ!…あなた達は何者!?」

 

…ガシャ…!

 霧切が呼びかけると、タラップがセットされた搭乗口の扉が開かれる。

 

「ッ!開いた…」

「…さて、どう出るのかしら…」

 警戒する霧切たちの前で、開かれた搭乗口から何者かが降りてくる。

 

 

 

 

ザッ…

「…ご丁寧な挨拶、ありがとう。『フラウ霧切』」

 流暢な日本語で挨拶を返したのは、立派な『軍服』に身を包んだ欧米系の大柄な男性であった。

 

「『軍服』…!?ってことは、やっぱり軍人さん?」

「じゃあ、もしかして味方…」

「…待って」

「え?」

「ど、どうしたんスか霧切…支部長?」

 絶望の残党ではなさそうと判断した舞園達が安心しかけたところに、霧切が待ったをかける。

 

「アナタ…何故私の名を?名乗った覚えは無いのだけれど…」

「あ…!そういえば…」

「貴女だけではないぞ。フラウ舞園、フラウ朝日奈…そしてそちらの男が東方仗助と、…ジョセフ・ジョースターだな?」

「俺達の名前まで…!?」

「…あの男、どこかで見たような気がするんじゃがのぉ~…?」

「…答えて。アナタは何者なの?」

「おっと。自己紹介が遅れて済まなかったな」

 男は姿勢を正すと霧切たちに向けて敬礼をしながら自分の名を名乗る。

 

 

「俺の名は『ヨゼフ・フォン・シュトロハイム』ッ!誇り高きドイツ国防軍にて『少佐』を務めているものだ!」

 男より告げられた名に皆が…特にジョセフが驚きの表情を見せる。

 

「ど、ドイツの…少佐さん…」

「シュトロハイムじゃとぉッ!?」

「うおッ!?…ど、どうしたんスかジョースターさん?」

「お、お前ッ!本当にシュトロハイムと言う姓なのじゃな!?」

「ほう!俺の姓を知ってその反応…貴様がジョセフ・ジョースターなのは間違いないようだな」

「で、ではお前は…」

「そうだ!俺は、かつて貴様と共に勇敢に『柱の男』と戦った偉大なる我が先祖『ルドル・フォン・シュトロハイム』の、『ひ孫』だ!」

「シュトロハイムの…ひ孫じゃと!?アイツ、結婚しとったのかッ!?」

「驚くところそこなんですね…」

「…そういえば、以前財団の記録を見せて頂いた時にそのような名前を見たわ。かつて『柱の男』と呼ばれる超生命体が出現した時に、ジョセフさんと共に闘ったという当時のドイツ軍が創りだした『サイボーグ兵士』…それがルドル・フォン・シュトロハイム…!」

 尊敬する曽祖父の名を知っていたことに、シュトロハイムは満足そうな笑みを浮かべる。

 

「その通りだ。話に聞いたとおり博識だな、フラウ霧切」

「話に…?私の事を誰かから聞いたの?」

「というか…ドイツ軍の人が何でここに?」

「うむ。その質問にはまとめて答えよう。…今回、ここに来たのは我々の用事ではない。我々はあくまで『運転手』に過ぎないのだよ」

「運転手?」

 皆が首を傾げた、その時

 

「…おいドイツ軍人!いい加減そこどけ!出れねえだろうがッ!」

「…!?今の、声…どこかで…」

 シュトロハイムの後ろから聞こえた、聞き覚えのある声に皆が再び驚きの表情を浮かべる。

 

「おお、スマンな少年。だが大人の世界にはこういうものが必要なのだ。できれば我慢して欲しかったものだがな!」

「子供扱いすんなッ!…つーか、デカい声で嫌味を言ってんじゃあねえッ!」

「ふん!我がシュトロハイム家にはこういう『家訓』がある。『人を褒めるときはデカい声で、人の悪口はもっとデカい声で、祖国を湛えるときは喉を嗄らさんばかりに叫ぶべし!』…とな!」

「どんだけ自分と自分の国大好きなんだよコイツ…」

「…祖国を愛するのはイイ事なのではないか?」

「度が過ぎるってんだよ…」

 シュトロハイムに呆れながらタラップから降りてくる面々に、霧切たちは見覚えがあった。

 

「あ…アナスイ君!?」

「エルメェスちゃんに…ウェザーさん!?」

「オッス姐さんたち!久しぶりっす!」

「あの馬鹿が騒がしくて済まねえな」

「…変わりがないようで何よりだ」

 エルメェス、アナスイ、ウェザー。苗木と共にイタリアへと向かった3人の登場に、霧切たちは動揺と共に『ある期待』を感じた。

 

「…あなた達が乗っている、ということは…まさか…!?」

「おう、もちろんだぜ!」

 自慢げにエルメェスが搭乗口の方を示すと…

 

 

「…皆!」

「む…むくろちゃん!」

 喜色を帯びた顔で戦刃が姿を見せ、次いで…

 

 

「…どうやら、来てよかったみたいだね。…こういう時ばかり僕の『勘』は良くあたるんだから…」

「あ…ッ!」

 その後ろから、皆が待ちわびた男が姿を現す。

 

「…皆、ただいま!」

「……ま…、誠君ッ!!」

「誠ぉーッ!!」

「苗木ぃッ!」

「苗木君…帰って来たのかッ!」

 半年前と比べ髪が伸び、かつての見た目に戻った苗木の笑顔を見るなり、舞園、朝日奈は走り出し、仗助、ジョセフはガッツポーズでその帰還を喜ぶ。

 

…ドサッ…

「……ッ!」

 そんな中、霧切はまるで糸の切れた人形のようにその場に膝を突くと、目元を抑え涙をこらえながら呟く。

 

「…奇跡…!本当に、来てくれた…!神様、神様…ありがとう…ッ!」

 どうしようもない事態に現れた『救世主』に、その場の全員が喜びを隠し切れなかった。

 

 

 

 

 

「誠君…!本当に、誠君なんですよね!?」

「ああ、もちろんだよ」

「でも、なんで急にここに…?」

「…向こうの『アルターエゴ』から、通信衛星がなんらかの理由で通信途絶したって報告を受けてね。あっちもあらかた落ち着いたしそろそろ一旦日本に戻ろうと思っていたのもあったし、…何か嫌な胸騒ぎのようなものを感じてね、向こうで協力関係を結んだドイツ軍の人たちに飛行機を用意してもらって、大急ぎでこっちまで戻って来たのさ」

「…相変わらずとんでもねえ『勘』してやがるぜ。しかし、今回はグレートに最高なタイミングって奴だな」

「しかし…よりにもよってあのシュトロハイムのひ孫と知り合いになるとはのぉ~。世間は狭いもんじゃのぉ~」

 部下たちに大声で指示を出しているかつての『戦友のひ孫』をちらりと見て、ジョセフは自分がつくづく年をとったということを実感する。

 

「僕も素性を聞いて驚きましたよ。…っと、それより…響子、そっちの状況を教えてくれないか?僕も殆どこっちの状況は分かっていないんだ」

「…ええ、もちろんよ。今は、貴方だけしか頼れないのだから…!」

 再会をひとしきり喜んだ後、一息つく間もなく苗木達は霧切から塔和シティで起きている事態について説明を受けた。

 

 

 

 

 

 

「…想像以上にとんでもないことになっているみたいだね。やはり、あの子…モナカが今回の事件の発端だったか…」

「理由は…多分、誠君への『恨み』かも。あの子、盾子ちゃんに一番懐いてたし…」

「…誠君。帰って来て早々にこんなことを頼むのは未来機関の支部長代行として…貴方の妻として情けないのだけれど…お願い、こまるちゃんを…皆を助けて…!」

「…当然だ。僕はその為に戻って来たんだ…!」

「でも…どうやって塔和シティに行けばいいんでしょう?」

「ジャミングがあるから飛行機や船は使えないし、人力じゃとても間に合わないし…」

「いくら苗木が来たって言っても、行く手段が無いんじゃ厳しいぜ…」

「むうう…」

 未だ見つからない街への『侵入手段』を考えていると、苗木が霧切に尋ねる。

 

「…響子。そのジャミングとやらはどのぐらいの『範囲』に有効なんだ?」

「え…?確か…街の周囲『2㎞』程度って報告を受けているわ。そこまで近づいたとしても、街の周囲には『機雷』や『対空兵器』があるからそれ以上の接近も難しいらしいわ…」

「ふむ…。むくろ、ちょっといいか?」

「何?」

「……から……で行こうと思うんだが、可能か?」

「え…!?…で、できなくはないだろうけど…かなり危険だよ?」

「ああ、『可能』ならいいんだ。そこさえ保障されるなら問題ない」

「な、何だよ?何か良い手があるのか!?」

「一応ね。…シュトロハイム少佐!」

 何かを閃いた様子の苗木は飛行機の傍でメンテナンスの指示を出しているシュトロハイムに声をかける。

 

「む?どうしたジョジョ!」

「…今から『もう一フライト』頼みたい!…できますか!?」

「え!?」

「もう一フライトって…あの軍用機で行くの!?」

「…フッ、愚問だな!我がドイツの軍事科学力はぁぁぁぁッ!世界イチィィィィィッ!!できんことはなぃぃぃぃッ!!」

「あ、あの言い回し…懐かしくて涙が出てきたわい…」

「…と、言いたいところなのだが…生憎まだメンテナンスが済んでおらん。もう少し…今日の『深夜』までには最低限は終わっているから飛ぶことは出来るが、精々『国内』を行き来するので精いっぱいだぞ」

「…それで十分です!片道分さえあればいい…」

「ま、誠君!飛行機はジャミングで飛べないって…」

「分かってるさ。要するに、ジャミングと対空兵器の『射程外』までなら飛行機で近づけるのだろう?…なら問題は無いさ」

「…はぁ?」

「…ジョジョ、どうするつもりなんすか?」

 エルメェスの問いに、苗木は悪戯っぽく笑んで再びシュトロハイムに問う。

 

「少佐!…確か機内に『降下作戦用のパラシュート』が積んでありましたよね?」

「パラシュート!?」

「…ほう、そういうことか…!いいだろう!好きに使えぃッ!!」

「ありがとうございます…!」

「じ、ジョジョ…アンタ、良い手ってまさか…?」

 どこか腰が引けたようなアナスイに、苗木はきっぱりと言い切った。

 

「ああ。…僕たちは今から塔和シティの『上空3000m』…ジャミングの射程圏外から『スカイダイビング』で街に潜入するッ!」

 

 

 

 

 

 

 その日の深夜、準備が済むと同時に苗木達は塔和シティへと向けて出発した。霧切たちも同行したいのは山々だったが、もし監視の目に捕まった場合その時点で約束を反故にされたとみなされる恐れがあったため、やるせない気持ちを苗木に託し、十四支部にて帰りを待つこととなった。

 

 

 

 

…そして、移動中に夜が明け、明朝に苗木達は塔和シティの上空からスカイダイビングを決行したのであった。

 

 

ビュオオオオオオッ!!

『うおおおおおおッ!!?』

 眼下の塔和シティを捉えながらも、飛び降りてから地上まで既に『半分』を切っているにも関わらず苗木達は未だパラシュートを開かず自由落下を続けていた。

 

『あ…姐さーんッ!まだ開いちゃ駄目なのかよー!?』

『まだ駄目…!パラシュートを開くと急激に速度が落ちるし、意外と大きくて目立つからすぐに見つかる…!開くのはもっとギリギリになってから…!』

 スカイダイビング初心者であるアナスイ、エルメェスは早くパラシュートを開きたかったが、軍人として経験のある戦刃がそれを一蹴する。

 

『け、けどよ…!このままじゃ間に合わねえんじゃあねえか!?』

『もう少し…距離700、600…500ッ!今ッ!』

『お、おうッ!』

 

バシュバシュバシュッ!

 戦刃の合図と共に全員が一斉にパラシュートを開く。風の抵抗を受け、皆の落下速度は一気に減速する、が…

 

『…ま、間に合わねえッ!減速が間に合ってねーぞぉ!?』

『落ち着けアナスイ!…こういう時の為のウェザーだろう!』

『ああ、任せておけ…!』

 苗木の指示を受け、ウェザーは己のスタンドの能力を発動させる。

 

『ウェザー・リポートッ!』

 ウェザーのスタンド、名前もそのまま『ウェザー・リポート』。まるで雲が人の形になった様な見た目のそのスタンドの能力は至ってシンプル、名前の通り、『天候を操る』ことができるのである。

 しかし、その汎用性は尋常ではなく、大規模な天候操作こそ範囲が限られるが、局所的な天候操作ならば下手をすれば『数百㎞先』まで指定することができる。また、操れる天候も雨から雷、風、雲、日照り、雪、雹、竜巻…それを利用してある種の生物を『降らす』こともできるため、新入りながらパッショーネでも最も恐れられているスタンドの一体でもあるのだ。

 

『風を…『上昇気流』を噴き上げろ!』

 

ビュオオオオオッ!!

 ウェザーの指示により、『ウェザー・リポート』は苗木達の真下から凄まじい『突風』を噴き上げる。減速しきれなかった苗木達のパラシュートはそれを真っ向から受け、その抵抗でスピードがガクンと落ちる。

 

「…お、おおお…!?スピードが一気に遅くなったぜ!」

「…それで、どこに降りるの?」

「街の中心部はマズイ…。監視の目もあるしあのデカブツに見つかると厄介だ。…少し郊外に降りよう。ウェザー!」

「了解した…。もう少し横風を吹かせよう…」

 ウェザーの吹かせる横風に流されるまま苗木達は街の中心から一旦離れ、臨海付近にまで移動してきていた。

 

「…よし、もう十分だ!パラシュートを捨てるんだ皆!」

 やがて地上から100m程の高さまで降りた時、苗木が皆にそう言い放つ。

 

「うえッ!?す、捨てるんすか?」

「これで着地をしている暇はない。それに、このまま浮かせておけば『陽動』にもなる。…高さはあるが、スタンドで着地すれば問題ないだろう。今は時間が惜しい!」

「りょ、了解!」

「うん。…むくろ、君は『G・E・R』に捕まって降りるんだ。流石に君でもこの高さは厳しいだろう」

「う、うん…。でも、誠君は…?」

「僕なら問題ない。…この程度なら『生身』で降りられる」

「…アンタも大概ぶっ飛んでるよな」

「今更でしょ?…さあ、行くよ!」

 苗木の指示に従い、皆はパラシュートの背嚢を脱ぎ捨て、そのまま地上へと飛び降りた。

 

「うおおおッ…ック、『ダイバー・ダウン』!」

「『キッス』!」

「『ウェザー・リポート』!」

「『ゴールド・エクスぺリエンス・レクイエム』!」

 再びの自由落下に若干の恐怖を覚えつつも、皆はそれぞれ自分のスタンドを展開し着地に備える。

 

 

スタタタタタッ!

「…っとぉ!」

「よっと!」

「フッ…!」

「…ん。ありがとう…」

 危なっかしく着地するアナスイ、手近な壁を蹴って減速して着地するエルメェス、怖くないのかなんでもないように降りるウェザー、『G・E・R』に抱えられゆったりと降りる戦刃。

 

ファサ…

「…皆、無事みたいだね」

 そんな彼らの無事を音もなく着地した苗木が確認する。

 

「…ったく、アンタは毎度毎度無茶が過ぎるんだよ。付き合わされる俺らの身にもなって欲しいぜ」

「んなこと言って、アタシ達は好きで付き合ってんだろうがよ!」

「…フ。これも『人徳』という奴だろう。アンタとなら、きっと大丈夫だと信じられる…そんな気がするからな」

「…それが、誠君の『希望』だからね」

「ハハ、ありがとう皆。…さて、グズグズしている暇はないぞ。アレが浮いている間に、早く街の方に向かわなくちゃな」

 上空で装着者を失くしアテもなく漂うパラシュートを見やりながら、苗木は皆に指示を出す。

 

「けど、俺達ぁどこへ行けばいいんだよ?」

「…まずはこまるや腐川さんと合流しよう。響子たちが聞いたという『レジスタンス』の基地へ行けば手がかりが…」

 

 

「…う…うう…」

「ッ!?」

 苗木の聴覚が、そう遠くない所で微かに聞こえた『呻き声』を聞き取った。

 

「どうしたの?」

「…今、誰か…『子供』のような声がした。しかもかなり弱っている…!」

「子供?」

「そう遠くない…『G・E・R』!」

 すぐさまスタンドを呼び出し、辺り一帯の『生命エネルギー』を探知する。

 

「…そこだ!すぐ近くに居る!」

「お、おいジョジョ!?」

 駆け出していった苗木の後を戦刃たちが追いかける。やがて苗木は街中にあった『ゴミステーション』の一つの前にやってきた。

 

「この中か…おい、大丈夫か…」

 呼びかけながら苗木が箱の蓋を開けると…

 

「う、うが…」

「い、痛い…よぉ…」

「どうして…なんで、僕が…」

 その中には傷つき呻き苦しむ大門、蛇太郎、新月の3人が放り込まれていた。

 

「…ッ!?この子たちは…」

「どうし…ッ!?この子たち…もしかして…!」

「…知り合いなのか?」

「…ああ。けどまずは治してあげないと…」

 中の3人を丁重に出してあげると、苗木はすぐさま彼らの傷をいやす。

 

シュゥゥゥ…

「…よし、これで大丈夫だ」

「…んん?」

 痛みが無くなったのを感じてか、彼らがゆっくりと目を覚ます。

 

「あれ、痛く…ない…?」

「…大丈夫かい?」

「え…?」

 頭上からかけられた声に半開きの目のまま大門が顔を上げると

 

「…ッ!?お、オトナ…ッ!」

「え?」

 

ザクッ!

「ッ!」

 苗木達の顔を見るなり、条件反射のように手元にあったガラス片を苗木の腕に突き刺した。

 

「ジョジョ!?」

「誠君!」

「…痛つつ…」

「オトナ…オトナッ…!オトナは…嫌だぁ…!」

「ひぎぃぃぃ…!こ、来ないでよぉ!」

「やめろ…もう、嫌だ…!オトナなんて…もうこりごりだ…ッ!」

 大門だけでなく蛇太郎や新月ももう『敵意』よりも『恐怖』の方が勝ってしまっているのか、それ以上攻撃しようとせず3人揃って腰が引けたまま怯えている。

 

「テメエらッ!助けて貰っといてなにしやがるッ!?」

「ひぃッ!?」

「…やめろアナスイ」

「けどよ…!」

「いいんだ。…彼らは、僕に任せてくれ」

「…うん、お願い」

 激昂するアナスイらを収め、苗木は優しい笑みを浮かべてゆっくりと彼らに歩み寄る。

 

「く、来るな…来ないでよぉ…!」

「…大丈夫だ、『大門君』。僕は君たちを傷つけたりはしないよ」

「…え?」

 いきなり自分の名を呼ばれ、大門は思わず目を丸くする。

 

「なんで、俺の名前を…?」

「知ってるさ、大門大君。…それに、煙蛇太郎くんに新月渚君…だろう?」

「ぼ、僕チンの名前まで…?」

「お前は……あれ?その声…それにその顔、金髪…どこか、で…?」

 驚きで冷静さを取り戻した新月の記憶の片隅から、かつて聞いた同じ声の記憶がゆっくりと蘇ってくる。

 

 

 

『…そういう訳だからさ、ちょっと手を貸してくんない?苗木』

『それが拉致の片棒担がせようとする頼み方かい?…ま、彼らの事情は理解したよ。確かに、放っておけないよね…!』

 

『…全く、呑気な寝顔だよね。どこへ連れて行かれるのかもわかってないくせにさ…』

『別にいいんじゃないか?…少なくとも、今迄よりはマシであって欲しいからね』

 

『おー!こんな山奥にこんな小洒落たコテージなんてイカスじゃん!どしたのコレ?』

『大和田君にお願いしたんだ。どうせ表沙汰にできないことなんだから、練習代わりにってリフォームしてもらったんだ。…けどもう大和田君十分この道で喰っていけるよね?』

 

『…いいかい皆。嘘を吐くのが全部悪いこととは言わない。でも、『自分に嘘を吐く』ことだけはしちゃいけないよ。どんなに苦しくても、『自分が本当に正しいと思う道』を歩いて行けば、きっと未来が開ける。どんな事が有っても、諦めてはいけないよ』

 

『…大丈夫さ。きっとまた会える。その時に、君たちがもっと『成長』した姿を見られることを、僕は信じているよ…』

 

 

 

「…まさか、まさか…貴方は…」

「え?」

「し、新月君?」

 目を見開き立ち上がった新月に大門と蛇太郎は怪訝な表情をするが、そんなことなど気にも留めない新月の目には、目の前の青年とあの時『ジュンコお姉ちゃん』と一緒に居た少年の顔が、確かに被って見えていた。

 

「あの時、ジュンコお姉ちゃんと一緒に僕らを助けてくれた…『お兄さん』?」

「…立派になったね、新月君。…本当は、こんな形で逢いたくは無かったけどね…」

 




早めに絶女篇を終わらせねば…。
半端に手を付けた話が多すぎて片っ端から片付けないと2部に移れん…。
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