ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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久しぶりに番外編の投稿です
…決して絶対絶望少女に手間取って本編が進んでいないわけではありませんよ!







…なんだよ新月君、後半からジェノ当たんねえとか面倒すぎるだろjk。直火焼きしようにも途中でエラー起きてゲーム止まっちゃうし…そんな中でもネタは思いつくし…第二部が書けねーよ!


杜王町へようこそ!~出発編~

「次の授業なんだっけ?」

「確か生物学でしたな。『超高校級の植物学者』の色葉田田田(しきばさんた)殿の講義を聴くことになってますが」

「…生徒が生徒に教えるってよく考えりゃやっぱおかしいよな」

「まあ、色葉さんの知識はその辺の学者より凄いから適任と言えば適任だけどね」

「え?苗木その色葉って人知ってるの?」

「うん。僕の能力のことをどこかからか聞きつけたみたいで前に質問攻めにあってさ、大変だったよ…」 

「学者というのはなかなか難儀な性格の持ち主が多いと聞く。災難であったな苗木よ…」

あれからというもの、苗木の本心に触れたことで認識が改まったのかクラスの皆からの対応も軟化し、苗木はとりあえず普通の学生生活を送ることができていた。

 

そんなある日の事

 

♪~♪♪~

「…あれ、苗木携帯鳴ってるよ?」

「あ、ホントだ」

 朝日奈に言われて苗木はポケットから着信音の鳴る携帯を取り出す。

 

「ん?お前ケータイ機種変したのか?」

「いや、これは僕のじゃなくてちょっと預かってるものなんだ…(ピッ)もしもし……あ、承太郎さん、ご無沙汰してます。………週末ですか?まあ空いてますけど。……杜王町に?またどうして……ああ、仗助さんたちとですか」

「…ッ!仗助…だと!?」

「?大和田君どうしたの?」

「…いや、なんでもねえよ」

 仗助という名を聞いた途端大和田がなにやら焦ったような様子となるが、苗木の会話は続く。

 

「…確かに一度挨拶しといたほうがいいですね。虹村さんのお父さんの件もありますし。……ええ、じゃあ週末東京駅からそっちに……あ、そうですか、すみませんわざわざ。……はい、ではまた後日…(ピッ)」

 通話が終わるなり、大和田が苗木の傍にやって来た。

 

「おい苗木、お前…仗助さんと知り合いなのか?」

「え?…んー、なんていうか、直接面識はないんだけど…関係としては親戚、かな?」

「そ、そうか…会ったことは無いんだな。…悪かったな、変なこと聞いてよ」

「別にいいけど…、なにか要件でも?」

「い、いやなんでもねえんだ…」

 実際の関係としてはもう少し複雑なのだが説明するのも面倒なので適当にごまかした苗木に対し、大和田はなにやら気まずそうな様子で話を終えると席に戻っていった。皆も気になってはいたが、いつもよりどこか小さく見える大和田の姿に聞くことを憚られ、とりあえず言及しないことにした。

 

「…で、なんだったんだよ今の電話?」

「えっと、さっきの相手はこの間話した承太郎さんでね、承太郎さんの知り合いたちと僕の顔合わせをやっておきたいから杜王町まで来てくれないか…だって」

「?…何故わざわざ知り合いとの顔合わせの場を設ける必要があるのだ?別に全員が親戚という訳ではないのであろう?」

「…確かにそうなんだけどね、実はその人たちってほぼ全員がスタンド使いなんだよ」

「…マジで?ちなみに何人ぐらい?」

「確か…14~5人ぐらいって言ってたかな?」

「多ッ!何?その町スタンド使いの量産でもしてんの?」

「よくは聞いてないんだけど、以前スタンド能力がらみの事件があってそれが原因で物凄く増えたんだって…そういう訳だから、週末は学校に外出届出さないとな…」

「ふ~ん…で、その杜王町ってどこよ?」

「?M県のS市にあるんだけど…それがどうかしたの?」

「よっしゃ!じゃあ土産は牛タンで頼むな!」

「……えっ?」

「あ、じゃあ私もー!」

「俺は笹かまで頼むべ!あれで一杯やるとうめぇんだべ!」

「こらこら君たち、あまり無理を言ってはいけないぞ。…ちなみに苗木君、僕の父がずんだ餅が好きでね…」

「み、みんな…、ハァ…やれやれだね」

「………(週末…開けとかないと)」

「………(杜王町…ね)」

 いつの間にかお土産購入が決定していることに嘆息する苗木の背中を二つの視線が見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 週末、苗木は東京駅のホームにいた。その恰好は普段の制服姿ではなく、胸元がパックリ開いた少し派手なシャツを着こみ、黒のパンツと靴を履き背中に矢じりの模様を持ったテントウムシが描かれたフードつきのどことなくパーカーっぽい黒のロングコート、苗木がパッショーネのボスとなった記念に作ってもらった『ボスの証』であるそれを羽織っていた。その姿は、金髪金眼の苗木の容姿に実に映えており実際かなり目立っていたものの、その存在感故に誰もが視線はむけても声をかけることは憚られていた。

 

(…やっぱり少し派手だったかな?)

 時折黄色い声の混ざった奇異の視線を受けて少し恥ずかしがりながらも、苗木はホームの中を歩いて行った。すれ違う人たちは苗木の方を思わず見て、なんだかすごい奴だなぁ、と思いながら正面に向き直り……ふと目に入った柱の影から彼を伺う怪しい人物に視線を向けていった。

 

「……」

 ホームの柱の影からそっと苗木を見ているのは、長い髪をポニーで纏めピンクのベストとクリーム色のスカートという特別変わった風でもない服装に対し、ニット帽とサングラスで顔を隠したいかにも怪しい風貌の少女であった。顔の半分が隠れているため表情などはイマイチ分からないものの、サングラス越しに感じる強烈な視線は確かに苗木に向けられていた。

 

 と、そこで突如苗木の歩みが止まる。そして振り返ったかと思うと少女の隠れている柱の方に向かって迷いなく歩み寄り、柱の反対側で素知らぬ顔をしている少女に告げる。

 

「…舞園さん、なにしてるのさ…?」

(ビクッ!)「…な、なんのことですかぁ?私は舞園さやかなんかじゃあないですよぉ?」

「いやいや、いくら変装しても僕は生命エネルギーで分かるから…それに、僕は『舞園さん』って言っただけで『舞園さやか』だとは一言も言っていないんだけど?」

「………ううううう~っ!苗木君のイジワルッ!」

「ハハハ、ごめんごめん。…まあそれは良いとして早いとこその帽子とサングラス外したら?そんな格好してると警備員呼ばれちゃうよ?」

「む~、結構うまく変装できたと思ったんですけど…」

 ぶつぶつと文句を言いながら少女、舞園さやかは帽子を脱ぎサングラスを外すと、肩にかけたポーチから太いフレームのビン底眼鏡を取り出しかけ直す。どうやらこちらは普段のカムフラージュ用の物らしく度は入っていないようだ。

 

「…で、なんでここに居るの舞園さん?その様子からして仕事じゃあなさそうだしプライベートであんな変装をする必要はないと思うんだけど」

「えっとですね…笑わないで聞いてくれます?」

「?もちろんだけど…」

 舞園は一旦深呼吸し、真剣な面持ちとなってその理由を話し出す。

 

「…私、苗木君のことをもっと知りたいんです。私が知っている苗木君と今の苗木君には、変わったものも変わらないものもあるということは分かりました。でも、どうして苗木君がそういうことになったのかを私は何にも知らないんです。そんなのは私は嫌なんです。苗木君の事をもっと知りたい。苗木君がどうしてそんなに強くいられるのかを知りたい。…だから、学校だけじゃなくて、もっといろんな苗木君のことを見てみたくなったんです。…迷惑かもしれませんけど、私は知らないままではいたくないんです。クラスメートとして、友達として………だからついて行ってみたいんですけれど、駄目でしょうか?」

 真剣な眼差しで想いを告げる舞園を苗木はまっすぐ見据え、やがて困ったような表情で頬を掻きながら言う。

 

「…舞園さん、思っていたより好奇心旺盛っていうかミーハーっていうか…少し印象が変わったよ」

「…幻滅しましたか?」

「いいや、だから気に入った。…どうせ切符買っちゃったんでしょ?いいよ、一緒に行こうか」

「…ッ!はいっ!」

「…っとその前に…」

 元気よく返事をした舞園に笑顔を浮かべると、苗木は思い出したかのように向かいの柱の方を向いて言う。

 

「霧切さーん?良かったら霧切さんも一緒にどう?」

「…へ?」

 思いがけない人物の名が出てきたことに舞園が思わずその柱の方を凝視すると、柱の影からムスッとした表情の霧切響子が現れた。

 

「ふええええっ!?き、霧切さん!?」

「…いつから気づいて…って」

「まあ、最初からだね」

「…でしょうね」

「な、なな、なんで霧切さんがここにいるんですかぁ!?」

「…あなたと同じよ舞園さん。私も彼に興味があるの。知らないままでいたくない。ただそれだけの事よ」

「…む~」

「まあまあ…、ほら、このまま立ち話もなんだから早いとこ電車に…」

 と、口論になりかけている二人を宥めて行こうとした時

 

「…苗木誠様ですね?」

「ん?」

 ふと自分の名を呼ぶ声の方向を見ると、そこには見知らぬ一人の男が立っていた。

 

「…あなたは?」

「失礼、私はSPW財団の者です。ジョセフ・ジョースター様と空条承太郎様のご指示で苗木誠様を杜王町までご案内するよう参りました」

「あ、それはどうも…!」

「こちらです、ついてきてください。…それで、そちらのお二人は…?」

「あ、彼女たちも一緒に連れて行きたいんだけど…いいですか?」

「構いませんよ、ではこちらに」

「はい。…じゃあ舞園さん、霧切さん、行こうか」

「あ、はいっ!」

「…ええ」

 財団の職員に誘導され、三人はホームの中を歩いていく。

 

「…でもご迷惑じゃないですか?私たちが急についてきたりなんかして…一応切符はありますけど座席とか空いてないんじゃ…」

「おや?もうすでに切符を購入なさっていたのですか?でしたら後で財団に切符代を請求してください。後日切符代を返金致しますので…」

「そ、そんな悪いですよ!」

「いえいえ、その程度問題ありませんよ。それに、座席に関してはご心配の必要はないと思います」

「…何故?週末の新幹線なんてどこも一杯でしょう?」

「まあそうなのですがご心配なく、既に準備はできています」

 と、職員はホームに停まっている新幹線のある車両の前で止まる。

 

「こちらです、さあどうぞご乗車ください」

「これは…!」

「ええええ!?」

「これはまた…無駄に準備が良すぎるんだから…」

 職員が示した車両にはこう書かれていた。

 

 

『SPW財団専用車両』と…

 

 

 

 

 

 

ゴトンゴトン…

 車両内に新幹線が走る音が響く。普段なら全く気にしないようなこんな音が嫌に目立つのは、優に50人以上を収容できるはずの車両内に苗木達3人しかいないことが関係ないことはないだろう。

 

「…まさか新幹線を一両貸し切るとは思っていなかったわ。流石天下のSPW財団といったところかしら…」

「うわあ~、私こんなガラガラの新幹線に乗るの初めてですよ~!」

「…まったく、承太郎さんもこんなことにお金かけなくたっていいのに…」

 向かい合って座る苗木達は手回しの良すぎるSPW財団に対しそんなことを言い合う。後で聞いたのだが、この車両はなにかと飛行機のフライト運に恵まれないジョセフが国内を行き来する時の為に財団の目黒支部が管理している物らしい。ちなみに先ほどの職員は他の人が出入りすることが無いよう車両の連結部にある職員室で待機している。

 

「杜王町、か…」

 と、話の話題が無くなりかけた所で苗木がぽつりと呟く。

 

「…どうしたんですか苗木君?」

「いや、なんでもないよ…」

「…もしかしてこの間の狛枝さんの話のこと?」

「…まあね」

 苗木は先日の狛枝が引き起こした騒動の後にあった話の事を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

「…それじゃあ話してもらうぞ狛枝。何故こんなことになったのかを…」

 散々にぼろぼろになった教室の後始末を学園に任せ、現場にいた皆は学園の空き教室の一室で狛枝から事情を聞いていた。

 

「…うん、そうだね」

 それに応じた狛枝は昨晩にあった出来事の事を皆に打ち明けた。

 

「…なるほど、話からするにそのローブの奴が吸血鬼で間違いなさそうだな」

「つーかまた『ホワイトスネイク』か…、吸血鬼まで囲っているとか何モンだよそいつ…」

「…しかし狛枝先輩、その話の事は分かったが何故狛枝先輩がスタンドを所持しているのですかな?」

「もしかして苗木君の言っていた『矢』に刺されたのかしら?」

「いや、それとは違うよ。…僕がこの『キラークイーン』を手に入れたのは…多分2年ほど前の事だったかな?あの日僕は希望ヶ峰学園への入学が決まっていて特にすることもなかったから一人で旅行をしていたんだ。それでM県にある杜王町っていうちいさな町に行ったときのことなんだけどね…」

「ふんふん?」

「ちょうど喉が渇いてコンビニの『オーソン』に立ち寄った時の事なんだけど、ふと気になってコンビニの隣にある小道にふらっと迷い込んだんだ。…そしたら、急に変な道に出たんだよ」

「変な道ぃ?」

「変っていうか…ちゃんと家もあったし小鳥も飛んでたりしたんだけど、妙に生活感が無いっていうか…そういう生き物も存在が希薄というか生きてる感じがしなくて、まるで剥製が動いているみたいだったんだ。…それでしばらく見て回ってたんだけど、気味が悪くなって引き返そうと振り返ったんだ。そしたら…」

「ゴクリ…」

 

 

「…急に暗くなったかと思うと暗闇から無数の手が出てきて僕を引きずり込もうとしてきたんだ…ッ!」

「ひええええええッ!?な、なんすかそれぇ!?お化け!?呪い!?」

「さあ?…で、僕もヤバいと思って逃げようとしたんだけど物凄い力で引っ張られるからどうしようもなくってさ、で、どんどん気が遠くなってもう諦めかけてたんだけど…その時声が聞こえたんだ」

「声…?」

「うん、『もうこの道に来る人が増えてはいけない』って…、そこで気を失ったんだけど、目が覚めたらその小道の入り口で倒れてたんだ。…それからだいぶ経ってから、あの『狐』の事件のあとのことだったかな。この『キラークイーン』の存在を認識できるようになったのはね」

「…まあ十中八九その小道とやらが原因だよなぁ、タイミング的にも…」

「それでね、あとで聞いたんだけど、あの小道って杜王町の名所の一つの『振り返ってはいけない小道』っていう奴だったんだって」

「ハァ?んだそりゃ?」

「なんでも杜王町で今までに死んだ人たちが行きつく場所らしくて、その小道に迷い込んだら絶対に振り返ってはいけないらしく、もし振り返ったら恐ろしい『なにか』に引きずり込まれてしまうらしいんだ。実際、僕がそこで助かったって聞いてその人すごく驚いてたから多分本当だと思う」

「…だが何故その小道とやらに迷い込んだらスタンドが手に入ったのだ?…おい苗木、貴様はどう考えている?」

「…うん、僕も良くは分からないけれど、多分狛枝君のスタンドは以前その小道で引き込まれたスタンド使いの人のものかもしれないね」

「…どういうこと?」

「僕も実際見ていた訳じゃあないから何とも言えないんだけど、おそらく過去にその小道に引きずり込まれた人の魂の一部みたいなものがそこに残ってて、それが狛枝君が引きずり込まれた拍子に入り込んでスタンドという形を成したんじゃあないか、と思うんだけど…」

「…成程ね、確かに突拍子もない考えだけど、だとしたらあいつの言葉にも納得がいく」

「あいつって…?」

「『ホワイトスネイク』さ、あいつ僕の事を『殺人鬼』の魂を内包した、て言ってたから、多分そう言うことなんじゃあないかって思うよ」

「さ、殺人鬼ぃ!?」

「…聞き覚えが無いわね、爆発を操る殺人鬼なんて…」

「あれほどの爆発を起こせるようなスタンドを持っていた奴だ、証拠なんぞ残らんだろう。大方行方不明扱いにでもなってるんじゃあないか?」

「…とりあえず、その件に関しては知り合いに杜王町の出身の人がいるからその人からも色々と聞いてみるよ」

「……で、次は…」

「…私かな?」

 狛枝の話が一通り落ち着いたところで、次に事情を話す必要のある七海が自信を示す。

 

「七海よ、とりあえずお前はいつそいつを手に入れたんじゃあ?お前さんがそんな奇怪な目に遭ったとは考えられんのじゃが…」

 弐大が七海の後ろで控える『ハイエロファント』を指差す。

 

「お前ゲーマーだから基本部屋に引き篭もってばっかだもんなあ…」

「ちょっと、流石に失礼よ!親しき仲にも礼儀あり、よ!!」

「そうっすよ!千秋ちゃんだって創ちゃんとのデートの時ぐらいは外に出歩いてるっすよッ!」

「ええ!?お二人ってそうだったんですか!?」

「い、今はどうでもいいだろそんな事!それより七海、教えてくれ!お前いつからスタンド使いになったんだよッ!?」

「ん~~~~…………………いつからだっけ?」

(ズルッ)「お、お前なあ…こんなときぐらいさっきみたいにしゃきっとしてくれよ…」

「…もしかして、あれが七海先輩の素なんですか?」

「ああ…、さっきみたいな七海なんて俺たち初めて見たぜ。むしろ今のが平常運転だよ」

「まあ、あれで意外と抜けてはいないんだがな…」

 ぽやんとしたいつもの七海に戻ったことで、皆の緊張感が一気に無くなっていった。

 

「…あーそうだ、去年行った自然体験学習憶えてるー?」

「うん?…それってあのクソ暑いアリゾナの砂漠に連れてかれたアレだよな?」

「…あれ?でもその時七海さんって迷子になったんじゃあなかったけ?」

「あ、そうだよ!確か見学時間中に迷子になっちゃって、結局しばらくしたら帰って来たけど…もしかしてその時に?」

「うん、気が付いたらなんか変なところにいてね、声みたいなのが聞こえたと思ったら後ろに『ハイエロファント』が居てね、…そういうことなんだ」

「いやいやいやいや、全っ然分かんねえから!?」

「…と、とりあえず七海はアリゾナの砂漠でそいつを手に入れたってことでいいんだな?」

「うん、そう…だと思うよ?」

「なんで疑問形なんだよ…お前のことだろ」

「アリゾナ…そんなところにスタンドにまつわる物…っていうかこの場合は場所か、…があるなんて知らなかったな…」

「…けれど、アタシなんか分かる気がするかも」

「へ?なんで?小泉おねえ」

「アタシ、アリゾナとかのネイティブアメリカンな雰囲気とか好きだからさ、向こうにいた時にいろいろ話聞いてたんだけど、あっちのインディアンの人たちって魂とか精霊とかそういうものへの信仰がすごく厚いんだよね。だからさ、スタンドみたいな不思議なパワーが関係する場所みたいなのがあっても不思議じゃあないんじゃないかな…って思うのよ」

『…なるほど、僕の魂があの場所に留まっていられたのはそういうことでもあるのかもしれないな』

 と、そこで今まで黙っていた『ハイエロファント』が口を開く。

 

「…どういうこと?」

「あ?どうしたんだ?」

「えっとね…」

『私が直接話そう。七海、何かパソコンのようなものは無いだろうか?なければせめて紙とペンがあるといいのだが…』

「…えーと、誰かパソコンか書けるもの持ってない?」

「あ…、僕のノートパソコンでよければ…」

 そう言って不二咲は常日頃持ち歩いている左右田謹製のポケットサイズのノートパソコンを差し出した。

 

「ん、ありがと。『ハイエロファント』、これでいい?」

『ええ、ありがとう。…しかし、これがパソコンとはな…時代は変わったものだ』

 七海からパソコンを受け取ると、『ハイエロファント』は手ごろな机を一つ引っ張ってきてそこに置き、自らキーを打って文字を打ち込んでく。

 

『皆さん、画面の文字が見えてますか?』

「ッ!キーが勝手に…」

「これがスタンドか…」

『見えているようですのでこのまま続けます。皆には、私が何故肉の芽の事を知っていたのかを説明するために、私の過去の事を知ってもらいたい』

「『ハイエロファント』の過去…?」

「?七海、お前知ってんじゃあねーのか?」

「ううん、訊いたことないよ…」

『まず最初に私こと『法王の緑』は今でこそ七海千秋のスタンドであるが、実は私は元々人間だったのです』

「人間っ…!?」

「ま、マジかよ…」

『私の生前の名は花京院典明、名前の通り日本人でした。そして私の持つスタンドの名は『法王の緑』…そう、このスタンドは元々私自身のスタンドだったのです』

「…っつーことは、アンタは元々スタンド使いだったけど、いつの間にかアンタがそのスタンドになっちまったってことか!?」

『端的に言えば、そういうことになりますね』

「け、けどなんだってそんなことに…」

『…私は生まれつきのスタンド使いでした。そのせいか、周りにいる同年代の子供とは違ったものを見るようになってしまい、孤立しがちな日々を送っていました。…そして私が高校生の頃、家族でエジプトを旅行していた時の事でした。私はそこで、ある吸血鬼に肉の芽を植え付けられ、奴の従順な僕にされてしまったのです。』

「あんたが肉の芽にやられたっていうのはその時か…!」

「…ちょっと待てよ、エジプトの吸血鬼だって…!?」

「…『ハイエロファント』…いや花京院さん、その吸血鬼の名前ってもしかして…」

『察しの通りだ。その吸血鬼の名はDIO。…苗木君、君の父親だ』

「「「ッ!?」」」

「………」

 話の流れから大体の予想がついていたとはいえ、自分の父親の直接の被害者であったことに苗木は申し訳ないような表情となる。

 

『気にしないでください苗木。確かに君の父親には散々な目に遭わされましたが、息子である君を恨んだところでどうしようもないことですから』

「…なんか…ホントにすいません」

『話を戻しましょう。肉の芽にやられた私でしたが、先ほど言ったとおり私はあるスタンド使いによってさっきのように助けられました。そして、その男はDIOを倒すことを目的としていたため、私もそれに同行させてもらい共にDIOを倒すための旅に出たのです』

「…それって、承太郎さんのことですよね?」

(ッ!!)『まさか、君は承太郎のことを知っているのか?』

「ええ、以前会ったことがありますから…」

「承太郎?誰だそいつ?」

「フンッ、無知なる者は哀れなものだ」

「あ?お前知ってんのかよ田中?」

「当然だ!承太郎、真名を空条承太郎!深き海(アビス)に潜みし悪鬼羅刹たちの凡てを知り尽くし、特に死の運命をもたらす星の怪魔どもに対するその英知はこの俺すらも凌駕するまさに海の大王、ポセイドンの名を冠するにふさわしい益荒男だ!」

「…えーと、その承太郎という人は海の生き物に関する学者さんらしくて、とくにヒトデに関しては田中さんよりも詳しいという人みたいです」

「…もうすっかりソニアさんが田中翻訳機になっちまってやがるな」

「それだけじゃあない、承太郎さんはSPW財団に所属しているスタンド使いで、現在確認されているスタンド使いの中でも最強と言われている人だよ。一応、僕の親戚だから面識があるんだ」

「…苗木誠殿の人間関係はどうなっているのですかな?」

「意外と金づる…じゃなかった、なかなかの著名人の人が揃ってそうですわね」

「…聞かなかったことにするよセレスさん」

『…続けよう、私はその承太郎と仲間たちと共に日本からエジプトへの道のりを、何人ものスタンド使いの刺客たちと闘いながら歩み、遂にDIOとの決戦を迎えるときになった。我々は必ず勝つと思っていた。そういう意気込みで挑んだのは確かであるし、いくら吸血鬼が相手と言えど太陽が出ているうちならば闘いようはあると考えていた。…しかし、我々は知らなかったのだ。DIOのスタンド、『世界(ザ・ワールド)』の恐ろしさを…』

「『ザ・ワールド』…」

「…ちなみに、どんな能力だったのですかな?」

『『ザ・ワールド』…その能力は、「時を止める」というものだった』

「……はい?」

「と、時を止めるってそんな…あれでしょ?それぐらいの超スピードってことでしょ?」

『比喩でも誇張でもなんでもない!奴のスタンドは確かに、確実に時を止められたのだ!そしてその中で、奴だけが自由に動くことができたのだッ!』

「…その話は本当だよ。実際、承太郎さんのスタンド『スタープラチナ』も原理は違うけれど同じように時を止めることができる。この目で見たから間違いないよ」

「マジか…」

『…なるほど、承太郎はそうやってDIOを倒したのか』

「え?あんた知らなかったのか?」

『…私はその時に立ち会えなかった。何故なら…それより以前に私は既にDIOに殺されていたのだからな』

「…えっ?」

『私はあの時、DIOに対して最大最強の技をもって挑んだ。…だが、奴のスタンドの前には児戯に等しいものだったのだろう。あっさりとすべての攻撃を躱され…私は無様にやられたのだ』

「そんな…」

「……」

『気にしないでくれ苗木君。君が責任を感じても詮無きことだ。…思えばあの時、私は精一杯の事をしたつもりだったが、私の心のどこかに強い後悔の念のようなものが残っていたのだろう。それが海を越え、アリゾナに呼び寄せられ形を成したものが私なのだろう。いわばこの『法王の緑』の意志は、花京院典明という男の残留思念といったものなのだろうな…。フフ、もしかしたら、私のように無念の感情がそのまま自我となったスタンドが他にもいるかもしれないな…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 走馬灯のように思い出した回想を終え、苗木はフゥと息をつく。

「…『振り返ってはいけない小道』に『アリゾナ砂漠』か…」

「狛枝さんの話にしろ七海さんと花京院さんの話にしろ、放置しておけるような問題ではないわ」

「これからも同じようなケースでスタンド使いが増えるかもしれない…ってことですよね?」

「うん…。『矢』という前例がある以上どちらもノーリスクとは考えられないけれど、それでもその危険がある以上承太郎さんに教えない訳にはいかないからね」

「ある意味、都合がよかった…と考えるべきね、今回の集まりは…」

「……まあまあ、折角の旅行なんですから、難しいこともありますけどまずは楽しみましょうよ!」

「…そうだね、向こうの知り合いの話によると物凄くおいしいイタリア料理のお店もあるっていう話しだし、しっかり楽しむとしようか」

「へえ!花村さんとどっちがおいしいんでしょうね?」

「……フッ」

「あ、今霧切さん笑いましたよ!」

「へ?」

「…笑ってないわ」

「いやいや!今確かに笑って…」

「わ・ら・って・ない…ッ!」

「…アッハイ」

「…フフッ」

 

ピンポンパンポーン

『え~…まもなく、S駅~、S駅~』

「……苗木様、舞園様、霧切様、この駅で乗り換えになりますのでご準備ください」

「「「はい」」」

 様々な思いが渦巻く中、苗木達は杜王町へと近づいていった。

 

 

 

 

 

かつて『キラークイーン』と『矢』によって悲劇が引き起こされた、その町へと。

 




今回ここまで
という訳で狛枝はなんちゃって定助、七海は悪魔の手のひらルートによるスタンドの取得でした
原作では悪魔の手のひらは新世界限定な感じもしましたが、この作品では一巡前にもあるということで行きます
本編メインだから杜王町編がだいぶ間が空くかもしれない…
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