ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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ダンガンロンパ霧切5巻読んだよ!
まさかあの子が敵に回るとはねえ…霧切はともかく結お姉さまが足元掬われそうで怖い。そしてあの爺さんと鉄面皮…なんか仲良さげな感じでしたね。元師匠と弟子とか?あの分だと学園長とも浅からぬ何かがありそうな予感…

というかホントに番外編も進めなきゃ…スイッチとモンハンが悪いよ~(擦りつけ)


交錯編:真相

「…う…」

 微かな寝苦しさを憶えながら、宗方は目を覚ました。辺りを見渡せば、そこはそこかしこに武器や何かの機会の様なものが陳列された部屋であった。

 

「…そうか、俺は開発室で…」

 宗方らはタイムリミットが訪れる少し前に目的の『開発室』に到着し、モニターに映る安藤らの諍いや天願達の危機を横目に中を物色し、お目当ての『武器』を見つけたと同時にタイムリミットを迎え、そのまま眠りに就いてしまったのである。

 ふと視線を移せば、そこには自分を手伝っていた逆蔵が未だに眠っていた。

 

「……」

 宗方は眠っている逆蔵に歩み寄ると、無言のまま手にしていた刀を鞘から抜き、その刃先を無防備な心臓へと突き立て、そのまま…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 …しかし、それを実行しようとした宗方はふと何かを考えるように思い留まり、やがて静かに刀を納める。

 

「…う…あ…?」

 その直後、うめき声を上げながら逆蔵が目を覚ました。

 

「…起きたか」

「む、宗像!?…あ、そうか。俺はタイムリミットで…クソッ!」

「……」

「…けど、お互い無事で良かったぜ。それにしても…さっきの『停電』はなんだったんだ?本部の照明だけじゃなくモニターやあの薄気味悪いモノクマまで動きを止めてやがったが…」

「…どうやら、何者かが『動力室』の電源を切ったようだ。非常灯が灯っているからな…。おそらく、奴らの『策』が成功したのだろう」

 宗方の言うとおり、開発室や廊下には電源が落ちた時に備えての『非常灯』が赤い輝きを放っていた。

 

「…チッ、まんまと奴らの思い通りって訳かよ。気に入らねーが…ま、これでこんなクソ茶番も終わりってことか。釈然とはしねーがな…」

 

 

「…いや、『まだ』だ」

「あ…?」

 宗方はそう言うと逆蔵から離れ、先ほど見つけた『探していたもの』を手にする。

 

「まだだ。まだ俺には…『やらなければならないこと』がある。例えこのコロシアイが終わったとしても、それを果たさずして、俺は…!」

「…む、宗方?まだ、って…何があるっていうんだよ?」

「…逆蔵、一つ頼まれてくれ。今はお前だけが頼りだ…」

「…!ああ、なんでも言ってくれ…!」

 淀んだ瞳に『決意』の炎を微かに燃やし、宗方は己の『使命』を果たすべく行動を始めた。

 

 

 

 

 一方その頃、本部の外では…

 

「………」

『………』

「…なあ、アレなんだと思うべ?」

『オレニ聞クンジャアネーヨ…。オメーガ分カラネーモンオレガ知ルワケネーダロ』

「だよなー…」

 岩場に身を隠しながら、葉隠と『ドラゴンズ・D』は視線の先のもの…先ほど海のかなたからやってきて、現在は本部の港に停泊された『十三支部の輸送船』を観察していた。

 停泊してからかれこれ1時間近く経っているにも関わらず、船からは乗務員は誰一人として姿を見せず、それどころか人の気配すらもまったく感じられなかった。

 

「…やっぱおかしいよなあ。こんだけ待ってんのに人っ子一人出てこねーとか…。様子、見に行くべき……いやいやいや!俺にはここで十神っち達を待つっていう任務があるべ!それに苗木っちにも『怪しいものにむやみに近づくな』って言われてるし…」

 

 

バババババババ…!

「…ん?」

 上空から聞き覚えのある微かな音が聞こえて来るのに空を仰ぐと、海の向こうから『黒い物体』がこちらに近づいてきていた。

 

「おおッ!アレは…!」

 

バババババババッ…!

 プロペラ音を響かせながら猛スピードで本部へとやって来たのは、未来機関の『ヘリコプター』。それに乗っているであろう人物に、葉隠は待ちくたびれたとばかりに顔を輝かせる。

 

ブオオオオ…ッ!

…ガラッ

 やがて葉隠の真上にまでやって来ると、ヘリの扉が開かれ、そこから葉隠の期待通りの人物が姿を見せる。

 

「…待たせたな。どうやら、まだくたばっていなかったようだな…!」

「十神っちッ!!」

「気安く名前を呼ぶな!…フン」

 軽い皮肉を飛ばす十神を筆頭に、今杜王支部の助っ人たちが到着したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ちゃん…!響子ちゃん…!」

「…ん…?」

 自分を呼ぶ声と体を揺すられる感覚に、霧切は目を覚ました。

 

「…葵、さん…?」

「あ、響子ちゃん起きた?」

 起き抜けの霧切の顔を覗き込んだのは、先ほど窮地に陥っていた筈の朝日奈であった。その近くには、椅子に座りながら先ほどまで無かった筈の『右手』の調子を確かめる天願と壁にもたれかかったまま未だ眠る御手洗も居る。

 

「…おお。目が覚めたようじゃな、霧切君」

「天願さん…葵さんも…無事、だったのね。でも、どうしてここに…?」

「それが…誠が、皆に話したいことがあるって言うから…」

「誠君が…ッ!?そうだわ、誠君は…」

 ハッとなって霧切が辺りを見渡すと、苗木は眠ったままの舞園を抱きかかえていた。

 

「誠君…ッ!!」

「…おはよう。無事で良かった、響子…。けど、少し待ってくれ。まずはさやかを助ける…!」

 ちらりと振り返ってそう言うと、苗木は顔の半分が毒々しく変色した舞園を見つめ、やがて自分の顔を近づける。

 

「…待たせてごめん。今、助けるよ…!」

 そう言って、苗木は舞園に口づけをする。

 

プツッ…

 口づけと同時に、苗木は舞園の口に軽く傷をつけそこから自分の血液を流し込む。血液を通して流し込まれた『吸血鬼エキス』が舞園の体内の抑制状態にあった毒を全て除去し、同時に与えられた膨大な『生命エネルギー』が、毒によって死滅しかけていた細胞を正常な状態に生まれ変わらせる。時間にして数秒もしないうちに、舞園の体は元通りの状態に回復していた。

 

「……う、ん…?」

「…おはよう、さやか」

「誠…くん…?……ッ!?誠君…誠君ッ!!」

 やがて目を覚ました舞園は、すぐ目の前にあった苗木の顔に一瞬驚くが、それが本物だと分かると涙を滲ませ抱き着いた。苗木もそれに対し優しく抱擁し返す。

 

「…ごめん。何もできなくて…君を守ると、約束したのに…」

「いいんです…!でも、むくろちゃんが…私、何もできなくて…ッ!」

「……」

「……」

 間に合わなかった『家族』の存在に、霧切や朝日奈も表情を曇らせる。苗木も一瞬言葉に詰まるが、やがて舞園を抱きしめる力を強める。

 

「…うん、分かっている。むくろのことは、君の責任じゃあないよ。むくろが殺されそうになっても何もできなかった僕にも責任がある。…だから、自分のせいだと気に病まないでくれ」

「でも、でも…ッ!」

「分かっている…むくろのことには、きちんとケジメをつける。けれど、その前にやらなければならないことがある…!」

「やらなければならないこと…?」

「…勿論、このコロシアイを『終わらせること』だ。『襲撃者の正体』も含めてね…!」

「ッ!?」

 苗木の言葉に、皆が目を見開いて驚く。

 

「襲撃者の正体って…やっぱり誠知ってるの!?」

「ああ。…と言っても、スタンド自体は前から知っていたけど、『襲撃者そのもの』の正体は『さっき』知ったばかりだけどね」

「何…?」

 

「…そりゃ、随分興味深い話じゃねえの…」

「!」

 出入り口から聞こえた声に振り向くと、ゴズに肩を担がれた顔色の悪い黄桜が居た。

 

「黄桜さん…もう大丈夫なの!?」

「大丈夫…?」

「いや…心配かけて済まねえな。なんとか持ち直したよ…」

「全く…本当に肝を冷やしましたよ!」

 ゴズや朝日奈の意味深な言葉に、霧切は眉を顰める。

 

「…葵さん、それはどういう意味なの?黄桜さんに何かあったの?」

「あ…えっと、それは…」

「……」

「…言うべきでしょう。少なくとも、彼女にはその権利がある。…構いませんな、黄桜さん?」

「…ああ」

「…?」

 何やら言い辛そうな雰囲気に霧切が首を傾げていると、黄桜が自分のバングルを霧切に見えるように差し出す。…そのバングルは、万代や舞園と同じ、『NG行動違反』により常時字が表示された状態になっていた。

 

「それは…ッ!」

「…響子ちゃん、俺のNG行動は…『これ』なんだわ」

 黄桜のバングルには、こう表示されていた。

 

 

 

 

『霧切響子が生存した状態で4度目のタイムリミットを迎える』…と。

 

「これって…ッ!?まさか、さっきのが『4回目』の…」

「…ま、そういうことだ。済まねえな、黙っててよ…」

「私たちがこの部屋に来た時には、もう黄桜さんのバングルが起動してて…」

「私は皆さんより少し早く目が覚めたので、黄桜さんの異変にすぐに気が付いたのですが…私程度ではどうすることもできず、途方に暮れていたところに苗木君達が来てくれたので本当に助かりました…」

「…それで、真っ先に黄桜さんの解毒をしたんだ。なんとかギリギリ間に合ったんだけど、ちょっと後遺症と言うか毒が抜けきれなかったみたいで、吐き気があるみたいだったからさっきまでゴズさんに付き添ってもらっていたんだ」

 

「……」

 皆の説明をうわの空で聞きながら、霧切は黄桜をじっと見つめる。黄桜も、自分を見る霧切の眼に、『抑えきれないもの』を感じるとゴズから離れ霧切の前に立つ。

 

「…ふ、二人とも?どうしたの?」

「……」

 その様子に何かを察した苗木と天願、そして状況を飲み込めない朝日奈とゴズの前で

 

 

 

ゴンッ!!

「!?」

「~ッ!痛っつぁー…!」

「き、霧切さん!?」

 黄桜の頭に霧切の拳骨が振り下ろされた。

 

「…あなたがどういう状況だったのかは分かったし、NG行動を言わなかった理由も大体想像がつくわ。だからそれに関して、貴方を責めるつもりは無いわ。…私も、もし貴方と同じ状況にあったら、きっと同じように…黙っていた筈だから」

「……」

「…けど…」

 俯いたまま、霧切は黄桜を抱きしめる。

 

「けど…!それでも、黙って死んだりなんかしないで…ッ!勝手に居なくなったりなんかしないで……二度も『父親』を失うのは、私だって嫌よ…ッ!」

「…ごめんな、響子ちゃん…」

「…確かに、せめて事前になにかそれとなく伝えて欲しかったですよ。間に合ったから良かったものの、もう少し遅れてたら僕でもどうしようもなかったんですからね?」

「まったく…この男はこう見えて自分に無頓着だからいかん。少しは自分の立場を弁えて行動してほしいものじゃがの?」

「あ、はは…ホント、スンマセン」

 方々から責められ黄桜が肩身を狭くしていると、やがて万代や安藤達も目を覚まし出した。

 

「う、うん…なによ煩いわね……って、アンタら何時の間に…!?」

「あ、起きられましたね」

「ふあ……ッ!?ええッ、苗木君!?それに会長さんも……ま、舞園さん!」

「…どうも。お話は聞きました、私が眠っている間、万代さんにはお世話になってみたいで…」

「ぐ…ど、どうなっている…?」

「…それは、今からお話しします。…ちょうど、起きられたみたいですしね」

「え…?」

 

「…う、ううん…」

 と、そこでようやく御手洗が目を覚ました。

 

「お目覚めですね、御手洗さん」

「え……ッ!?な、苗木…君…?それに、皆も…」

「随分遅いお目覚めだったな御手洗君。君が最後だぜ」

「え…あ…、す、すみません…」

「ホント、一番ビビってたくせによくもグースカ寝れるもんだよね」

「る、るるちゃん…」

 

「…いえ、仕方ありませんよ。御手洗さんを『気絶』させたのはついさっきでしたから」

「……え?」

 苗木の口から出た言葉に、御手洗は元より皆が怪訝な表情になる。

 

「き、気絶…?どういうこと…?」

「言葉通りです。御手洗さんの目覚めが遅かったのは薬が効いていたからじゃあない。…皆が目覚める少し前に、僕が『気絶させた』からです。他に手が無かったわけじゃあないんですけど、あの状況で『奴』に必要以上の情報を与えたくなかったのでやむなく…」

「ちょ、ちょっと待ってよ!なんで僕が君に気絶させられなきゃならないんだよ!?」

 知らぬ間に渦中の存在となっていたことに困惑する御手洗の問いに、苗木は静かに、しかし冷え切った声音で答える。

 

「…そうしなければ、葵が『死んでいた』。今回のタイムリミットの『犠牲者』になってね…」

「…え?」

「それって…!?」

「ま、まさか…ッ!?」

「え…え…?ど、どういう意味だよ…?」

 その言葉からある『予感』を抱いてしまった者達、そして未だ理解しきれていない御手洗に、苗木は宣告する。

 

 

 

 

 

 

 

「単刀直入に言います。…御手洗さん、貴方が『襲撃者』の正体、そしてスタンド『デス13』の本体だ…!」

 

 

「…ッ!?」

 苗木の言葉に、一同は例外なく愕然となる。

 

「み、御手洗君が…」

「襲撃者…!?」

「ちょ…ちょっと待ってよッ!なんで僕が襲撃者になるんだよ!?そもそも、僕はスタンド能力なんか持ってないぞ!」

「…なら、これでどうでしょうか?」

 いきり立つ御手洗に、苗木は一歩歩み寄ると

 

「え…?」

 

 

ギュオンッ!

『無駄ァッ!!』

「ひ…うわぁッ!?」

 

ビタッ!!

 唐突に御手洗に殴り掛かった『G・E・R』の拳は、御手洗の鼻先で寸止めされ、一拍遅れてそのことに『気づいた』御手洗は驚いて尻餅をついてしまう。

 

「ッ!!」

「な…なにするんだよ!?危ないじゃないかッ!」

「それについては済みません。…ですが、これでハッキリしたみたいですね」

「え…?」

 ふと御手洗が周りを見渡すと、自分を見る皆の視線が先ほど以上に驚き…そして微かな『猜疑』に満ちていた。

 

「な、なんだよ…?なんでそんな目で見るんだよ…?」

「…御手洗君」

「天願さん…?」

「君には…『何が視えている』のかね?」

「何って…今僕の目の前に居るじゃあないですか!」

 御手洗は眼前の『G・E・R』を指差すが、天願等は怪訝そうに眉を顰め、霧切らは逆に増々眼光を強める。

 

「…霧切君」

「…はい。居ます、御手洗さんの前に…たった今殴り掛かろうとしていた『G・E・R』が」

「……そうか。では、『決まり』じゃな」

「な、何が決まりなんですか…?」

 

「…御手洗君、何故君に『スタンドが視えている』?スタンドが視えるのは『スタンド使いだけ』の筈なのに」

「え…!?」

 希望ヶ峰学園に居た頃は元より、未来機関に所属されてからもほぼずっと引き篭もっていたが故に知らなかったその事実に、御手洗は目を見開いて驚く。

 

「今君は、苗木君のスタンドに攻撃されそうになったことが分かって驚いた。…残念ながらワシはスタンド使いではないからほんの少し空気が揺らいだ程度のことしか分からんかった。増して君ではそのことにすら気づけんじゃろう。…だが、君は気づくどころか『自分がなにをされそうになったのか』も把握している。…それはつまり、君には『スタンドが視えている』ということに他ならん」

「そ、そんな…!で、でも…そうと決まった訳じゃ…」

 受け入れきれない御手洗は皆に同意を求めるが、皆の反応は一様に冷たい。

 

「…悪いけど、私には何も視えないよ。ていうか、何が起こってるのかもさっぱりだし」

「アタシも…視えない…」

「俺も、だ…」

「ごめん、僕にも視えないや…」

「…そんな、嘘だ…!」

 安藤達も御手洗の指差した先を凝視するが、スタンド使いではない彼等の眼には何も視えなかった。

 

「…御手洗君、本当に君が襲撃者なのか…?」

「ち、違うッ!!僕はそんなことやっていない!そもそも、僕は自分がスタンド使いだってことを『知らなかった』んだ!」

「…知らなかった?」

「…あれ、ちょっと変じゃない?御手洗さんがスタンド使いだったとしたら、確かになんで今までそのことに気付かなかったんだろ?私もそうだったんだけど、スタンドを使えなくても『そういう感覚』ぐらいは分かるのに…」

「それもそうですよね…。それに、御手洗さんは『いつ』能力を発現させたんでしょうか?生まれつき持っていたのなら、気づかないのはますますおかしいですし…」

「そんなの…分かるわけないだろ…!僕は、なんにも知らないんだ…!」

 必死に否定する御手洗に、霧切たちもその反応が嘘ではないと思い疑問を口にする。その疑問に、塞ぎこむ御手洗に代わって苗木が答える。

 

「…おそらく、御手洗さんも響子たちと同じように『スタンド能力』を与えられたんだろう。プッチの『ホワイトスネイク』によってね…」

「ッ!?プッチが…!?」

「そもそも、御手洗さんが生まれつきスタンド能力者だとするなら、御手洗さんのスタンドが『デス13』というのはおかしいんだ」

「な、なんでだよ?」

「…『デス13』。大アルカナの13番、『死神』の暗示を司るスタンド…」

「は…?何言ってんの?」

「承太郎さんの『スタープラチナ』は『星』の暗示、ジョセフさんの『ハーミットパープル』は『隠者』、ポルナレフさんの『シルバーチャリオッツ』は『戦車』…そして、親父の『ザ・ワールド』は大アルカナのラストナンバー…『世界』をそれぞれ暗示している」

「あの…さっきから何を言っているのです?」

「…待て、ということはもしや…!?」

 過去にジョセフからその『旅路』のことを聞いていた天願が気づいたその事実を、苗木は首を振って肯定する。

 

「これらのスタンド…タロットカードのアルカナになぞらえたスタンドは、15年前に承太郎さん達が親父…DIOを倒す為にエジプトに向かった頃に名づけられたものです。そして、『デス13』もまたその一つ…つまり、このスタンドには御手洗さん以前に『使い手が存在していた』筈なんです」

「本来別の人物のものだったスタンドが、今は御手洗さんに宿っている…。そんなことができるのは、『スタンド能力を与奪できる』力を持った『ホワイトスネイク』しかいない、という訳ね」

「うん、そういうこと」

「け、けど…ッ!僕はそのプッチとかいう奴と会った事なんか…」

「いいえ、…少なくとも、『会う可能性』は十分にあった筈なんです。何故なら…奴は一時期、『希望ヶ峰学園にいた』のだから…!」

「なんですとッ!?」

 事情を知らないゴズや忌村たちはそのことに驚くが、天願や黄桜、霧切らは苦虫を噛み潰したように顔を顰める。

 

「…僕らが入学した翌年、新学期から『宗教学』の講師として一人の『神父』が赴任された。その時、僕等は『ホワイトスネイク』というスタンドの事しか知らず、その『本体』が何者であるかを知らなかった。…だから、気づくことができなかったんだ。その神父こそが、エンリコ・プッチだったということに…ッ!」

「…奴は余りにも『自然』じゃった。バチカンからの推薦状、一見して誠実そうな態度、そしてなにより『人を乗せる』のに長けておった。故に、SPW財団やワシらも何の疑いも無く奴の存在を許してしまったのじゃ…」

「…本当に、情けねえよ。『人を見る眼』には自信があったんだが、奴を野放しにしちまったのは、俺の人生最大のやらかしだ…クソッ!」

 

「…神父?それって、まさか…」

 必死に記憶を辿ろうとする御手洗の脳裏に、『あの日』に出会った見知らぬ男の言葉が浮かぶ。

 

 

『…少年。己の弱さを恥じることは無い。人間は誰しも弱い、そのこと自体は罪ではない。…罪とは、己の弱さを自覚せず思い上がった行動を成す者や、それを言い訳に怠惰を貪る者の事を言う。君は今逃げ出した、だがそれでも己の弱さを認めている。ならば君は例え今は逃げても、必ずもう一度それに向き合うことができる。…行きなさい、君の事は見なかったことにしよう』

 

ポンッ…

 

 

「……あ、ああ…!ああああああ…ッ!ま、さか…あの人が、アイツが…プッチ…!?」

「…どうやら、心当たりがあるようですね」

「……」

「…ん?ってことは…そのプッチとかいうのが『黒幕』…ってことじゃない?」

「あ…!き、きっとそうだよ!」

 安藤の予想に皆も同意するが、苗木の表情は晴れない。

 

「………」

「…どう思うの?誠君」

「…最初は、僕もそう思った。だが、肝心の奴自身はここには居ない。これほど大掛かりな舞台を用意しておきながら、その全てをモノクマのAIに丸投げするなんて、奴にしては杜撰過ぎる気がするんだ」

「ううむ…」

 

 

「…ま、今はそんなことどうでもいいじゃん。…肝心なのは御手洗、アンタが『襲撃者』ってことがこれでハッキリしたってことなんだからね…!」

「…ち、違うッ!僕はそんなことしていない!だって…僕は何も『憶えていない』んだ!スタンドを持っていたことも、襲撃者だったことも!」

「この期に及んで…見苦しいぞ…!」

「違う、違うんだ…」

「嘘ついてんじゃねえよ!」

「嘘なんかじゃないッ!僕は、本当に…」

 

 

「…ええ。御手洗さんは嘘をついていませんよ」

「え…?」

 御手洗の言葉を肯定したのは、なんと苗木であった。

 

「誠君、それはどういう意味ですか…?」

「御手洗さんがスタンド能力を使ったことを憶えていないのには『理由』があるんだ。…そして、それにはおそらく『彼女』が関わっている」

「彼女って…まさか!?」

「…江ノ島盾子、ね」

「うん」

「なん…だと…!?」

「あ、あいつ…が…!?」

「…御手洗さん、先に謝っておきます。これから僕は、貴方が隠し続けていた『真実』を暴露する。貴方にとっては苦痛でしかないと思いますが、それでも…聞いてもらいます」

「…ッ!?まさか…な、なんでお前がそのことを知ってるんだ!?」

「…カムクライズルが教えてくれました。『あの事件』の裏で貴方に起きていたことの全てを…」

「…どういうことじゃ?御手洗君、君は何を隠している?…苗木君、君は何を知っているというんじゃ?」

「……」

 押し黙ってしまった御手洗に代わり、苗木がその『真実』を語りだす。

 

「…あの『人類史上最大最悪の絶望的事件』。その発端は『予備学科生徒』による『パレード』…もとい、カムクラプロジェクトに対する不満のデモだった。…けど、その時から僕はそのことに『違和感』を憶えていた。何故彼らはその事実を知ってなお起こした行動が『デモ活動』だったのか…とね。普通に考えれば、自分たちで抗議デモを起こすよりその証拠を警察にでも突き出したほうがよっぽど真っ当に抗議できるはずなのに。…けど、カムクライズルからその答えを聞いて、真っ先に頭に浮かんだのが御手洗さん…貴方だった」

「……」

「教えてください苗木君。彼らに…予備学科の生徒に、何があったというのですか?」

「彼らは、カムクラプロジェクトの全容を『ある映像』と共に知らされた。…その映像は、あの『希望ヶ峰学園最大最悪の事件』…当時の生徒会の皆とカムクライズルによるコロシアイの映像だった。…ただし、その映像に少しだけ『細工』を施されてね」

「細工?」

「『サブリミナル効果』…映像と映像のコンマ数秒の間に特定の画像や文字を挿し込むことで、それを見た人間の意識に一種の『刷り込み』を施す。それは場合によっては本当に肉体や思考に反映されるレベルにも成りゆる。…御手洗さん、貴方が制作していた『究極のアニメーション』にも、この技術が使われていましたよね?」

「ッ!…ああ、そうだよ」

「…それが一体、なんの関係があるというんだ?」

「…つまり、江ノ島さんが予備学科の生徒に見せた映像には、それだけ高度な技術が使用されていた。けれど、いくら江ノ島さんが天才といっても映像技術になんてこれっぽちの興味もなかった彼女が、たかが数ヶ月でそれだけの物を用意できるはずが無い。…だから彼女は『利用』したんだ。既にこの技術を確立し、それを実現レベルにまで高めていた御手洗さんをね…」

「ってことは…御手洗さん、江ノ島ちゃんに協力していたの!?」

「…!す、好きでやった訳じゃあないッ!!僕は、脅されたんだよ…勝手に僕の映像を使われて、もしバラしたら代わりに77期生の皆を殺すって…どうしようもなかったんだよッ!!」

「…それが、君がずっと隠していたことじゃったのか」

「…そういう訳で、江ノ島さんは御手洗さんに協力を強要し、予備学科の生徒達を暴走させる映像を作り出した。…おそらく、コロシアイの映像の中に『怒り』を誘発させる細工を施して、彼らの思考を短絡化させたんじゃあないかと思うんだ」

「…じゃあ、あの後…予備学科の生徒が次々と『自殺』したってのも…」

「…『グルーミー・サンデー(暗い日曜日)』という楽曲をご存知ですか?失意の中で自殺を決意するという歌なんですが、この曲を聴いて実際に自殺した人が居たそうです。…『音楽』で自殺を唆せれるなら、目に見える『映像』でも同じことができてもおかしくはありません…。おそらく、正気に戻った彼らの口封じの為に用意していたんでしょう」

 

「…でも、それと御手洗君が襲撃者だったことを憶えていないことと、なんの関係があるの?」

「分かりませんか?…江ノ島さんは捨て駒に過ぎない予備学科の生徒達ですら徹底的に口封じを行った。…なら、『当事者』である御手洗さんになんの手も打たない筈が無い。彼女は御手洗さんを見逃すと見せかけて、御手洗さんにとある『映像』を見せた筈なんだ」

「僕に…?」

「映像…?それが御手洗さんの記憶が無い理由なの?」

「一体、なんの映像なのですか?」

「…『片方』が経験した記憶が、『もう片方』に共有されていない。…僕らは、そんな事例の『人物』を一人知っているよね?」

「え?それって…『腐川ちゃん』のことだよね?それがなんの…」

「…ッ!!」

 腐川の名を聞いた瞬間、霧切が目を見開いて驚愕し、次いでその答えを口にする。

 

「…『多重人格』…ッ!」

「え…ッ!?」

「…その通り。御手洗さんは江ノ島さんに見せられた映像によって、『別の人格』を刷り込まれたんだ。その刷り込まれた人格こそが、『デス13』のスタンド使いにして襲撃者の本当の正体』なんだ…!」

「別の…人格!?そんなことがあり得るのか!?」

「可能か不可能かではなく、実際に起きているんですよ。…現に、僕はその『人格の入れ替わった御手洗さん』を目撃しています」

「ええッ!?」

「本当なのか苗木君…?」

「…モニターの監視が途絶えてすぐ、僕は葵たちのいる場所へと向かいました。あの状況で一番危なかったのが葵でしたから。…しかし、僕はそこで見てしまったんです。御手洗さんが目を覚ますと同時に豹変し、葵になにかをしようとしているところを。その時に確信したんです。御手洗さんが襲撃者なんだって。…『デス13』の存在には目星をつけていたので、直接殺すのではなくスタンドを介して殺害する筈と踏んで、僕はその隙をついて御手洗さんを気絶させたんです」

「そうだったんだ…」

「…待って。腐川さんにしてもディアボロにしても、多重人格者が入れ替わるにはなんらかの『スイッチ』がある筈よ。御手洗さんのスイッチはなんなの?」

「…勿論、御手洗さんにも切り替わるスイッチはある。それは、御手洗さんの『NG行動』が証明している筈だよ」

「僕の、NG行動…?」

 霧切の問いにそう答えると、苗木は御手洗に歩み寄る。

 

「な、なんだよ…?」

「御手洗さん。貴方のNG行動は『スマートフォンを手放す』…そうじゃありませんか?」

「なッ…!?な、なんでそのことを…」

「スマートフォン…?なんかこいつだけおかしくない?」

「…そういえば、るるちゃんのNG行動ってなんだったの?」

「あ、私は…『3人以上生き残った状態でゲームが終わる』ってやつ」

「…そりゃ道理で…」

「それはともかく…僕がそのことに気づいたのは、ついさっき…御手洗さんを気絶させる直前です。御手洗さん、憶えていないかもしれませんが、貴方は人格が入れ替わる直前に一瞬ですがスマートフォンの『画面』を見ていました。貴方の人格交代にスイッチがあるとすれば、それしか考えられない。おそらく秘密は、貴方の持っているスマートフォンにある」

「…御手洗君、見せて貰えるな?」

「は、はい…あ、でもそれだとNG行動に…」

「ああ、それなら…」

 

 

 

ヒュパンッ…!

 

カランカラン…

「…え?」

 苗木が腕を振るった直後、御手洗の左手に填められていたバングルだけが『切断』され地面に落ちた。

 

「これで問題はありませんね?」

「……ッ!?お、お前…ッ、いきなりなにするんだよ!?」

「すみません。…ですが、事前に言うと緊張で手元が狂うかもしれなかったので。…とりあえず、これで安心ですね?」

「あ、ああ…」

 不承不承ながらも御手洗が差し出したスマートフォンを受け取り、霧切や天願が覗き込む中苗木が履歴を探る。

 

「…むう、特に怪しいものは無いのう」

「当たり前ですよ。…そもそも、これは僕の『私物』なんですから変なものは入れてませんよ」

「もしかしたら、自動で消去されるよう設定されているのかもしれないわね。だとするなら、今の状況で探るのは困難ね…」

「…待って、少し試してみたい事が有る…!」

 苗木はポケットから『画面の割れた端末』を取り出すとケーブルを引き出し、それを御手洗のスマートフォンに繋ぐ。すると…

 

 

…ブォン

『…ふう、お待たせ苗木君!』

「あ、アルターエゴ!?」

 スマートフォンの画面に映ったのはアルターエゴの顔であった。

 

「誠…あの爆発で壊れたんじゃなかったのソレ!?」

「うん…あの時に液晶と通信機能はやられたんだけど、それ以外のデータは無事だったからね。アルターエゴが無事かどうかは不安だったんだけど…無事で良かった」

「…アルターエゴ、そのスマートフォンの中に消去されたデータのようなものが無いか、調べて貰える?」

『うん、任せて!』

 霧切の指示を受けアルターエゴは即座にデータのサルベージにかかり、やがて数分もしないうちに反応を示す。

 

『…あったよ!消去されかけている『映像ソフト』が…全部で『3件』!』

「3件…?タイムリミットはさっきので『4回目』の筈じゃ…?」

「なんとか復旧できないかい?」

『うーん…あちこちデータが破損してるけど、ニコイチみたいにしてつなげれば…よし!』

 スマートフォンの画面に『ビデオ』と表記されたアイコンが表示される。

 

「こんなものが、何時の間に…」

「…で、どうするのです?」

「ひとまず、確認してみましょう。…僕が確認します、皆は少し離れてください」

「…大丈夫なの?」

「…正直分からない。江ノ島さんのことだからロクなものじゃあないだろうけど…。さやか、葵…万が一の事があったら、その時は…」

「うん、任せて!」

「すぐに動けないようにすればいいんですよね、分かってます!」

「…ありがとう」

 一抹の不安を抱えながら、苗木はそのアイコンをタップし、ビデオを再生させた…

 




カムクラとかいうネタバレ製造機。実際彼がゲロってしまえばあらかたの謎は全部解けるんですよね。ゲロらせるまでの過程がムリゲーだけど

次の更新はまた10日後…の前に、なにかやるかもしれません。カレンダーを見れば予想できますけど
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