『ドギー・スタイル』の豆銑礼…なんていうか、すごい…リンゴォを感じる…!契約にとことんこだわる所とか、自身の栽培法に対するこだわり…あっさり康穂ちゃんを捨てたあたり人でなしではあるけれど、嫌いになれないキャラでしたね。
…そして明らかになったロカカカを利用した「不死」の商売…。あれを見たとき、僕「ホムンクルス」みたいだなって思いましたね。ロカカカの作用もまた「等価交換」…なんだか錬金術みたいな感じですね。案外アレも自然に生まれたというよりは誰かが生み出したのかもしれませんね。…3部でどう使おうか…
「…ハァ!?雪染が生きてるって…どういうことよッ!」
「どーいうこともこーいうことも…それがマジなんだからしょうがないじゃん」
塔和シティにて腐川たちは、月光ヶ原ロボの最期を見たモナカによって雪染の生存をいち早く知らされていた。
「雪染さんって…最初に殺されたあの女の人だよね?その人がどうしてロボットを…?」
「そんなのモナカだって知らないよ。…単に目障りだったから潰しただけなんじゃあないの?」
「そんな理由なんかどうだっていいわよ…!問題はアイツが生きてたとして、なんで今まで『死んだふり』なんかしてたのかってことよ!」
「…まー普通に考えたら、あのお姉ちゃんが『黒幕』ってことなんじゃないの?」
「黒幕って…その人がこのコロシアイの犯人ってことか!?」
「そういうことなんじゃない?…けどおっかしいなぁ~、あんな簡単にやられるほど軟な装甲してないのに…何でやられたんだろ?」
「…白夜様!白夜様ッ!!…ああもうッ!こんな時に限って繋がらないなんて…」
「お兄ちゃん、お義姉ちゃん…無事でいてよ…!」
その頃、未来機関本部…現在は既に『跡地』と化したそこで、雪染と支部長たちは向かい合っていた。
「……」
「うふふ…皆混乱してるみたいね。まあ普通に考えて、この状況で落ち着いてる方がどうかしてるとは思うけどね」
…否、驚愕の余り動けないという方が適切であろう。それだけ、雪染の生存は衝撃的で…尚且つ彼女が齎したこの状況はそれに輪をかけて彼らを混乱に陥れていた。
「テメエ…ッ!」
「……」
かろうじて警戒を示しているのは承太郎や億泰たち雪染の死を知らなかった面々ぐらいであったが、得体の知れない相手に加え負傷した仗助の応急手当を優先したため襲い掛かる様なことはしなかった。
切り落とされた仗助の両腕はすれ違いざまに雪染に弾き飛ばされて海に落とされてしまい、舞園の『S・フィンガーズ』によってジッパーでつなぎ合わせることもできない状態にあった。
「…何を、した…?」
「ん?」
「絶望は…お前に、何をしたぁッ!?」
そんな中、宗方が掠れる様な声を絞り出し雪染に問う。
「…何をしたかって?」
雪染は宗方に優しく微笑みながら語りだす。
「頭の中に無理やり『洗脳ビデオ』を刷り込まれて、強制的に絶望させられてしまったとか…」
雪染が自分の頭を指で小突く。
「苗木君に対する最後の切り札として、体を弄繰り回されて『こんな身体』にさせられたとか…」
雪染が腕の『光の剣』を見せびらかす。
「あまつさえコロシアイの首謀者に仕立て上げられて、こうして貴方と敵対させられてしまったの…」
「…ッ!」
宗方の顔に、再び怒りの色が浮かぶ。
「…って言われた方が、京助的には『まだマシ』だったかな?」
「…え?」
小悪魔のような笑みでそう言った雪染に、宗方は思わずポカンとしてしまう。
「でも、残念…。私は『私の意志』でここにいる、絶望でも希望でもなく…『雪染ちさ』としてここにいるの。私は、この時、この瞬間をずっと待っていた。…苗木君、貴方を切断し、捕える為…このコロシアイは、全て『この一瞬』の為だけの『前座』だったのよ!」
「…雪染、さん…ッ!」
雪染の腕の中でまるで『胸像』のような状態で囚われた苗木は、動けないもどかしさをぶつけるように雪染を睨む。そんな苗木を、雪染はまるで子供の悪戯でも見るかのように見下ろす。しかしその腕の力も苗木に対する注意も、刹那のひと時すらも緩めなかった。
「馬鹿なッ…!雪染君、その体…いや、その『剣』はまさか…ッ」
呆然とする宗方に続いて、天願が雪染の腕の刃を見て驚愕の声を上げる。
「…ああ。天願会長はご存じでしたっけ?私のコレの『正体』を…」
「…!ではやはりそれは…ッ!」
「ええ。…これは60年前に天願会長の友人のジョセフ・ジョースターさんが倒した怪物…『柱の男カーズ』が使っていた『
雪染が剣をかざすと、剣は甲高い音を立てて眩いばかりに輝きだす。それは剣のエッジをチェーンソーのように動く細かい刃が光を反射して起こす現象であった。
「柱の男…ッ!ジジイが言っていた、吸血鬼を生み出した存在…『石仮面』を作り出した化け物どもか…!?」
「…だが、何故だッ!?何故君がカーズの『輝彩滑刀』を使える!?柱の男はカーズを最後にジョセフさんによって全て葬られ、唯一生きている『サンタナ』も現在消息不明だと言うのに…」
「…だから言ったじゃあないですか。私は体を『弄られた』って…」
「何…?」
「…60年前、ジョセフさんがカーズと戦った際、現場に居合わせた旧ドイツ軍…『ナチス』の兵士たちはそこに残された柱の男の遺留物をサンプルとして回収した。その中には…戦いの中で負傷し流れた『カーズの血液』も含まれていた」
「ッ!?」
天願が眉を顰めていると、唐突に苗木がとんでもないことを話し出した。
「…へぇ。よくそんなことを知ってるね」
「な、苗木君…何故そのようなことを!?」
「シュトロハイム少佐から聞きました…。それらはかつてのナチス将校たちによって秘匿され、僕等は少佐と協力して絶望との闘いの最中でそれらの回収作業も行っていました…。ですがッ…!まさか、よりによってそれを『人の身体に組み込む』なんて…ッ!」
「身体にって…ちょ、ちょっと待って…!そのカーズ…とかいうのが死んだのって『60年』も前なんでしょ?いくら保存状態が良くても細胞がそこまで持つはずが…」
「…それが可能なんじゃよ。カーズ…『柱の男』とは、文字通り『不死身』の怪物。数万年の時を生き、例え粉微塵になろうとも生き永らえることができる存在…!しかもカーズはそんな柱の男のリーダー格だった男…例え血の一滴であろうと奴にとって60年など瞬き程度の時間でしかないんじゃろう…」
「…そんな生物が、存在していたって言うの…?」
医学に精通しているが故の忌村の疑問に、当時を知る者の一人である天願が答える。
「…だが、分からない…ッ!貴女の死は、僕が確かに確認した!あの時、貴女の生命エネルギーは感じなかった筈なのに…一体、どうやって生き延びたというんですか…?」
雪染が生きていたことで不可解になったその事実と問う苗木に、雪染はしてやったり、とでも言うような顔で答える。
「うふふ…良かった、正直『アレ』で貴方を騙しきれるかは五分五分だったのよね。うまく引っかかってくれて助かったわ」
「アレ…?」
「…物知りな君なら知ってるんじゃあないかな?限られた生き物だけができる、『限りなく死に近い状態』で生き続けることができる方法をさ…」
「……ッ!まさか…『乾眠』か!?」
「ピンポーン!正・解♡」
乾眠。それは、緩歩動物を始めとした一部の生物だけが行う、一種の『休眠行動』である。乾眠を行う生物としては、『クマムシ』や『ネムリユスリカ』の幼虫などが有名である。
一般的に乾眠は、体内の水分を長い時間をかけて特殊な糖に変化させ、肉体の代謝活動を止める事で極限状態に備える。そして一定の水分を得ることで、その状態から復活することができるのだ。この状態を『クリプトビシオス』…『隠された生命活動』と呼ぶ。
クリプトビシオスに入った生物は、通常の状態では絶対に耐え切れないような過酷な環境でも生き延びることができる。乾燥は元より、150度を超える高温、空気すら凍る極低温、真空や高圧、原子炉並の放射線、果ては宇宙空間であろうと数日程度ならば生存可能なのだ。
柱の男たちも、長期間の休眠に入る際には乾眠に近い状態となる。その際、肉体は生物でありながらまるで『鉱物』のようなものに変化し、生命活動を極限まで停止させることで殆ど岩と見分けがつかなくなるのだ。メキシコでサンタナが、ローマでワムウ、エシディシ、カーズが眠っていた時がそれである。…ちなみに、本物のカーズは現在この状態で宇宙空間を彷徨っている。
「乾眠状態の生物は、殆ど生命エネルギーを持たない…。僕が気づけなかったのはそういうことか…ッ!」
「加えて、私も乾眠状態になる為に自分で結構血を抜いたりしたから、見た目だいぶ酷いことになってたからねー。その思い込みもあったからほんの僅かに残った私の生命エネルギーを見抜けなかったんじゃあないかな?念のためにその後すぐにモノクマに君の行動を一切禁じさせたしね」
「…!じゃあ、やはり最初のタイムリミットのアレは『自殺』…いえ、自殺に見せかけた『自作自演』だったのね…!」
「そう!御手洗君のスマートフォンに洗脳ビデオをインストールしてから、自分でシャンデリアに吊り下がって死んでるようにみせかけたってワケ。そして苗木君が私の傷を治す為に送った生命エネルギーを使って、乾眠状態から戻ったの。苗木君ならきっとそうするだろうと思ってたからね…まあ、目覚めるのにちょっと時間がかかっちゃったけどね」
「……」
「…そう言う訳だから、御手洗君は私を殺してないから安心してね」
「……ふざ、けんな…」
「ん?何か言った逆蔵君?」
「…ふざけんなっつってんだよ、雪染ぇッ!!」
呆然とする宗方や御手洗に代わって、逆蔵が雪染に怒号を飛ばす。
「もう~、そんなにおこ…そりゃ怒るか。だって逆蔵君だもんねー…」
「黙れッ!!…雪染、お前…自分が何をやったのか、分かってんのか…?お前はアイツを…宗方を、『裏切った』んだぞッ!!それが分かってんのかって聞いてんだよ、雪染ェッ!!」
「…それは違うわ、逆蔵君」
「あぁ?」
「私がこんな手段をとったのは、そんなつもりなんかじゃあないわ。それだけは、勘違いしないで欲しいの」
「…何をぬけぬけと…。俺達は知ってんだぞ!テメエが…『絶望の残党』だってことはよッ!」
「…そう、確かに私は絶望の残党…絶望の一人『だった』わ」
「…だった、だと?」
意味深な物言いに宗方が反応する。
「それは、どういう意味だ…?」
「さっきも言ったでしょう?私はもう『絶望』でも『希望』でもない。私は私の…雪染ちさという『一人の女』の意志でここにいる。だから今の私にとって絶望の残党や江ノ島さんがどうなっても、正直どうだっていいの。…今の私が動く理由は、たった一つ」
雪染はゆっくりと宗方を指差し、告げる。
「それは京助…全部『貴方の為』なのよ」
「俺の…だと!?」
「何言ってやがんだ、雪染…!」
「…ねえ、逆蔵君は悔しくなかった?京助がどれだけ頑張っても、絶望の残党は居なくならない。京助がどれだけ心をすり減らしても、絶望に苦しむ人は一向に減らない。…そしてそんな京助の努力も、苗木君達のやることの前では霞んでしまう。それを目の当たりにして、悔しいとは思わなかったの?」
「ッ!それ、は…」
「…私はね、正直悔しかったよ。苗木君と京助、二人とも人々を守り、希望を広げるために戦っているのに、苗木君ばかり目に見える成果を上げて、沢山の人たちの希望になっている。京助だって命がけで戦っているのに、こんなの理不尽だよって思ったよ…」
「雪染…」
「ちさちゃん…」
「…だからね、私考えたんだ。苗木君の成功が理不尽なものなら…その『理不尽』が京助の物になればいい…って」
「…ッ!?まさか、貴女の目的は…」
「そ」
雪染は苗木を持ち上げ、自分の正面に向き合って言う。
「苗木君。貴方の『レクイエム』…京助に頂戴?」
「ッ!?」
その言葉に一同は度肝を抜かれる。
「やはり…そういうことでしたかッ…!」
「俺に、苗木の『レクイエム』を…!?」
「そうだよ。苗木君と京助の絶対的な差になっているのは、苗木君の持つスタンド『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』…江ノ島盾子やディアボロですらも歯が立たない、絶対的な『力』の象徴。それがあるからこそ苗木君は自分の『理想』を『現実』にすることできる。…だったら、それが京助にあれば、今度は京助が『理想』を『現実』にできる。天願さんにも苗木君にも、絶望にだって京助を止められない。…貴方が、この世界を救う『英雄』になれるのよ!」
「…ちょ、ちょっと待ってくれ!理想だの英雄だのは置いておいて、苗木君の『レクイエム』を宗方君にって…そんなことができるのかよ!?」
黄桜がスタンド使いの面々に問うが、皆は一様に渋い顔をしていた。
「…いや、本来なら個人のスタンドを他者に与えることはできない。そもそも、スタンドとはそいつにとっての『精神の具象化』…いわば『もう一人の自分』と言っても差し支えない。だからこそスタンドは千差万別…似たような能力同士はあっても、完全に同じスタンドは存在しない。故に、それを他人にそっくりそのまま与えることは『不可能』だ」
「じ、じゃあ雪染の計画…根本から破綻してんじゃん」
「いいや…僕たちは知っている。その不可能を可能にする『例外』を、たった一人だけね…!」
「例外…?」
「…エンリコ・プッチ。スタンド能力を『奪い』、他者に『与える』ことができるスタンド『ホワイトスネイク』の持ち主…。そして、江ノ島盾子と結託して苗木君を陥れ、世界を破滅させた『元凶』の一人よ…!」
「ええッ!?」
支部長たちもその事実を聞いて事態の重大さを知る。雪染が苗木の『レクイエム』を宗方に与える方法としてプッチの『ホワイトスネイク』を当てにしているのなら…それはつまり、雪染はプッチと『手を組んでいる』ということだからだ。
「何故、奴と…?アイツの異常性は、貴女だって分かっている筈だ…!」
「うん、それは分かってるよ。私は別に彼と心中する気はないし。…私と彼が手を組んでいるのは、単なる利害関係の一致。…彼は今何か『探し物』をしてるみたいでね、その為にはどうしても未来機関の協力が必要だったの。だから私は、彼に協力する代わりに今回のコロシアイに必要なものを用意してもらったの。モノクマのAIに、塔和シティから持ち出した自律式のモノクマ、そして…っと、お喋りはこの辺にしておこうか。今更説得しようだなんて思ってないでしょ?君の言葉を借りるなら、それこそ時間の無駄無駄…」
「…ええ、そうね…」
「『時間稼ぎ』は…もう十分よッ!!」
カツーンッ!
霧切がブーツの踵を地面に叩きつける、と同時に
ガシッ!
ザボッ!
「お?」
突如雪染の足元から『手』が飛び出し、雪染の足首を掴む。それと同時に、雪染の周囲がまるで沼のように『泥化』し、動きを封じる。
「葵か…!」
「…助けに来たよ、誠!」
その正体は、『オアシス』で地中に潜行していた朝日奈であった。朝日奈は雪染の注意を他の皆が惹いている隙に地中に潜り、『元超高校級のスイマー』の名に恥じない『潜水』ならぬ『潜地力』を以て霧切からの合図があるまで地中で待機し、虎視眈々と必殺の機会を待ち構えていたのである。
「今よッ!」
「はいッ!」
そして、霧切の『策』はこれで終わりではない。
「『スティッキー・フィンガーズ』ッ!!」
ギュオオオオッ!!
舞園がスタンドの名を叫びながらトンファーを振ると、トンファーの表面に『らせん状』にジッパーが浮き出、それが解けていくとトンファーはまるで『鞭』のような紐状になって雪染に向かい、彼女を縛り上げる。
ビシィッ!
「おおッ!?」
「これで動きは封じました!…億泰さん!」
「おうッ!『ザ・ハンド』ッ!!」
舞園に応え今度は億泰が『ザ・ハンド』を呼び出す。
「行くぜ康一、承太郎さん!」
「うん!」
「頼むぜ…!」
『ザ・ハンド』が右手を振りかぶると共に、承太郎と康一が『スタープラチナ』と『エコーズAct3』を呼び出し構える。
霧切の策。それは朝日奈と舞園のスタンドで雪染の動きを封じ、その隙に億泰の『ザ・ハンド』が空間を削り取って雪染との距離を詰める。射程距離内に入ったところで康一の『エコーズAct3』が雪染の身体を『重く』して完全に動きを封じたところに承太郎の『スタープラチナ』が時を止めて苗木を救出、それと同時にラッシュを叩きこんで止めを刺す。
現状の戦力で考えられる、無駄のない最善にして最良の策と言えた。
「…うん、作戦としては花丸だね。…相手が私じゃなかったらだけど」
しかし、それを成すには今の雪染は余りにも『規格外』過ぎた。
ザクッ!!
「うあッ…!?」
「葵ッ!」
雪染の踵から弧を描くように『サーベル』が飛び出し、足を掴んでいた朝日奈の手を切り裂き無理やり引き剥がす。
「よっ!」
グルンッ!
雪染はそのまま踊る様に回りながら足を振り上げ、自身を拘束していた舞園のトンファーを断ち切った。
「切られた!?足からもサーベルが出るなんて…」
「だがもう遅えーッ!!」
拘束こそ解かれたもののこのタイミングであれば躱せないと判断した億泰はそのま『ザ・ハンド』の右手を振り抜こうとする。
その時、苗木が皆に向かって叫ぶ。
「…違うッ!皆…伏せろォーッ!!」
「…むッ!」
ドドドドドドッ!!
「ぐあああッ!?」
「きゃああッ!!」
直後、全員に目掛け身体に無数の微小な『何か』が突き刺さった。無事だったのは偶然逆蔵が前に出ていたことで直撃を免れた宗方と一瞬早くそれに気づきガードした承太郎だけで、反応できなかった皆は体中に『BB弾』程度の孔を穿たれ血を噴き出して倒れる。
「い、痛い…目が、目がぁ…ッ!」
「こ、これはッ…!?」
「な、何が…起こった…の…?」
「…ッ!こいつは…」
皆が混乱する中、承太郎がガードされて地面に落ちたそれを摘み上げ『スタープラチナ』の超視力で観察していると、唯一今起きたことを肉眼で捉えていた苗木がその正体を告げる。
「『小さな刃』…?まるで鮫の歯の様な…なんだこいつは…?」
「…雪染さんの、『輝彩滑刀』の刃の『エッジ』の一部です…!雪染さんはサーベルを振ると同時に、表面を動いている細かな刃を高速で『射出』したんです…ッ!」
「…またまた正解♡名前を付けるなら…『セイバーショット』ってところかな?大雑把にしか狙いをつけられないのが欠点なんだけど、自分以外敵の今なら関係ないもんね」
「ゆき…ぞめ…?お前は、一体…」
「…待っててね京助。もう少しで…貴方の『夢』を叶えてあげるから。私の、全てに懸けて…!」
邪魔が無くなったのを見計らった雪染は、苗木の身体を抱き上げ逃げ出そうとする。無事だった承太郎は当然逃がすまいと追いかけようとする。
「逃がすかよ…!」
「うふふ…そうはいっても、承太郎さんじゃいくら時を止めても私には追いつけない…」
…ガシッ!
「ん?」
雪染の脚に死に物狂いでしがみついたのは、両手を手首まで切り裂かれつつも夫の危機に再起した朝日奈であった。
「あらら…まだそんな元気があったんだ?」
「生憎…元気だけが取り柄だからね…!」
「葵ッ…無茶するな…!」
「嫌だッ…!誠は…私が守る!好きな人を守りたいのは、誠だけじゃないんだからッ!」
「…ッ!」
朝日奈の必死の様子に雪染の顔に一瞬動揺が走るが、好機と見て走り出した承太郎の姿を視界の端に捉えてすぐさま非情に徹する。
「…その気持ちは分かるけど、それを汲んであげるほど…私には『時間』が無いのッ!」
ザクッ!
「うあッ!?」
再び足からサーベルを伸ばすと、剣に突き刺されながらも食らいつく朝日奈を釣りあげるように持ち上げ、瞬時に足を引いて空中に浮かせ
ボギィッ!
「がうッ!」
「ぬうッ!?」
「葵ィッ!!」
宙を舞う朝日奈に回し蹴りを叩きこみ、承太郎の方へと吹っ飛ばした。承太郎も咄嗟に『スタープラチナ』を呼び出し朝日奈を受け止めるが、朝日奈の身を案じた為歩みを止めてしまった。
「テメエッ…!」
「これでもう邪魔はいない…そう、もう私は止められない…止まらないのよ…!」
ピトッ…
「…え?」
瞬間、雪染は背中に『何かが触れた感触』を感じた。
「…隙アリ」
「何……あなた、は…ッ!?」
その原因を確かめようと振り返った雪染は、自分の背後に居る『人物』を見て目を見開く。
「なッ…!?き、貴様は…」
「何だと…!?」
それは宗方や承太郎たちも同じで、先の攻撃で目をやられたもの以外はその正体に驚愕を隠せない。
「何故、あなたがここにッ…」
困惑しつつも反撃すべく雪染が背後に向けて輝彩滑刀を振るおうとした、その時
…ズルン…
「……え?」
力強く振るった己の腕が突如として餅のように『伸び』、その人物の頭上を空振ってあさっての方向に伸びきってしまったことに雪染はまたも間の抜けた声を出してしまう。伸びた腕は千切れてこそいないもののダルダルになっており、まるで使い古された『スライム』のような状態になっていた。
「これはッ…『スタンド能力』…!?」
「正解…そして、もう遅い」
「…ああ、もう遅い」
「ッ!?」
反対側から聞こえた声に振り返る前に、それは終わっていた。
ズバババババッ!!
「…なん、だと…ッ!?」
唖然とする宗方の眼前で、突如雪染の身体がバラバラに『切り裂かれた』。
「『超バラバラ殺人』…。全然斬りごたえが無かったな…本当にゼリーでも切ってるみたいだったぞ」
「そういう『能力』だから…ジョジョ、大丈夫ですか?」
「あ、ああ…。よく、来てくれた。それに…まさかあなたまで助けてくれるとは思ってませんでした」
「…借りを返しただけだ。借りっぱなしは性に合わないからな。…それに貴方には、早く『アイツ』を元に戻してもらわなきゃな…」
「お、お前たちは…!?」
バラバラになった雪染の身体に目もくれず苗木を回収した二人に、宗方は驚愕と共にその名を呼ぶ。その二人の名は…
「…何故、お前たちがここに居る!?『聖原拓実』、『月光ヶ原美彩』ッ!!」
元未来機関第6支部所属にして殺人鬼『キラーキラー』である『聖原拓実』、そしてモナカとすり替わったまま行方不明になっている筈の『月光ヶ原美彩』であった。
乾眠に関してはだいぶ適当なので専門的に突っ込まれてもスルーしますのであしからず。
それと、今の雪染は正気ですが、どこぞの狂化EXのように正気のまま狂っています。…それが「希望」か「絶望」かはまた後程…
月光ヶ原のスタンドは…皆さんなら分かりますよね?結構タイムリーなスタンドなのでつい使ってみました。…アイツ死んじゃったからもう出番ないだろうし