…ところで、5部のアニメはまだかのう…?
東の水平線が微かに白やみだす。汚染の影響ではっきりと視えはしないが、それが間もなく夜が明けることを知らせる。そんな空の下で、彼らは対峙していた。
ドドドドドドドドッ…!
「……」
「……」
辺り一帯の瓦礫や人間が『宙に浮かぶ』という不可思議な現象の中、ウェザーの亡骸を抱えた苗木とプッチは互いに睨みあう。苗木としては今すぐにでも殴り掛かりたかったが、おそらくプッチの『スタンド能力』であろうこの現象の謎の手がかりも無しにうってでるのは危険と考え、様子見に回っていた。
「また会ったな、苗木誠。…お前の部下は返してやったぞ。もう私には、縁もゆかりもないものなのでな」
「…お前が、殺したのか。ウェザーを…自分の『弟』をッ!」
「…そうだ。だが、それは仕方のないことだ。ウェザーが私に戦いを挑んだのは『奴自身の意志』によるもの。ならばその果てに死を迎えようと、それはウェザーも覚悟の上だったという事だ。…例え『誰が』殺したとしてもな」
「…ッ」
苗木の腕の中のウェザーを一瞥した後、プッチは先程雪染が消滅した場所に目を向ける。
「…雪染ちさは、しくじったようだな。かつて存在したDIOと同じ吸血鬼を『食料』にしていたという『柱の男の力』、死者に仮初の命を吹き込み傀儡とするスタンド『リンプ・ビズキット』、…そしてあの女の宗方京介への愛にかける並々ならぬ『覚悟』。その全てが、お前を倒すのに十分値すると思っていたが…やはりお前はそれを超えてきたか」
「プッチ…お前が、雪染さんを唆したのか?江ノ島さんのように…」
「それは違う。…確かにあの時、お前が齎した『希望』に迷っていた江ノ島の背を押したのは私だが、あの女は違う。…あの女は『自ら』私に協力を申し入れてきたのだよ」
「何…!?」
宗方の反応に愉快そうにちらりと見た後、プッチは続ける。
「あの女が私に接触してきたのは、お前がイタリアへと発ってすぐのことだ…。塔和シティに向かう手段を探していた私を目ざとく見つけたあの女は、私にこう持ちかけたのだ」
『プッチ神父。貴方の目的に必要なもの、全部私が用意してあげますよ。…その代わり、貴方も私に協力してくれませんか?私の『希望』の為に…!』
「…その時、私と彼女は互いを利用し合う『協力者』になった。彼女は未来機関の支部長としての権限を利用して私の移動手段を手配し、絶望の残党としての伝手を使って塔和モナカとのコンタクトを漕ぎ着けた。私としても、彼女の献身には感謝の言葉しかない…。その対価として、私は彼女に『スタンド能力』とSPW財団の機密事項である『柱の男』の情報を与え、そして塔和シティで回収した苗木誠の両親の遺体を預けた、…どう使うかは、彼女次第だったがな」
「…ッ!お前が、…お前が元凶かああぁーッ!!」
苗木の両親の一件にプッチが関わっていると知るや否や、戦刃は怒りを露わにして『エアロスミス』を出撃させる。…が
「…ッ!?え、な…ッ?」
勢いよく飛び出した『エアロスミス』であったが、間もなく戦刃の困惑する声と共にバレルロールしながら蛇行し始める。
「何をしている戦刃!プッチの姿が見えんのかッ!?」
「そ、そうじゃない…!エアロスミスのコントロールが…操縦が効かない…ッ!」
「ど、どういうことだべ?」
「分からない…こっちからのコントロールは受け付けるのに、思い通りに飛べない…!まるで嵐の中に居るような…上も下も、分からない…!」
軍人としての勘でかろうじて墜落こそ免れているものの、『エアロスミス』は戦刃の思い通りに飛行できず、プッチに狙いを定めることも儘ならなかった。
「…相変わらず先の読めん女だな、戦刃むくろ。よく考えるがいい、この場に居るスタンド使いの殆どが射程5メートル以内の『近接タイプ』のスタンド使い。この距離で、かつ空中で身動きの取れない今、その力の殆どは封殺されたも同然。…そんな状況で、数少ない『遠隔操作タイプ』のお前を警戒しないとでも思ったか?」
「くッ…!」
仕方なく『エアロスミス』を引っ込めながら、戦刃はプッチを憎々しげに睨む。
「…ッ!そうか、そういうことか…!」
「む…?」
そんな中で、現在の状況、そして戦刃の発した言葉から、苗木はプッチの能力の『秘密』を見抜いた。
「ようやく分かったぞ、プッチ。貴様が引き起こしたこの状況の『カラクリ』がな…!」
「何…!?」
「どういうことだ…?こいつの能力は、『スタンドや記憶のDISC化』ではないのか?」
「…正直、プッチのスタンドになんらかの『変化』があることは予測していた。…こまるから聞いた『緑色の赤ん坊』とやらを取り込んだこともあるが、そもそもお前がなんの勝算も無しに僕の前にノコノコ現れるとは思えない。それがこうして堂々と顔を出してきたということは、こいつが僕たちの知らない『未知の能力』を手に入れたから…そう僕は踏んでいた。ウェザーもおそらく、その能力によってお前に殺された。…だがまさか、ここまで異様な変質を遂げていたとはね…」
「……」
『レクイエム』によって『スタンド能力の変質』を経験した苗木だからこそ、いち早くプッチの能力の変化に気づくことができた。見定めるような視線を向けるプッチに対し、苗木は毅然とその能力を暴きにかかる。
「今皆に起きているこの『浮遊現象』…。『力場』によって浮かしている訳ではないから、最初は磁場による超伝導…『マイスナー現象』か『ポルターガイスト現象』の一種かと思ったが、むくろの言葉で『答え』に至れたよ。…お前が操っているのは、『重力』…だな?」
「重力だと…!?」
「うん。皆が今空中に浮かされているのは、おそらくヤツを中心に重力が『反転』しているからだ。僕たちは地球の中心に引き寄せる力…『引力』によって地表に立つことができる。それは万物に共通した事実だ。…だが今、奴の周りではその引力が『逆転』し、『地面』ではなく『空』にむかって重力が向けられている…!むくろが『エアロスミス』のコントロールを失ったのも、重力の反転によって上下感覚が出鱈目になったからだろう」
苗木は懐に抱きかかえたウェザーの胸の『傷口』に目を落とす。鳩尾を一突きされたと思われるその傷は、本来『内側』に沿っている筈の肋骨が『外側』に反り返っており、筋肉や血管もまるで『弾け飛んだ』ような状態になっていた。
「それに、ウェザーのこの傷…。強引にパワーで突き破ったというよりは、まるで内側から『めくれ上がった』ような傷だ。それだけじゃない、傷付近の筋肉も、血管も、骨も全て…本来とは『逆方向』に『裏返って』いる。おそらくお前のスタンドは、周囲の重力だけでなく『触れたものの重力を逆にする』こともできるのだろう。重力が逆になるということは、本来あるべき状態と『逆』の方向に力が働く。そうなれば人間の身体は逆流した力に耐え切れず内側から破壊される。…それが、貴様の新たな能力だッ!」
「…流石だ。未だ我がスタンドを見せていないこの段階で、私の能力をここまで看破するとはな…」
苗木の推測に、プッチは肯定と共に感嘆するようにそう呟き
ブォン!
己のスタンドを発現させた。
「…それが、今のお前のスタンドか」
プッチの傍に現れたスタンド。その姿はホワイトスネイクの面影を残しつつも、プッチと融合した『緑色の赤ん坊』が成長したような…どこか『ちぐはぐさ』を感じさせる、苗木が今まで出会ったスタンドの中でもとびきり不気味な容姿をしていた。
「紹介しておこう、これが我がスタンド…名を『C・MOON』と名付けた。これこそが私とDIOが望んだ『天国』への道しるべとなる存在…。我が『希望』を成し遂げる『過程』の姿だ」
「…過程、だと?」
プッチのその一言、それに反応した苗木は眉を顰める。
「そうだ。この能力は未だ『未完成』…真の力へと至る過程でしかない。DIOが示した『天国』に行き着く『力』は、こんな微弱なものではない。私はそれを成さねばならない…『能力の完成』をな」
「…成程。『C・MOON』…『新月』へと至るまでの『
「ちょ…敵を褒めてる場合じゃあ…」
「…そして『得心』がいったよ。…アンタが雪染さんの、未来機関の力を借りてでも必要としたもの…それは、こまるが聞いたっていう『天国に至る場所』を知るためだな?」
「……」
「場所…そうか!あの管制塔が受信している『人工衛星』からの『地表データ』が目的か…!確かにアレは、未来機関の『支部長以上』でなければ閲覧できない機密事項だ!」
「雪染さんが『本来の目的』を実行している間に、お前は死体の運搬も兼ねてこの島に入り込む。そして僕らが本部に釘づけにされている間に管制塔に忍び込み、情報を調べた…筋書きとしてはそんなところだろう。そして…お前がこうして堂々と出てきたということは、既に『目的地』は検索済み、ということだな?」
「そんな…ッ!?」
「…だったら、尚更こいつをここから…逃がす訳にはいかねえよなぁ~ッ!」
プッチがここでの目的を果たしてしまった以上、プッチをここから生かして帰す訳にはいかない。皆の殺気を一様に受けながら、しかしプッチは余裕を崩さず苗木に語りかける。
「…確かに、お前たちからすればそうだろうな。だが私にはそんなことは関係ない。お前たちの下らん正義感に付き合ってやる必要など、私には無いのだ。…苗木誠。私がこうして姿を見せたのは、我がスタンドの力に絶対の自信があるからでも、ましてお前たちに別れの挨拶をしに来たわけでもない。私はお前に『提案』を持ちかけに来たのだよ」
「提案だと…?」
「私の要求はただ一つ。苗木誠…いや、未来機関を含めた貴様ら一派、お前たちが今この場で私を『見逃し』、金輪際『追わない』と約束してもらいたい。それを守るというのなら、私はもう二度と貴様らの前に姿を現さないと約束しよう。当然、お前たちの不利益になる様なことも一切しない…どうだ?」
「ッ!?」
その唐突で、余りにも予想外の提案に苗木ですら一瞬理解できず面喰ってしまう。
「…貴様、何を言って…!?」
「ふ…ざけるなよッ!エンリコ・プッチ、貴様…この期に及んでそんなふざけた提案が通るとでも…ッ!」
「…ふむ、まだ足らないか?ではもう一つ、…お前たちが保護している『元77期生』の生徒達…彼等の記憶から『絶望の記憶』を抜き取り、元の人格に更正させるというのも追加でどうだ?お前たちにとっては、悪い提案ではないだろう」
「な…ッ!?」
その言葉に、一瞬心が揺らぐ。苗木達にとって先輩であり大切な友人でもある彼等を元に戻すことは、世界の復興と同じくらい大切なことであったからだ。
「…待ちなさい。今の貴方のスタンド…『C・MOON』の能力は『重力の反転』の筈よ。スタンドの性質が変化した今、以前の『ホワイトスネイク』の能力をいまの貴方が使える保証はあるのかしら?」
「それに関しては問題ない。『C・MOON』は私が『約束の場所』に近づいたことで『ホワイトスネイク』が変化したもの。…ならばその逆、そこから離れさえすれば再び『ホワイトスネイク』としての能力を使うこともできる筈だ。…この際だから教えておくが、約束の場所は日本ではないのでな」
「だからって…どうして、こんな時にそんな…?」
この状況で取引を持ちかけたプッチの行動に舞園たちは困惑するが、同じように唖然としていた苗木はやがて『プッチの意図』の感づき、苦々しく顔を歪める。
「…貴様、『脅し』のつもりか…ッ!」
「…フン。流石に勘が良いな、苗木誠」
「脅しだと…?」
「そうだ。…もしお前たちがこの取引を吞まなかった場合、私はこの場に居る『苗木誠以外』の誰かを殺す。我が能力によって文字通り地に足のついていない貴様らを殺すことなど造作もないからな」
「なッ…!?」
「そんなこと…僕がさせるとでも…!」
「…『そんな体』でか?」
「…ッ!」
プッチは見抜いていた。コロシアイの中で幾度も傷つき、雪染との闘いで慣れない波紋を、しかも吸血鬼の肉体で酷使した苗木の身体が既にボロボロであるということを。表面的な傷は『G・E・R』によって治せても、これまでの疲労や深層的なダメージまでは回復しきれず、今の苗木は立っているのもやっとな状態であった。
「空条承太郎が時を止めたとしてもおそらくほんの一瞬…。普段ならともかく、今のお前にはそんなものは有って無いに等しい。仮に私をこの場で倒せたとしても、その間に私はここにいる者の『半分』は殺せる。…割に合わないとは思わないか?」
「…嘗めるなよプッチ…ッ!俺達が今更そんな覚悟ができてないとでも思っているのか?貴様を始末できるのなら、その程度の犠牲など安いものだと…」
「ならば十神白夜、何故お前は『グレイトフル・デッド』を使わない?私を本気で殺す気があるのなら、お前の『老化能力』でこの場に居る全員ごと老化させてしまえばいいものを…」
「…ッ」
十神は思わず舌打ちをしてしまう。プッチの言うとおり、現状プッチを確実に仕留められるとすれば十神の『グレイトフル・デッド』を使うしかない。…だが皆が近くに居るこの状況、まして体を冷やす手段も無い今その能力を使えば、下手をすればプッチの前に誰かが死にかねない…特にこの場で最も年寄りの天願は真っ先に死ぬであろう。
無論十神とてそんな危険は承知の上だし、その程度のリスクでやらない理由にはならない。だが、もし万が一、億が一のことが有った場合、その結末が齎す影響を考えた時、十神はその踏ん切りをつけれずにいたのである。
「確かに、苗木誠と出会い、そしてあのコロシアイ学園生活を生き抜いたことでお前たちは強くなった。心も、体も…覚悟も。だがそれ故に、お前たちにはどんなに非情になろうとも捨てきれない『絆』が生まれてしまった。それはお前たちにとって強さの源であると同時に、己の『殺意』に『タガ』をかける楔になる。お前たちの信じる『希望』が、今お前たちの『枷』になっているのだよ」
「……」
「十神君…ッ!」
「…『絶望』したか?苗木誠。自分が与えた影響が、かえって彼らを『弱く』してしまっているいう現実に…」
「…ッ!」
プッチの挑発のような言葉に歯噛みする苗木は、それでも何か言い返そうとし…
ドォォンッ!!
「ッ!?」
バキィィン…ッ!
苗木に代わって答えたのは、一発の『銃弾』であった。反射的に『C・MOON』で防御を試みたプッチであったが、予想外の弾丸の威力に勢いを殺しきれず、左腕の義手の一部を破壊されてしまった。
「…貴様」
「な…!?き、響子…?」
「…ッ、ハァ…ハァ…」
銃声の主、何時の間にか苗木からくすねていた『銃』を両手で握り、反動による痛みで息を荒げていた霧切は、呆然とする皆の視線を受けながら、叫ぶ。
「…知った、ような…口を、利かないでッ!」
「何…?」
「貴方に、何がわかるって言うの…。誠君がくれた優しさが、誠君がくれた温もりが、どれだけ私を救ってくれたか、知りもしない癖に…ッ!」
「響子…」
「誠君。貴方と出逢ってから、確かに私は甘くなったと自分でも思うわ。…けれど、それを後悔したことなんて、一度だって無かった…!私だけじゃない、さやかさんや十神君達も…いいえ、希望ヶ峰学園で死んだみんなも、同じ気持ちの筈よ。貴方に出会えなければ、私たちはきっと自分の『才能』や『しがらみ』に縛られ続け、敷かれたレールの上をただ進むだけだったかもしれない…。でも、貴方が教えてくれた『希望』が、自分で道を切り拓く『覚悟』が、私たちに『自分の希望』を見出す選択肢をくれた…!貴方がやってきたことは、決して間違いなんかじゃないッ!誰かがそれを否定しようと、私がそのことを『証明』してみせる!『探偵』として…貴方を『愛する者』としてッ!」
普段の霧切からは考えられないような激情の籠った叫び。それは自分にとって『夫』であり『恩人』であり、そして同時に『尊敬すべき存在』でもある苗木を否定したプッチを、決して許さないという意思表示でもあった。
「…エンリコ・プッチ。あなたは私たちの覚悟を『薄っぺら』と嗤ったそうね。けれど私からすれば、貴方の方がよほど薄っぺらよ…!貴方が見ている先は、所詮『貴方とDIOだけの希望』でしかない。そこに今を生きる人たちの、これから生まれてくる未来に生きる人たちの意志は存在しないわ。そんな独りよがりの希望が、正しい筈がない…!貴方は自分にとって都合のいい正義しか認められない、つまらない人間でしかないわ!そんな貴方に、私たちは絶対に負けないッ!!」
「霧切響子…貴様…ッ!」
「…ああ、その通りだ!エンリコ・プッチ、お前もまた『自らの希望を模索する者』であることは認めよう。だがそのために、ただ明日を求める人々の想いを、そして貴様と異なる希望を追い求める者達の覚悟を、踏みにじる様な事を許すわけにはいかん!!貴様は『希望』などではない…貴様の希望は、貴様以外の全てにとって『絶望』でしかない、最も許し難い『悪』だッ!!」
「…ッ!」
霧切の、そしてそれに続くように突き付けられた宗方の言葉に、プッチはつい先ほど死の間際のウェザーに言われたことを思い出した。
『プッチ…。確かに、俺はお前に負けた…。だが…、まだ『俺達』はお前に負けてはいない…!俺が果たせなかったことは、必ずジョジョが…皆が繋げてくれる。それは、どこまで行っても『独り』のお前には決してできないことだ…。分かるか…お前が、何をしようと…俺達の『意志』は、消えな…い…』
『C・MOON』の攻撃を喰らい、致命傷を負って尚、ウェザーは死に際に笑っていた。それは自身の命の終わりに絶望したからではなく、仲間にその意志が託されていることを信じているからこその笑みであった。…そしてそれは同時に、そんな相手など居ないプッチに対する、この上ない『あてつけ』でもあったということを、プッチはこの時理解した。
「…ありがとう、響子。君のおかけで、また僕は大切なことを見落とさずに済んだ。そうだ…僕等は一人なんかじゃない。お前の言うように、時にそれが仇になることがあっても、それでも僕等は仲間を、絆を捨てたりなんかしない…!例えこの場で倒れても、僕等の意志は誰かに受け継がれる!僕等が紡いだ絆が有る限り、僕たちの『希望』は消えはしないッ!…お前が何を求めているのか、それはまだ分からない。だが、『たった一人』のお前が求める希望は、所詮『お前一人にとっての希望』でしかない!!そんな希望を、僕は認めないッ!!」
「…23、29、31、33…!何故だ、何故理解できない!?DIOの望んだ『天国』こそが、全ての生きる者達にとっての『幸福』なのだ!それこそが生きる物全ての『運命』なのだッ!お前たちがやっていることは、結末の決まった物語の中で無駄なあがきをしているに過ぎないのだ!お前たちは所詮、釈迦の掌の上を駆けまわる孫悟空ですらない!運命とは絶対!決して変わりはしないのだッ!!」
「ゴチャゴチャうるせぇんだよッ!!運命だかなんだか知らねえが、そんなこと知ったことかよ!テメーがやったことを、俺は絶対に許さねえッ!!」
「…成程確かに、運命とは変えがたい物じゃ。じゃがな、昔から『無理を通せば道理が通る』とも言うのでな。お主の言うようにこの結末が既に決まっていたとしても、過程の『辻褄』が合わなければ、そんな結末になど意味は無い。それこそまさに、『運命的』とは言えんのう。ならば、そうなる様に精一杯に足掻くことに、決して意味が無いとは言えんのではないか…?」
「もしくは、『大前提』から間違っているのかもな?貴様の信じる運命とやらが、貴様の『都合のいい妄想』でしかなければ、無駄なあがきをしているのは貴様…ということになるな。クックック…だとしたら、貴様はとんだピエロだな。精々今のうちに神に懺悔でもしておいたらどうだ?」
霧切や宗方の覚悟が苗木に、そして皆に伝染し、再び闘志が燃え上がる。未来機関の一員として、そしてこの世界に生きる人間として、この男の欲望を叶えてはならない。奇しくもこの瞬間、この場に居るプッチを除いた全員の心が一つになった。この男を許してはならない、と。
「…そうか、それがお前たちの答えか。ならば…望みどおり始末してくれるッ!まずは霧切響子、貴様からだッ!!」
プッチの憤怒と共に『C・MOON』が飛び出し、宙を浮く死体を足場にして霧切へと迫る。
「させるかッ…ぐうッ…!」
苗木も『G・E・R』を飛ばし阻止すべく後を追わせるが、やはり本体のダメージが影響しそのスピードは『C・MOON』のそれより遅い。
「…『スタープラチナ・ザ・ワールド』ッ!」
ドギュウゥゥン…ッ!
苗木の時を稼ぐべく承太郎も時を止めて援護を試みる、が…
「…ッく、もう限界か…!」
…ゥゥゥン…ッ!
承太郎もまた本調子とは言い難く、僅か『一秒』止めるのが精一杯であった。差は縮まったが、それでもまだ届かない。
「康一!『エコーズ』で重く出来ねえか!?」
「…『エコーズAct3』!!」
『…S・H・I・T…!生憎射程圏外デス、康一サマ…』
「そんな…響子ちゃんッ!!」
「…『ムーディ・ブルース』…ッ!」
霧切は『ムーディ・ブルース』を呼び出し身構える。無駄な抵抗だと分かっていても、それでも諦める訳にはいかなかった。この男に黙って首を差し出すような真似だけは、したくなかったのだから。
『無駄無駄無駄無駄ァッ!!』
「…その精神は評価しよう、霧切響子。だが…」
『…スットロインダヨッ!』
ガスッ!
ガムシャラに放った『ムーディ・ブルース』のラッシュを嘲笑うように、『C・MOON』がラッシュの合間を縫って『ムーディ・ブルース』の両肘を拳で打ち据える。すると
ボギボギボギッ…!
「…ッ!!?」
鈍い音と共に『ムーディ・ブルース』と霧切の『肘関節』が裏返り、逆向きに突き出た関節の骨が霧切の皮膚を突き破って飛び出した。
「ッあ゛ッ…!?あ、ぐッ…!」
「響子ちゃんッ!!」
「響子ッ…!」
例えようのない激痛と自分の身に起きた現象に完全に無防備になった霧切に、プッチは止めを刺しにかかる。
「…終わりだ、霧切響子。だが安心するといい、お前の死は無駄ではない。お前の死は、苗木誠から『人間性』を奪う決定打となる。如何に恐ろしい力とスタンドを有していようと、覚悟無き『化け物』となった苗木誠など問題ではなくなる。故に…その命、安らかに神の元に送ってやろう」
「やめろ…やめろ、プゥゥゥゥゥッチィィィィッ!!!」
「『C・MOON』ッ!!」
ゴシャッ…!
「…え?」
「なん…だと?」
想定できなかったわけではない。重力が反転したこの状況での移動方法は『C・MOON』が実演していた。なのでやろうと思えばこの場の誰にでも『可能』ではあった。
…プッチがその警戒を怠ったのは、『この行為』をやりかねない人物が軒並み霧切から離れて…正確には『C・MOON』の間合いの外に居たからだ。現在霧切の近くに居る人物には、そこまでする理由は無い。だからこそプッチは霧切だけに意識を向け仕留めにかかった。
だからこそ、プッチは一瞬戸惑った。今『霧切の前に割り込んで代わりにC・MOONの拳を喰らい、腹部が裏返っている』人物が、なぜそこにいるのかが。
「ご…ぼぁッ…!!?」
「…む、宗方さんッ!!?」
霧切を庇って『C・MOON』の一撃に沈んだのは、宗方京助であった。
最後の流れの経緯は次の話で説明となります。ちょろっと言うなら、彼らもこのままでは終わらない、ってことですかね。
交錯編もあと2、3話かな~…。それが終わったら今年中には追憶編終わらせて2部に入りたいです。…できればですけど