台風でデータとんだあとなんとか直したものなので、ちょっとばかし仕上がり不安ですが…どうぞ
霧切が『C・MOON』の標的となった時、霧切の傍に居た宗方はその喧騒を視界に入れつつ考えを巡らせていた。
(どうする…どうすればいい…!?このままでは間違いなく霧切響子は死ぬ。そうなれば、苗木の『希望』に間違いなく陰りがさす…それだけは避けねばならんッ!)
宗方の中では、既に霧切を救うことは決定事項であった。自分の近くに居るのは逆蔵に御手洗、安藤、十六夜。逆蔵や安藤に危険を覚悟で霧切を救うつもりは無いだろう。御手洗ならやるかもしれないが、この状況で虚弱な御手洗にそれは期待できない。毒の後遺症で動きの鈍い十六夜は論外。ならば自分がやるしかない、宗方はそう決めていた。
苗木に借りを返すというのもあったが、それ以上に…先ほど『愛する者を失った身』として、同じ悲しみを苗木に背負わせたくないという気持ちもあったからだ。
(霧切を『救う手段はある』…それは同時に、あのプッチと言う男に『一矢報いる手段』でもある…!だが俺一人ではそのどちらか…いや、そもそも時間稼ぎにもならんだろう)
当然ながら、宗方に『C・MOON』は視えていない。だが、逆蔵と同じように最前線でスタンド使いと交戦した経験から、プッチや苗木達の視線から大体の位置は把握できている。その経験則が、今自分がやろうとしていることに、意味が無いということを示していた。…『宗方一人』ならば。
(…ならばッ!)
宗方は即座に決断を下す。スタンド使いでないが故に、プッチの注意は自分達には全くと言っていいほど向けられていない。今が千載一遇のチャンスであった。
「逆蔵ッ!」
「む、宗方…?」
すぐ後ろに居る逆蔵に、気取られないよう未来機関の『ハンドシグナル』で作戦を伝える。…いつもと違うところは、逆蔵と宗方の役割がいつもと『逆』であることだ。
「…ッ!!?ば、馬鹿野郎…ッ、そんなことできるわけ…」
「やるんだ、逆蔵…!未来機関の威信の為にも…俺達に希望を託した、ちさの為にもッ!」
「…!」
当然反対する逆蔵であったが、宗方の決意の籠った眼に先の雪染が被って見え、もはや止めても無駄であるということを理解してしまった。
ならば自分にできることは、彼の…愛する男の決意を一瞬でも無駄にしないよう、全力でそれに応えるだけである。
「…分かったよ。こっちは任せな…!」
「ああ…頼むぞ、『相棒』…!」
「ッ!…ああ!」
言葉を交わし終えると同時に、二人は『C・MOON』と同じように宙に浮かぶ死体や瓦礫を蹴飛ばし、さながら宇宙飛行士の様に移動する。宗方の向かう先は、霧切の前…正確には彼女に迫る『C・MOON』との間。
「とど…けぇぇぇぇッ!!」
反転した重力の支配する空間を飛び交い、最後の力を籠めてそこに割り込んだ宗方の腹部に…
ボスッ…!
霧切の心臓目掛け放たれた『C・MOON』の拳が突き刺ささった。
「…ッ!?宗方…さん?」
…メキッ!ゴキャゴキッ…!
「…ご、ぼぁ…ッ!」
呆然とする霧切の眼前で宗方の腹が『裏返り』、胃袋や腸が腹膜を突き破ったのみならず、逆流した消化液が体内にダメージを与え、宗方の口や目から消化液混じりの血が噴き出る。
「宗方さんッ!!?」
「宗方君!!」
予想外の事態に誰もが困惑する中、思わずといった具合に驚きの表情をしたプッチが言葉を漏らす。
「…意外だったな。まさか貴様が霧切響子を庇うとは思っても無かったぞ、宗方京助。よもや愛した女の仇の妻を助けるとはな…」
「……」
「…どうやら無駄な問いかけだったようだ。その傷は致命傷だ。もう貴様は助からん…これで未来機関も終わりのよう…」
「…いい、や…。これは、俺の…『狙い通り』、だ…!」
「…何?」
ギリギリ繋ぎ止めた意識で飛び出た内臓を体に押し込みながら、宗方はプッチに不敵に微笑む。
「生憎…俺達は、お前たちの『見ているモノ』が…見えないのでな…。こうして、攻撃を…くらいでも、ゲフッ!…しなけれ、ば…貴様が、『無防備』であることを、確かめられないのでな…ッ!」
「何だと…?」
「思い知れ…貴様が見くびった、俺たちの『足掻き』を…ッ!」
「…おい苗木、俺を殴って押し出せッ!!」
「逆蔵さん…!?…分かりました、ご武運を!」
後方から聞こえた声にプッチが振り返ると
グオンッ!!
「ぐっ…うおおおおおおおおッッ!!」
「何ッ…!?」
喉も枯れんばかりの怒りの雄叫びとと共に逆蔵がプッチに殴り掛かる。逆蔵は宗方が霧切の方に向かうと同時に同じように死体や近くに居た人を足場にし、最後には跳躍と同時に苗木に足の裏を殴らせ、砲丸のように押し飛ばされてプッチの傍にまで詰め寄ったのだ。
当然プッチに近づけば近づくほど反転した重力の影響を強く受けることになる。…だが、逆蔵十三は『ボクサー』である。そしてボクシングは殴り合いもさることながら、一瞬の『瞬発力』がモノを言うスポーツだ。その頂点に立った男の全力で、更に愛する者を傷つけられた『怒り』も加わった跳躍。更にそこに吸血鬼の苗木のパワーが加われば、この一瞬に限って、プッチの能力は意味をなさないのである。
「小癪な…だが、この程度スタンドを手元に戻せば…」
「…その慢心が、貴様の命取りだ…!」
グググ…!
「…ッ!?」
『C・MOON』を呼び戻しガードしようとしたプッチだったが、『C・MOON』が戻ってくる気配はない。それどころか、体がまるで何かに『掴まれたように』動かない。
「こ、これは…まさかッ!?」
「…ああ、そうだ。皆が時間を稼いでくれたおかげで…追いついたぞ、プッチッ!」
なんとか目だけで『C・MOON』の方を見れば、そこには今にもプッチの元に向かおうとしていた『C・MOON』の頭を掴んで逃がさない『G・E・R』。承太郎、宗方、そして逆蔵がプッチの気を惹いて時間を稼いだおかげで、『G・E・R』はようやく『C・MOON』に追いつき、射程に捉えたのだ。
「し、しまッ…!」
逃げ場を失い愕然とするプッチとそのスタンド目掛け、逆蔵と『G・E・R』が拳を握りしめ
「これが…」
「俺達の…」
「「怒りだァッ!!」」
『無駄ァッ!!』
ボギィッ!!
ドゴォッ!!
プッチと『C・MOON』の顔面を砕かんばかりの一撃を叩きこんだ。
『プギッ…!?』
「ごあッ!!」
怒りの一撃を喰らったスタンドとその本体は悲鳴を上げて吹っ飛ばされ、諸共近くの瓦礫の山に叩きこまれた。
「や、やった!」
フッ…
「うおッ…とぉ!?」
それと同時に、皆を拘束していた反重力が解除され、ようやく地に足をつけることができた。それを確認すると同時に、苗木は叫ぶ。
「仗助さんッ!宗方さんと響子の治療をッ!!」
「わかってるぜ!!」
仗助は苗木に言われる前に霧切たちの元に走っていた。現状、『C・MOON』に対抗できるのが苗木しかいない以上、苗木を治療に回している暇はない。それが分かっているからこその判断で会った。
「ッうう…」
「大丈夫かよ霧切?」
「私のことは…それより、早く宗方さんを…!」
「ああ、分かってる…とっくにやってるぜ!」
「響子ちゃん…!糞ッ、…苗木君!そのクソッタレ野郎を逃がすなよッ!」
「…ええ、当然ですよ、黄桜さん…!」
自分では一矢報いることすら叶わないことに、親友の娘を殺されかかった怒りをぶつけられない黄桜の無念を背負い、苗木はプッチの方へと歩み寄る。脳震盪で動けないプッチに一歩一歩、処刑台に向かう執行者の如く、プッチが犯した罪を数えるように苗木は迫る。
「ぐ、ぬぅ…!」
「終わりだプッチ…!貴様には懺悔の時すらやるものか、罪を抱えて地獄に落ちろPrete pazzo(イカレ神父)ッ!!」
「…く、くくっ…!」
「…な、なんだ…?」
突如笑い出したプッチに、皆が怪訝そうに眉を顰める。圧倒的に追い詰められているのはプッチの方だというのに。気が狂ったのかとも思ったが、その笑い声には狂気ではなく明確な理性…『嘲り』のようなものを感じる。
「…まだ何か『奥の手』でもあるというのか?やってみろ…お前のやる事など全て叩き潰して…」
「ククク…奥の手か、確かにそうだ。だが、それは私がやるのではない…引鉄を引いたのは、『お前』なのだよ…!」
「何…?」
「お前が我が『C・MOON』の能力を『解除』したことで、私の用意した『保険』の条件は整った…!先ほどお前がぬかしたお前たちの『怒り』とやらは、終末を呼ぶラッパだったようだな…!」
「『C・MOON』の能力…?貴様、一体何を…」
…ォォォォォオオオオオッ…!
「…ッ!?」
瞬間、吸血鬼の並外れた聴覚が捉えた『風切り音』が、苗木に身を翻すという選択肢を齎した。そして本能的にそれを実行した直後
グシャァァァァアッ!!
空から飛来した『何か』が一瞬前まで苗木が立っていた場所に『墜落』し、その衝撃により砕け散った『何か』の欠片が飛び散り、苗木に降りかかった。
「ぐうッ!?」
「苗木ッ!?」
「だ、だいじょう…ッ!?これ、は…」
顔や服に付着したそれを払おうとして、苗木は『それ』の正体を見るまでもなく察した。苗木の全身を赤黒く染め上げたのは…大量の『血液』と『肉片』。そして…砕け散った『人骨の欠片』。
「これは…『人間』!?人が…空から『降って来た』ッ!」
「な…何ィッ!?」
苗木の言葉に驚愕した皆が思わず飛来した『それ』に目をやる。…そこにあったのは、足や股関節が異常な方向に捻じ曲がり、上半身に至ってはもはや存在せず、それがあったであろう箇所の地面には潰れたトマトのような『上半身であったもの』の残骸が…
「うっ…げぇえええッ…!」
その無残な姿に死体は見慣れてしまった筈の支部長たちも顔を青ざめ、御手洗に至ってはその場で吐いてしまうほどであった。
「馬鹿な、どうして人が空から……まさか、貴様の仕業かッ!?」
「フフフ…それは『半分正解』だ。言った筈だ、引鉄を引いたのは『お前』だと…」
「僕が…?…まさか、このタイミングで降って来たのは…!」
「そうだ…!私がお前たちと戦闘を始めた段階で、既に彼らはここに向かって『墜ちてきていた』のだよ。それを、我が『C・MOON』の能力によって上空に留めていたに過ぎない…。お前たちによって能力が解除された今、墜落する彼らを止めるものは何もない…ッ!」
「彼らって…まだ降ってくんの!?」
皆が顔を上げた先には、空のかなたにちらほらと視える黒い物体。それは確実に地上へ向けて墜ちてきており、己の死と引き換えに自分たちに死の恐怖と絶望を与えようとしているのを、目だけでなく肌でも感じ取り、全身が総毛立つ。
「ッ、アレは…!」
そんな中、承太郎や仗助ら超視力を持つスタンド使いや苗木には見えた。上空に浮かぶ輸送機からパラシュート無しのスカイダイビングという蛮行に躊躇いなく挑む彼らが一様に被っている、もはや見慣れてしまった『白黒のクマの仮面』が。
「奴ら…『絶望の残党』だッ!!」
「何ッ!?」
「その通りだ…!江ノ島盾子という先導者を失った以上、彼等を突き動かしているのは殉教と言う名の『自殺願望』に近い…。故に私は、彼らに『死に場所』を与えてやったのだよ。未来機関の支部長たちを巻き添えにできる、最期に最高の『絶望』を伴った死をな…!」
「て…テメェ~ッ!性根から人間じゃあねぇーッ!!」
「クックック…さあ、絶望の幕開けだ!精々生き延びてみせるがいい。神のご加護が有らんことを…Amen」
「プッチ…貴様ァァァァッ!!!」
怒りのままに苗木がプッチに跳びかかろうとするが、それを防ぐように天から降り注ぐ『人の雨』が彼等に襲い掛かった。
グシャァァァッ!!
ブチュッ!グチャッ…!
次々と降ってくる絶望の残党たちが、生きたまま地面に叩きつけられ残骸へと成り果てる。時に地面に倒れたままの死体と衝突する形で諸共砕け散り双方の肉片や臓物が混じりあって拡散するその光景は、おそらくこの世で最も悍ましいものであるだろう。
「うげッ…うええ…」
「流流歌…ッ!危ないッ…!」
「え…あ…?」
『ドララララララァッ!!』
ドドゴォッ!
「きゃあッ!?」
「おい、大丈夫かよ?」
「あ…あ、ありがと…」
「おう…っつーか十六夜、テメーも碌に動けねーなら人の心配してる場合かよ!」
「俺はいい…それより、流流歌を…!」
「馬鹿…!アンタが死んだら意味ないでしょ!…るるちゃん、こっちに!」
「う、うん…」
絶え間なく落ちてくる絶望の残党たちに成すすべもない支部長たちを仗助らスタンド使いの面々が一箇所に纏めて防衛にかかる。
「宗方!宗方ッ!!…糞!おい東方、宗方が目覚めねえぞ!ちゃんと治ったのかよ!?」
「俺は完璧に…治したっつーの!つーか、今はそれどころじゃあねえんだよ!」
「クッ…!これじゃあ、キリがありません!」
「…プッチは!?」
必死の防御の中ふと目を向けると、いつの間にかプッチはその場を離れ死体が積み込まれていた十三支部の船へと向かっていた。
「野郎何時の間に…!?だが、あそこに逃げてどうするつもりだ…?」
「…ッ!いや、まずいぞ…!未来機関の船には、万が一の事態に備えて『脱出艇』が常備されている!奴はそれを使って逃げる気だ!」
「…確か、脱出艇は全て『自動運転』だった筈だ。仮に操縦者が居なくても、行き先さえ設定すれば勝手に動き出す…」
「じゃあ、このままじゃあ逃げられちゃうよぉ!!」
「…苗木君、空条君ッ!ワシらの事はいい、プッチを追うんじゃッ!!」
「…はいッ!」
「仗助!ここは任せたぞ!」
仗助らに皆を任せ、苗木と承太郎は逃げ出そうとするプッチを追う。しかし、なおも上空から降ってくる絶望の残党たちが行く手を阻み、なかなか前に進めない。一方プッチはこの状況を想定していたのか降ってくる範囲から既に外れた場所に居るため、その行く手を阻む者は無い。
「チィッ…苗木!俺が一瞬時を止める。その隙にお前だけでも突っ切れ!」
「はいッ!」
「いくぜ…『スタープラチナ・ザ・ワールド』!!」
ドギュウゥゥンッ…!
承太郎が時を止めると、承太郎と苗木を除くこの世の全てが停止する。絶望の残党たちも空中で停止した状態になるが、それもほんの僅かな時間しか保てないであろう。しかし、苗木にとってその一瞬さえあれば十分であった。
「…ハァァッ!!」
時が止まると同時に苗木はギアを上げ、停止したままの絶望の残党たちの合間を疾風のようにすり抜けていく。そしてプッチを射程に捉えようとしたその時…気が付く。
「…!?」
苗木は思わず目を見開く。何故なら、時が止まる直前まで必死に逃げようと『前を向いていた』筈のプッチが…いつの間にか『こちらを向いていた』のだから。
「こいつ…なんでこっちを?あの一瞬で振り返るほどの余裕はない筈なのに…」
刹那の思考の中で、苗木は考える。時が止まるまでの間にこちらを向くことは不可能だ。どんなに早く反応できても途中で止まってしまうだろう。ならば答えは『一つ』しかない。…プッチは、『時が止まった中で振り返った』のだ。
「…まさか、『見えて』いるのか…こいつはッ!?」
「……」
止まったままのプッチは答えない。だが、こちらを見るその眼に確かな『意志』を感じた苗木はそれを確信する。
そしてその瞬間、時は動き出した。
…ギュゥゥゥゥッ…!
「…プッチッ!!」
弾丸の如く苗木はプッチに飛びかかる。何故プッチが時の止まった空間に反応できたのか、それは分からない。だが、自分の中の何かがその事実に『警鐘』を鳴らしているのを苗木は感じ取り、考えるより行動に出たのである。
「ぐっ…『C・MOON』…!」
「無駄ァ!!」
ドゴォッ!
やむを得ずスタンドで防御しようとしたプッチを、苗木と『G・E・R』がまとめて吹っ飛ばす。
フワッ…
「ッ!ま、また体が…」
『C・MOON』の出現により再び周囲の重力が反転し、苗木以外の皆が浮き上がると同時に、絶望の残党たちの落下も止む。
だが、苗木にはそんなことはどうでもいい。今この場で、確実のこの男を始末する。苗木の意識はただそれだけであった。
「終わりだ…死ね、プッチッ!!」
倒れ伏すプッチに、苗木は止めの一撃を叩きこむ。
「く、糞…2、3、5、7…違う、まだだッ!まだ、私は終わるわけにはいかないのだッ!我が友の為に、我が信念の為に…私は、決して『諦めない』ッ!!」
プッチの口から洩れる言葉。苗木達にとってそれは無念の断末魔でしかないであろう。
…しかし、忘れてはならない。スタンド能力を成長させるのは、スタンド使いの『覚悟』だ。そこに『善悪』は関係ない。ただ純粋なる渇望と思いが、スタンド能力を進化に導く。苗木はそうして『レクイエム』の力を手にした。…ならば、同じことがプッチに起きないなど、誰が言い切れるであろう。
目の前の『絶望』に抗おうとするプッチの覚悟。その想いに…
…フッ…!
「……え?」
彼のスタンドは、『応えた』。
「…ば、馬鹿なッ!?」
「どうした…苗木!?」
「奴が…プッチが、『消えた』!」
「何ッ!?」
『G・E・R』の拳が当たる直前、突如プッチの姿が眼前で『消失』し、その拳は空ぶって地面を打ち据える。苗木は即座に辺りを見渡したが、プッチの姿はどこにも見当たらなかった。
「ど、どこへ消えやがった!?あの一瞬で逃げられるわけが無えッ!」
「…『超高速で移動した』?それとも『瞬間移動』…いいえ、それでも『G・E・R』なら反応できるはず。…『透明化』?違う、姿は隠せてもそこにある『質量』まで消せはしない…!一体、どういうこと…?」
「…苗木!奴の能力はまだ継続中だ!ならば、周囲が海で囲まれている以上、この島のどこかに必ずいる筈だ!」
「分かっています!『ゴールド・E』!」
苗木は『ゴールド・E』の能力で周囲の生命エネルギーを探る。そして間もないうちに、プッチの生命エネルギーを探知した…最悪の位置で。
「…ッ!?な…馬鹿な!プッチは既に、『船に乗り込んでいる』ッ!?」
「何だと…!?」
「あり得んッ!いつの間に…クッ、苗木!追えッ!!」
「…うんッ!」
脱出艇で逃げられる前にプッチを仕留めるため、苗木は急いで船へと向かう。
タッタッタッタ…トォーンッ!
そしてタラップを上る間を惜しみ船の甲板へと一跳びに跳び上がり…
…ピーッ!
「え…」
ボゴァァァンッ!!
苗木が甲板に降り立つ寸前に、突如船が『大爆発』を起こして炎上した。
「なッ…!?ば、爆発しやがった!!」
「ま…誠君ッ!!?」
…クルクルクル…ズシャッ!
「…クソッ!奴め、あらかじめ爆弾を仕掛けていたな!!」
「あ…ピンピンしてる、ってか無傷じゃん…」
「そういえば…最初に爆撃された時も無傷だったな」
爆発の規模に皆は苗木の安否を心配したが、直後に上から無傷の苗木が降って来たことで杞憂であったことに胸をなでおろす。
「…って、ホッとしてる場合じゃあねえ!苗木、プッチは!?」
「…!あそこッ…!!」
戦刃が指差した先には、爆発前に発進していたであろう脱出艇の『ボート』が沖へと向かって進んでいた。その船からは、間違いなくプッチの生命エネルギーを感じることができた。
「…逃がすかァァァッ!!」
それを視界に捉えると苗木は全速力で海に向かって走り出す。
「苗木、無茶だ!!」
「無茶でもなんでも、このまま黙って見送るなんてできませんッ!!絶対に、ここで終わらせるんだ!!」
承太郎の制止を無視し、苗木は防波堤の先から力の限り海に向かってジャンプした。
「おおおおおおおおッ!!!」
オリンピックに出れば間違いなく未来永劫更新されることは無いであろう走り幅跳びの距離を叩きだした苗木の跳躍であったが、未来機関の最新鋭ボートのスピードは並ではなく、それでもまだ絶望的な距離があった。
しかし、それでも苗木は諦めない。
「『ゴールド・エクスぺリエンス・レクイエム』ッ!!」
ドギュオオオオオッ!!
飛距離の限界に到達すると同時に、苗木はボートに向けて『G・E・R』を『射出』する。レクイエム化したことで大幅に射程距離の伸びた『G・E・R』であるが、目測で苗木とボートの距離は『約200m』ほどあった。それほどの距離の操作は苗木にとっても賭けであったが、それでもやるしかなかった。例えプッチまで届かなくとも、指一本でもボートにしがみつくことができれば、スタンドパワーの続く限りプッチにくっついて行くことができる。苗木はただ、それだけを考えていた。
「プゥゥゥゥッチィィィィィッッ!!!」
スピードの限界まで接近し、さらにそこから見よう見まねの『流星刺突』で指を伸ばしてボートに迫る。
そして…
バシャァァァンッ!!!
プッチに何が起こったのかは、大体想像つくでしょうがまた次回
人間ミサイルはちょっとやりすぎた感があるような気がする…