…絶望編10見ました…
絶望編に出る時点で分かっていたものの、やっぱり七海は死んでしまいましたか…。しかもスーダンの時の原型のようなゲーム形式のおしおき…。ゲームの時とは違う生々しい悲鳴が痛々しかったです。そりゃみんなも絶望するよね。
…さすがにウチと被ることは無かったですね。まあやったのが雪染なので「信じていた人に殺された」という辺りは似ていますが。
そして七海を看取ったカムクラの涙。あれで元に戻ったとは思いませんが、きっとあの涙が江ノ島を切り捨てるきっかけになったと思いたい。もしそうなら、スーダンの結末は日向とカムクラが初めて意気投合した七海の「仇討ち」と言うことに…そうであって欲しいッ!
しかしここまでやられると僕としてももっと絶望的なシチュエーションにしないとこの作品も盛り上がりませんね。そのためにも、この追憶編で日向と七海の純愛をやらねば…!
…逆蔵?ああ…そんなホモいたね…。つーかマジですか…?だとしたらあの最期に言いかけた言葉って……ある意味あの宗方はギリギリセーフだったわけか。番組の趣旨的に…
騒動があった翌日…
「ふぅ…昨日はストレス溜まったぜぇ。逆蔵君全然納得してくれねえんだからなあもう…」
「…黄桜先生」
「およ?」
学園内を歩いていた黄桜に雪染が声をかけた。
「おう。雪染先生、どうしたよ?」
「…少しお時間よろしいですか?」
「…どしたの?妙に顔が怖いけど…」
「…日向君のことです。黄桜先生、彼は一体『何者』なんですか?」
「…それは、どういう意味かな?」
「そのままの意味です。…彼は他の子たちと比べても明らかに『場慣れ』しています。逆蔵君を相手にほぼ無傷でやり過ごせるなんて、『予備学科』の域を…それどころか『超高校級』でもそうできることではありません。それに、彼は異質なほど学園の事に『詳しすぎ』ます。…一教師として、彼が何者なのかをハッキリしておきたいんです」
「……」
雪染の主張に、黄桜は少し思案した後、観念したようにため息を吐く。
「…分かった、教えるよ。ただし、そいつは『教室』に行ってから話させてもらうよ」
「教室…?」
「君らも気になるんだろ?」
「え?」
「…あ、アハハ…」
黄桜の呼びかけに応えるように、物陰から77期第一クラスの面々が姿を見せる。
「あなた達…どうして?」
「いや…俺らも気になっちまって…」
「日向はどうも俺達に何かを隠している節がある…。この俺の邪眼の前で隠匿は許されん…」
「それに…俺達はまだアイツの事を全然知らねえからな。なんで『波紋』なんてとんでもねー力を持ってる奴がいつまでも予備学科にいるのか…納得がいかねーんだよ」
「みんな…」
「…んじゃ、一旦教室戻ろうか。昨日逆蔵君に説明したことを、君たちにも教えるとしよう。彼の…日向君の、『本来の役割』ってやつをな…」
「本来の…役割?」
その頃、予備学科校舎の廊下では菜摘とサトウが言い合いになっていた。
「菜摘…いい加減にしなさいよッ!そろそろ白状したらどうなのッ!?」
「はぁ~?何言ってんのかさっぱり分かんないんだけど?」
「恍けないでよ…!アンタの目的は『真昼』でしょ!?昔の知り合いだったのを利用して、真昼を本科から引きずりおろすつもりなんでしょッ!」
「はぁ?…プッ、アッハッハッハ!きゅ、急に何かと思ったら…何訳の分かんない言いがかりつけてんのさ?」
「…これを聞いてもそう言えるの?」
サトウはポケットから『ボイスレコーダー』を取り出すとそれを再生する。
ブブ…
『…ねえ九頭竜さん、サトウってよく知らない女の子とお弁当食べてるんだけど、あれ誰か知ってる?』
『ああ、アレ?あれ本科の生徒よ。『超高校級の写真家』とか言われてて、偶々アイツの友達なのよ』
『ほ、本科!?…でも、なんで本科の人がわざわざこっちまで来るの?』
『さあね?…もしかしたら、サトウに会いに来たって言うのは口実で、実はアタシらを見下していい気になってたりしてるんじゃない?』
『え…』
『アイツ昔っからいい子ちゃんぶってるけど、実際は結構嫌味な奴だからねー。案外アタシらの事鼻で嗤ってるんじゃない?』
『…そんなの、酷いよ…』
『…ちょっと、そんなに怖い顔しないでよ。冗談だって冗談』
『…ッ!そ、そうよね…そんなこと、ないよね…』
「…どう、これでもシラを切るつもり?」
「…アンタッ!いつの間にこんな…」
「忘れたの?私も新聞部だったんだから。真昼の撮った写真を生かすために、普段からできることはなんでもやってるのよ…!」
「…ハン!『金魚のフン』も拗らせると性質が悪いわね。アンタ、『ストーカー』の才能でもあるんじゃないの?」
「…このッ!いい加減に…」
我慢の限界が来たサトウが思わず菜摘に向けて手を振り上げ…
ガシッ!
「ッ!?」
「…そこまでだ。それ以上は捨て置けねえ」
「日向…くん…!?」
いつの間にか背後に立っていた日向に抑えられる。
「放して!こいつは…真昼を…ッ!」
「それでもだ。君がそんな風に暴力をふるうことを、小泉は望んでいない。君よりはずっと付き合いは短いが、それだけは断言できる。だから…やめてくれ」
「…ッ!」
「…はん、随分いいタイミングで出てきたわね。正義の味方気取り?」
「生憎俺はどっちかってと『ヒール系』なんでな。そんなつもりはねえよ。…盗み聞きするつもりはなかったが、話は全部聞かせて貰った。菜摘さん、本科を目指す気持ちは分かるが、だからって他人を主観だけで中傷するのは間違っている。君と小泉がどんな関系かは知らないが、俺でも分かるぐらいなんだ。アイツはそんな奴じゃないってことぐらい知ってる筈だろう?」
「…さあね?アイツの事なんか分かりたくもないし分かるつもりもないもん。ただ、アタシは『本科に入る』為ならなんだって利用してやるわ。邪魔するんなら…アンタら纏めて潰すわよ」
「この…ッ!家が『極道』だからって調子に乗るんじゃないわよッ!」
「…何その言い方?アタシが『それだけ』みたいなこと言ってんじゃあないわよ」
「その通りじゃないの!アンタなんかに、本科に選ばれるような『才能』なんかあるもんですかッ!」
「んだとテメエ…ッ!」
再び一触即発の雰囲気になりかけた時…
フワフワ…
「…え?」
「シャボン玉…?」
パチンッ!
「キャッ!?」
「うわッ!?」
一つの『シャボン玉』が二人の間に割って入ったかと思うと、突如予想以上に大きな破裂を起こし二人の気勢を削ぐ。
「…もうやめろ二人とも。今のお前らの争いにはなんの『意味』もない。お前らはただ互いの大事な人を理由に相手を貶し合ってるだけだ。それは小泉や九頭竜の『誇り』を穢す行為だ。二人の『友達』として、そんなことは俺が許さん」
「……クッ!」
「…なんなのよアンタはッ!?」
「言っただろ。…俺はアイツらの『友達』だ。だから俺の友達が悲しむようなことを、決して見逃す訳にはいかない。それが、俺なりの『友情』だからだ」
「…クソッ!」
射抜くような日向の視線に耐えきれなくなったのか、菜摘は悪態を吐いて去って行ってしまった。
「おい!…しょうがねえな。サトウ、お前も少し落ち着け。他人がどう思おうが関係ねえんだ。お前が小泉を信じていれば、誤解なんかきっと解ける。今のお前に必要なのは菜摘さんを糾弾することじゃあねえ、…『自分の中の小泉』を信じることだ。…早まった真似だけはするんじゃあねえぞ」
「……」
「…サトウ」
「…分かってるよ」
「…そか、ならいいんだ。…じゃあな。…待てって菜摘さんよ!」
菜摘を放っておく訳にもいかず、日向はサトウに一言告げると後を追っていった。
「…分かってるよ、そんなこと…!でも、やっぱり駄目なんだよ…!アイツがいる限り、真昼はずっと苦しむことになる…、だったら…アタシが真昼を守らないと…ッ!」
…77期生第一クラスでは、久しぶり…本当に久しぶりに黄桜が教壇に立っていた。しかし、それは授業の為ではない。
「さて…なにから話したもんかね?」
「なにからって…『全部』話してくださいよ!」
「こちとら隠しごとされたまんまじゃ納得できねえっての!」
「洗いざらい吐いちゃいましょうよ、先生?」
「偶にはゲロ以外のことも吐けよな!」
「…手厳しいねえ、オレ一応お前らの担任よ?」
「そう言って欲しいなら真面目にお願いします!」
「やれやれ…最初に言っとくが、今から話す内容は絶対に言いふらさねえって約束してくれ。特に、『外部』に漏らすのだけは勘弁な?」
「…分かった。約束しよう」
「う、うん…」
皆の確認をとった後、黄桜はふぅと息を吐いて語りだす。
「まず、日向君なんだが…はっきり言ってしまえば、彼は『正式な希望ヶ峰学園の生徒ではない』」
「ッ!?」
「生徒じゃない…じゃあ、アイツはなんなんだよ!?」
「彼は本来、『SPW財団』に所属する『波紋一族』との『窓口』を務めている人物だ」
「波紋って…日向おにいの得意技の?」
「ああ。俺も話に聞いただけなんだが…波紋って言うのは思った以上に歴史のあるものでよ、なんでも『二千年以上』前から伝承されているものみてえなんだ」
「二千年…!?アイツそんなものに関わってんのか…」
「…ていうか、そもそも波紋ってなんなんですか?前に日向が『吸血鬼』だとか『柱の男』とか言ってましたけど…正直意味不明で…」
「いやオレも詳しいことは知らねえんだけどよ。…ともかく、波紋の一族はかなり昔からSPW財団とのつながりがあった。日向君はその二つを繋ぐ『掛け橋的存在』なんだよ」
「…けど、それがどうして希望ヶ峰学園に?」
問われた黄桜は少し辺りに視線を向け、やがて若干声を落として続ける。
「…実はな、財団は一般には知られていない『波紋一族の遺物』の数々を所有している。中には半ばオカルトに片足突っ込んだものもあるらしい。…この学園は『超高校級の才能』を育てる教育機関であると同時に『才能』そのものを研究する『研究機関』でもある。その研究の為に、学園は財団からそれらの遺物の一部を借り受けているのさ」
「希望ヶ峰学園が…研究機関!?」
「あのでっかい『研究棟』はその為だったってことか…」
「ってことは…俺達はそいつらの『研究対象』って訳かオイ!?」
「待て待て、そう怒るな。…この学園だって国が管轄してる以上、ただ才能ある若者を育てりゃそれでいいって訳じゃねえ。君たちが成長していく中で、どういったものが君たちが『超高校級』足り得る要因なのかを研究して、それを後々の教育に役立てていく。…それがこの学園の『方針』なんだよ。いわば、君たちは未来の若者たちの『先導者』ってワケだ」
「…どうにもはぐらかされた様な気がせんでもないが…」
「まあ、そういうことにしておこう…」
自分たちが観察されているということに九頭竜らは憤慨するが、黄桜に宥められ一応抑える。
「それで…それが日向とどう関わって来るんだよ?」
「…さっき財団の遺物を借り受けたって言ったが、当初財団は渋りに渋ったのさ。けど、学園の相談役の天願さんと財団と深いつながりのある『さるお方』が知り合いでな、その伝手もあってなんとか許可を得ることができたんだ。…ある『条件付き』でな」
「条件…?」
「その条件ってのが、『学園に財団の協力者を入学させ、万が一のことがあった時にその対応をこちらに一任する』…というものだったんだよ」
「ってことは…日向は…」
「そう。日向君はSPW財団から派遣された『希望ヶ峰学園を監視する』役目を持った特待生…いわば学園の『監視者』…俺達は『ガーディアン』と呼んでるがね」
「監視者…ガーディアン…!?」
「日向君のこの学園での役目は、希望ヶ峰学園が財団が支援するに値する存在であり続けているかを見極めることだ。そして万が一学園に何かあった場合、それに独断で介入することも許されている。故に日向君はいついかなる時でも本科校舎への立ち入りが許可されている。彼が気軽にこっちまで来れるのはそういうことさ。…最も、このことを知らない連中もいるからそいつらにとっちゃ不審かもしれねがな」
「…だが、そういうことならいっそ『本科』でも良かったのではないか?それならわざわざ予備学科と本科を往復する必要はないだろう」
辺古山の疑問に、黄桜は首をすくめる。
「ところがね…こう言っちゃなんだが、彼には『超高校級』とまで言えるほどの『才能』はない。彼の得意とする波紋は現代科学では立証不可能だから、才能として認めることも出来ねえ。かといって無理やりでっち上げたところで世間様にどう説明したもんだか…という訳で、彼には予備学科の生徒として在学してもらうことになったってワケだ」
「…これが日向君の全てだ。彼は生徒であると同時に、学園が間違った方向に進まないかを監視する財団の『目』であり有事の際には自ら動く『手』でもある…そういう立場なんだよ」
黄桜の話を聞き終えた雪染と生徒たちであったが、未だに整理がつかないのか戸惑いを隠せずにいた。
「…日向の奴、けっこうヤバめな『役目』を任されていたんだな…」
「ある意味で、私たち以上に『特別』なお立場にあったんですね」
「…黄桜先生、そのことを知っているのは…」
「…日向君の立場について知っているのはここに居る全員と学園長、…それと天願さんと昨日説明した逆蔵君『だけ』だな。他の職員には日向君の立ち入りを許可することだけが伝えられてるよ」
「しかしよ…聞いといてなんだがんなとんでもねえこと喋っちまっていいのか?下手に外に漏れたら大ごとだぜ?」
「まあな…。けど、お前らの事だからちゃんと説明しとかねえと納得しねえだろ?下手に嗅ぎ回られるぐらいなら、いっそ洗いざらい説明しちまえ…それが学園長の判断なんだよ」
「学園長が…!?」
学園長の秘匿主義を知っている雪染はそのことに驚く。
「…アイツも変わったもんだな。前なら是が非でも隠し通そうとしたはずなのによ…『黄金の精神』ってのは、それほど大したものだったってことかい」
「…?何を言ってるんです?」
「おっと、なんでもねえよ。…それより、今の話は秘密にしておてくれよ?下手に騒がれると俺が財団から大目玉喰らっちまうからな」
「…分かってますよ」
「先生のクビが飛ぶのはどうでもいいけどー、日向おにいの邪魔になるのは嫌だしね」
「しかし…日向の奴も思ったより大変なんじゃのう。学生と監視のふたつの草鞋を履いていかねばならんのじゃから…。せめて『友人』であるワシらが息抜きぐらいはしてやらんとのう!」
「…そうだね、その通りだよ!」
日向の事情を知った皆は、少しスッキリしたと同時に、日向の為になにかできないかと話し合いだした。
「……」
そんな中、狛枝だけは口を閉ざしたまま考え込んでいた。
「…どうしたの狛枝君?」
「…日向君ってさ、ホントに僕等のことを『友達』と思ってるのかな?」
「…は?」
「急に何言ってんだテメエ?」
水を差すような一言にソニアや花村はポカンとし、九頭竜や左右田らは眉を顰める。
「いやさ…日向君は希望ヶ峰学園を監視するためにこの学園に来たんでしょ?…なら、当然この『本科』のことが知りたいはずだ。なら、日向君はこっちの校舎に来る『口実』として僕等と関係を持ったってことも…」
「それは、流石に…」
「…そんなことないッ!」
「うおッ!?」
「な、七海さん…?」
狛枝の発言に、七海がらしからぬ大声を上げて反論する。
「日向君は…そんなことなんか考えてないよ!日向君は優しくて…温かくて…皆のことを大事に想ってくれてるんだよ!だから…日向君は、そんな人なんかじゃないよ!」
「…そうかな?それも全部『演技』って可能性だって…」
「…ッ!」
バチンッ!
「…ッ!」
「な、七海さん!?」
狛枝の言葉を遮るように、七海が狛枝の頬を打った。
「そんなことない…ッ!そんな酷いこと言う狛枝君なんか…大っ嫌いッ!」
タッ…!
「あ…お、おい七海!?」
「七海さん!?」
教室を飛び出していった七海を皆が追いかける。後に残されたのは、苦笑いで頬を抑える狛枝と呆然とする教師2人。
「…アハハ、嫌われちゃったかな?ま、慣れてるから別にいいんだけどね」
「…キミも馬鹿だねぇ。あのままだまってりゃ穏便に済んだものを…」
「しょうがないんですよ。…彼らの素晴らしい『才能』に、余計な『横槍』を入れかねない要因は、全て排除しておかないと…」
「…狛枝君、今後そういう発言は控えた方が良いわよ。じゃないと、余計な敵を増やすだけよ」
「…望むところですよ。僕みたいな屑が犠牲になるだけで皆の才能が守られるのなら、安いものですよ…!」
「アナタ…ッ!」
「…危ういね」
「ええ…それにしても、七海さんがあんなに感情を露わにするなんて…」
「…ま、誰だって友達を悪く言われりゃそうもなるさ。特に、『特別な誰か』を侮辱されりゃよ…」
「…由々しき、事態ですね」
結局、なんとか落ち着いた七海と共に皆も教室に戻ってきて、その日はそのまま解散となった。…しかし皆の胸中には、狛枝の残した僅かな『しこり』が残ることとなった。
「……」
その日の夜、人気のなくなった予備学科校舎にある空き教室の一つで、サトウは呼び出した人物が来るのを待っていた。
ガラッ
「…来たわね」
「あら、やっぱりアンタだったのね。こんなことなら来るんじゃなかったわ」
やがて扉が開き、目的の人物…菜摘が入って来たのをサトウは暗い目で確認する。
「…で、何の用なワケ?『大事な話がある』なんてこんな置手紙なんかしちゃってさ」
「…その口ぶりだと、差出人がアタシだって気づいてたみたいね。よく来たモノね…」
「呼び出しといて何よその言い方。…別に、ただの気まぐれよ」
鼻を鳴らしてそっぽを向きながら、菜摘はあの後日向と話したことを思い出していた。
『…待てって菜摘さん!』
『なによッ!?気安く名前を呼んでんじゃあないわよ!』
『いいから少し落ち着いてくれ!今の君は冷静じゃあない!』
『なによ!アタシが悪いって言うの!?手を出したのはあの女じゃない!』
『…確かにそうだが、だからって君に非が無い訳じゃあないんだぞ!友達をあんな風に言われれば誰だって腹が立つに決まっているだろう!君だって、九頭竜や辺古山を悪く言われて黙っていられるのか?』
『…ッ!煩いッ!そんなの当たり前じゃない!…でも『今のアタシ』に、お兄ちゃんたちの味方になる『資格』なんてないのよ!才能が無い人間に…才能がある人間の『隣』に立つ資格なんてないのよ!だから…アタシはどんな手段を使ってでも本科に入ってやる…!お兄ちゃんやペコちゃんの傍に居るためには、そうするしかないのよッ!』
『…それは違うぞ!』
『んな…ッ!?』
『誰かの事を『想う』のに、誰かと一緒にいることに、『資格』なんか必要ねえんだよ。本当に大事なのは、そう在りたいっていう自分の気持ちを『信じる』ことだ。どんなに才能があっても、何かを信じることができない奴に、仲間なんてできやしない。菜摘さん、今の君がまさしくその通りだ』
『な、何がよ!?』
『今の君は、九頭竜や辺古山のことを想うあまり、『自分』を信じられずにいる。だから君は自分に『価値』を求めた。アイツらの隣に居ても、アイツらが悪く言われるようなことがないよう、相応しい自分であろうとしている』
『…分かった様な口を…ッ』
『…優しいんだな、君は』
『…はぁ?』
『君がそうまでして必死になっているのは、九頭竜たちを想っての事なんだろ?自分が近くに居ることでアイツらに気を遣わせないように、自分がアイツら『追いつこう』としている。…それだけで、君が本当は家族思いの良い奴なんだってことぐらい分かるさ』
『な…何よ急に…?』
『でも、そんな君なら分かっている筈だ。自分がやっていることが、自分が防ごうとしている事『そのもの』だってことぐらいな』
『ぐ…ッ!』
『そんな矛盾を抱えたまま本科入りしたって、九頭竜や辺古山には簡単に見抜かれるぞ。…それに、君はその時に小泉やサトウの前で胸を張れると言い切れるのか?』
『…う、煩いッ!誰に偉そうに説教してんのよ!?アタシは…』
『『それ』だよ』
『…な、何がよ?』
『君の価値は、『実家が九頭竜組』であることだけなのか?…もしそうだとしたら、君と同じ家に生まれて『超高校級の極道』として選ばれた九頭竜は、ただ『次の組長候補だから』として呼ばれたことになる。…君にとって九頭竜の才能は、そんなものでしかないのか?』
『ち、違うッ!』
『そうだ、アイツの才能はそんなもんじゃあない。アイツには、アイツにしかない『強さ』がある。それこそが、アイツの『才能』なんだ。…そしてそれは、君だって同じなんだ。君には『九頭竜組の娘』としてでも、『超高校級の極道の妹』としてでもない、『九頭竜菜摘』としての才能がある。君が誇らなければならないのは、それなんだよ』
『…アタシに、才能が…?』
『…残念だが、それがどういうものかは俺にも分からん。それは『君自身』が見つけるものだからな。けど、それを見つけた時、君は小泉やサトウにそれを言えるのか?自分に自信がないことを理由に、誰かを貶めることで自分を主張しようとして犠牲にしようとした彼女たちに、君はそれを胸を張って自慢できるのか?』
『……』
『『繋がり』って言うのは、簡単に捨てていいものじゃないんだ。それは何時か『怨恨』となって、回り回って自分に戻ってくる。俺はそんな形で『絆』が崩れていくのを見たくない。…俺の勝手な頼みと思って構わない。頼む、サトウと…しっかりと向き合ってくれ』
『…アタシは、悪くないんだからね』
『……』
『でも、アイツから言ってくるようなら…その時は、話ぐらいは聞いてあげるよ』
『…ッ!ありがとう…!』
『ふん…このおせっかい』
(…あんなのに乗せられるアタシも大概よね…。ホント、バカの相手は疲れるわ…)
「…それで、何の用かしら?サトウさん。私早く帰って寝たいんだから、早めに終わらせてよね」
「…ええ、そうね。もう、『終わらせないと』ね…」
「…?な、何よ…?」
様子のおかしいサトウに菜摘が困惑していると、サトウは右手を背中に『隠しながら』ゆっくりと菜摘の方へと歩み寄る。
「私ね…ずっと考えたの。何が『真昼の為』なのか…こんな私を『友達』と言ってくれる真昼の為に、私に何ができるのかって。…けど、それを考えるたびに、アンタの顔が浮かんでくる…!私がなにをしようとしても、アンタが必ず割って入ってくる…。アンタが居る限り、真昼に『平穏』は無いんだって…!」
「な、何言って…ッ!?」
その時、菜摘は目撃した。
隠されていたサトウの右手に握られた、なにやら『砂利』のようなものを布で茶巾状に包み『モーニングスター』のようにした、明らかな『凶器』を。
「あ、アンタまさか…ッ!?」
「アンタさえ居なければ…アンタさえ、アンタさえアンタがアンタがアンタが…ッ!!」
恐怖と動揺で咄嗟に動けずにいる菜摘に向けて、狂気を孕んだ眼でサトウは詰め寄ると手にした凶器を思い切り振りかぶり…
「…お前さえ、居なければーッ!!」
菜摘の頭部目掛けて振り回した。
「…やめろーッ!!」
「「ッ!?」」
その瞬間、教室の入り口から飛び込んで来た何かが二人の間に割って入り…
ドゴッ!!
「う…ぐぉあッ!!」
「きゃあッ!?」
菜摘の代わりにその一撃を両腕で受け止め、菜摘諸共床に叩きつけられた。
「な…ッ!?なんで、どうして…!?」
「痛つつ…あ、アンタ…日向!?」
「…ギリギリ、セーフってな」
困惑する二人に、日向は痛みを堪えながら間に合ったことに心底安堵した笑みを浮かべた。
回想シーンが長ったらしかったかな…?
ウチの日向の経緯はこんな感じです。分かりづらい人は、SPW財団から希望ヶ峰学園に送られた「公式スパイ」とでも思ってください
…どうせあと1,2回ぐらいで使い切る設定なので…