ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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ダンガンロンパ霧切…完結、しちゃいましたね。結末は最初から分かってはいたけれど、このビターエンドは響きましたねぇ…。ネタバレはしたくないので詳細は省きますが、結局2人とも最後まで新仙帝の掌の中から逃れきれなかったのが悔しいですね。
…けど、この終わり方ならここの設定ならちょっと強引ではありますがうまいこと持っていけるかも…0部の霧切編に期待してくださいね。かなり先にはなるけれど…

ではどうぞ


追憶編:代償 ★

 事件の翌日、希望ヶ峰学園は今回の騒動を公表した。…と言っても、当然ながら全容を明かす筈もなく、審査員やマスコミにはあの手この手で情報が外に漏れぬよう徹底し、学園関係者にはあくまで事態を引き起こした安藤と意図しなかったとはいえ下剤を与えてしまった忌村、そして安藤と結託して忌村から薬を強要した十六夜が悪いという事実を全面にして発表した。

 本来なら3人そろって『退学処分』になる筈であったが…黄桜がSPW財団を通して日向から受け取った情報により、狛枝が事件に関わっていたということが明らかになった。指紋やカメラの映像など、決定的な証拠とは言えないが関与していることは間違いないという事実…そして何より屋上で聞いた狛枝の異常な『才能への執着』に、危険分子として狛枝にも同様の処分を下すという意見もあったが、主要人物に一度も関わることなくほとんど『運』だけでここまでの事態を引き起こした『凶運』を放逐することを惜しんだ『学園上層部』は、その後に起きた『ひと悶着』を利用し、それらを踏まえたうえで今回の件における処分を公表した。

 その結果…

 

 

 

 

ドンッ!!

「どういうことなんすか、この処分の内容はッ!?」

「……」

 希望ヶ峰学園学園長室にて、手を組んで整然と座っている学園長に左右田と七海を筆頭とした狛枝を除いた『77期生第一クラス』の面々が、今回公表された事件と処分の内容が記されたプリントを手に詰め寄っている。

 その周りには気まずそうに帽子を目深に被りなおす黄桜、ただじっと事の成り行きを見守る天願、そして悲痛な面持ちで俯く雪染が立っている。

 

「試験中、なんか騒がしいと思ってたらこんなことになってたってことは分かりました…でも!この処分には納得がいきませんッ!」

「そーだよ!どう考えたっておかしーじゃん!?」

 小泉と西園寺が感情を露わにして反論を叫ぶ。

 

「…事件の原因だった忌村先輩たちが『無期限停学処分』っていうことは、仕方ないとは思います。尊敬できる人たちだったし残念だとは思うけれど、職人として『自分が関わった作品』で被害者を出してしまった以上、責任を取るのは当たり前ですから…」

「うう…忌村さんは脅されたみたいですから可哀そうですけど、もうどうしようもないですからねぇ…」

 個人的に安藤や忌村と親交のあった花村と罪木は、最も重い罰を受けることとなった3人を無念に思う。

 

「箱庭を破壊してしまったことに関しては、この俺の部下の『監督不行き届き』であったことは認めよう…。秩序無き破壊など美しくない、故に俺への罰の『反省文提出、並びに動物愛護団体への無償奉仕活動』は甘んじて受け入れよう…だが、だがしかしだッ…!」

「…はい!ですが、これは違います!」

 自分が面倒を見ていた犬が迷惑をかけてしまったことで自身も処分を受けた田中は、それを認めつつも『もう一つの処分』に関する不満をソニアと共に呈する。

 

「…今回の件に関する処分は、全て『私の責任下』に於いて決定『された』ものだ。様々な観点から総合し、極めて妥当と思われる処断を下したと考えている。その上で…改めて聞こう。君たちの言う『不適当な処分』とは一体何のことだね?」

「喝ッ!そんなこと、もう言わんでも分かっとろうじゃろうがッッ!」

「寝ぼけてんのかよオッサン!?」

 念押しするような学園長の問いに、弐大と終里が喰ってかかり、そして七海が言葉を紡ぐ。

 

「…どうして狛枝君が『謹慎』に、先生たちが『異動処分』になって…日向君が『停学』になってるんですか…!?」

 そう。今回の処分の対象に狛枝、雪染、黄桜、日向が入っており、それぞれ狛枝が『1年間謹慎』、雪染が『半年間予備学科異動』、黄桜が『減俸、並びに第一クラス担任解除』、そして日向が『半年間停学』となってたのだ。

 

「どう考えてもおかしいっすよ!なんで先生や凪斗ちゃんたちが処分されるんすか!?訳が分からないっすよ!」

「日向君が処分の対象になってるのも意味が分からない…!今回のことは『本科』の問題の筈でしょ?どうして『予備学科』の日向君が罰を受けるんですか!?」

 事情を知らない側からすれば意味不明なこの処分に澪田や御手洗も憤慨し、その理由を問い詰める。

 

「みんな…」

「やれやれ…担任思いの生徒たちなこって、嬉しいがちっとばかし複雑だナァ…」

 自分たちのために怒ってくれている教え子たちに目元を潤わす雪染と黄桜。そんな光景に、天願は僅かに口元を和める。

 

「ハッハ…友人や先生のために学園長室まで押し掛ける、か…。よい生徒たちではないか、霧切学園長」

「…ええ。尤も、私個人としては少しばかり無茶が過ぎる行為だと思いますが。本来なら前置きも無しにここに来た時点で相応の処分が下っても然るべきなのですから」

「…え?マジっすか…」

「ハッハッハ!そう怯えずともよい、こうなるであろうことは『想定していた』のでな。…君たちが、ある程度の『事情』を知らねば納得せんであろうこともな」

「…よろしいので?」

「構わん。何もかも思い通りというのも癪ではあるし、何より儂も友人があらぬ『誤解』を受けるのは気持ちのいいものではないのでな」

「誤解?」

 天願の物言いに七海が首を傾げていると、学園長はしばし考えたのちに口を開く。

 

「…分かった。では、まずは聞いてほしい。今回、一体何が起こったのかを…」

 

 

 

 

 学園長は七海たちに、今回の件が安藤の見栄を発端とする偶然と事故の積み重なりにより発展したものであり、その一連の事態に狛枝が関わっており、日向がそれを突き止めた際に狛枝を殴ってしまったことで『傷害事件』を起こしてしまったことを説明した。

 

「…狛枝の野郎、なんかこそこそしてると思ったらとんでもねえことやらかしてんじゃあねえかッ!!」

「ま、待ってください!狛枝さんが犯人だっていう証拠は無いんでしょう?でしたら…」

「…確かに、明確に彼が犯人だという証拠はねえ。だが、狛枝君が今回の件に少なからず関与しているっていう証拠はある。本来まったく関わりのねえ筈の彼の痕跡が出てきた以上、何かしらの事情があるのは確かだ。それに…俺たちは実際、彼が日向君の尋問で『自白』したのを聞いちまったからなぁ…。どう庇ったって、本人が認めちまってる以上もうどうしようもねえ…」

「じゃあ、先生たちの処分の理由って…」

「…うん。狛枝君の暴走を止められなかったことの責任…って訳なの。ごめんね、皆」

「…けど、だとしたらますます日向への処分が納得いかねえよ!なんで真犯人の狛枝より日向の罰のほうが『重い』んだよ!?」

 狛枝に下された罰は『1年の謹慎』、日向への罰は『半年の停学』だ。内容自体はほぼ同じで期間こそ日向のほうが短いが、謹慎は『自主的』な、停学は『強制的』な罰則である。どちらが重罰であるかは言うまでもない。

 

「チッ…日向のバカが。いくらムカついたからって手を出しちまったら終わりだろうが…」

「…それ、アンタが言う?」

 吐き捨てるような九頭竜の愚痴に西園寺が突っ込んでいると、七海がふと呟く。

 

「…もしかして日向君、『ワザと』狛枝君を殴った…?」

「え?」

「ど、どういうこと?」

「ほら…もし日向君が何もしないで狛枝君を捕まえたら、狛枝君は『事件の首謀者』ってことでもっと重い罰を受けてたかもしれないでしょ?だから、ワザと先生たちが見てる前で狛枝君を殴って、狛枝君も『被害者』ってことになれば…」

「差し引きで罪が軽くなる…って?そんな馬鹿な、そんなご都合主義な展開どんなアニメや漫画でだって…」

「それがあり得ちまうんだよなぁ~…この『希望ヶ峰学園』ではよ」

「えっ!?」

 御手洗が七海の推測を否定するが、それを黄桜が心底ウンザリといった調子で肯定する。

 

「…どういう意味ですか、それ?」

「…その問いに答える前に、約束してほしい。ここでの会話を、決して他の人間に話さないと」

「日向の時と同じで『守秘義務』って奴か?そいつは内容次第…」

「これは我々の立場だけではない。君たちと、君たちの友人や家族…周りの人々の『安全』に関わる問題だ。本来なら私も話してはならないことだが、今回はSPW財団の意向を優先し君たちに限って教えようと思う」

「…いいんですか?」

「構わない。…私も、自分の『責任』からもう逃げることはしないと誓ったのでな」

「仁…」

 学園長のどこか自嘲するような言葉に、七海たちは顔を見合わせた後口外しないことを約束する。それを確認し、学園長は淡々と語り始める。

 

「…この希望ヶ峰学園は、『超高校級』と呼ばれる才能を持つ若者…つまり君たちをより良い存在へと教育するための機関だ。それ故に、君たちに関することはこの学園に於いて『最重要事項』であり、場合によっては他の教育機関の都合を無視して何より優先されることもある。君たちが以前の学校からここに転入することになったのはこのルールによるものだ」

「希望ヶ峰学園は『国営機関』…日本が世界に誇る教育機関だからな。よほどの大物でもない限りその意向には逆らえないって訳だ。…おかげで現場でスカウトする俺が矢面に立って嫌味やらなんやら受けなきゃなんねえからたまんねえよナァ…」

「だからってお酒に逃げないでよね…」

 才能ある生徒が在籍することは、学校にとって一種の『ステイタス』でもある。それを悉く希望ヶ峰学園に掻っ攫われては、取られた側の学校にとっては国の意向とは言え不満しか出ない。結果、交渉の場に立つ黄桜にその不満はぶつけられ、彼はそのストレスから酒浸りの日々を送っているのだ。…おそらくストレスがなくとも酒から離れることはないだろうが。

 

「そしてそのルールは、『学園内部』においても適応される。君たちが学園の備品や施設を壊したとしても、今回のように余程のことでない限り責任を取る必要は無い。この学園では、君たちが何より優先される。我々教師陣より…当然、『予備学科』よりもな」

「それって、つまり…!」

「その通りだ。学園は今回の事態、狛枝君への罰を軽くするために日向君の傷害を引き合いに出し、彼もまた事件の『被害者の一人』であるとして日向君に罰則を科すことで狛枝君への罰を引き下げた。…日向君は『そうなる』ことを見越して、あえて雪染君たちの目の前で狛枝君を殴ることで自ら逃げ道を無くしたんだ。自分が『確実に処分の対象になる為』にな」

「なッ…!?」

 学園長の言い放った言葉に、生徒たちは愕然とする。

 

「日向君が、そんなことを…!?」

「当たり前だが、本来はそんなことをしたところで狛枝君の罰が軽くなることはない。日向君が無駄に処分を受けるだけだ。…しかし、『学園』は狛枝君の『幸運』という才能が手元を離れることを惜しんだ結果、日向君の行為を利用することで今回の件を、『本科生徒が起こした不祥事に触発された予備学科の生徒が暴動を起こした』…という体で、『両成敗』として納めようとしたのだ。日向君の罰が重いのは、今後同じことは許さないという予備学科生徒への『警告』…いや、『見せしめ』というべきだな」

「最近、予備学科の方でも本科生徒との待遇の差への不満が溜まってるって噂だからなぁ。日向君はきっと、彼らが暴発しないよう『下手なことをするとこうなるぞ』…って伝えようとしたんだろうな。学園の平和を守る『ガーディアン』としてよ」

 

『……』

 事件の裏側の『真実』を知った生徒たちは、呆気にとられたような表情のまま沈黙する。しかしやがて、辺子山と九頭竜がポツリと呟いた。

 

「…つまりアイツは、自分を犠牲にして『狛枝』と『予備学科の生徒』の両方を守ろうとした…そういうことなんだな?」

「それだけじゃあねえ。その上で狛枝が事件の黒幕だってことを突き止めりゃ、当のやらかした連中にもちっとは『情状酌量』ってのが出るわけだ。一石三鳥ってか?ハハハハ……ああ、本当に合理的だぜ…『投げた石が戻って来ねえ』ってことを除けばよぉッ!」

 2人は心から『怒って』いた。自分たちの『妹』とその『友人』を救ってくれた『恩人』でもある日向が、自分を捨て石にするような真似をしたことに。そのことを相談すらしてこなかったことに…そして何より、狛枝の近くに居ながらそのことに気づけなかった『自分自身』に。

 

「……日向の、バッカ野郎ッ!!そんな大事なこと、なんで俺たちに相談しなかったんだ!狛枝が関わってんなら、クラスメイトの俺らが無関係な訳無えだろうがッ!それを一人で突っ走りやがって…」

「…もしかしたら、『クラスメイトだからこそ』僕たちを狛枝君に関わらせたくなかったのかもしれないね」

「御手洗さん…?」

 御手洗がいつになく陰を帯びた様子でそうつぶやく。

 

「これは『俺』の…僕の考えでしかないんだけどね。他人を『理解する』っていうことは、実はとても勇気がいることなんだ。僕たちが常日頃見ているその人の『像』が、必ずしも『本心』であるとは限らない。普段ニコニコしている人が、その裏で計り知れない『何か』を抱えていた時…それを知った時、誰もがそれを受け入れられるわけじゃあない。出来なかった奴は、それから『目を背ける』か、『拒絶する』しかない。…『いつもの狛枝』を知っている僕たちが、『そうじゃない狛枝』を知った時、どうなってしまうのか…日向はきっとそれを恐れたんだろう。アイツの『味方』が居なくなってしまうんじゃあないか…とな」

「…み、御手洗?おぬし、急にどうしたんじゃ?」

「えらい饒舌…ていうか、口調変わってない?」

「え…あっ、こ…この間見たアニメでそんなことを言ってたんだよ!妙に気に入っちゃってさ、キャラの口調まで真似しちゃってたかも…」

「ふ~ん…ま、どうでもいいけど。そんなことより、日向おにいがマジでそんな風に思ってたんなら、ちょっとムカつく~」

「…でも、その気持ちはわかるかも。私もこの間、似たような思いをしたことあるから…」

「七海さん…」

 日向のことを聞いた時、日向のことを信じ切ろうとしなかった狛枝を拒絶してしまったことを、七海は悔やんでいた。クラス長という立場もあるが、狛枝の言い分を全部聞く間もなく手を出してしまったことで、それ以降まともに話すことも出来ずにいたことをずっと引き摺っているのである。

 

「…とにかくよ、よく分かんねーけどもう日向や先生たちの処分はどうにもならねえってことかよ?」

「ああ。それが日向君の目的であり…黄桜先生も、雪染先生も納得した上での決定だ。私であっても、覆すことはできない。それは了承してもらうしかない」

「…そう、ですか」

「…あー、まあよ!俺らのことはいいから、できれば日向君や狛枝君のことを気にかけちゃあくれねえかな?俺らもそこまでは手が回りそうにねえからよ…」

「…当ったり前でしょそんなの!2人とも一回言いたいこと言っとかないと気が済まないわよッ!」

「たりめーだ!こうも置いてけぼり喰らったままで納得できるかよッ!!」

「…小泉さんと九頭竜君ってこういうとこ似てるよね」

「まあな…」

 いつになく血気盛んな小泉と九頭竜を先頭に日向のところに乗り込もうと皆が踵を返しかけた時…

 

「…あ、みんなちょっと待って!」

 その背に雪染が待ったをかける。

 

「へ?どうしたんすか先生?」

「…あのね、2人に声をかけるの…少し待ってもらえるかな?みんなが気にかけてくれるのは嬉しいんだけど、少しだけ…2人にはきちんと今回のことを受け入れる『時間』が必要だと思うの。…特に、狛枝君にはね」

「はぁ…そういうものなのでしょうか?」

「…わかりました」

「うん!じゃあ、今から教室に戻りましょうか。私がいない間の課題とかの話をしないといけないからね」

「うげっ!?宿題っすか~?勘弁して欲しいぜ…」

 

 皆が学園長室を出ようとした瞬間、雪染の『超高校級の家政婦』としての直感が告げていた。学園長室の『外』で、今の話を『盗み聞きしていた人物』が居たことに。そして真相を知った『彼』が、居ても立ってもいられず駆け出して行ったことに。

 その背中を押してあげることが、これから当面会えなくなってしまう彼への担任としての『務め』なのだと、雪染は確信していた。

 




そろそろ更新スピード上げていきたい…
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