本当は追憶編を終わらせてからの予定だったんですが、中々筆が進まないのと感想で早く2部が見たいという声があったのとジョジョ5部アニメが面白い…等等の理由でチョロチョロと始めて行くことにしました。
今後の更新ですが、基本は追憶編とEOH編をメインに、ネタが切れたら書き貯めてある2部を掲載していきます。2部がある段階に入ったらほっぽってある0部を一気に進める予定ですので、今後とも応援よろしくです
ではどうぞ
…小野君の無駄、結構良かったので満足です
始まりはいつも突然
「…ねえ、聞こえる?」
野郎の声がする。俺の『寝起きで聞きたくない物ランキング』でベスト5に入るものだ。だから俺は起きたりしない。聞きたくないから。
「ねえ…大丈夫?」
随分しつこい野郎だ。…まあ、『今の状況』が状況だから分からんでもないが、俺からすれば面倒くさい以外の何物でもないぞ。
「もう皆、辺りの調査に行っちゃったよ?君は行かなくてもいいの?」
「…うるせーな。俺のことは放っておいてくれよ。俺はこのままこの日差しの中に溶けていくと決めたんだ」
「砂漠じゃあるまいし、溶けはしないと思うけど…」
ノリの悪い野郎だ。もうちっと気の利いたツッコミは出来ないもんかね?『マイペースな女の子』は最高だが、野郎がマイペースでも何の色気もねえんだよ。
「…君は結構神経図太いと思っていたんだけど、やっぱり結構参っちゃってるみたいだね。まあ仕方ないと思うよ、僕も…こんなことになって混乱しているからね」
…『言葉の真偽』はともかくとして、コイツの言い分には俺も賛成であった。
そもそも、一体なぜこうなってしまったのだろう…
俺の名前は『日向・Z・創』。ミドルネームの『Z』は『ツェペリ』と読む。お婆ちゃんが『イタリア人』のクォータってやつだ。ミドルネームの由来にもなっている婆ちゃんの家系の『ツェペリ家』は、なんでも昔物凄い偉業を成し遂げたらしく、そのおかげかお婆ちゃんの代からずっと家は『SPW財団』という大財団の庇護を受け続けている。俺が今年から通うことになった『希望ヶ峰学園』に入学できたのも、偏にSPW財団が学園のスポンサーをしているおかげでもある。
その俺が、どうして希望ヶ峰学園に入学することになったかというと…
俺の…ひい…bt…さんが…ぽyb…した…おう…dgんz…の…
「……あれ?」
気が付いた時には、日向は見知らぬ場所に立っていた。
「なんで俺…?俺は確か、希望ヶ峰学園の前に…」
辺りを見渡たすが、まるで景色が抜けおちたかのように真っ暗な空間が続くのみである。…しかし、自分の正面に、まるでそこだけ誂えたかのように『おかしなもの』が存在していた。
「これは…『扉』?なんだってこんなところに…」
不審に思いながらも、他にアテもないのでとりあえず扉の前まで歩き、ゆっくりと扉を開く。
その先に有ったのは…
「…教室?」
先ほどの暗闇とは全く無縁そうな、どこにでもありそうな『学校の教室』。そして…
「…何者だ?」
「へ?あ…どうも」
「よせよせ、混乱してるじゃねえか」
「ねえ、もしかしてさ…アンタもこの学校の新入生なんじゃないの?」
「あ、ああ…一応そうだが。…ってことは、君らも?」
「ま、そういうことだ。俺らもこの学園の『新入生』ってな」
その教室でこちらの視線を向ける、『15人』の少年少女たちであった。
「多分…この教室には、私たちみたいな新入生が集められてるんだね」
「集められてる…なんかのオリエンテーションでもあんのか?」
「さあのう…ワシらは何も聞いておらんが」
「…おい、そんなことより早く中に入ったらどうだ?」
「あ…わ、悪い」
一同の中でもひときわ太った男子生徒に促され、日向は教室に入り扉を閉める。
(どうなってんだこりゃ…?いきなり変な空間にいると思ったら、変な扉が有ってそこを潜ったら教室で…『夢』、じゃあねえよな?…こいつらもそうなのかな?)
「ところで…一つ聞いてもいいか?」
「…なんだ?」
「変な質問なんだけど…俺はこの教室にどうやって来たのかイマイチ憶えていないんだ。お前らの中に、ここに来るまでの過程を憶えてる奴が居たら教えてくれ」
「…それについては、さっきのお前の問いも含めて今から『話し合う』つもりだ」
「…話し合う?」
「ちょうどお前で『全員』そろったようだしな。そろそろ始めるぞ…」
「え?これで全員なんすか?どうして、そんなことがわかっちゃうんすか?」
「教室の机の数を数えてみろ。ちょうど『16脚』ある。そして今のコイツで『16人目』…少し考えればすぐに分かる」
「…なんかムカつく言い方ね」
(…こいつ、なんか『違和感』があるな。よく分かんねえけど、少し『不自然』っつーか…)
日向の疑問を余所に、その太った男子生徒を中心として話し合いが始まる。
「…で、何について話し合うの?やっぱ…僕らがこの教室に集められた『理由』?」
「それもだが…まずは今のこいつの質問だ。…正直に答えろ、俺達の中に『この教室まで来た過程』を憶えている奴が居たら言え」
「!その言い方だと…お前も憶えてないのか?」
「ああ、これっぽっちもな…」
「私も…憶えてません…ご、ごめんなさぁ~い!」
「オレもさっぱりだな!なんか変な場所にいると思ったら、ここに来たっつーか…」
「…どうやら全員憶えていないようだな。これはどう考えても『不自然』だ。何か『妙な力』によってここまで連れてきたとしか思えん…」
(まさか…スタンド、じゃあねえよな?流石に入学早々スタンド使いに絡まれるなんて御免だぞ…)
「墳ッ…!なにをごちゃごちゃ考えとるのか知らんが、そんなもん大した問題じゃあないわ。要するに…ここから出て確かめればいいだけのことじゃあッ!」
一同の中で最も大柄な男子生徒はそう言うと日向の入って来た扉へと手を掛ける。
「墳ッ!墳ッ!……」
「ど、どうした?」
「…開かん」
「え?」
「開かん…開かんぞぉおぉッ!!」
「へ…ま、マジかよッ!?」
確かめるように何人も試してみるが、誰一人として扉を開けることは出来なかった。
「クッソ…なんでだよッ!?入って来た時はあっさり開いたのに…」
「ワシの力でも無理だったんじゃあ…。他の奴になど無理じゃろう…」
「よく分かんねえうちに連れてこられた上に…ここに閉じ込められたってのかよ…!?」
「えー!?そんなのおかしいよー?」
「なあ…俺達、なんかヤバ気なことに巻き込まれてんじゃね?」
「…そうかもなあ」
「そうかもなって…お前、なに呑気な事言ってんだよ!?」
「俺らじゃどうしようもねえ以上、焦ったってなにも変わんねーよ。…それより、今は『なぜこうなった』のかを考えた方が建設的だと思うぜ」
「なぜこうなったのか…」
「…もしかしたら、これは『希望ヶ峰学園』の『入学試験』なのかもしれないね」
「入学試験?」
「ですが…希望ヶ峰学園には入学試験は存在しないと聞きましたが…」
「表向きにはそう言ってるだけで、実際は『特殊な入学試験』が行われていた可能性も…」
『あ、違いまちゅよ。これは『入学試験』なんかじゃありまちぇん』
『ッ!!?』
突如聞こえてきた可愛らしい声に、皆は思わず立ち上がる。
「…今のは、なんだ?」
「おいデブ…いきなりカワイイ声出してんじゃあねーぞ」
「体型に関して今更否定などしないが…今の声は俺じゃあないぞ」
「ハア?…じゃあ誰だよ?」
『…あのー、あちしですけど』
「ッ!ま、また聞こえたぞ!?」
「何処じゃあッ!どこに居るんじゃあッ!?」
「…あの『教壇』の向こうから聞こえたね」
「教壇…?」
怪訝そうに皆が教壇の方に視線を向ける。
『はーい!ミナサンお集まり頂けたみたいでちゅね!それじゃあ、始めまちょうか!』
その視線の先より声と共に…
バフン!キュピーン!
「ヤッホー!ミナサン、はじめまちて!」
虚空より突如『天使を模したようなウサギ』が現れた。
「…なんですか?あれは」
「多分…ぬいぐるみなんじゃないかな?」
「そうでちゅ、あちしはヌイグルミなんでちゅ。『フェルト地』なんでちゅ。『魔法少女ミラクル☆ウサミ』…略して『ウサミ』でちゅ。こう見えて、ミナサンの『先生』なんでちゅ。『フェルト地』なんでちゅ。…よろしくね♡」
「…あ、あれ?おかしいぁ~?僕にしか見えない『幻覚』なのかな?」
「いや…俺にも見えてんぞ」
「つーかなんで『チワワ』が喋ってんだよッ!?」
「え!?あれ『チワワ』なんすか?」
「いやいや、どう見ても…『ウサギ』…だよな?」
「多分…そうじゃない?」
「そうでちゅ。あちしはウサギはウサギでも歌って踊れる『次世代型ウサギマスコット』なんでちゅ!『フェルト地』なんでちゅ」
「そこは重要…なのか?」
「…それより、『ウサミ先生』とやら。随分張り切った登場をしてくれたってことは、アンタは俺達がなんでここにいるのかを知ってるってことでいいんだよな?」
「もう先生呼びしてんのかよ…アイツ順応力高すぎだろ…」
「ケッ、ありゃ皮肉だろ…」
日向の問いに、ウサミは微笑ましそうに答える。
「うふふ…もう先生と呼んでくれるなんて嬉しいでちゅ!もちろんでちゅよ!これから皆さんには、楽しい楽しい『修学旅行』に行ってもらうんでちゅから!」
「『修学旅行』…だと!?」
「それじゃ早速…行ってみよー!ウロタウョジ…フセョジ…ンサナョジ…あちょー!」
不思議な呪文と共に、ウサミが手にした『ステッキ』を振るう。するとそこから光が溢れ、皆の視界を奪う。やがて光が収まり日向たちが目を開けると…
ザザーッ…ザザーッ…
「……はい?」
『教室』にいた筈の日向たちは何時の間にか、『南国を思わせるビーチ』へと移動していた。
「えーっと…あれ?あれあれあれあれあれェッ!!?」
「う、嘘だろッ…!?」
「こ、ここは何処なんすかぁッ!?」
「嘘でしょ…こんなの…あり得ないよ…!」
「ミナサン、落ち着いてくだちゃい!ほら、あの海を見て…静かでちゅねえ。心が洗われるようでちゅ…。あちしをホントに洗ったら潮まみれで酷いことになっちゃうけど…」
「ま、待てッ…!どうなっている、説明をしろッ…!」
「説明って…海でちゅけど?」
「う、海は分かりますけど…なんで海に来てるんですかぁ!?」
「まあまあそう大声を出さずに…貧血になっちゃいまちゅよ?」
「だって…海とかおかしいですよ…。私たちはついさっきまで学校に居たのに…」
「安心してくだちゃい!ただ『修学旅行』が始まっただけでちゅ」
「ちょい待ち!どうしていきなり『修学旅行』なんすか!?色々とすっ飛ばしすぎでしょ!」
「まあその辺は…全部『ボスのせい』ってことで」
「ボスって誰!?」
「ボスは皆の心の中にいるでちゅ…。きっと今も…どこかで酷い目にあってるでちゅよ」
「ボスって言う割に扱い酷ッ!」
突然の事態にパニックを起こした皆が矢継ぎ早にウサミに問いかけるが、当のウサミはくるくると回りながらまともに答えようとしない。
「おい…いい加減真面目に答えろ…ッ!俺達は希望ヶ峰学園にいた筈だぞ…それがどうしてこんなところにいるんだ!?」
「あー、希望ヶ峰学園ね。学園のことが気がかりって訳でちゅね。だったら…希望ヶ峰学園の事は『忘れて』くだちゃーい!その為の修学旅行でちゅからねー!」
「…何だと?」
「そりゃどういう意味だこりゃッ!」
「おい貴様…何を企んでいる!」
「ほわわッ!?あ、あちしは何も企んでなんかいないでちゅよ!あちしはただ、ミナサンに『希望』を持って過ごして欲しいだけなんでちゅ!その為にも、この『島』には一切の『危険』はありまちぇん!」
「島…?ここは島なの?」
「はい、ここは見るも美しい南国の島なんでちゅ。ミナサンの為だけの、誰もいない『無人島』なんでちゅよ」
「…で、アンタは俺達にここでなにをさせようってんだ?」
「まさか…、この無人島で僕らに『殺し合い』をさせるつもりじゃ…!」
「ほわわッ!?と、とんでもない、滅相もないでちゅ!この島では『暴力』とか『他人を傷つける行為』は一切厳禁でちゅ!『殺す』なんてとんでもない…」
「なら、一体なんだというのだ…」
「はい!ミナサンには、この島でのびのび~と、『平和な日常』を過ごしてもらいまちゅ!ただそれだけ、それが『どっきどき修学旅行』のたった一つのルールなんでちゅ!」
「ど、どっきどき修学旅行…だと!?」
「はい、誰も傷つかず、誰も悲しまない。ただただ平和な日常の中で『希望』を育んでもらう…それが『どっきどき修学旅行』なんでちゅ」
「なん…だと…!?」
「えー、ということで…どっきどき修学旅行、始まりでちゅー!」
ウサミのそんな号令と共に、『どっきどき修学旅行』は幕を開けた。
「…マンマミーア」
そして開始早々にそう言うと、日向はその場に寝っ転がってしまった。
「あ、あれあれ?どうちましたか?」
「お、おいお前!何呑気に寝てんだよッ!?」
「…到底頭が追いつかねー。少し整理する時間くれ…。『他人を傷つけなきゃ何してもいい』んだろ?だったらオレは折角南国にいるんだしちと寝る…自己紹介はまた後でなー…」
「お、おいッ!」
「いーだろ…ウサミ先生よぉ~?」
「別にいいでちゅよ。…あ、熱中症になると駄目でちゅからほどほどで起きてくだちゃいねー」
「オーライ…」
ウサミからの勧告を背に受け、日向はそのまま突っ伏して寝てしまった。
「ちょ、ちょっとキミ!起きてよぉ!」
「て、テメエ!こんなときになに寝てんだよ!」
「…放っておけ。イチイチ叩き起こすのも面倒だ。それより…今はこの島の事を探るのが先決だ」
「そ、そうね…。場所さえ分かれば、帰る方法も分かるかもしれないし…」
「どうぞ好きに行動してくだちゃーい!…あ、でもえっちぃことはしちゃ駄目でちゅよ?」
「うるせぇ!…俺は好きにさせてもらうからな」
「お、おい待てよ…!」
「…僕は彼についておくよ。彼が起きた時に事情を教えてあげないといけないしね」
「好きにしろ…では行くぞ!」
「なんでアンタが仕切ってんのよ…」
そしてそれから30分後、それが今の現状であった。
「そろそろ起きないと本当に熱中症…それに熱射病にもなっちゃうよ?」
「ハイハイ…んじゃ起きますよっと…」
手で隣の青年を離れさせると、日向は勢いをつけて跳ね起きる。
「やっと起きたね…もう皆行っちゃったよ」
「だろーな。…俺もそろそろ行くとすっか」
「あ、その前に…一応自己紹介しとこうか。僕は『狛枝凪斗』。『超高校級の幸運』でこの学園に入学したんだ」
「俺は日向・Z・創だ。俺の『才能』は……」
「…どうしたの?」
「…分からねえ」
「え?」
「俺の『才能』が…『思い出せない』。俺、何の才能で選ばれたんだっけ…?」
「記憶が…無いの?」
「あ、ああ…。全部って訳じゃなくて、俺が『希望ヶ峰学園に選ばれるまでの記憶』だけが…すっぱり抜け落ちてるみてーでよ…」
「…もしかしたら、自分で思っているよりもショックが大きくて記憶が混濁しているのかもしれないね。でも、きっとその内思い出すよ」
「だといいんだがな…。まあとにかく、よろしくな狛枝」
「よろしく!」
二人は爽やかに握手を交わした後、他の皆の後を追って島の奥へと歩いて行った。
今回は始めなので原作に忠実にしました。次回ぐらいからオリジナル要素を詰め込んでいきます。
ではまた次回