ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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公式を挙げての妹様歓迎ムードに押され、ノリで描いてしまった江ノ島編をちょっとだけお見せします。ノリで描いたので「これおかしくね?」的な部分もあると思いますのでじゃんじゃん批評をくださいな。


…舞園ファンの皆さん、すっ飛ばしてごめんね!次はちゃんと舞園編完結させてから次の話に移るので…


ホープ・トゥ・ディスペアー・プレリュード part1

 

 

 

『苗木誠』のことを意識するようになったのは、何時からだっただろう。むくろから名前を聞いた時?違う。イタリアで追いかけっこに付き合った時?違う。むくろを口説いて去っていく後ろ姿を見た時?これも違う。やはり…あの『入学式』の時からだろう。

 

 

 

 

 

「『一陣の風が吹き抜けた…。それは後に希望ヶ峰学園を…果ては世界を絶望のどん底に叩き落とす二人の、入学の瞬間であった』…んー、こんな感じかな?」

「ナレーション…盾子ちゃんのマイブームなんだね」

 入学式へと出席するため、江ノ島盾子と戦刃むくろは未だ固く蕾を閉ざした桜並木の連なる中、希望ヶ峰学園の校門へと向かっていた。

 

「『まあねぇ』…もう『飽きた』けど」

「早いね……あ…!」

「ん?どしたの残姉ちゃん…お?」

 ふと正面を向いた戦刃の反応にその方を見ると、校門の前に一人の『少年』が立っていた。春風に『黄金の髪』をたなびかせ、茫然と目の前の希望ヶ峰学園を眺めるパーカーを着た少年。…すなわちそれこそが苗木誠であった。

 

「苗木君だ…」

「へぇ、あれが苗木誠…」

 ローマで出会って以来、この残念な姉が首ったけになっている男。どう考えても『過剰評価』としか思えないが、この姉が希望ヶ峰学園に『超高校級の希望に成り得る存在』とまで言わしめた存在。そんな彼に江ノ島が興味深げに視線を向けていると、校門を潜ろうとした苗木がふと足を止め、傍に立てかけてあった入学式を告げる看板へと向かう。

 

「…何する気だろ?」

「さあ?悪戯じゃね?」

「ま、まさか…」

 江ノ島の予想は、大体正解であった。

 

「…ちょっと地味だよねコレ。ま、おせっかい半分悪戯半分だけど…」

 苗木が看板に近づき、パチンと指を鳴らす。すると、看板の周りから『植物の茎』が生え出し、それが看板をぐるりと取り囲むと、たちまち茎から『花』が咲き、看板に『花の枠』を与えたのであった。

 

「わわわ…ッ!?」

「へぇーッ!すっごぉーいッ!!」

「へ?…うわッ!?」

 真後ろから聴こえてきた歓声に振り返ると、いつのまにかすぐ背後まで来ていた江ノ島姉妹に苗木は飛び退いて驚く。

 

「び、びっくりした…もしかして、君たちもこの学園の新入生?」

「え?あ、うん…」

「ねえねえ!今のアンタがやったんでしょ?」

「う、うん…。まあ『手品』みたいなものさ。なんか少し寂しかったからさ、おせっかいだけど『相応しい花』で着飾っておこうかなって…」

「相応しい花…でも、入学式っていったらふつう『桜』なんじゃ…?」

「桜ならそこいらに一杯あるからね。その内咲くものを先取りするほどせっかちじゃあないよ。…この花は『ガーベラ』、花言葉は『希望』…『希望ヶ峰学園』の入学式にはぴったりでしょ?」

「ほーん…、『希望』ね。…ま、らしいんじゃあないの?けどアタシだったら『マリーゴールド』で埋め尽くしちゃうかな~?」

「え…なんで?」

「意味わかんないなら口挟まないでくれる?臭いから」

「ご、ごめん…」

「…マリーゴールドだと花言葉は『絶望』じゃないか。まるっきり逆だし喧嘩売ってるようにしか見えないよ…」

「えー?いいじゃん『絶望』。馬鹿みたいに『希望』ばっかり持ってたって報われるとは限らないんだし、それよかずっと楽でいいと思うんだけどなー?」

「……」

 そう言う江ノ島をしばし見つめ、苗木は口を開く。

 

「…そんなことはないよ。大事なのは『報われる』ことじゃあない。自分が信じる『希望』に、どこまで真剣に『うち込めるか』ってことだと思うんだ。『結果』だけを求めたところで、君の言うとおり報われるとは限らない。…けれど、自分が『行動すること』に意味を持てた時、例え全てが報われなくてもきっとその人は今までより『前』に進める。そこに至るまでの『意志』こそが、本当に大切なモノだと僕は信じているよ」

「…ふ~ん」

 

(…成程、こいつは『そういう人間』か。一発当てようとか考えず、こつこつやってりゃその内報われるとか思ってる『小市民的』な人間…。多少物言いに『違和感』はあったけど、結局そんなもんか)

 こういうのは、自分が一番『嫌い』なタイプの人間だ。精々馬鹿みたいに学園生活を楽しんでるのを見物しとくことにしよう。

 そう思い、苗木に対する興味が失われかけた江ノ島であったが…

 

「それに…」

 次の苗木の一言で、そのプロセスはかき消された。

 

「『君もそう言う人間』だと思っているんだけど?」

「………は?」

「じゅ、盾子ちゃん…?」

「アタシが…なんだって?」

「だから、君もそういう人間なんじゃないかって。『結果』よりも、今自分がやっていること、やろうとしていることに『意味』を求めている。そんな気がするんだ」

「…いや訳わかんねーから。なにを根拠に…」

「え?だって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「君は『絶望を希望』しているんだろう?」

 

 

 

 

「……………は?」

 その言葉を聞いた瞬間、江ノ島が常日頃から行っている『あらゆる事象への分析行動』が完全にストップした。

 

「アタシが…『絶望』を、『希望』している…?」

「…自分でも気づいてなかったのかい?まだ少ししか話してないけど、君の言動は確かに『希望』とは言い難い。むしろ『絶望そのもの』とでも言うものだろう。…けど、今君が『絶望』というものに対して求めているものは、紛れもなく『希望』だ。君は絶望を『求めている』、『絶望』が広がっていくことを『希望』している。一見矛盾しているように思えるけど、実はそうではない。君は『絶望』というものに『希望』を見出している。誉められたものじゃあないかもしれないけど、それが君の『希望』なんじゃないかって…僕は感じたんだ」

「……」

「盾子ちゃん…?ど、どうしたの?」

「えっと…何かまずいこと言ったかな?」

「さあ…?こんなの私も初めて…」

 

 

 

 

 

 

 

(…『見抜かれた』?アタシが?こんな奴に?…『一目』で?)

 江ノ島盾子は、産まれてから今まで『外面』を被って生きてきた。周りの人間、仕事先の人間、小さいころからの幼馴染…果ては隣にいる姉も含めた家族の前ですら、江ノ島は『偽りの人格』を被り続けてきた。『飽きっぽい』性格を建前にころころといくつものキャラクターを使い分けているのも、彼女の『本来の人格』を決して見せない為である。何故なら…本当の意味で『江ノ島盾子という少女』を受け入れてくれる存在など、この世界には存在しないからだ。だからこそ、今自分が思い描いている『計画』を実行する予定だった…存在しない『ハズ』であった。

 

だが、この目の前の男はどうだ?こいつは明らかに『希望』を信じて生きている。『絶望』を生きる根底とする自分とは『正反対』の存在の筈だ。

だというのに…こいつは一目見ただけで『江ノ島盾子という概念』を看破した。しかもあまつさえ、それを『希望』と言ってのけたのだ。自他ともに認める『絶望』そのものである筈の自分の在り方を、『希望』だと言い切ったのである。

 

(こんなの…こんなのって…ッ!!なんて屈辱的で暴力的で侮蔑的で痛烈的で…なんて、『絶望的』なの…ッ!!?『希望』である筈の人間から、『絶望』の私を『希望』だとロンパされるなんて…嗚呼、こんな絶望…『生まれて初めて』の…『快感』…ッ!!)

 これまで味わったことが無い『自己の完全否定』という絶望に、江ノ島は人知れず『絶頂』を迎えていた。その快感に身を委ねながら、江ノ島は目の前で困惑している少年に視線を向け、『確信』する。

 

 

(残姉ちゃん…初めてアンタに謝るわ。ごめん、『見誤ってた』のはアタシだった。こいつは『希望を信じる人間』なんかじゃない。こいつは…『希望そのもの』なんだ。だからこいつは、『絶望のどん底』に叩き落とされようとも、その中から豆粒ほどでも確かな『希望』を見つける…いや、『創り出す』ことができる。本当の意味で、私とは『対極』にある存在…!こいつは、『敵』なんて生易しいもんじゃあない…)

 

 

 

 こいつは、私の…『天敵(きぼう)』だ。

 

 

 

 

「……」

「…あの、大丈夫…?」

「…ぷぷ…」

「じゅ、盾子ちゃん?」

「うぷぷ…うぷぷぷ…!」

 呆けていた江ノ島の口から微かな笑い声が漏れ出したかと思うと

 

 

「うっぷっぷっくっく…くっく…くくきはは…ッ!アッハッハッハッハッ!アーッヒャッハッハッハッ!!!」

 江ノ島は人目も憚ることなく奇声を上げて馬鹿笑いを始めた。

 

 

「アッハッハ!クヒャハハハハッ!!」

「ど、どうしたの彼女…?」

「わ、分からない…こんなこと初めて…」

 ただただ困惑するしかない苗木と戦刃を余所に、ひとしきり笑い終えると江ノ島は涙の滲んだ目元を抑えて向き直る。

 

「ハーッ…はーッ…!生まれて初めてこんなに笑ったわ。すっごい爽やかな気分…チョー気持ちいいってヤツ?」

「…そりゃなによりで…」

「…ぷぷッ!いつまでアホ面晒してんのさ、ほら、残姉ちゃんも」

「あ、うん…」

 心の底からスカッとしたような江ノ島の様子に二人は怪訝そうな表情となるが、当の江ノ島はそんなことなど気にせず思いっきり伸びをする。

 

「ふーッ!…正直退屈しかないと思ってた希望ヶ峰学園だけど、入学早々こんな『暇つぶし』を見つけられるなんてラッキーだったわ。アンタ…いいおも…『友達』になれそうよ」

「今なにかロクでもない単語が見え隠れしたような…。ま、それは僕も同感だね。僕の『才能』が役に立ったようで何よりだよ」

「へ?アンタの才能?」

「ああ、自己紹介がまだだったね。…僕は苗木誠。『超高校級の幸運』枠で抽選入学が決まって…ついこの間から『超高校級のギャング』としても認められたんだ」

「…へえ、『幸運』ね。確かに言うだけのことはあるってことね。…ああ、アタシは江ノ島盾子、『超高校級のギャル』として今年から入学することになったんだ。…隣にいるのはー、私と双子の『残念なお姉ちゃん』こと戦刃むくろちゃんでーすッ!…こんなむさくて臭くて見苦しい見た目してますけど、一応『超高校級の軍人』としてそこそこ使えるから、よろしくしてあげて…」

「あ…よ、よろしく…」

「こちらこそよろしくね、江ノ島さん、戦刃さん」

「あ、あう…」

「なにいつまでも照れてんだ残姉!処女こじらせんのも中二までにしとけや!」

「じゅ、盾子ちゃん…!」

「…破天荒な妹さんだね」

「うん…でも、ホントはいい子だから…」

「分かってるよ。…おっと、そろそろ行かないと遅刻しそうだね」

「あ…ホントだ。急ごう…」

 

「…ちょっと待ちなッ!」

 校舎へと向かおうとした苗木を江ノ島が呼び止める。

 

「な、何…?」

「いやなに…私様という存在をここまで『論破』してくれたのはキミが初めてだったからね。このまま行かせたんじゃ負けっぱなしみたいで釈然としない訳だ。…だから、この場で『宣戦布告』をさせてもらうおうと思ってな!」

「せ、宣戦布告?」

「なあに、深い意味はないよ。…ただねー!これから同じ希望ヶ峰学園の生徒として過ごす訳だしー、色々意見の食い違いとかもあるでしょ?…その諸々を全部ひっくるめて、貴方に一言言っておきたいことがあるんです…」

「…成程、大体わかったよ。なら、僕からも一言返させてもらうとしよう」

 

 校門を挟んで、苗木と江ノ島が向かい合う。そして互いに告げる。これから1年間の平穏、そしてその先に在る二人の『因縁』の始まりとなる、その最初の一言を。

 

 

 

 

 

「覚悟しな『希望』ッ!!これから思う存分好き勝手に遊んで『希望に絶望』させてやるよ!」

「望むところだ『絶望』!精々『絶望に絶望』しないよう気をつけることだね…!」

 

 

 これが、『人類史上最大最悪の絶望的事件』…ひいては『希望と絶望』の戦いの、始まりの一ページであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…良かった、二人とも友達になったみたい…」

 …そしてその歴史的瞬間の目撃者である筈の彼女の感想は、どこまでも『残念』なものであった。

 




これが妹様の「苗木厨」への最初の一歩であった…。
察しが良すぎるって?仕様です。
この後に関しては全く考えてないので絶望編でヒントを見つけながら考えていきます。松田君も出さないといけないし、江ノ島編はボリューミーになりそうです。
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