ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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アイズオブヘブン編の本筋に入ります
今作は本編の超絶ネタバレが含まれますので、本編をお楽しみにしている方は我慢した方がいいかもしれません。それでもよろしい方はどうぞご覧ください



ダンガンロンパの新情報に関してですが…


万代が釘さんだったり月光ヶ原がCVなし(無口枠?)だったり未来編と絶望編が同時放送だったりもう理解不能理解不能理解不能ゥッ!
制作決定からここまで音沙汰なしだったのに、まるでジェットコースターのごとき新情報の連打…しゅごい(こなみ感)
これはニューダンVスリャァッ!!…もいきなりドン!と来そうですね


特別番外編 アイズオブヘブン~彼方よりの来訪者~

「…まったく、一体何が起きているんだ。ボスを倒したと思ったら、死んだ筈のブチャラティやナランチャが蘇って、おまけに彼らと共に豹変してしまったフーゴとまで闘う羽目になって…あの承太郎という人は、一体何を知っているというんだ…?」

 ネアポリス駅構内にて、『ジョルノ・ジョバーナ』はそんな愚痴を零しながら歩き回る。彼は先程、仲間たちと共に宿敵である『ディアボロ』を打ち倒し、目的を成し遂げた筈なのであったが、突如現れた『死んだ筈のブチャラティ』、そして『1988年からやって来た空条承太郎』により『異変』に巻き込まれることとなり、現在は承太郎の指示に従いこの駅のどこかにあるという『聖なる遺体』を探す手伝いをしていた。

 

「まあ、考えたところで無駄か。今はブチャラティを追う手がかりを見つけるためにも、『聖なる遺体』とやらを探さなくっちゃあな……ん?」

 と、ジョルノは駅の案内図の下あたりに落ちている『奇妙な物体』を見つける。

 

「これか?…しかし、これは…」

「おおッ!『遺体』を見つけたみてえだなッ!」

 聴き慣れない声に振り返ると、承太郎と先ほど一緒になったポルナレフと共に、帽子を被った男が嬉しそうにやって来る。

 

「…承太郎さん、この人は?」

「俺たちの旅の『案内人』みてーなもんだ…」

「『ロバート・E・O・スピードワゴン』だ!話は聞いてるぜ、ジョルノ。早速だが、今見つけた『遺体』を見せてくれねえか?」

「…これですか?」

「おう!…どうやらこいつは『遺体の頭部』みてーだな。しかし…なんか『妙』だな?」

「妙?」

「あなたも気が付きましたか…。手に持った重さで僕も分かったんですが、どうやらこの『頭部』には、『脳』が入っていないみたいなんです」

「脳…?脳ミソが入っていねえってのか?」

「おかしいな…遺体は全部で『九つ』の筈だ。けど俺の知る限り『遺体の脳』なんて部位は存在しねえ筈だぜ」

「どっかに脳ミソだけ落っことしちまったってか?こんな干からびたミイラなんだし、あり得ねえことじゃあねえと思うぜ?」

「ふーむ…。まあそれはともかく遺体は見つけたんだ。それはお前が持っておきな!」

「ええ。そうさせてもらいます…」

 ジョルノが遺体を懐に仕舞うと、承太郎たちはジョルノの仲間たちと共に他の『遺体の部位』を探す為に遺体の導きに従い『別の時代』へと向かっていった。

 

 

 

 この時、『遺体の頭部』より消えた『脳』の行方もまた承太郎たちの探す部位の一つに加わることとなった。しかし、その『遺体の脳』は、頭部より零れ落ちた瞬間2つに分かれ、それぞれ『同じ時代の別の時間』へと向かっていった。一つは『アメリカ大陸』に、そしてもう一つはそれよりしばし未来の『希望ヶ峰学園』へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 そして、承太郎たちが杜王町を立ったのとほぼ同時刻に、その希望ヶ峰学園に『招かれざる客』が現れた。

 

ブォン…!

「…ここが次の遺体のある場所か。しかし、ここは…?」

「見たところ、『学校』のようだね。しかも案内図の文字からして…『日本』みたいだな」

 黒い光を伴って校内に突如現れたのは、『ヴァニラ・アイス』と『パンナコッタ・フーゴ』であった。二人は主である『あのお方』の命により、この時代にある『聖なる遺体』の回収にやって来ていた。

 

「…ここがどこであろうと関係ない。我々は『あのお方』の為に『遺体』を探すだけだ。それを阻む者がいるなら…」

「誰であろうと『消す』…だろ?分かっているさ」

「ならば構わん。…では、私は先に行くぞ。『クリーム』!」

 ヴァニラ・アイスの呼びかけと同時に、虚空に突如『異形』としか言いようのない化け物が出現する。ヴァニラ・アイスのスタンド『クリーム』である。その『クリーム』が大きく口を開けると、ヴァニラ・アイスは口内めがけて迷わず飛び込む。すると、ヴァニラの身体は『クリーム』の口の中にすっぽりと入り、『クリーム』の口の中からヴァニラの顔だけが見えている状態となった。

 

「『遺体』を見つけ次第報告しろ。邪魔が入らないうちに引き上げるぞ」

「ああ、分かっているよ」

 フーゴにそう言い残すと、『クリーム』は今度は自分の手足や体までおも喰い始め、やがて口内のヴァニラ・アイスと共に姿を消してしまった。『クリーム』の口の中は『暗黒空間』というところに繋がっており、飲み込まれた物は消滅してしまうという恐ろしい能力であるが、『クリーム』と本体であるヴァニラ・アイスだけは消えずに済むため、こうして全身を口の中にしまいこんでしまえば自身を完全に『暗黒空間』に隠すことができるのである。

 

「さて…僕も遺体を探さなくっちゃあな。とはいえ、僕は一応『部外者』だ。ここの関係者に見つからないようにしなくちゃな…まあ、見つかったら消せばいいだけの話だが」

 豹変する以前より几帳面だったフーゴは自分にそう戒め、遺体を探す為に歩き出そうとする。と…

 

「…あ?お前誰だよ?」

「ッ!」

(しまった…ッ!言い聞かせた傍からか…面倒な…!)

 真後ろからかけられた声に、振り返りざまに始末しようとスタンドを出しながら回れ右をしようとし…

 

「…む?あなたはフーゴさんではないですか!」

 その言葉に思わず動きを止める。

 

「…なんだと?」

「フーゴって…あー!そういやよく見りゃフーゴじゃねえか!」

「お久しぶりですフーゴさん!…夏休み以来になりますかな?」

「ご、ご無沙汰してます…」

 目の前で自分に気さくに話しかける『リーゼントの青年』…大和田、『生真面目そうな青年』…石丸、『気弱そうな少女?』…不二咲の反応に、フーゴは若干混乱し始める。

 

(どういうことだ…?こいつらは、僕の事を知っているのか?もしかしたら…『この時代の僕』のことを知っている奴等か?ならば、下手に実力行使にでるよりは…)

「…ああ、久しぶりだね君たち」

「ハッ!…ところで、今日は一体何の御用でしょうか?お見えになるとは聞いていませんでしたが…」

「ああ、実はこの学校に『探し物』があってね…。訳あって、詳しいことは話せないんだけど…」

「探し物?」

「…そうだ。君たち、この辺りで『干からびたような物』を見なかったかい?」

「干からびた…もしかして、あれかな?」

「む?不二咲君何か見たのかね?」

「うん…。2階の『図書館』の前に、何か変なゴミみたいなのが落ちてたような…もしかしたらだけど」

「ありがとう。とりあえず行ってみるよ…」

「おう。…あ、『苗木』なら今2階のトレーニング室にいると思うぜ。ついでに会って行けよ」

「…?あ、ああ…」

「では、お勤めご苦労様です!」

 和やかに挨拶すると、3人はまたどこかへと行ってしまった。

 

「…『ナエギ』?誰だそれは?僕には日本人の知り合いなんかいないぞ。…まあいい、今重要なのは『遺体』だ。アイツの言葉が正しいかどうかは分からないが、とりあえず行くだけ行ってみるか」

 彼らの言葉を信じ、ひとまず2階の『図書室』へと向かうフーゴ。やがて図書室前にやって来ると、そこの踊り場の柱の陰に不二咲の言っていたとおり一見ただのゴミ…『遺体の脳の一部』が落ちているのを発見する。

 

「見つけたぞ…『遺体』だ!よし、あとはヴァニラ・アイスの奴と合流して『あのお方』のところにお持ちすれば…」

 遺体を回収する為フーゴが一歩踏み出そうとした時、そのフーゴよりも早く遺体に触れる者がいた。

 

「こいつは…何だ?」

「…!」

 フーゴの目の前で遺体を手にしたのは、もう一つの『遺体の脳の一部』の持ち主、『日向・Z・創』であった。

 

 

 

 

 

「さあて…今日はどうすっかねぇ~?」

 その瞬間より少し前、日向は暇を持て余し校内を徘徊していた。日向は今年度より『予備学科』として初の『特別推薦枠』という形で本科へ編入した。…しかし、本来なら予備学科から本科への編入など予定されていなかった為学園側の準備不足が祟り、また最終学年ということもあって、日向にはこれといった『目標』が存在しなかった。卒業後はSPW財団への就職が決まっているので、これといって進路の事を考える必要も無いのである。

 

『…呑気なものですね。折角僕の『才能』を手に入れたのですから、苗木君のようにもう少し上昇志向を持ったらどうなんです?』

(いーんだよ俺は。アイツはアイツ、俺は俺。アイツが『仲間』と『嫁さん』の為に頑張ってるように、俺は俺で千秋の為にやれることはやってんだからよ)

『…なら式場や新居を探したらどうなんです?卒業したら結婚するんでしょうあなた達』

(えー、あー…そ、そういうのは千秋と決めねえと意味ねえだろうが!)

『やれやれですね…』

 編入前に起きたとある事件により、自分の中に居つくことになった『カムクライズル』の人格と頭の中で話しながら歩いていると

 

 

…ズキンッ!

「ッ!」

『!』

 突如、頭に鈍い痛みが走る。

 

「なんだ、今の…?」

『…気づきましたか、創』

「ああ…これは、『呼んでいる』…!誰かが俺を…いや、俺のアタマん中の『ミイラ』を呼んでやがる…ッ!」

『呼ぶというよりは、『共鳴』しているという感じですね。…どうします?』

「行くしかねえだろ…。こいつの『正体』が分かるかもしれねえしな!」

『ですね…』

 頭の中の『ミイラ』の共鳴に導かれるまま、日向は図書館の前までやって来る。

 

「ここら辺りか…どこにいるんだ?」

『…!創、アレを…!』

「ん?」

 カムクラが示した先には、淡い光を放つ干からびた『ミイラ』のようなものが落ちていた。

 

「こいつか…?こいつは…なんだ?見たところなんかのミイラみてーだが…」

『…『超高校級の外科医』の才能によれば、これは人の『大脳の一部』のようですね』

「大脳!?…ってことは、もしかしてこいつは…!」

『ええ…。貴方の頭の中にある、ミイラと同じ物…』

 

 

 

「…そいつをこっちに渡してもらおうか!」

「ッ!?」

 殺気の籠った声に警戒しながら振り向くが、その先にいた人物に日向は目を見開く。

 

「お、お前は…確か、パンナコッタ・フーゴ!?」

『誰です?』

「苗木の部下だよ…多分な。前会った時とは随分様子が違うみてーだが…」

『…何者かのスタンド攻撃を受けている、と?』

「さあな…だが、どうやら今は『敵』ってことで間違いなさそうだ」

「何をゴチャゴチャと言っている…。『警告』してやる、そいつを置いて消えるなら怪我しないで済むぞ。だが、拒むのなら…誰であろうと始末させてもらう…!」

「…随分血気盛んなことじゃあねーか。『IQ152』の秀才はどこ行ったよ?」

(やはり、コイツも僕の事を知っている…!変に話を長引かせれば、余計人目につくだけだ。ならば、さっさとこいつを始末して…)

 

「…あれ?誰か居るの?」

「!?」

 そんな声とともに、フーゴの後ろの曲がり角から顔を覗かせたのは

 

「…フーゴ?なんで君がここにいるんだ?」

 トレーニング室から出てきた苗木であった。

 

「な、苗木!?」

(こいつが…苗木?見覚えが無いが…『誰か』に似ているような…)

「…フーゴ、なんで君が学園に居るんだ?僕は何も連絡は貰っていないが…」

「気をつけろ苗木ッ!今のそいつは正気じゃあないッ!」

「何…!?」

「チッ…!面倒な、こうなったら二人まとめて…」

 

 

 

 

 

『…創ッ!そこから離れろッ!!』

「ハッ!?」

 カムクラの警告に瞬時にその場から飛び退いた、次の瞬間。

 

 

ガオンッ!

 ついさっきまで日向が立っていた床が、突然くりぬかれるように『消失』する。

 

「なッ…!?」

「これは…スタンド!?」

「…ヴァニラ・アイスか」

 飛びのいた日向がフーゴを跳び越え苗木の傍に着地すると同時に、フーゴの隣の空間が開き、そこからヴァニラ・アイスが姿を現した。

 

「なにをしているパンナコッタ・フーゴ。邪魔者はすぐに消すと言った筈だが?」

「…どうもこいつら、『この世界の僕』のことを知っているようだったのでな。面倒なことにならずに済むと思ったのだが、どうやらそうはいかないらしい…」

「ならば、やることは決まっている…」

「ああ…!『あのお方』の為に、こいつらを殺して『遺体』を奪うぞ…!」

 

 

 

「あ、危ねぇ~…。サンキュー、カムクラ」

『僕の才能に『幸運』が有って良かったですね。…それより、向こうは完全にやる気みたいですよ』

「だな…おい苗木!戦えるな?」

「…当然だ。何が有ったのかは知らないが、フーゴの様子がおかしい以上僕が何もしない訳にはいかない。隣の奴も気になるが、今はフーゴを何としても正気に戻す…ッ!」

 殺気の籠った『黒いオーラ』を纏うフーゴとヴァニラ・アイスに、苗木と日向は迎撃の為に身構える。

 

「…苗木、あのロン毛の奴は俺に任せとけ。お前はフーゴの方を止めな」

「…うん、そうさせてもらう」

「どうやら私たちを倒すつもりのようだな…身の程を知らない連中だ」

「どうでもいいさ…さっさと片付けるッ!」

 フーゴは『パープル・ヘイズ』を呼び出すとそのまま正面の苗木に殴り掛かる。

 

 

「喰らえ!『パープル…』」

 

 

『無駄ァ!』

 

バキッ!

「グハッ…!?」

 しかし、『パープル・ヘイズ』の拳が当たるよりも早く、苗木から放たれた『何か』がフーゴを吹き飛ばす。

 

「クッ…!僕の事を知っているというから予想はしていたが、やはり貴様スタンド…」

 しかしフーゴの言葉は、苗木の傍に立つスタンドの姿を見た瞬間止まってしまう。

 

「…おい、パンナコッタ・フーゴ!貴様何を棒立ちで…」

「…馬鹿な!それは…『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』!?何故お前が…『ジョルノ』と同じスタンドを持っている!?」

「…ジョルノ?」

 己のスタンドを見たフーゴの口から出た名に、苗木は首を傾げる。

 

「貴様!いい加減に…」

「よそ見してる場合かテメェーッ!」

「ムッ!」

 動揺するフーゴを叱咤しようとしたヴァニラ・アイスに、『鉄球』を回転させながら日向が突っ込んで来る。

 

「チィ…!『クリーム』…」

「『レッキング・ボール』ッ!」

「!?」

 暗黒空間へと逃れるべく『クリーム』の中に飛び込んだヴァニラ・アイスを、日向の放った『黄金の回転』をした鉄球が掠める。

 

「チッ、掠ったか。だが、この程度…!?」

 攻撃が当たったことに舌打ちするヴァニラ・アイスであったが、直後に自分の感じた『感覚』に思わず混乱する。

 

「これは…!?馬鹿な、掠っただけの筈だぞ!なのに…私の『左半身』が機能しないだとッ!」

 ヴァニラ・アイスは今、自分の『左半身』が『消失』したかのような感覚を味わっていた。

 

 

 

「…どうやら掠りはしたようだな」

『ええ、最も…どうやら『別の空間』に逃げられたようですがね』

 日向はカムクラと話しながら、暗黒空間へと逃れたヴァニラ・アイスが現れるのを待ち構えていた。先ほど日向が放ったのは、『左半身失調』を引き起こす『黄金の回転』の一撃である。これはカムクラが自分の中に居ついた際、カムクラの頭脳の協力を得て日向が完成させた今まで日向が使っていた黄金の回転とはまた『別』の回転である。日向はカムクラによって完成したこの技に『レッキング・ボール(壊れゆく鉄球)』という名をつけたのである。

 

「奴の能力…さっきの不意打ちから考えてどうやら億泰さんの『ザ・ハンド』に近い能力みたいだな。もっとも奴は、『削り取った先の空間』に移動できるみたいだが…」

『とはいえ、左半身失調状態の奴はまだまともに動けない筈です。そして動き出したとしてですが…創、あいつは『姿を消したまま削り取る』ことができると思いますか?』

「それができればお手上げだが…そりゃ多分ねえだろ。となると、奴は削り取る瞬間には『こっちの世界』に戻ってくるはずだ。そこに『タスク』を叩きこむ…!」

『…問題はあっちの戦況ですが…』

 

 

『無駄無駄無駄無駄ッ!』

『ウバシャァァァッ!!』

「シッ!」

「ぐうッ!つ、強い…。スタンドだけじゃない、コイツ自身もかなりやる…!」

「生憎『パープル・ヘイズ』の弱点は知っている!その腕の『カプセル』を割られる前に再起不能にするッ!」

「糞ッ…!」

 

 

『向こうはどうやら心配ないようですね…』

「まあ一方的に知ってる奴が相手ならあんなもんだろ。…さて、そろそろお出ましかな?」

 

 

『…左ッ!』

「『Act2』!」

 

ドォン!

 カムクラの『幸運の直感』による指示を受けた場所に、日向は『爪弾』を撃ちこむ。が…

 

ガオンッ!

「嘘ぉ!?」

『避けろ創ッ!』

「うおッ!?」

 出現した半透明の球体…『クリーム』に爪弾が当たった瞬間爪弾はそのまま『消失』してしまった。そのまま突っ込んで来る『クリーム』を驚きながらも日向は間一髪で躱す。

 

(…妙な術を使ったことには驚いたが、こうして暗黒空間に居れば奴の攻撃は俺には届かん。またあの『鉄球』を使われる前に、速攻で暗黒空間に飲み込んでやるッ…!)

 『左半身失調』より復活したヴァニラ・アイスは不覚を取らせた日向に憎悪の視線を向け再び突貫の用意を始めた。

 

「クッソー…。アイツ『削り取る時』に攻撃しても効かねえのか。…となると、やはり『黄金の回転』をぶち込むしかなさそうだな」

『しかし、『鉄球』は既に一度見られています。また投げようとすれば警戒して投擲を妨害してくるかもしれません。なれば…』

「…『Act4』か。しかし、『馬』なしでアレをやるとなると今の状況じゃあちと難しいぜ?」

『『Act4』の回転を創造する為には、我々自身が『黄金長方形のスケール』になるしかない。理想は『馬の力』を利用することですが、無い物をねだってもしょうがありませんしね。下手に苗木君に頼めば感づかれてしまう恐れもあります』

「…『一瞬』だ。一瞬でも奴の動きを完全に止められればなんとかなるんだが…」

 

 

 

 一方その頃、フーゴを相手取っていた苗木は確実にフーゴを追い詰めながら日向の様子を窺っていた。

「…向こうはだいぶ手こずってるみたいだ。奴の能力、かなりやっかいだな…」

「貴様…!よそ見などふざけた真似を…僕を馬鹿にするんじゃあないッ!『パープル・ヘイズ』ッ!!」

「むっ!」

 いきり立ったフーゴの『パープル・ヘイズ』の拳の一撃を、苗木は半身になって躱す。

 

 

 しかし、フーゴが狙っていたのは苗木ではなく『後ろの壁』であった。

 

ガコッ…!

「しまッ…!」

パキキ…

「かかったなマヌケッ!砕けろ、『ウイルスカプセル』!」

 

パキァン…!

 『パープル・ヘイズ』の拳の『カプセル』が砕け、中より全てを殺戮する『殺人ウイルス』が解き放たれる。

 

「…ッ!?こ、これ…は…!?」

「…ハッ、ハッハッハ!これで終わりだッ!ジョルノのように『抗体を持った生き物』なぞ作らせんぞ!このままなにもさせずに始末して…」

 

『無駄ァ!』

バキッ!

「がふッ!?」

 完全にウイルスに囲まれた苗木を見て勝利を確信したフーゴであったが、直後に飛んできた『G・E・R』のパンチをもろに喰らってしまう。

 

「…悪いがフーゴ、その程度じゃあ僕は殺せない」

「なッ…!?」

 愕然とするフーゴの前に、ウイルスをまともに喰らったというのに『殆どダメージを受けていない』苗木が立ちはだかる。

 

「ば、バカなッ…!?僕の『パープル・ヘイズ』のウイルスで死なない生き物など、存在するはずが…」

「『キミの知るゴールド・E』ならそうだろうね。…だが、『レクイエム』となった僕には、もうそのウイルスは通用しない。…それに忘れたのかい?そもそも僕は既に『抗体』を持っている。初めて君のスタンドを見たあの時にね…」

「…!?お前も抗体を持っているだと…」

(…しかし、おかしい…。僕の『レクイエム』なら『パープルヘイズ』のウイルスでも無力化できるはずなのに…、今の僕は『抗体』のおかげで症状は軽いけど確実に『感染』している。思えば親父と闘ったあとから、妙にスタンドに『違和感』を感じる。親父のスタンド能力の影響なのか…?)

 自身のスタンドの不調に疑問を感じながらも、フーゴにそれを悟られぬよう苗木は不遜を演じる。

 

「…まあそうじゃなくても、『ディストーション』を使わない君に負けるつもりはないけどね。…僕が嫌だったのは、ウイルスが死滅するまでの数十秒間の間に誰か来られると困るからさ」

「『ディストーション』…だと?何のことだ、何を言っている…!?」

「…もしかして君は、君の正体は…」

 

ガオンッ!

「!」

 眼前のフーゴの『正体』に感づいた苗木の後ろで、『クリーム』が壁を飲み込みながら日向に突撃する。

 

「日向君ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

『来ましたよ創…!』

「分かってらッ…!」

 正面から突っ込んで来る『クリーム』を前に日向は身構える。

 

 

『クソ生意気なガキめ…!これで終わりだッ!!』

「……」

 

 

 

 

 

 

バッ!

『!?』

 突如日向が前に放り投げた『物』に、『クリーム』の中のヴァニラ・アイスはそれを凝視し、次いで『驚愕』する。

 

『い、遺体だとッ!?』

 日向が投げたのは、つい先ほど拾った『遺体の脳』であった。

 

「大事なモンなんだろ?…だったら、くれてやるよッ!」

『ぐ、クッ!』

 このまま突っ込めば日向諸共、車線軸上にある『遺体』まで消してしまう。ヴァニラは急ブレーキをかけ『クリーム』を『停止』させる。

 

 

「…このクソガキめッ!よくもこの俺に『あのお方』が求める物を消させようと……ッ!?」

 

 そう、停止した。『止めてしまった』のだ。日向を罵ろうと『クリーム』より顔を出したヴァニラ・アイスの視界には、既に日向はいなかった。

 

「ど、どこに行った…!?」

「…!ヴァニラ・アイス、上だッ!!」

「なッ…!?」

 フーゴに言われ頭上を見上げるヴァニラ・アイス。そこには『片目が赤のオッドアイ』になった日向が跳躍していた。

 

「カムクラの『頭脳』と、俺の『経験』と『肉体』…その全てを今、ここに『集約』させるッ!」

『『超高校級の数学者』と『超高校級の分析家』の才能によって計算された『完全なる黄金の回転』の計算式を、『超高校級の保険委員』と『超高校級のマネージャー』の才能により人体の動きに変換、そしてそれを『超高校級の体操部』の才能、そして創の肉体を持って『再現』する…!』

「あらゆる『才能』をフル稼働し、それを実現することで俺自身が『黄金長方形』のスケールそのものになる…!そして、これがッ!」

 見る人が見ればどこから見ても『黄金長方形』の形となって飛翔する日向が、その回転する爪先をヴァニラ・アイスへと向ける。

 

「なんのつもりかは知らんが、させるものかッ…」

 何かを仕掛けてくることを察したヴァニラ・アイスが迎撃態勢に入るよりも早く

 

「『完全なる、黄金の回転エネルギーッ!!』」

 

 

ドギュォォォンッ!!

 爪弾は勢いよく放たれた。

 

 

 

 

 

『…チュミミ~ン』

 突如現れた、『異形の怪人』を伴って。

 

 

 

「…な、なんだ…それは…!?」

「そういやまだ俺のスタンドの名前を言ってなかったな。…俺のスタンドの名は『タスク』、そしてこいつが『タスクAct4』だ!」

『避けてもいいんですよ?もっとも…逃げ切れたらの話ですがね』

『チュミミ~ン…!』

「…な、なんだか分からんが、コイツはヤバいッ!『クリーム』ッ!!」

 落書きのような顔をした、一見マヌケそうな見た目。しかしそいつから感じる『圧倒的な殺意』に、突っ込むのは危険と判断したヴァニラ・アイスは『クリーム』の口から暗黒空間に逃れようとする。

 

「…逃すと、思ってんのかァァッ!!」

『チュミミ~ンッ!!』

 その背に向けて、日向は力の限り『タスク』のラッシュを叩きこむ。

 

「『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!』」

 

ドゴゴゴゴッ!!

「グウォッ…!?」

 『クリーム』の口内に入り込む間際に『タスク』のラッシュを喰らいながらも、ヴァニラ・アイスはなんとか暗黒空間へと逃げ込んだ。

 

「よもや…こいつのスタンドがこれほどのパワーを持っていたとはな…!だがッ!もう同じ手は二度は喰わんッ!今度は貴様に小賢しいマネなどさせぬ内に消し飛ばしてくれるッ!」

 憤怒に燃えるヴァニラ・アイスは再び攻撃を仕掛けようとする。

 

 

 

「……」

 しかし、そんなヴァニラ・アイスのことなど知ったことではないとばかりに日向は闘いの構えを解いた。

 

「何…!?」

「…おい、ヴァニラ・アイスとか言ったな。どこで見てるかは知らねえが、俺は別に勝てないと諦めたから楽になった訳じゃあないんだぜ。…むしろその『逆』、我々は既に貴方に『勝っている』んですよ」

「何を言って…」

 口調がコロコロと変わりながら意味深なことを言う日向を、ヴァニラ・アイスは暗黒空間から怪訝そうに睨む。

 

 

 すると突然、その視界がまるで切り離されたかのように『ズレた』。

 

「ッ!?」

 目の錯覚かと思わず顔に手をやったヴァニラは、そこで気が付いた。自身の顔…いや、全身がまるで『スプリング』のように切り離されつつあることに。

 

「なッ…!?ば、バカなッ!!?一体…なんだ、これはァァッ!!?」

 暗黒空間で一人混乱するヴァニラに語りかけるように、日向は自身の能力を口にする。

 

「聞いてるかどうか知らねえが教えてやる。…俺の『タスク』の能力は『爪を回転させ切断する』能力。これだけなら正直そこまで強力なスタンドじゃあない。…だが、俺の辿りついた『黄金の回転』により生み出されたこの『Act4』の回転は、決して『止まることが無い』。…つまり、一撃でも『Act4』の攻撃を喰らってしまった貴方は、もうそれから逃れることは出来ない。あなたは死ぬまでその『回転』によりその身を切り刻まれ続ける。どこへ逃げようと、どれだけ時間が過ぎようと、絶対に逃がさない…どこまでも追いかけて行って、確実に『殺す』。それが、我々の…『タスクAct4』…!」

「何を…馬鹿な…」

 

 

ガシッ

「ッ!?」

 あり得ないと切って捨てようとしたヴァニラ・アイスの肩を、『何か』が掴む。

 

「なん、だ…?」

 暗黒空間に自分以外の存在はいない筈、そう思いながら振り返ったヴァニラ・アイスが見たものは

 

 

 

 

『…チュミミ~ン』

 無機質な眼でこちらを見ながらで拳を振り上げる、『タスクAct4』であった。

 

「ば、バカなッ!?何故こいつがここに…まさか、本当に『追いかけてきた』とでもいうのか!この暗黒空間までッ!」

『チュミミ~ン!』

「く、糞がァァァァッ!!」

『オラオラオラオラオラオラオラオラッ!』

 

 

 

 

 

 

「グボァァァァッ!!」

 『タスク』のラッシュを喰らいながら、弾きだされるようにヴァニラ・アイスは暗黒空間から逃げ出した。

 

「こ…殺すッ!あのクソガキを殺して、今すぐこの回転を…」

 切り刻まれ血だるまになりながらも殺意を滾らせたヴァニラ・アイスの額に

 

 

ドォン…ッ!

「…あ?」

 日向の放った2発目の『タスク』が無情に突き刺さった。

 

 

「…もう黙ってろ。お前の声は、聞き飽きた」

「そん、な……お、様…」

 意味をなさない言葉を最期に、ヴァニラ・アイスはこと切れた。

 

ヴァニラ・アイス…死亡。再起不能

 

 

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!」

「ぐおぁぁぁぁッ!?」

 一方その頃、フーゴと苗木の闘いにも決着がついていた。

 

「ぐうッ…!」

「…どうやら、向こうも終わったみたいだね」

「…!ヴァニラ・アイス…ッ!」

 膝を突くフーゴの視線の先から、ヴァニラ・アイスを倒した日向がこちらにやってくる。

 

「…そっちも終わったみたいだな」

「うん。…さてフーゴ、君には訊きたいことがある。答えて貰うぞ」

「ぐうッ…!ここは、一旦退くしかないか…」

「ああ?逃がすと思って……ん?」

 逃げようとするフーゴを日向が取り押さえようとした時、突如手にしていた『遺体』が光を放ち始める。

 

「な、なんだ?」

 するとそれに呼応するように、日向の『頭部』もまた光を放ち出す。

 

「な、なんじゃこりゃあ!?」

「…!日向君、頭から何かが…」

「え?」

 自身の異常に混乱する日向の頭から、光と共に脳に埋め込まれていた筈の『遺体の脳の一部』が飛び出してくる。

 

「うおおおッ!?」

 唖然とする一同の前で、日向から飛び出した『遺体』と手に持っていた『遺体』が引きよせ合い、くっついて完全な『遺体の脳』となった。

 

「どど、どうなってんだ…?」

「う…ぐああああッ!」

「ッ!フーゴ!?」

 一つとなって未だに光り続ける『遺体』を訝しげに見ていると、フーゴがいきなり頭を抱えて苦しみだす。それと同時に、『遺体』の放つ光も一層強くなる。

 

「ぐう…ああああ…」

コォォォォ…

 やがて光が収まると、フーゴも落ち着きを取り戻す。そして立ち上がったフーゴの顔は、ダメージこそ残っているものの先ほどまでの殺意に満ちた顔つきとは打って異なりまるで憑きものでも落ちたかのように穏やかなものであった。

 

「ぼ、僕は…?ここは、一体…?」

「お、おいお前…大丈夫か?」

「あ、ああ…。キミは…いや、憶えている。君たちが僕を助けてくれたんだね。ありがとう…」

「お、おう…」

「ていうか、日向君こそ大丈夫なの?頭から出てきたのってあのジジイ共に埋め込まれた『ミイラ』だよね?どう見ても異常だったんだけど…」

「…ああ、俺は問題ねえ。頭から出てきたのにはビビったが、特に変わったカンジはねえ…」

『…脳の一部が損失したというのに何ともない方が『異常』だと思うんですがね…』

「まあな…。それより…フーゴ、お前なんでここに居るんだ?あのヴァニラ・アイスとかいうのやさっきまでのお前は一体なんだったんだよ?」

「…済まない、僕にも分からないんだ。…分からないと言えば、何故君たちは『僕のことを知っているんだ』?僕は君たちに見覚えがないんだが…」

「あ?何言ってんだお前…俺はともかく、自分の『ボス』の顔まで忘れたってのか?」

「ボス…!?一体、何を言っているんだ…?」

「…おい、苗木。こいつマジでどうしちまったんだ?」

「…いや、『問題ない』よ日向君。『このフーゴ』は僕の事を知らなくて『当然』なんだから」

「…はぁ?」

『どういう意味です?』

 理解不能と言った日向に苦笑いしながら、苗木はフーゴに向き直る。

 

「…どうしました?」

「…パンナコッタ・フーゴ。1985年生まれ、イタリア人。大学在学中にキレて暴力事件を起こして退学。以後イタリアのギャング組織『パッショーネ』に身を置き、ブローノ・ブチャラティの下でギャングとして活動する」

「…!お前、何故僕のことをそこまで…」

「勿論知っているさ。君が意外と面倒見がいいことや、自分のスタンドの『パープル・ヘイズ』を制御できないことに嫌悪していることも、…そして『あの時』、ブチャラティと共にボートに乗れなかったことを後悔し続けていることも」

「ッ!?君は…一体、『何者』なんだ?」

「…突拍子もない推理ではあるんだけど、あの『経験』があったからか理解できた。…初めまして、『並行世界のパンナコッタ・フーゴ』。僕は苗木誠、『この世界』のパッショーネのボスを務めている者だ」

「なッ…!?」

「へ、並行世界ッ!!?」

 苗木の言動に二人が驚いたのも束の間…

 

 

「…ここだ!この辺りのどこかに『遺体』があるぜッ!」

「やれやれ…。よそ様の学校をうろつくなんざ、ロクな目に遭う気がしねえ…あん?」

「へ?…あ、アナタはッ!」

「承太郎さんッ!?…と、誰?」

 廊下の向こうからやって来た『顔に傷のある男』と『学ランを着た大男』が乱入してきたのであった。

 




日向が「騎乗の回転」を使わずに黄金の回転を駆使していることに関してですが、スティール・ボール・ランの時代よりはるかに未来ですし、超絶チートのカムクラがいればこれぐらいならできなくはないかなあ…というふわっとした考えの元こういう感じにしました。
ジャイロ舐めんな!…という方はごめんなさい
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