ではどうぞ
リサリサとシュトロハイム、そしてリンゴォとホル・ホースとの闘いに勝利した日向たちは、気絶したリサリサとシュトロハイムをひとまず置き、事情を知っていそうなリンゴォとホル・ホースの方へと視線を向ける。
「さて…答えてもらうぜ、ホル・ホース」
「うぐっ…何を、だよ…?」
「全部に決まっておるじゃろう!リサリサやシュトロハイムの豹変…いや、二人だけではないッ!行く先々で突然人々が凶暴化する理由はなんじゃ!?お前たちはどうやってここに来た?お前たちを従えているのは誰じゃ!?洗いざらい答えてもらうぞッ!」
ジョセフ(老)が『ハーミット・パープル』を巻きつけた腕を突出し詰め寄る。例え答えなくとも、『ハーミット・パープル』により頭の中を調べればあらかたの事情は探れる。どうせ同じなら素直に吐いた方が身の為だ…そういう意思表示でもあった。
「お、俺達を脅すってか…?いいのかよ、ンドゥールの奴みたいに自分でけじめをつけちまうかもしれねえぜ…?」
「…テメー、自分のこと分かって言ってんのか?テメーが他人様の為に命張る様な奴かよ」
「あ、そりゃ同感っす。アンタ面倒見はいい方だけど基本自分第一主義だもんな。『二番手』気取ってんのも、肝心なとこで足抜けしやすいからだろ?」
「こ、この野郎…(なんでそこまで知ってんだよ…!?)」
ホル・ホースのやけっぱちな脅しも、今迄散々彼の調子のいいところを見てきた承太郎や未来のホル・ホースの人柄をよく知っている日向には全く効果が無かった。
「…生憎だが、我々は何も話すつもりは無い。さっさと殺すがいい…それが『決闘』に敗れたものの宿命だ。それが『男の生きる世界』のルールだ…!」
「…随分潔いな。いや…ただの『時代遅れ』か、どっちでもいいがな…」
「だ、旦那ぁ…そんな、覚悟決まり過ぎだぜぇ…」
完全に死ぬ気のリンゴォにこれ以上の問答は無意味と判断した承太郎たちは、二人を再起不能にしようとするが…
ゴゴゴゴゴゴ…!
再び出現した『黒い光』が、ホル・ホースとリンゴォ、そして後方で気絶しているシュトロハイムを包み込む。
「なッ…!またあの光か!?」
「た、助かったぜぇ~…」
「…どうやら今回の雇い主は、俺の主義を通させてはくれないようだな。遺憾ではあるが…これも運命か」
「チッ…!逃がすかよ!」
「ジョースター、決闘の『勝者』であるお前たちに一つだけ教えよう。…お前たちが『遺体』を求めるのなら、いずれ『あのお方』はお前たちの前に姿を現すだろう。その時、お前たちが眼前の『絶望』にどう向き合うか…健闘を期待するとしよう」
「ま、待てッ!!」
日向の手が届くより早く、承太郎が時を止めるよりも早く、3人は光に包まれ消えてしまった。
「サノバビッチ!また逃げられてしまったわい…」
「だが…最後に妙な事を言い残していったな。奴等の言う『あのお方』とやらも、遺体を集めているらしいな。こいつを集めて何を企んでやがるのか…」
「…まあ、それはおいおい考えましょう。それより、リサリサさんを早く…」
「…おお、そうじゃった!」
日向に言われてそのことを思い出したジョセフ(老)たちは、こちらの会話など気にも留めず気絶したリサリサを介抱しているジョセフとシーザーの元に向かう。
「先生…大丈夫ですか、先生!」
「な、なあシーザー…リサリサを起こすのはいいんだけどよ、目を覚ましたらまた襲ってきやしねーよなぁ~?」
「うっ…それは、分からんが…」
「…安心せい!それをなんとかしにきたぞ!」
「うおッ!?…って、さっきのアンテナ小僧に爺さんたちかよ。驚かすなよ…」
「アンテナって…」
ジョセフ(老)たちはジョセフやシーザーを押しのけるようにリサリサの傍に近づく。
「お、おい貴様ら!先生に何をする気だ!?」
「まー見とれい。…日向君、『遺体』を」
「了解ッス!」
ジョセフ(老)の指示に従い日向が持っていた『遺体』をリサリサに翳すと、遺体から光が溢れそれがリサリサを包み込む。
「う、うう…!」
「お…おい!よくわかんねーけど大丈夫なんだろうなソレ!?」
「やかましい!分からんのなら黙っとれい!」
「にゃ、にゃにぃ~!?このジジイ言わせておけば…」
「…!じ、ジョジョ!先生が…」
「あん?」
フォォォォォ…ッ!
「…う、うう…」
やがて光が治まると共に、リサリサは呻きながら起き上がった。
「せ、先生!大丈夫ですか?」
「…シーザー?それに、ジョジョ…私は、一体何を…?」
「…と、とりあえず正気みてえだな…」
リサリサの目に先ほどまでの狂気がないことを確認し、シーザーとジョセフはホッとする。
「…ふむ、どうやらうまくいったようじゃな」
「これで一安心っすね。シュトロハイムさんは残念でしたけど…」
「…!貴方たちは、誰…?」
聞き慣れない声に顔を上げた先に居た見慣れぬ3人の男に、リサリサは若干の警戒心を持ちながら問いかける。
「おう、そーだぜ!リサリサを助けてくれたことには感謝するが、いい加減テメーらだけで知ったようなことぬかしてないで名前ぐらい…」
リサリサに便乗するようにジョセフはジョセフ(老)の肩を掴もうとするが…
バチィッ!
「痛ってぇ!?」
肩に触れた瞬間指先に走った『電流のような刺激』に手を引っ込める。
「ど、どうしたジョジョ!?」
「い、今の衝撃は…まさか、アンタ…!?」
「…どうじゃ、その『波紋』に覚えがあるじゃろう?そりゃあそうじゃろうなぁ…威力はちと低いかもしれんが、何しろそれは『お前さん自身の波紋』なんじゃからな」
「波紋…ッ!そう、思い出したわ。そこの少年も波紋を使っていた、そしてアナタも…!老人、アナタは一体…?」
「…そうじゃな。どうせ話さねばいかんことじゃ、ここで言ってしまうとしよう」
戸惑うリサリサ、シーザー、ジョセフにジョセフ(老)は厳かに告げる。
「ワシの名は、『ジョセフ・ジョースター』!」
「……はぁ?」
「…おいジーさん、ボケてんのか?ジョセフってのはアンタじゃなくて俺の名前…」
「そうじゃ、お主の名前は『ジョセフ・ジョースター』。だからワシも『ジョセフ・ジョースター』なのじゃよ」
「あぁ?」
「…まさか、アナタは…」
「そうじゃ。…ワシは『50年ほど未来』から来た、そこにいるジョセフ・ジョースター『本人』じゃよ」
「「「ッ!!?」」」
「…な、にゃにぃぃぃぃッ!!?て、テメーが…未来の俺だとぉ!?」
「何を言い出すかと思えば…俺達をからかうのもいい加減にしてもらおうか、ご老人!!」
「まー、そういう反応じゃろうな。しかし、いちいち答え合わせをしている時間は無いのでな。手っ取り早く『証人』に出てきてもらうとしよう」
「証人…?」
「承太郎、『亀』を」
「ああ…」
半信半疑…いや、九割九分方疑うジョセフたちに対し、ジョセフは承太郎に亀を出すよう促し地面に置く。すると
ドヒュン!
亀の中から一人の男が飛び出した。亀から人が出てきたことに驚くジョセフたちであったが、直後にその男の『顔』を見て更に驚く。
「んな…ッ!?か、亀から人が出てきやがった!!しかも…こ、この『顔』はッ!!」
「そんな、あり得ない…こんなことが…!」
「せ、先生?どうしたのですか、ジョジョ…お前まで?」
『当時の彼』の顔を知らないシーザーが豹変した二人の様子に困惑する中、現れた男はジョセフ(老)に向かって話しかける。
「おう、呼んだかジョセフ?」
「呼び出してスマンな…『スピードワゴン』」
「…ッ!?す、スピードワゴンだと!」
その名を聞いて、ようやくシーザーも目の前の男が何者なのかを悟る。
「おう、俺の名はロバート・E・O・スピードワゴンだぜ!…で、お前さんは誰だ?」
「…な、何をふざけたことを…!スピードワゴンさんは70歳を超えたご老人だぞ!お前のように若い筈が…」
「ち…違うぜ、シーザー…!」
「…ジョジョ?」
「こいつは、間違いなくスピードワゴンだ…!俺が昔エリナおばあちゃんに見せて貰った、『若い頃のスピードワゴン』に瓜二つなんだぜッ!!」
「な、なんだとッ!?」
「エリナおばあちゃん…ってことは、お前さんが若い頃のジョセフか!成程…どことなくジョースターさんの面影を感じるぜ!」
「こ、この話し方…この性格!口調はちょっとばかし違うが、間違いなくスピードワゴンだ…」
「とすると…こっちの金髪がツェペリのおっさんの孫のシーザーか!なかなかイイ男じゃあねえか、モテるだろお前さん?」
「ど、どうも…」
「…そいで、アンタが『エリザベス』…いや、今はただのリサリサか」
「…本当に、アナタはスピードワゴンさんなの?」
「おう!詳しく説明してやりたいところなんだか…まだジョースターさんの体調が回復してないからよ、済まねえがこっちのジョセフから聞いてくれ。じゃあな!」
そう言い残し、スピードワゴンは亀の中に引き返してしまった。
「まったく、自分で言うだけあっておせっかい焼きじゃわい。…ところで、ワシの話は信じて貰えるようになったかな?」
「…わ、分かった!まだイマイチ理解しきれねーが…少なくともあのスピードワゴンが本物なのと、アンタが嘘をついてない…というか、アンタが『俺』だっていうことは分かった!」
「…ひとまず今は、そう考えた方が建設的のようね。これ以上疑ったところで疑念が晴れるとは思えないわ」
「まだ信じきれる訳ではないが…そういうことで納得するとしよう」
「うむ、理解してもらえたようで何よりじゃ」
「そ、それでなんだが…アンタの事は分かったが、そっちの二人は誰なんだ?」
「む、そうじゃな…紹介しておこう。…こっちのデカいのが空条承太郎、…ワシの『孫』じゃ」
「フン…」
「…はッ!?じょ、ジョジョの孫だと!?」
「オーマイガーッ!50年後の自分が来たと思ったら、おまけに俺の孫まできやがったってのかよ!?」
「…やかましい野郎だ。ジジイがうるせぇのは昔からみてーなようだな」
「余計なことは言わんでいいわいッ!」
「…ジョウタロウ、貴方がジョセフの孫なの?」
「ああ。……フッ」
戸惑いつつ声をかけてきたリサリサに、承太郎はその顔をまじまじと見つめ、思いがけず噴き出してしまう。
「…私が何かおかしいのかしら?」
「いや…俺の記憶とあまり変わらねえと思ってな。最後に見たのは中2の夏休みに会いに行ったっきりだったが…その年でその見た目なら納得だ」
「あん?オメーもリサリサのことを知ってんのか?…つーか、50年後にリサリサまだ生きてんのかよ?」
「こらジョジョ!先生に対しなんてことを…!」
「ああ?…テメエまさか知らねえのか?」
「あ?何がだよ?」
「リサリサ『婆ちゃん』は、テメーの…」
「ちょッ…!ま、待て承太郎!!」
「承太郎さん、ちょっとストップっす!」
リサリサの『秘密』を話しかけた承太郎をジョセフ(老)と日向が無理やり引き寄せる。
「…なんだジジイ?日向までよ…」
「承太郎…!スマンが、リサリサがワシの『母親』だということはまだ黙っていてもらえんか…?」
「あ?なんでだ?」
「ジョセフさんと大伯父上が共に修行中ということは、まだ彼らは『柱の男』との戦いを控えているハズです。ここでリサリサさんがジョセフさんの母親だということが露見してしまえば、おそらくですがジョセフさんと大伯父上の空気が非常に気まずいことに…」
「…ワシはかつてシーザーと喧嘩別れをしてしまったからのう。同じ歴史を辿るとは限らんが、いざこざの種はできるだけ避けたいんじゃ。柱の男との戦いに影響が出んとも限らんしのう…だから頼む、今は内緒にしておいてくれんか?」
「…チッ、面倒臭い野郎どもだ」
柱の男との交戦経験があるが故に、できる限りの禍根を防ごうとする二人の申し出を承太郎は渋々了承する。
「…ノックしてもっしも~し?またテメーらだけで内緒話か?」
「…そんなんじゃあねえよ。…ジジイの関係で顔を合わせたことがある程度だ。彼女の事はそこまで深く知っている訳じゃあねえよ」
「それにしては随分思わせぶりだったが…まあ、50年も経てば先生も現役を引退されているだろう。いくらジョジョの孫とはいえ、そんな程度だろうな」
「…一応、感謝しておくわ」
「さあな、なんのことやら…」
小声で礼を言うリサリサに、承太郎はそっけなくそう返事する。…『ひ孫と曾祖母』の会話にしては寂しいが、それだけで二人は互いの事を理解できていた。二人には、それだけで十分であった。
「さて…で、お前はどこのどちらさんよ?まさか今度はシーザーの孫とか言い出さねえよな?」
「おいおいジョジョ、まさかそんな都合よく…」
「…惜しいですね。近いですけどちょっと違います」
「…な、何…?」
「俺の名は日向・Z・創と言います。…祖母の名は『マリア・A・ツェペリ』と言います」
「ま、マリアだと!?お前はマリアの孫なのか!」
「シーザー、知ってんのか?」
「知ってるも何も、俺の『妹』だ!俺が波紋の修行を始めてからは、SPW財団に保護されたと聞いていたが…」
「ええ。彼女はその後日本に移住して、日本人の男と結婚します。そしてその二人の娘から産まれたのが俺です」
「そ、そうなのか…良かった、マリアは無事に生きれたのだな」
「成程ね…貴方が波紋を使えるのにも納得したわ」
「はい。…と言っても、俺は大伯父上やジョセフさん程波紋の才能には恵まれなかったので、今が頭打ちって感じなんですけどね」
「けどお前、さっきなんかスゲー技使ってたじゃあねえか。あんな波紋みたこと無いぜ!」
「…あれは厳密には『波紋ではありません』。アレは俺が会得した『黄金の回転』に、波紋を組み合わせることでできた『技術』です」
「黄金の回転…?」
「…リサリサさん。貴方は俺の曾爺さん、『マリオ・A・ツェペリ』から何か『預かって』いませんか?例えば…『手記』のようなものを」
「…!何故君がそれを…」
「やはりありましたか…。その手記には、マリオさんが執念で辿りつき、ついぞ自分では完成させることが叶わなかった『波紋を極限まで強化する技術』が記されています。それを俺と、俺の『相棒』によって完成させたものこそが、『黄金の回転』…」
「…こんな夜中にお揃いとは、随分と余裕だな…波紋使い共ッ!!」
『ッ!?』
突如割って入った声に顔を上げた皆の視線の先、建物の屋根の上に、いつの間にか『3人の人影』が佇んでいた。
「なッ…!?あ、アイツ等はッ!!」
「馬鹿な…何故奴らがこの島にッ!?」
「くッ…まさかこんなに早く、しかもこんな時に…」
その顔を知るジョセフたちは予期せぬ再会に驚きと焦りを滲ませ
「ばッ…馬鹿なッ!何故、何故奴らがここに…あり得ん、『早すぎる』ッ!!」
「おいジジイ、どうした?」
「…まさか、奴等は…!」
一方で『この先の未来』を知るジョセフ(老)は、自分の記憶にあるよりも遥かに早い『彼等』の登場に戸惑いを隠しきれない。そんな祖父に承太郎は怪訝そうに眉を顰め、日向はその反応から彼らの正体を察する。
突然現れた謎の3人。その正体は…
『柱の男ッ!!』
カーズ、エシディシ、ワムウ。今この時代に蘇り、後にジョセフたちと死闘を繰り広げる筈の柱の男たちであった。
「夜は我らの時間…2千年の倦怠の間に、そんなことまで忘れたか人間?」
「てっ、テメーらッ!なんでこの島に…約束の日までまだ『10日以上』あるぞチクショー!!」
「ふん…生憎だがジョジョ、今は貴様に構っている暇はないのだよ。我らはこう見えて忙しいのでな…」
「ジョジョが目的ではない…?ならば何故この島に!」
「知れたこと…この島にあるという神秘の秘石『エイジャの赤石』。それを持つという女を探しに来た」
「…やはり、狙いは赤石…!」
「…どうやらその女がその様だな。これでわざわざ他の島を探し回る手間が省けたわ…」
余裕綽々のカーズたちと焦りつつも戦いの覚悟を決めるジョセフたちが睨みあう中、ジョセフ(老)は口には出さないものの内心物凄く混乱していた。
(どーいうことじゃ!?奴らが来たのはタイムリミットの『7日前』、しかも来たのはエシディシだけだった筈じゃぞ!それが何の冗談で3人纏めてやってきたんじゃあーッ!?一体どうなって…)
と、そこでジョセフは気が付いた。今まで何のなしに会話していた若い頃の自分が、リサリサに無理やりつけられエシディシとの戦いの中で剥がれるまでつけたままだった筈の、あの忌々しい『波紋矯正マスク』をつけていないことに。
(マスクを着けていない…まだ『10日前』なのにか!?ワシはエシディシとの戦いまでマスクを外した記憶は無い。…まさか、ここではワシの知る歴史とは『違う歴史』が流れているのか!?)
自分の知る記憶とのギャップにジョセフ(老)が頭を抱える中、カーズたちは屋根から飛び降り下にやってくる。
「さて…ジョジョ、貴様が決めた約束の日まではちと早いが…運が無かったと思って諦めるがいい。その女共々、この場で始末し赤石を頂かせてもらうぞ!!」
「ゲゲッ!チクショー…まだ心の準備ができてないってのによぉ!」
「弱音を吐くな、ジョジョ!…カーズ、父の仇…!ここで会ったが百年目!!修行の成果を以て、貴様ら纏めて返り討ちにしてやるッ!!」
「…ま、待ちなさいシーザー…ジョジョ!今の貴方たちでは、奴等には勝てないッ!」
「先生!?先生まで何を…」
「いや、その女の言うとおりだな。…何をしていたのかは知らんが、貴様らは明らかに消耗している。そんな状態で我ら3人を打ち負かそうなど、片腹痛いわ…!」
「クッ…!」
確かに、先ほどまでのリサリサとシュトロハイムとの戦いで、ジョセフとシーザーは少なからず消耗しており、リサリサも立ち上がってこそいるが先ほどのような戦いをすることは難しい状況であった。
(マズイ…!こんなコンディションでは3人纏めてどころか、一人倒すのも危うい…。なんとかせねば…!)
「承太郎、ワシらも加勢して…」
「…その必要はありません」
加勢しようとしたジョセフ(老)を制したのは、何時になく平坦な声を発した『日向』であった。
「なッ…!?し、しかし日向君…あの状態では流石に…」
「勘違いしないでください、ジョセフ・ジョースター。援軍が必要ないと言っている訳ではありません。…加勢に出るのは、『僕一人』で充分です」
「な…何ィ?」
「日向…?」
様子のおかしい『日向』に首を傾げるジョセフ(老)たちを余所に『日向』は一人歩き出し、前にいるジョセフたちの脇を『気づかれることなく』すり抜け、誰にも邪魔されることなくジョセフとカーズたちの間に立った。
「…ッ!?んなッ…ひ、日向!オメー何時の間に…」
「…なんだ貴様は?」
「柱の男…カーズ、エシディシ、ワムウ。成程…確かに、見かけこそ人間に近いですが殆ど『別種』の生物のようですね」
「小僧…何を言っている?」
「見たところ貴様も波紋使いのようだが…まさか、たった一人で我らと戦うなどという戯言を抜かすのではあるまいな?」
「戦うのではありません。…貴方たちを倒すのは、『僕一人で充分』だと言いに来たのです」
「…ほぉ」
「なッ!?ば、馬鹿な…自殺行為だぞッ!やめるんだ日向ッ!下がれ!」
「日向…そんな無謀は許しません!下がってジョジョとシーザーと共に、ここから逃げるのです!!」
余りにも無謀極まりない発言にカーズたちは嘲笑を浮かべ、ジョセフたちは必死で『日向』を呼び戻す…が、『日向』は一向に応じない。
「小僧…この状況でそんな大口を叩ける度胸は誉めてやろう。だが…我らを嘗めるのも互いにしろッ!!貴様一人なぞ、ここから一歩も動かずとも始末できるわッ!!」
「カーズ様…ここは私にお任せを。こんな身の程知らず如きに、カーズ様たちが手を下す必要などありません」
「いや…俺にやらせろカーズ!こういう実力の差も分からんゴミに、絶望的な現実を叩きつけてやるのが俺は大好きなんだ!」
「日向ッ!奴らが言い争ってる間に早く…」
「…では、試してみましょうか?」
「…何?」
『日向』は喧騒に水を差す様にそう言うと、怪訝そうな顔をするカーズたちに自分の『右手の指先』を向ける。
「コォォォォォ…『タスク』ッ!!」
ドドドォンッ!!
叫びと共に、日向の指先の『爪』が回転し、『淡い光』を纏いながら発射された。
「ほう…!爪を飛ばすとは…珍奇な人間もいたものだ!」
「…だが所詮は大道芸に過ぎん!そんなものはたき落してくれる!」
一瞬驚いたものの直ぐに冷静になった柱の男たちは、迫る爪弾を蚊を払うかのように叩き落とそうとする
…が
バチュンッ!!
「…?」
叩き落としたにしては奇妙な感触に払った手に視線を向けたカーズたちが見たのは…
ドロォォ…!
「…ッ!?な…何ィィィィィッ!!?」
爪弾を受けた部位がドロドロに『溶解』され、手首から先を失った自分の手であった。
「ば、馬鹿なッ!我らの肉体が崩れているだとッ!?」
「この症状…まさか、今の爪には『波紋』が籠められていたのか!?」
「だ、だが…それにしてもおかしいッ!あんな小さな爪に籠められる程度の波紋で、我らの肉体の表皮のガードを貫けるはずがないッ!一体…どうなっている!!」
想定外の事態に困惑するカーズたち。…そしてそれは、ジョセフたちにとっても同じであった。
「な…何が起きたんだ!?日向の指から爪が剥がれて、銃弾みてーに飛んでったかと思えば…カーズたちがダメージを受けて苦しんでるぞ!?」
「あんな程度の攻撃が通用したとでも言うのか!?奴らの下っ端だったというサンタナですら、ジョジョの波紋でも倒しきれなかったというのに!」
「…な、何がどうなっとるんじゃ!?今のは確か、日向君のスタンド攻撃…それは分かる!じゃが仮にあの爪に波紋を籠めておったにしろ、あのダメージは考えられん!!」
「だが、現に奴らはダメージを受けている。…どうやら、アレがアイツの『秘策』みてーだな」
老若ジョセフとシーザーが理解に苦しむ中、リサリサは先の日向の言動を思い返し、一つの『仮説』に行きついた。
「黄金の回転…波紋を強化する技術…。そして、今の攻撃…『回転する爪』とそれに籠められた『波紋』…!まさか、そうだというの…これが貴方が辿りついた『答え』だと言うの、マリオ…!」
かつて読んだ時には理解しきれなかったマリオの遺した手記。それを完成させたという『日向』の背を見るリサリサを気にも留めず、『日向』はポケットからなにか『錠剤』のようなものを取りだすとそれを飲み、再びカーズたちにその『赤い瞳』を向ける。
…否。姿こそ日向・Z・創ではあるが、そこにいるのは『日向』ではない。それは日向の内に潜むもう一つの『意志』、希望ヶ峰学園のエゴによって生まれ、2人の『超高校級の希望』によってその存在を肯定された、『人類の到達点』。
「どうしました…?一歩も動かない、と言った割には…随分焦っていますね」
「ぐッ…貴様ァ…!」
その名は…『カムクライズル』。
「さあ…始めましょう。人類の『上位種』たる貴方たちと、『人類の完成形』として生まれた僕…。どちらがより優れた存在かを、確かめる戦いをね…!」
今、地球上において『最優の種族』を決める戦いが、始まろうとしていた。
Next Battle… カムクライズルVS柱の男3人衆!…ちょっとムリゲーかな?
ゲームではリサリサやシーザーたちへの身内事情の説明がカットされていたので、今作ではおもいっきしぶっちゃけてみました。
ちなみにこの作品では苗木たちの時代でもリサリサは存命中なので、承太郎たちも面識があります。…すでに120歳近いですが、見た目は40代のマダムです。よく戸籍証明で偽装を疑われるのが悩みです。
ちなみに劇中に出たマリアというのはシーザーの回想に出てきた妹の一人です。名前に関しては今作のオリジナルです
前回言った通りしばらく続きが書けないので次回の更新は10日以降になるかな…。ではまた次回