ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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全員のスタンドがなかなか決まらなかったのでだいぶぶれぶれしてきたです。ハイ


絶望

結局、朝食はそこそこ料理のできる大神、朝日奈、苗木を中心として全員で協力してなんとか準備することができた。幸いなことに厨房や倉庫には食材が大量に備蓄されていたので、半ば素人同然の彼等でも作ることができたのである。(内容はご飯とみそ汁、焼き鮭にイタリア風サンドイッチのパニーニとドーナツ、というちぐはぐなものであったが)

 

その朝食会の最中、無言で食事を摂る江ノ島を見ていた大神が不意に口を開く。

 

「江ノ島盾子よ。食事中のところ済まないが少しよいか?」

「…ん?何?」

「失礼だが、雑誌やテレビで見るのと少しばかり印象が違うのだがどういうことだ?」

大神の指摘に、苗木も最もだと同意する。『超高校級のギャル』である江ノ島盾子は、モデルやタレントとしてはもちろん女優や声優など幅広い分野において同世代の女子の憧れとなっている。そんな彼女の世間一般での印象は『ダイナマイトボディーと歯に衣着せぬ的確かつ明るいコメントで悩殺♡』というものである。しかし、昨日からの江ノ島の印象としては言葉遣いや服装こそ今風の女の子の物ではあるがテレビのようにズケズケと言ってくることもなくスタイルもどちらかといえばスマートな体型をしており、顔にもそばかすが見られどうしても同一人物とみるには違和感が感じられた。

が、江ノ島は一瞬真顔になったかと思うとすぐにいつもの小悪魔的な笑みを浮かべて説明する。

 

「やぁだなーもー、あれは盛ってんだって!最近のメイクとか凄いんだよ!胸とかは全部合成写真!人前出るときはパッドとかつけてさー」

「なんと…!」

「あれ正直邪魔でさぁ、普段は取り外してるんだって。おかげで人前に出てもあんまり気づかれないんだよねー。ありがたいんだけど、正直ちょっと残念?みたいなwww」

確かに江ノ島の目撃記事やスキャンダルなどは聞いたことがない。そういうことなら、とその場にいた面々も納得する。

 

約二名、いや三名ほどの疑いの視線を除いて。

 

 

朝食を食べ終え片づけを済ませた一同は、再び校内探索を始めた。昨晩の続きをモノクマに説明させようとも考えたのだが、素直に答えるとも考えられずそれよりは昨日調べきれなかった教室や部屋の備品などのチェックを済ませようということで合意に至った。そんな中、苗木は視聴覚室へと赴いていた。

 

(昨日一通り調べた限りでは、脱出口は現時点では存在しないだろう。ならばせめてこの学園に関する情報を少しでも集めておきたい。本当なら図書館辺りを探したかったが今はまだ見つかっていない。次に可能性があるとすれば記念映像の類がありそうなここぐらいしか無いんだが…)

 

視線を縦横無尽に巡らせ、なにかしらの手がかりが残っていないか探る苗木。

 

ドンッ

と、横を向きながら歩いていた苗木は不意に何かにぶつかった。

 

「!おっと」

「うわっ!?」

足元から聞こえた声に反応して視線を向けると、そこには不二咲千尋が尻餅をついた状態で座っていた。

 

「不二咲さん!どうしてここに…あ、ごめん。ぶつかっちゃって」

「う、うん。いいんだ、僕も不注意だったし。…ここなら、パソコンとかが残っていそうだったから探してたんだ」

どうやら電子機器の類を探してしゃがんでいた不二咲が立ち上がった拍子にぶつかってしまったらしい。捜索に夢中になって注意がおろそかになっていたことに反省しつつ、苗木は不二咲に手を差し出す。不二咲もその手を取り立ち上がる。

 

「!?」

と、不二咲の手を握っていた苗木が突然怪訝な表情を浮かべる。立ち上がった不二咲も、自分の手を握ったまま自分を見る苗木を不審に思う。

 

「…あの、苗木君?」

「……!ああ、ごめん不二咲さん」

「いいんだけど…。じゃあ僕別のところ行ってくるね」

「あ、うん…」

そう言って去っていく不二咲。その背を苗木は疑惑の視線を向けたまま見送っていた。

 

それから数時間後、調査を終えた面々は再び食堂へと集合した。が、そこには思わぬ先客が既にいた。

 

「あっ!十神テメエなんでここに居やがる!!」

そこにいたのは今朝別行動をとっていた十神が悠々と茶を飲んでいた。

 

「フン。見てのとおり茶を飲んでいるだけだ。そんなことも分からんのかクズめ」

「んだとコラ…!おい、別の場所行こうぜ!こんな奴がいるところで話し合いなんか…」

「…いや、ここでやりましょう」

いきり立って食堂を出ようとする大和田を霧切が制止する。

 

「ああ!?正気かお前、こんな奴いたら邪魔にしか…」

「それはあなたが判断することではないわ。実際邪魔になったのならつまみ出せばいいだけ。それに、情報はできるだけ共有して様々な視点から考えるべきよ。…彼はあまり協力的とは言えないけど、それでも現状に納得しているわけではないでしょうから」

「…フン」

「…チッ、分かったよ」

口では霧切には勝てないと判断したのか渋々大和田も了承し、こうして全員を交えての報告と話し合いが始まった。

 

「さて!皆各調査の報告を…とは言ってみたものの、皆の表情を見る限り芳しくなかったようだな…」

「教室と玄関の施錠はガチガチ、アリンコ一匹出入りできねえよ。」

「視聴覚室や体育館も何も無かったよ…」

「トイレやトラッシュルーム、購買にもそれらしいものは存在しなかった」

「あーもう!いくらイベントだからってちょっと厳重すぎるべよ!」

「…まだ勘違いしていたのか。どこまでもおめでたい奴だ」

紛糾する会議の最中、セレスが全員に向けて口を開く。

 

「皆さん、何をそんなに悩んでいるのですか?そんなことしなくとも安全な方法はあるじゃないですか」

「!な、なにかアイディアがあるのですかなセレスティア・ルーデンベルグ殿!?」

「セレスでいいですわよ山田君。なにも難しいことはありません。…ここでの生活を受け入れてしまえばいいのですわ」

 

 

 

 

「…え?」

「せ、セレス君…?冗談は程々に…」

「冗談などではありません、私は本気で言っていますわ。どうせここから出られないのなら、無駄に脱出法を探るようなことなどせずこれからの生活の事を考えた方がよっぽど建設的ですわよ。そうすれば、お互いに他人を殺して外に出ようなんて考えている暇もなくなりますし、いずれそんなことを考えることもなくなりますわ。幸い食料や生活用品…残念ながら娯楽などは心もとないですが、私たちが生きていくには十分な量が備蓄されていますし、危険を冒すよりもずっといいと思いますわ」

「……」

「でも…それは…」

「い、いつまでもここに居れるわけじゃねえしさ…ホラ…ハハ…」

なんとか反論しようとするも、殺される危険のない生活というものを頭から否定するわけにいかず、皆口ごもっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「て言うかさ、そんなに出たいんなら殺しちゃえばいいじゃんか!」

『!?』

「モノクマ…!」

再び音もなく現れたモノクマに、一同の視線が向けられる。

 

「まったく、この二日間ずっと見てたのにオマエラときたら無駄な努力ばっかりしてホントがっかりだよ!」

「む、無駄な努力だと!」

「そ、そんなことしても意味ないってのになんでそんな馬鹿みたいに……あ、そーかそーか、そーいうことか!」

不満をまき散らしていたモノクマであったが、突然得心がいったかのように一人で納得する。

 

「な…なんなのよ…」

「なんでオマエラがこんなチキンなのかやっと分かったよ。ズバリ『動機』が無いんだよ。やれやれ、オマエラみたいなゆとり世代は動機の一つもなきゃ殺せないんだねえ。ホントまいっちゃうよ。…というわけで、視聴覚室にプレゼントを用意したから皆でレッツゴー!」

そう言い残し再び忽然と姿を消すモノクマ。一同は顔を見合わせ、どうせロクなものではないと思いつつも少しでも手がかりがあればと思い視聴覚室へと向かう。

 

それが、本当に悲劇の引き金になるとはこの時誰も思い至らなかった。

 

 

 

 

 

 

モノクマに指定された視聴覚室。苗木と不二咲にとっては本日二回目となるその部屋は、初日に探索した時とほぼ何も変わっていなかった。ただ一つ、教卓の上にあからさまに置かれた段ボールの箱を除いて。

 

「なんだ…?あれがプレゼントなのか?」

不審に思いながら中を漁ってみれば、中には十数枚、いやここに居る人数と同じだけのDVDが入っており、ご丁寧に誰宛かわかるよう名前まで書かれていた。嫌な予感を感じつつも気になるので各自席に着きヘッドホンをつけDVDを再生する。

もちろん苗木も自分のディスクを再生していた。幾分かの砂嵐の後、映ったのは

 

「あ…」

『誠―?元気―?こっちはみんな元気よー!』

思わず声が漏れた映像には、父と母、そして妹の姿が映っていた。背景に見覚えがあるところを見るとどうやら家で撮影された物らしい。

 

『お前も大変かもしれないけど、しっかり頑張れよー!』

『お兄ちゃん見てるー?頑張ってねー!』

まだ二日しか経っていないのに、ひどく懐かしい気持ちになり顔が綻ぶ。ふと周りを見れば、皆どこか嬉しそうな表情をしている。と、ここで不審に思う。確かに家族が恋しい気持ちにはなったが、外に出たいという動機にしてはあまりにも弱い。ただのビデオレター程度では、人間の倫理観を破たんさせることはできないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

ただのビデオレターでは……

 

「……まさかッ!」

その結論に至った瞬間、一瞬のノイズと共に画面が切り替わる。

 

『!?』

そこに映っていたのは、破壊され見るも無残な姿へと変わり果てた我が家。そこに映っていたはずの家族の姿は無かったが、その光景が嫌がおうにも最悪の事態を連想させる。

ハッとなって再び顔を上げると、先ほどまで気色を浮かべていた皆の顔は青ざめ、例え見なくとも凝視しているその画面には決して良い光景が映ってはいないことを確信させられる。特に舞園の態度の変容は異常であった。顔面蒼白なだけではなくがたがたと震え、目に映るモノを認めたくないのか必死に首を振っている。自分の映像の事も気になるがそんな彼女を放っておけず声を掛けようとした時、

 

「うわー、ひどい有様ですなあwww苗木君、皆はどうしちゃったんだろうねえwwwうぷぷwww」

画面の上から今一番聞きたくない声がする。振り返らずとも分かる、モノクマであった。

 

「モノクマッ…貴様…!」

「おお怖い怖いwwそんな怖い顔されたら、おしっこちびっちゃうよwwwうぷぷwww」

こちらをおちょくり続けるモノクマを怒りの形相で睨み付ける苗木。その怒りに反応してか既に『ゴールド・E』が拳を握りしめて現れていたが、寸でのところで理性を保ちそれを振り下ろすのを抑える。

 

「しかし苗木君。君そんな見るからにお人よしそうな顔して意外と冷たいんだねえ」

「…なに?」

「だってさ、フツー自分の家や家族こんな風にされたら激おこぷんぷんどころじゃ済まないか舞園ちゃんみたいに取り乱したりするじゃん。『幸運』以外フツ―の君がこんな状況でも落ち着いてるなんて、冷血漢どころじゃないよねえ~。…あ、こんなことになってる時点で『幸運』でもなんでもないかwwうぷぷwww」

その言葉に、煮えたぎっていた自分の感情が急激に冷え込んでいくのを感じた。確かにそうだ。なぜ自分はこんなにも落ち着いているのだろう。もちろん考えたくはないが家族が死んだかもしれないということは悲しいし、怒りも感じるし一刻も早く外に出て確かめたいという気持ちもある。

だが実際、自分はそんな気持ちを持ちつつ周りを気にし舞園を気遣って宥めようとすらしている。一瞬早く結果が分かっていたとはいえ一高校生にすぎない自分が何故ここまで理知的にいられるのか。あの一瞬でその覚悟ができたとでも言うのか、……それとも、もっとずっと以前からこうなることへの覚悟が…

 

「おっと、これ以上は口チャック。……さて皆さん!…もう言われなくても分かるよねぇ?その映像の真偽を確かめたかったら、誰かを殺して外に出るしかないということです!いやー、だれが最初に殺っちまうのかな?ドキドキ、ワクワク♡」

モノクマの挑発的な台詞に、誰も応えない。応えられない。それだけその映像が示す事実は衝撃的なものであった。

 

「…何者なの?」

そんな中、平静を保っていた者の一人、霧切がモノクマに問いかける。

 

「はにゃ?」

「こんなものを見せて私たちを追い詰めて、あなたはここまでして私たちに何をさせたいの?」

「オマエラにして欲しいもの?………それはねえ、

 

 

 

 

    絶 望   

 

 

 

それだけだよ!」

 

 

「嫌ぁ!!」

耐えられなくなったのか、舞園が悲鳴を上げて視聴覚室を飛び出す。

 

「!舞園さん!!」

苗木はすぐさまその後を追う。既に舞園の姿は見えなかったが、ここまで取り乱していた彼女がどこへ向かったかは容易に想像できた。

 

「出してぇ!ここから出してよぉ!私は、早く…ここから、出なきゃ…!」

「…舞園さん」

自身の予想していた場所やってきた苗木。そこで見たのは、他のどの出入り口よりも分厚く厳重な扉によって閉ざされた玄関ホールにて必死に扉を叩く舞園の姿であった。その有様はまさに鬼気迫るものであり、相当力一杯叩き続けている筈なのに全く痛がる様子がないところから、彼女がどれほど必死なのかということが感じ取れる。

 

「もう、一人は、嫌だ…!だから、だからぁぁぁぁ!!!」

涙ながらに声が枯れんとばかりに叫びながら扉を叩く舞園。その振り上げた拳が突如、温かくそして力強く何かに包まれ阻まれる。

 

「!…苗、木…くん?」

「…もういい、もうやめるんだ舞園さん」

振り返った舞園の目の前には、悲壮な表情を浮かべる苗木がいた。苗木はその手で抑えた赤く変色し今にも出血しそうな舞園の手をゆっくりと降ろさせ、その手を両手で優しく包み込む。

 

「君は僕が守る。もう君を誰にも傷つけられないように、自分を傷つけずに済むように、必ず君を外に出してみせる。…だから、僕を信じてくれ。頼む。」

守る。なんとも都合よく傲慢な言葉だろう。普段の苗木ならばこんなことはあまり口にしたりなどしない。しかし、今の舞園を見ていると誰かが守らなければ壊れてしまいそうに見えて、今の自分にできることはそう言い聞かせることだけだと思い行動した。

しかし、今の舞園にとってはこれ以上ない救いの言葉だったらしく微かに震えだすとそのまま苗木に抱き着き大声で泣き出した。

 

「うゔぁ…うわあああん!!!」

「………」

 

「うぷぷぷぷ、ぶひゃひゃひゃ、いーっひっひっひ!!!!」

泣き続ける舞園とそれを黙って受け入れる苗木。そんな二人を嘲笑うかのように、どこかから聞こえてきたモノクマの高笑いが玄関ホールにいつまでも木霊していた。

 

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