ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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第三回の学級裁判で手詰まり…かなり強引にしないと話し進まないなあ…
それが終わればもうスパーッと筆が進むんだが


目覚め行くスタンド使い達

シャワーから出る温水が、立ち尽くす苗木の体を温める。あの後自室に戻った苗木が見たのは、一昨日の夜に見たのと変わらない綺麗な状態に戻っている自分の部屋であった。傷ついた壁や床は修復され、壊されていたシャワールームのドアは立てつけも良くなり、以前のように引っかかることもなく容易に開いたドアの先には、もう舞園さやかの死体は血痕一滴すら残っていらず本当に殺人現場だったのかと疑うほどに元通りになっていた。

 

「モノクマの仕業か…。ここから出ていく前に舞園さんの遺体の場所を聞いておかなくちゃな。彼女も、何時までもこんなところに眠っていたくはないだろう…」

充分に温まった苗木はシャワーを止め濡れた髪を掻き上げる。そして鏡を見て、そこに映った自分の顔、正確には普段は前髪に隠れて見えないソレを見てふと呟く。

 

「…それにしても、いつこんな傷ついたんだろう?切り傷みたいだけどちょっと違うんだよなぁ…」

苗木の視線の先には、自身の額に付いた小指の爪ほどの物が不可思議な回転をしたような傷跡がはっきりと残されていた。

 

 

 

 

 

シャワールームを出て着替えを済ませ、もう今宵は寝ようとしていた苗木であったが、その時異変を感じた。

 

「…?」

ふと、いつもより体がだるく感じる。眩暈かと思ったがどうにもおかしい。視界が若干ぼやけ、間接もぎしぎしと軋みベッドに座ろうにも腰が上がらない。

 

「なんだ…?」

不審に思い、痛む体を引きずってシャワールームへと引き換えしそこにある鏡を見て、驚愕する。

 

「!なッ…!?」

そこに映っていたのは、記憶にある自分の顔ではなくまるで異なる皺くちゃの爺さんの姿が映っていた。いや、完全に他人ではない。殆ど白髪になってはいるが微かに分かる亜麻色の頭髪。さっき自分が手に取ったものと同じ服装。そして特徴的な弱弱しくもピンと立ったアンテナヘッド。苗木はそこで何が起きているのか確信する。

 

「年を…取っている!?『老化』しているのか!急激なスピードで!?」

驚いている間にも、足腰が立たなくなり歯が抜け落ち、やがて手足が枯れ木のように痩せ細っていく。

 

「な、なんだこのスピードは!?異常すぎる!どう考えてもこれはスタンド攻撃だ!だけど、一体だれが…」

もはや後半からは口も回らなくなりぼうっとしていく頭を何とかフル回転して打開策を講じるが、老化しているため当然脳細胞も働きを失っていき何も考えられなくなる。

 

(マ、マズイ…このままでは、じきに老衰してしまう…。は…や…く……本、体…を…)

そしてシャワールームを出ることもできず、苗木はその場に崩れ落ちていった。

 

 

 

 

とその瞬間、急激に体が軽くなる。それだけでなく、痩せ細った体には生気が戻り不明瞭だった思考もはっきりしてくる。

 

「ハッ!?」

起き上がって再び鏡を見れば、そこには元の自分の姿が映っていた。急いで部屋の外に出てスタンド使いの存在を確かめようとするが、そこには誰もいない。

 

「いない…、逃げたか?いや、このタイミングでドアが閉まる音すら聞こえなかったということは部屋から直接能力を使用したんだろう。となると相当に射程の広いスタンドだな…」

と、いきなりドアが開く音がしたかと思うと廊下の奥から石丸が焦りの表情を浮かべて走ってくる。その後ろには大和田や葉隠もおり、さらに向かいから山田や不二咲も顔を出す。相当焦っているのか皆顔にかなりの汗が浮かんでいる。

 

「な、苗木君!今のは一体どういうことなのだ!?」

「今のって…もしかして皆も!?」

「ああ、気が付いたらジジイになっちまってやがった。おかげで見たくもねえもん見ちまったぜ」

「ぼ、僕の手がカピカピになっていって…すごく怖かった…!」

「こ、この年で自分の老後を気にするようになるとは思いませんでしたぞ…。…誓って禿げてませんからね!!」

「ハゲぐらいならまだいいべ!俺なんか風呂上りでいい気分だったのにいきなり歯がぼろぼろ抜けちまって、こんなに歯抜けだべよ!ああ不幸だべー!」

皆一様に先ほどの老化現象について文句を言う中で、苗木はこの事態を引き起こしたスタンドについて考えていた。

 

(皆も老化したということはアレは僕を狙ったものではなく無差別に巻き込んで発動するタイプの能力ということか。しかも話を聞く限り、この中でも僕や葉隠君の症状が最も重い。なにか老化具合に差が生じる要因があるのか…?……あれ?)

と、そこで苗木は気づく。

 

(…女子は?…誰も出てきていない。こんなことになれば一番に騒ぎそうなのに。それに十神君も…、なにか原因があるのか?)

そのことを話そうとした時。

 

キーンコーンカーンコーン

消灯時間を告げるチャイムが鳴る。

 

「…とりあえず今から皆を集めるにはもう遅いし、明日朝食の時に改めて話をしようか」

「うむ…仕方ないな」

「チィ、さっきからやけに暑くて寝苦しいってのによ。…じゃあまた明日な」

「あ、葉隠君抜けた歯創り直してあげるからちょっと残ってくれる?」

「本当か!?いやー助かるべ!」

とりあえず一旦そこで解散となり、皆各自の部屋に戻り苗木も自身と葉隠の歯の治療をするため彼を伴って部屋に戻っていった。

 

 

 

 

翌日、朝食会の会場である食堂には全員が集まっており、そこには異様な緊張感が漂っていた。

 

「この俺を無理やり呼び出してまで一体なんの話だ?下らん内容なら部屋に戻らせてもらうぞ」

普段は参加しないが今回は特例ということで無理やり部屋から引っ張り出された十神が不快感を隠そうともせず苛ただしげに言う。

 

「うむ、では話をさせてもらおう。昨晩我々に起こった不可思議な老化現象については皆も実感していると思う。今回の議題はその現象の原因究明に…」

「…ちょっと待って」

話をする石丸を霧切が若干驚いた表情で呼び止める。

 

「何かな霧切君?」

「老化現象…って何のこと?私は特にそんなこと感じなかったけど?」

「はあ!?何言ってやがる、テメエだって昨日ババアになっただろうが!?あれの事だよ!」

「…身に覚えがないわ」

「そそ、そうよ!あんたらの思い込みなんじゃあないの!?」

「いやいや!俺とか苗木っちなんて歯まで抜けたべよ!あれが思い込みなんてあり得ねえって!」

「そんなこと言われましても、私たちは何も変わりがありませんでしたよ」

「…確かに若干体が重く感じたりはしたが、老化と呼ぶにはいささか大げさだと思うが…」

紛糾する会議であったが一致しているのは男子には顕著な変化があり、女子は程度の差はあれどほとんど変化を感じなかったということであった。

 

「ど、どういうことぉ…?」

「まさか本当に思い込みだったのでありますかな?けれどそれならどうして拙者の髪が抜けたのか…あ、決して禿げてませんからね!」

「…いや、思い込みなんかじゃあないよ」

混乱する男子連中に対し苗木が口を開く。

 

「女子に変化が少なかったのは偶然じゃあない、そういう能力だったからなんだ」

「へ…?…能力、というとまさか…!」

「スタンド、なのか!あの老化もッ!」

「多分ね。恐らく個人に対して発動する能力ではなく学校を丸ごと巻き込んで無差別に発動できるほどに射程の広い能力なんだろう」

「だ、だがそれならどうして女子の諸君は老化しなかったんだね!?学校全体を巻き込んだのなら女子も含まれている筈だッ!」

「…老化していなかったんじゃあない。皆も老化していた筈だよ。男子より遥かに緩やかなスピードでね」

「…犯人が女子にだけ手心を加えた、ということか?」

「ううん。多分あの老化には老いのスピードを区別するための条件があると思うんだ」

「条件…?それって…何?」

「おそらく、『体温』の変化だと思う」

「体温ん?」

「以前どこかで一般的に女性は男性より脂肪が多い分体温が変化しづらいって聞いたことがある。あの時僕はシャワーを浴びた後だったからあまり感じなかったけど、思えば昨晩は季節の割に妙に蒸し暑かった。多分そのスタンドはそういう空間を作ってその中で体温の変化が激しい順に老化させていると思う。現にシャワーを浴びた直後の僕と葉隠君は他の皆より老化のスピードが速かったからね」

「む…?それでは不二咲が老化したのは何故だ?」

「あ…じ、実は僕もあの時シャワー浴びた後だったんだ!だから…その…」

「ふむ、そういうことか」

「じゃ、じゃあなんで十神の奴は平気だったんだよ!…まさか!?」

「早とちりするなクズめ。俺はあの夜食堂から飲み物を部屋に持ち込んでいた。それで体が冷えて老化が遅れただけだろう。なんなら部屋を見て確かめても構わんぞ?」

「…チィ!」

「じゃ、じゃあ一体誰の…」

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

とそこで、突然チャイムが鳴りモニターにモノクマが映し出される。

 

『えー、盛り上がっている所悪いけど皆さんにお知らせがあります!』

「お知らせ…?」

『この希望ヶ峰学園では、学級裁判を終えるごとに新しいステージへの道が開きます!今回栄えある第一回の学級裁判を見事クリアしたので、一階のいくつかのロックと二階へのシャッターを解放させていただきました!皆さんこれを機にさらなるコロシアイ学園生活をエンジョイしていって下さいね!…あ、でも昨日みたいにいきなり全員を殺しちゃうようなことはNGですからね!そんなことしたらつまんないからね!うぷぷwww』

モニターが消え静寂が訪れる。その中で最初に行動を起こしたのは十神であった。

 

「!ま、待ちたまえ十神君!どこへ行こうというのだ!?」

椅子から立ち上がり食堂を出ようとする十神を石丸が引き留める。

 

「どこへ?だと。貴様聞いていなかったのか?新たな階層が解放された以上ここで無駄な討論を続けている必要はない。俺は二階を調査させてもらう」

「む、無駄だと!」

「そうだ、考えてみろ。確かにあの老化現象はスタンドによるものかもしれんが、そうと分かったところで自分のスタンドだと名乗り出る馬鹿がどこにいる。そんな不毛な茶番に付き合っているほど俺は暇じゃあないんだよ。老けるのが嫌なら氷でも持ち歩いていればいいだけのことだ」

「う…」

十神の言葉に反論できず石丸は押し黙ってしまう。

 

「…十神君の言い分はともかく二階を探索するのには私も賛成よ。ここで話し合っても犯人が白状するとは考えづらいわ。それよりは今動ける範囲でできることをしておいた方が建設的よ」

「…決まり、のようですわね」

周りの反応を見てセレスがそう言うと、皆椅子から立ち上がり食堂を出て二階へと向かう。

 

この中にいるであろう老化させるスタンド使いへの不安を残したまま。

 

 

 

 

そして他にスタンドが現れていることを隠している人間がいるかもしれないという可能性に至らぬまま。

 

 

 

 

 

 

新たに解放された二階には教室の他屋内プールと更衣室に内蔵されたトレーニングルーム、そして図書館が存在していた。当然窓の類にはすべて鉄板が張り付けられており、三階へと続いているであろう階段にもシャッターが下りていて通行できなかった。

一通り二階を調べ終えた一同は図書館へと集まりそこにある蔵書を徹底的に調べていた。何かしら学園に関する手がかりが残されていないかと手当り次第探ってみたが、アルバムや学園史に関するものは一切存在せず手詰まりの状況にあった。

一方、十神と霧切はデスクの上に残されていたノートパソコンを調べていたが、デスクトップにはなんのアイコンも残っておらず手の付けようがない状況であった。

 

「…チッ、使えんガラクタだ」

「予想はしていたけど、やっぱりそう都合よくはいかないわね」

パソコンを諦め画面を閉じようとした時、

 

「ま、待って!」

今迄あまり前に出ることになかった不二咲が声を上げる。

 

「…何だ?」

「え…あの、それ僕に使わせて貰っていいかな?僕なら少しは力になれると思うんだ」

「貴様が…?」

「十神君、不二咲さんは『超高校級のプログラマー』だ。こういったことはむしろ専門といってもいい。信頼していいはずだよ」

「……フン、期待はしないがわざわざ俺の手を煩わせた以上何かしらの成果が無ければ許さんぞ」

「う、うん!!」

喜び勇んでデスクに座り、画面に向き合う不二咲。と、途端に不二咲の目つきが変わる。先ほどまでのおどおどした様子は一切なくまるで職人のような鋭い目つきになり凄まじいスピードでキーボードを叩く。普段の不二咲からは想像できないその様子に皆が目を見張っていると、画面にある文章が映し出された。

 

「…ふう。なんとか残ってたデータの一部をサルベージしてみたよ」

「す、凄えじゃねえか!」

「流石不二咲千尋殿!噂に違わぬテクニックですなあ!」

「えへへ…」

「…いつまで座っている。邪魔だどけ」

「あ…ご、ごめん」

横暴に不二咲をどかす十神に白い眼が向けられるが本人は一切気にせずその文章に目を通す。

 

「これは…」

『希望ヶ峰学園からのお知らせ』と題されたそこには、信じられないような内容が記されていた。

 

 

 

 

『希望ヶ峰学園は、一年前の‘人類史上最大最悪の絶望的事件‘により閉鎖を余儀なくされました。これからの方針としては学園を一時廃校扱いとし当面の活動は停止。当面は……にはSPW財団の……により……が……』

ところどころ文章が欠けて完全に解読することはできなかったが、そこに記された文章は生徒たちにとって寝耳に水なものばかりであった。

 

「希望ヶ峰学園が閉鎖…?ここに来たときにはそんな感じはしなかったのに…」

「つーかこの‘人類史上最大最悪の絶望的事件‘ってなんだべ?俺全然聞いたことないべよ」

「…確かに、そんなものに聞き覚えは無いわね。それに…」

「あ!このSPW財団って聞いたことあるよ!水泳の大会とかでもよくスポンサーのロゴに出てたりしてるもん!」

「とすると、このSPW財団がこの閉鎖に関わっているという訳か。…しかし、これほどの事態を何故新入生である我らが知らなかったのであろう?」

「隠蔽されたのか何があったのかは知らんが、黒幕はこの機に乗じ無人となった希望ヶ峰学園を乗っ取り、完成させたという訳だ。…この殺人ゲームの舞台をな」

一通り目を通すと、不二咲はこの画面をデスクトップに残しパソコンを閉じる。

 

「まだ残ってるデータにプロテクトがかかってるみたいだから部屋に戻って解析してみるよ」

「うむ!よろしく頼むぞ不二咲君!」

「…それにしても、黒幕は予想以上に大きな力を持っているみたいですわね。あの天下のSPW財団を出し抜くとは…」

「フン、ちょうどいい。いずれSPW財団は潰す予定だったところだ。連中に借りを作るためにも黒幕の力は強い方が良い。…それに、こんなスリルのあるゲームはさっさと終わらせるには惜しいからな…」

十神の不謹慎な言葉に不穏な空気が流れだす。

 

「テメエこの期に及んでまだそんなこと言ってやがんのか!」

「皆仲間なんだから協力して早く黒幕を捕まえなきゃだめじゃん!」

「仲間だと…?貴様らこそいつまでそんなことを言っている。ここでは俺たちは互いを蹴落としあう競争相手だ。それに、先の学級裁判で貴様らも桑田に一票入れたのだろう?貴様らが手を下したも同然ではないか。それでもそんなことを言い張るとは、呆れた奴らだ…」

「グッ…、テメエ…」

一触即発な空気の中、その間に割って入ったのは意外な人物であった。

 

「え、えっと…それは、すこし違うと思うんだ…」

それは、今までこういう場に口を出すことのなかった不二咲であった。

 

「不二咲ちゃん…!」

「…違うだと?なにが違うというんだ?」

「…あ、あの…桑田君に投票しなきゃ、皆死んじゃってたんだし、それに仲間を見殺しにしちゃったからこそ皆がもっと団結し合わなきゃいけないと思うんだ…だから…」

「…下らん!」

必死に言葉を紡ぐ不二咲を十神は残酷に切り捨てる。

 

「そうやって学級裁判が起きるたびに自分を正当化するつもりか?ルールを破った者を切り捨て残った者だけで協力しあうとは随分な選民意識の持ち主だな。人は見かけによらないとはこういうことか!」

「え…!いや、その僕は…そんなつもりじゃ…」

言いよどむ不二咲に業を煮やし十神が不二咲に詰め寄る。

 

「いいか!ここでは貴様のような甘っちょろい思考の奴ほど馬鹿を見ることになる。精々生き残りたければ他人を切り捨てることに慣れることだな!」

不二咲に詰め寄りながら吐き捨てるようにそう言う十神。そしてそんな十神が怯える不二咲にとっての安全圏を越えたその時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひいっ!」

恐怖が頂点に達した不二咲は能力を発動させた。

 

 

「!?…なんだこれは!」

突如として不二咲が何かに覆われ、驚いた十神がたたらを踏む。それはまるでバッタのような造形をしており、体操座りのように丸まったボディが不二咲をすっぽりと包みこんでいた。

 

「す、スタンド!?」

「不二咲にもスタンドが…!」

驚く面々に、スタンドの内側から不二咲の声が聞こえてくる。

 

「…『20th センチュリー・ボーイ』。僕のスタンドだよ。昨日の夜老化現象が起きた後に突然現れたんだ…」

「…多分、老化現象に対する不二咲さんの恐怖心がきっかけになったんだろう」

「し、しっかし奇怪な姿ですなあ。どうやって攻撃するスタンドなのですかな?」

「えっとね、これは攻撃するスタンドじゃあないんだ」

「は?どゆこと?」

「このスタンドの能力は『絶対防御』。どんな攻撃もどんなスタンド能力も受け流してしまう、決して傷つけることができない能力。それが『20th センチュリー・ボーイ』(以下『20CB』)なんだ」

「つまり…無敵ってことかよ!?」

「むう…ある意味このコロシアイ学園生活において最も優れた能力ともいえるな」

「代わりにここから動くことができないんだけどね」

自身の能力を発動したことで安心したのか若干声が弾む不二咲。それを見て、十神がニヤリと笑う。

 

「…なら試してみるか?」

「えっ?」

「隠しておくつもりだったが、ここでこのまま引き下がれば十神の名に傷がつく。それだけは俺のプライドが許さん。貴様のスタンドがどれほどの物か、この俺が確かめてやる…!」

「確かめるって…十神君あなたまさか…!」

霧切の問いに答えるように、十神が叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「『ザ・グレイトフル・デッド』!!」

その声に応じて現れるビジョン。人間の上半身から触手のようなものが生えているような姿をし、その全身に目を貼り付けたようなスタンド。それが十神白夜のスタンド、『グレイトフル・デッド』であった。

 

「「「!!?」」」

「と、十神君!?」

「精々耐えろよ、不二咲!」

その言葉と共に『グレイトフル・デッド』の拳が振り下ろされる。しかし、

 

ブアァァァ…

「うっ…」

「…ほう、成程言うだけのことはあるようだな」

岩をも砕く勢いで振り下ろされた一撃は、『20CB』に触れた途端そのすべての衝撃が霧散しほとんど何事もなかったかのように受け止められる。

 

(ふむ…『直触り』しているにも関わらずほとんど変化は無し。どうやらスタンド能力すらも効かないというのも出鱈目ではないのか。確かに厄介な能力だな…)

「テ、テメエいきなり何しやがんだよ!!」

防御特化のスタンドを展開しているとはいえいきなり殴り掛かった十神に大和田が食って掛かる。

 

「騒ぐな狂犬。本人が平気だというから試してやったまでの事だ。貴様が殴られたわけでもなかろうにゴチャゴチャと喚くな」

「うるせえ!俺は女をぶん殴るような奴が大っ嫌いなんだよ!!俺はテメエが気に食わねえ、理由なんざそんだけで十分だ!!」

「フン、なんとも頭の悪い理屈だ」

罵詈雑言を飛ばしあっているが、そんな十神に大和田も含め今十神を除いた全員が感づいていることがあった。

 

「…十神君、確認したいことがあるんだけれど、いいかな…?」

全員を代表し、苗木がその答えを聞きに行く。

 

「…フン、訊きたいことはことは分かっているが、一応聞いてやる…。なんだ?」

「何故スタンドを隠していたのかとか、いつから発現していたとか、そんなことはどうでもいいから単刀直入に聞くよ。…昨日僕たちを老化させたのはそのスタンドだね?」

その問いに、十神は嘲笑うかのような笑みを浮かべて答える。

 

「そうだ。俺の『グレイトフル・デッド』の能力は『老化』。射程ははっきりは分からんがこの学校一つを丸ごと対象にできる程度は軽い。人間に限らず植物や動物にも効果がある…昨日は流石に食材を腐らせるのは後が面倒になるから食堂付近は効果範囲から外したがな…これで満足か貴様ら?」

全く悪びれる様子のない十神に被害にあった男子たちが食って掛かる。

 

「な、なんだその態度は!君の勝手な行動で我々は被害を被ったのだぞ!反省するべきだぞ十神君!」

「そうでずぞ!おかげで僕は老後が気になって夜も眠れなくなるではありませんか!」

「やかましいぞ。昨日のはお前らの為にやってやったようなものなんだぞ。むしろ感謝してほしいぐらいだ。別に必要ないがな」

「ああん!?何言ってやがんだテメエ!?キレてんのか!?」

「キレているのは貴様だろう。俺はお前らが早くここから出たいと言っていたから望みどおりにしてやっただけど」

「だからってジジイになって死体でここから出たくなんかねーべよ!!」

いきり立つ男子を抑え、十神の言葉から一つの結論に至った苗木は十神にそれを確かめる。

 

「待って待って皆…。十神君、もしかして君は黒幕を老化させるために昨日スタンドを使ったんじゃあないのか?」

「!黒幕を…!?」

「…フン、やっと気づいたか」

「ど、どういうこと!?」

「十神君は多分黒幕が校内のどこかにいると予想して、黒幕を遠距離から倒すために昨日はあんな広範囲に能力を発動したんだよ」

「正確にはいれば好都合程度にしか考えていなかったのだがな。…まあ、昨日のモノクマの反応からそれが正解だということが分かったから十分だったがな」

「モノクマがそんなことを…!?」

「昨日スタンドを発動しているときにいきなり現れてな…」

 

 

『うぷぷ!派手にやっているようだけど僕にそれは効果ないからやめといたほうがいいよ。むしろここでみんな死んじゃったら学級裁判もできなくて十神君一生ここから出られなくなっちゃうよ。うぷぷwww』

 

「…と言い残していったのでそこで中止したという訳だ」

「し、しかしそれなら一言ぐらい言ってくれても良かったのでは…」

「何故そんなことをする必要がある?俺は別に貴様らが巻き添えで死のうがどうでも良かった。モノクマが来なければあのままスタンドを使い続けていただろうな」

「ちょ、ちょっと!そんなことしたら皆死んじゃうじゃんか!黒幕倒せてもそれじゃあ意味ないよ!」

「意味がない、だと?何を腑抜けたことを言っている。本気でここから出たいのなら例え犠牲が出たとしても強行するべきだろう。やるのなら徹底的にだ!俺は何かをすることにおいて中途半端にはせんぞ。そんなクズは俺には必要ないからな!」

十神の言葉は凄まじい暴論ではあったものの、高いプライドから来るであろうそのやり方はその場の全員を黙らせるには十分なものであった。

 

「……素敵、ウヒッ!」

…一人妙な興奮を抱いた腐川を除いて。

 

 

 

 

結局その場はそのまま解散となり、彼らは心に蟠りを残したまま別れていった。苗木もまた今日の探索で分かったことを反芻しながら校舎をうろついていた。

 

(…二階教室は一階とほぼ同じ間取りで目立った物は無し。図書室は奥の書庫も見てみたけど学校に纏わるものは無かった。…代わりに表に出ると色々不味そうなものはあったけれど。プールへと続く更衣室は電子生徒手帳がカギになっていて男子は男子、女子は女子の扉にしか反応せず、もし忍び込もうとすれば監視カメラ付属のガトリングガンで蜂の巣…ちらっと見たけどあれ確か『無痛ガン』って言われてる奴だよな。スタンドで防御はできそうにない。…あとは追加校則で『電子生徒手帳の譲渡禁止』が加わったんだよな…。それにしても、十神君といい不二咲く…さんといい厄介なスタンド能力を持っているな。…まあ強力な能力はその分証拠が残りやすいから二人がそうそう使うことは無いだろうけど…)

そんなことを考えながら寄宿舎へと足を運ぶと、食堂から何か言い争うような声が聞こえてくる。ふと気になって入ってみると

 

「んだと!もう一回言ってみろ!」

「何度でも言ってやろうじゃあないかッ!!」

大和田と石丸が凄まじい剣幕で言い争っていた。

 

「…ど、どうしたの二人とも…」

嫌な予感を覚えつつもやや遠慮がちに声をかけると、二人は同時にこちらを向きちょうどよかったとばかりに事情を話し始める。

 

「おういいところに来たな苗木!こいつが俺の事を男らしくないって言いやがるんだ!」

「本当の事だろう!人並みの良識を持とうとする男らしさがないからあんな珍走行為に逃避しているのではないか!君は既に自分に負けているのだッ!」

何を言っているのかよく分からないがとにかく白熱した論争を繰り広げていたということだけは理解できた。

 

「ああん!?じゃあテメエにはあるってのか?俺以上の男らしさってやつがよぉ!!」

「無論だッ!!」

「上等だ、表へ出やがれ!勝負だ!!」

「望むところだ!苗木君、済まないが立会人になってもらうぞ!!」

話がまずい方向に向き始めたのを察してこっそり逃げようとした苗木の両腕を掴み、二人はのっしのっしと食堂を出る。

 

「え、ちょ、何?何で!?」

悲しきかな身長の低さゆえ宙ぶらりんとなった苗木には逃れるすべもなく二人に連行される。その際頭の中でデキてるんじゃあないかというほどやたらと体を引っ付け合っている変な男の二人組がこっちを見ているような気がしたが気のせいと思い込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寄宿舎内の大浴場。学級裁判後に解放された施設の一つで、十数人はゆうに入れそうな湯船を内蔵しており更衣室も含め標準的な銭湯並みの規模があるその場所の、その奥にあるサウナに三人はいた。大和田と石丸はすでに戦闘…もとい我慢比べに入っており、巻き添えの苗木と石丸は裸に腰タオルという一般的なサウナの格好だが大和田に至ってはハンデと言っていつもの格好そのままでリーゼントにタオルを引っ掛けただけという無謀な格好で見た目も中身も熱い勝負を繰り広げていた。

 

「……」

「どうした石丸…!顔が真っ赤だぜ…無理しねえほうが…いいんじゃあねえのか?」

「ははは…顔が赤いのは生まれつきさ…僕はまだまだ余裕だよ…鍋焼きうどんでも食べたいぐらいだ…」

かれこれ数時間近く籠っているため、もはや限界寸前の苗木は元より未だに張り合っている二人も虚勢を張っているのがバレバレであった。流石に巻き添えで脱水症状になるのは御免被りたいため苗木は一足先にサウナを辞することにした。

 

「ふ…二人とも…僕もう無理だから…先に出るね…」

「う…うむ…!付き合わせてすまなかったな…、君の根性も…なかなかのものだったぞ…」

「お、おう…俺ぁおめえのこと見直したぜ…。結果は明日教えてやるから…、楽しみにしてろよ…」

 

限界すれすれの二人を残し苗木はサウナを出て、一刻も早く水分を取るため食堂へと向かうべく出口の方を向き

 

 

 

 

 

 

そこでちょうど更衣室から大浴場に入ってきた朝日奈と大神と目があった。当然今から風呂に入ろうとする人間が服など着ている筈もなくタオル一枚をまとっているだけのあられもない姿であった。

 

 

「……」

「……」

「……」

束の間の静寂、そして間もなく

 

「……ッ!!!キャアァァァァ!!!!??」

「ぬあああああああ!!!」

 

ビュンッ!

ゴウゥッ!!!

バギョォォォ!!

悲鳴と共に投げられた大神の音速にすら迫る風呂桶が苗木の顔面を直撃する。

 

「ブゲッ!!?……ちょ、ちょっと待ッ…」

一瞬にして朦朧とする意識をかろうじて繋ぎ止め、弁解しようとする苗木に

 

シャッ!

ギュルルルルル!!

メメタァ!!

時間差で投げられた朝日奈の綺麗に回転した風呂桶が直撃し、完全に意識を断ち切る。

 

「タコスッ!?」

消えゆこうとする意識の中、苗木が今際の際に思うことは一つであった。

 

 

(あ、あんまりだぁぁぁ……でもちょっとだけいいものが見れたってことは黙っておこう)

『超高校級の幸運』はくだらないところで発揮していた。

 




現在スーダン2の中古をやっと手に入れてプレイ中。
まだ1完結してないのにもう頭の中にシナリオできてきてごっちゃになりそう…
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