ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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疑念と死相

 アルターエゴに後を任せ、大浴場を出るとそこにはモノクマが待ち構えていた。

「こらこらこらこらっ!僕の目を盗んで皆でお風呂場に集合とか、君たちどんだけ持て余してんのさ!どこぞの段ボールフェチの傭兵もビックリだよ!!」

下品なことを抜かすモノクマに一発かましてやりたいのを抑え、アルターエゴの事を悟られぬよう皆と目配せをして言葉を返す。

 

「…お前が何想像してようが知ったこっちゃないけど、とりあえずそこどいてくれ。これから校舎の探索を再開するんだから」

「い、言っておきますけどやましいことは一切してませんからねッ!」

「しょぼーん…。生徒たちがこんなにそっけないだなんて、学園長としてショックだよ…」

「…ああ、そういえばそういう設定だったな」

「ガーン!しかも忘れられてるし!!」

「…私たちはただ大浴場の男子と女子の順番を決めていただけですわ。なんでも最近事故があったらしいので…。ですから深読みされても困ります」

「ふ~ん…。なーんだ、期待して損しちゃった。…で、ところで今日はどっちが入るの?」

「何を期待していたんだ…。今日は女子の番だよ、なんか文句ある?」

「いいえありませんともッ!」

「…なら失礼するわ。時間が惜しいもの」

セレスの言葉に乗っかって話を打ち切らせると、皆はそれぞれ探索へと戻っていく。

 

「あ、ちょっと男子諸君待って待って!」

「ん?」

と、女子が居なくなった所でモノクマが男子を呼び寄せた。

 

「何の用だ?今貴様に構っている暇はないのが分からんのか?」

「いやね、皆に一つ聞いておきたくってさぁ。今日って女子の皆がお風呂に入るんでしょ?」

「え?…あ、ああ!そうだべ!それがどうかしたんけ?」

「……ぶっちゃけ、行くの?」

「行くって…何に?」

「やだなあもう!女子の皆がそろってお風呂に入る時に、男の君たちがすることなんて一つしかないでしょ!?」

「…まさか…?」

 

 

 

「覗きだよ!NO・ZO・KI!」

「…やっぱりそう来たか」

「当ったり前じゃん!覗きって言ったら男子高校生にとっての一大アミューズメントじゃん!ていうか仕事(ジョブ)?ていうか聖戦(ジ・ハード)?そりゃ行くしかないっしょ!……で、どうなの?行くの?」

「い、いやあそれはさあ…確かに夢ではあるけど、…バレたらシャレになんねえじゃん。ジェノサイダーとかオーガとかいるし」

「ぼ、僕は二次元限定ですのでそう言うことには…ちょ、ちょっとだけありますけど流石にそこまでは…」

「…下らん。あんな連中の裸など見て何が楽しいというのだ?理解できんな」

「何?十神君もしかしてED?イ○ポ?それかホモ?」

「なっ…!?」

「まあホモでEDの十神君は置いといて、苗木君、君はどうする…おや?」

と、苗木を見れば苗木は何かを思い出すように虚空を見つめ若干顔を赤くしていた。

 

「苗木君?どしたの?」

「…ハッ!い、いや!なんでもないよ!」

明らかに動揺している苗木に、何かを察した葉隠が切り込む。

 

「苗木っち…」

「な、何?葉隠君…」

「…ひょっとして、もう誰かのすっぽんぽん見たんけ?」

「ッ!そ、そんな訳ないじゃあないかッ!!」

「…ほほう?真っ赤になって否定する辺り益々怪しいですなあ?」

「違うって言ってるだろッ!ぼ、僕はもう行くから!それじゃあねッ!!」

そう言って苗木はのっしのっしと寄宿舎を後にして去っていった。

 

「…いやあ、苗木っちも案外初心なところがあるんだべな!」

「いや、あれは意外とムッツリと見ましたぞ。意外ですなあ」

「うぷぷ、ムッツリな苗木君って、うぷぷぷぷぷぷぷ!」

「…俺が…おかしいのか?それが普通なのか…いや、しかし…」

 

 

 

 

 

 

「はくしゅっ!」

「ッツツ!」

「…どうしたの二人とも?」

「ん?なんかね、誰かが噂してるみたい」

「うむ。なにかよからぬことでもしてしまったか…それはそうと霧切、何故お主は『ムーディ・ブルース』を出しているのだ?」

「…なんか…無性に殴りたくなっちゃって。誰をとは言わないけれど…」

『…女ってのはやっぱ分かんねえな』

 

 

 

 

 

 

 

苗木は新しく解放された三階を捜索していた。

 

「あー、調子狂ったなあ…。ていうか言えるわけないじゃんか。朝日奈さんと大神さんの裸見ちゃったことなんて…」

この階層には、登ってすぐのところにダーツやビリヤードなどが揃った娯楽室、その向かい側に二つの教室、突き当りに何やら巨大な機械、モノクマ曰く『空気清浄器』が設置された物理室とその奥に様々な実験道具が揃った物理準備室、そして今苗木はその間にある美術室を散策していた。

 

「…また悪趣味な石膏像を用意してあるな。……ん?」

シーザーやブルータスといったおなじみのギリシャ彫刻に平然と混ざるモノクマの石膏像を小突いていると、部屋の奥に扉があるのを見つけた。

 

「奥に部屋…?地図によると…美術倉庫、か。一応調べてみるか」

軽い気持ちでドアに手を掛け、その先の部屋へと入る。そこには、ノミや木槌、予備の石膏像などの美術用品の類が置かれていたが、その部屋の中央で苗木は何かを見つけた。

 

「?これは…」

部屋の中央に放り出されていたのは、何やらアニメキャラがデザインされたカメラと一枚の写真。しかし、その写真に写っている人物を見た時、苗木に衝撃が走った。

 

 

 

 

「な、何で…何でこの三人が!?」

 

 

 

そこに映っていたのは、どこかの教室で仲良さそうにじゃれ合っている大和田、桑田、不二咲の姿であった。

 

 

 

 

「あーっ!!こんなところにあったのか!落としちゃったんだ!!」

と、驚いて間もなくその写真は足元から現れたモノクマにひったくられる。

 

「モノクマ…ッ!おい、その写真はなんだ!いつそんなものを撮った!?それにその場所はどこだ?」

「教えますせん!!」

「どっちだ!!?」

「まあまあいいじゃないの。…それより、見ちゃったみたいだねえ。うぷぷ、こんな青春の一ページがあったんだねえ。うぷぷぷ!」

そう言ってモノクマは再び消える。その背中を呆然と見送りながら苗木は、

 

「……フッ」

ニヤリと、笑った。

 

 

 

 

 

「はあ!?大和田っちと桑田っちと不二咲っちが?」

「まさか…そんな…?」

捜索を終え、皆で食堂で結果を話し合っている中で苗木は美術倉庫で見た写真の事を話した。

「あれは間違いなくあの三人だった。…しかもおかしいのはそこだけじゃあない。三人ともとても楽しそうだったし、なによりそこに映った教室には鉄板が存在しなかった。一緒に置かれてたこのデジカメで撮ったみたいだけど…」

そう言って懐から先ほどのカメラを取り出すと、それを見た山田が過剰に反応する。

 

「ぬわーッ!!それは『外道天使☆もちもちプリンセス』のプレミアデジカメッ!!アニメ化決定イベントのビンゴ大会の一等景品になっていた激レアアイテムで……っつーか僕のじゃんッ!!!」

「へ?これ山田君の?」

「ええ、間違いないですよ。これを持っているのは世界で唯一僕だけですから…。しっかしうっわ…これ何時の間にかすっげえ汚れて錆だらけになってる。どんだけ適当に保存してたんだよ…。…しかしそれでも僕のお宝ッ!どれだけ穢れようと愛し抜く…」

「献上しなさい。おもしろそうだから」

「ブヒィィィィ!?い、いくらセレス殿でもこればかりはご勘弁を!ご慈悲をぉぉーッ!!」

「うるせぇぇ!!退屈しのぎにもらってやるっつてんだよぉぉぉッ!!」

横で再び女王様と豚モードに入っている二人をさておき皆はその写真の事で話し合っている。

 

「フム…。俄かには信じがたいがな…」

「確かに、実際見てみないとねえ…?」

「あ、それなら大丈夫だよ。そろそろの筈だから」

「そろそろ?一体何のことだ…?」

と、その時食堂の入り口からなにやら小さい物体らしきものが入ってくる。皆が思わず身構えると、それはちょろちょろと動き回りながら苗木の足元にやってきて、苗木がそれを手に乗せ持ち上げるとその正体が明らかになる。尖った鼻先、ミミズのようなしっぽ、チュウチュウという鳴き声。

 

「ネズミ…?」

「確かに写真はモノクマに取られてしまった。けれどその前に僕は写真に『ゴールド・E』で生命エネルギーを残しておいた。そしてネズミほどのすばしっこさならモノクマの隙をついて逃げ出すことは…容易い」

その言葉と共にネズミは手の上で写真に戻る。

 

「成程…とっさに良く考えたな」

「フン、こいつらしい悪知恵だな。…それより…」

「…ホントに映ってるね。しかもめちゃくちゃ和気あいあいじゃん…」

モノクマから逃げ出してきた写真を見て、改めて困惑していると不意に葉隠がぽつりと漏らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし苗木っちのスタンドホント便利だべなあ…。俺のスタンドとは大違いだべ」

その言葉に、全員の視線が葉隠へと向けられる。

 

「…へ?何だべ?」

「葉隠君…今なんて…?」

「あ?…ああ!そういや説明すんのすっかり忘れてたべ!実は俺、昨日の夜遂にスタンドが出たんだべ!」

「何だと…!おい貴様!何故黙っていた!?」

「いやだってアルターエゴの事で盛り上がってて切り出しづらくてよぉ…。それにあんま見せたくねえし…」

「見せたくない…?」

「…とりあえずそういう訳にもいかないから見せて貰えるかしら?」

「ああ、しょうがねえべな…んじゃ来い!『龍の夢(ドラゴンズ・ドリーム)』!!」

しかし、葉隠が読んでも今迄のように異変が起きることも背後にビジョンも現れない。

 

「…あら?」

「…葉隠君、スタンドはどこ?」

「あ~、…そこにいるべ」

葉隠が指差した先を見ると、そこには奇妙な物体が浮かんでいた。泡のような白い球体の中にいるのは、『龍の夢』の名の通りまさしくドラゴン。といっても大きさはソフトボール大程度しかなく、しっぽの部分は羅針盤の針のように尖っており何やら文字のようなものも刻まれている。

 

『ヨウ、オマエラ!オレ様がそこにいるヤスヒロのスタンド、『ドラゴンズ・ドリーム』ダ!覚えときな!』

「!こいつも喋るんだ。…しかもなんかムカつく」

「そうなんだべ…。こいつ『俺ハ中立ダカラオマエノ指図ハウケネェーッ!』っつってコントロールできねえんだべ。…けどこいつ中々すげえんだぜ!」

「?どんな能力なの?」

「そいつは…」

と、葉隠が言い出そうとした時『ドラゴンズ・D』が朝日奈に話しかける。

『ヘイ!ソコのオッパイのデッカイネーチャン!』

「ヘ?わ、私?」

『ソウソウアンタだよアンタ!気をつけなよ!そこ一歩デモ下がったら『凶の方角』ダカラナ!』

「え、え?凶って…」

突然話を振られて驚いた朝日奈は思わず一歩後ずさってしまった。

 

「どういう…」

その時、天井の照明が一つ朝日奈目掛けて落ちてくる。

 

「!朝日奈ぁ!!」

「え?……ッ!?」

大神の叫びで朝日奈が気づいた時にはもう遅い。既に至近距離まで迫った証明が朝日奈の顔面に直撃する―

 

『無駄ァ!!』

ガシャァン!!

―直前に『ゴールド・E』のパンチによって照明が弾かれる。

 

「キャッ!?」

壊れた拍子でいくらかのガラス片が飛び散るが、幸い朝日奈に怪我は無かった。

 

「…あ、ありがと苗木」

「いや、気にしなくていいよ」

『運がヨカッタナ!アンタのラッキーカラーは『ゴールド』!偶々近くにいたソイツのスタンドが金色ダッタカラ助かったんダゼェ~!』

「おい葉隠…!!朝日奈を狙うとはどういう了見だ…ッ!!」

怒りの形相で大神が葉隠を締め上げる。

 

「だーっ!!俺じゃねえって!そいつは『風水』を占うスタンドでそれを教えることしかしねえんだよ!」

「『風水』だと…!?」

「そ。…占いでよく聞くかも知んねえけど、実際は東洋の思想の一つで自然の中にある風とか水なんかのエネルギーの流れる方角を知ることでそいつの進むべき方針だとか運勢なんかを暗示するんだべ。家を建てたりするときなんかにもよく参考にすんだろ?俺の『ドラゴンズ・D』はその風水を見極めてそいつの吉凶を教えてくれるんだべ。…ただ欠点があって俺の制御を受けねえから俺以外にもペラペラ喋っちまうし肝心なことは黙ってたりすんだよな」

『ヘイ!ソコの根暗なネーチャン!アンタ今ツキまくってるゼ!余程のポカやんねえ限り死ヌことは無いゼェ~!』

「ほほほ、本当ぉ!?じゃ、じゃあ白夜様とも…」

『ア、 ソッチニ関しちゃ望み薄もイイトコダ。諦めな』

「キイィィィィィッ!!!」

「…こんな風にな」

「…使えんスタンドだな」

「ひでぇッ!…でもぶっちゃけ俺もそう思うべ…」

葉隠がそんな不満をぶつぶつと言っていると

 

『…ヘイ、ソコのアンテナヘッドのニーチャン…』

「へ…?アンテナヘッドって僕…?」

『ドラゴンズ・D』の標的が苗木に映る。しかし、先ほどまでの陽気な様子はない。

 

『俺はヨォ~、『中立』ダカラヨォ~。あんまり忠告とかソウイウのはシネエんダケドヨォ。チョットアンマリにもヒデエから特別に教えてヤルゼェ~』

「な、何を…?」

『オマエの進む先…『死相』がデテルゼェ~。オマエこのままダトソノ内死ヌゼェ~』

「!?」

「死ぬって…苗木が!?」

突然の死亡宣告に静まり返る食堂。しかし、当の苗木は一瞬驚くとすぐに表情を改める。

 

「…それがどうした?」

『ア?』

「黒幕と闘う以上、死の未来が待っていることぐらい百も承知だ。…けど、だからといって僕の進むべき『道』を変えるつもりは毛頭ない。僕はこの先の視えない暗闇の荒野に、進むべき『道』を切り開いていく。それが僕の『覚悟』だ、例え死んだってそれを曲げることはない」

『…ヤレヤレ、何時の時代もソウイウ馬鹿が一人はイルモンダナァ。精々大物である事を楽シミニシテルゼェ~』

そう言って『ドラゴンズ・D』は消えていった。

 

「な、苗木っちすまんべ!俺のスタンドがなんか失礼なこと言っちまってよ…」

「…いや、多分事実だろうから別にいいよ。…言われたとおりに死ぬ気もないしね」

「…当然だ。この俺をもっと楽しませないうちに死ぬことは俺が許さん」

「あんたが許さなくたって一緒でしょーが…。ていうか苗木が死ぬわけないじゃん!」

「然り。安心せよ苗木、そなたの死の運命は我らの手で変えて見せよう」

「苗木君。あなたはここで死なない。死んではいけない。あなたにはきっと、もっと大切な役割がある。そんな気がするから…」

「皆…。ありがとう」

 

 

 

 

 

「オラァ!いい加減カメラ寄越せコラァァァッ!!」

「ぶ、ブヒィ!こ、これだけは何としても死守…あ!ソコは駄目!そこ踏んじゃうと…ブヒィィィィッ!!」

ココだけは相変わらずの雰囲気であった。

 

 

 

 

 

 

『…誰にも言わねえケドコッソリ喋るゼェ。アイツのラッキーアイテムは『矢』と『生き血』、ソンナモンがココにあればだけどナァ~。あと大凶の位置でもし夢を見れば一発逆転の可能性があるゼェ~。モットモ寝る前に死ンジマウダロウガナァ~』

 

 

 

 

 

 

新たな希望が見つかった翌日、それは早朝から始まった。

 

「ぎにゃあああああああッ!!!」

悲鳴とも取れるような大声が大浴場から響き渡る。

 

「どっ、どうしたの!?」

食堂へと向かっていた苗木が慌ててやってくると、そこには怯えた表情で腰を抜かす山田と仁王立ちでそれを見下ろす霧切、そしてそれを遠目に見ている何人かの生徒がいた。

 

「…ああっ!苗木誠殿ォ~!!助けて下され!殺されるぅ~ッ!!!」

脱衣所へと入ってきた苗木を見るなり、山田が這うようにして近寄り助けを求めてくる。

 

「…何があったの?」

「……別に殺すつもりはないわよ。私はただ何故昨晩からずっとアルターエゴと一緒にいたのか聞いているだけよ」

霧切の話によれば、今朝朝食前にアルターエゴの様子を見に行ったところ、アルターエゴのノートパソコンに張り付いている山田を発見し、問い詰めてみればなんと昨晩の消灯時間からずっとここに居たというのでその理由を聞いているとのことであった。

 

「べ…別にアルターエゴをどうこうしようとかそういうつもりじゃあないんですよ…」

仲裁になる人物がいることで少し落ち着いたのか山田がポツリポツリと話し出す。

 

「ただ、お話ししたかっただけなんです…。僕は見てのとおり世間一般でいうオタク人種です。会話も自然とそういう方向に流れて行って、僕の話をまともに聞いてくれるような女の子はいなかった。…でも、彼女は違った。最初はあの『ご主人タマ』っていう声を聞きたいだけでした。けれど、いろいろ話している内気づいたんです。彼女は僕の趣味全開の話にも興味津々で受け答えしてくれる。僕の話を、もっと聞きたいとまで言ってくれる。僕にはそれが、たまらなく嬉しかっただけなんですよ…」

「山田君…」

心の通じ合う親友と引きはがされ、うまく馴染めない環境を強制された反動が、山田をここまで追い詰めてしまったのだと苗木は思った。

 

「……山田君。キツイ言い方になるけれどあなたが感じているそれは勘違いよ。アルターエゴは自己成長型AI、自分が知らないことを進んで知ろうとするのはプログラムされた当然の行動なのよ。別にあなただから興味を示したという訳ではないわ」

「ていうか彼女って…。アルターエゴって、不二咲ちゃんが基になってるんだから男なんじゃあないの?」

「それ以前にプログラムに性別なんてあるんけ…?」

「…まあ最近はボー○ロイドみたいなプログラムもあるし、ないとは言い切れないけどね…」

などと話し合っていると、不意に風呂場の扉が開き

 

「ッハァーッ!!サッパリしたぁ!!」

裸に腰パン一丁の石丸が入ってきた。石丸が来た途端また部屋の温度が上がったところから、どうやら『ザ・サン』を展開したままらしい。

 

「あっつ…ッ!ちょ、ちょっと!なんであんた裸なのよ!ていうかスタンド仕舞いなさいよ!暑っ苦しいんだから!」

「ああん!?サウナ入ってただけだ!文句あっかッ!あと俺のスタンド嘗めんじゃあねえ!兄弟との絆を馬鹿にしてっと締めっぞクラァ!!それと山田ァ~…」

「は、はい?」

「さっきから聞いてりゃ好き勝手ぬかしやがって…ッ!!俺と兄弟を引き裂こうったってそうはいかねえぞこのスカタンがぁッ!!」

「……あ?」

「…彼は何を言っているのでしょう?」

おかしなことになり始めたことに、周りの生徒たちが戸惑い始める。

 

「い、石丸君…。まさか君、アルターエゴの中の大和田君を本物と思ってるんじゃあ…」

「石丸じゃあねえっつてんだろぉがぁーッ!!俺は俺だ!石丸と大和田の友情の結晶なんだよ!!そして、そいつは俺に兄弟の魂を吹き込んでくれた恩人、つまり兄弟の分身、兄弟そのものなんだよ!!だから俺とそいつは固い絆で結ばれてんだ!!テメエなんぞがしゃしゃり出ていい関係じゃあねえんだよッ!!」

好き勝手言う石丸に対し、山田がピクリと反応するとゆっくりと立ち上がって言い放つ。

 

「聞き捨てなりませんね…その台詞…ッ!!いつから彼女は君の物になった…ッ!この際だからはっきり言わせてもらう、僕と彼女は愛で結ばれる運命にあるッ!!石丸清多夏殿、君程度が僕らの愛に立ち塞がるというのなら、僕は全力を持って君を打ち倒すッ!!!」

「ああっ!?やれるもんならやってみやがれ!それ以上嘗めたことぬかしてっとこの『ザ・サン』の超高温レーザーとメテオでテメエのその饅頭見てえな面焼き饅頭にしてやっぞ!!」

「やってみろッ!!君の攻撃は僕には当たらない!いや、放たれることすらない!これは虚勢でもなんでもない!決定事項だッ!!僕がこういった時点で、既に未来は『決定』しているんだッ!!」

太陽のビジョンを現し、轟々と燃え盛る『ザ・サン』を背負う石丸と、丸腰であるにも関わらず何故か自信満々の山田。今にも激突しそうな二人の目から放たれる火花を

 

 

 

ビビュンッ!!

二条の拳が空を切りその間に割って入る。

 

「そこまでだよ、二人とも」

「それ以上狼藉を働くというのなら、我らが先に相手になるぞ」

この中で一番スタンドの扱いに慣れている苗木と生身の肉弾戦では最強の大神の仲裁に、二人はおもわずたじろぐ。

 

「…ともかく、アルターエゴは私たちに残された希望よ。むやみに個人の目的で使用されるのは困るわ。今後はアルターエゴを使うときは一人は厳禁。必ず二人以上、それも怪しまれない様に行動すること…いいわね?」

霧切の言葉に、渋々といった表情の石丸と山田を含めた全員が同意しその場は解散となった。皆が脱衣所を去る中、出て行こうとした山田が懐のノートのようなものに目を通し、誰にも聞こえないよう呟く。

 

「……少しばかり思っていたのとは違いましたが、ま『予言通り』といった所ですかな…」

 

 

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

あれからしばらくして、捜索を続けていた生徒達の耳にチャイムの音が入り、直後にモニターにモノクマの顔が映る。

 

「…えー、オマエラがグダグダやってるのがじれったいので、ここらで新しい『動機』を用意させてもらいました!全員、体育館に集合ぉーッ!!」

そう言ってモニターは消える。

 

「…動機だと!?まさかまた…ッ!」

化学室にいた苗木は一目散に体育館へと走る。最も遠くにいたからか、苗木が来るころには既に全員が体育館に集まっていた。

 

ボヨヨヨーンッ!!

と、それと同時にモノクマが現れる。

 

「言われたとおり来てやったぞ。今度はどんな動機だというのだ?」

「ふっふっふ、今回はコレでーすッ!!!」

 

ドサドサドサッ!!

両手を広げたモノクマの頭上から降ってくる札束、札束。積もり積もってモノクマを覆い隠すほどになったそれをよじ登ってモノクマが宣言する。

 

「ひゃっくおっくえーんッ!!ここから『卒業』できた人の、プレゼントにしまーす!!もう、ウハウハ~!」

「おっ、お金ぇ!?」

「す、すっげえ…じゅるり…」

その金額に驚く者や一部の俗っぽい奴は大いに反応したが、

 

「人の命はカネでは買えんッ!!!」

「フン、はした金だな。俺の個人資産は既に400億を超えている」

「…少なくとも、これまでで一番心惹かれない動機なのは確かだね」

大半の生徒たちの反応はドライなものであった。

 

「ありゃりゃ、思ったより反応薄いね?」

「…今更そんなものが動機になると思っていたの?」

「それに、例えどんな動機であろうともう殺しなんてさせるものか。僕たちはお前の玩具ではないッ!!」

「やれやれ強がっちゃって。まあいいや、じゃあ僕は楽しみに待ってるからね~!ばいばーい!!」

モノクマが消えると同時に後ろ髪を引かれまくっている葉隠を引っ張って皆も体育館を後にする。彼等はこんなものが動機になるとは到底思っていなかったが、それでも不安を消し来ることはできなかった。前の二件の前例がある以上、何が動機になりえるのか分からないのだから…

 




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