…番外編ではどうしてもあの三人がメインヒロイン張ってるので本編でぐらい彼女のヒロインポイント上げてあげないと…
『皆!来てくれたんだね!』
脱衣所にやって来た苗木達がパソコンを起動させると、不二咲の顔をしたアルターエゴが笑顔で迎えてくれた。
「久しぶりだね!アルターエゴちゃん…」
「お前とお喋りしている時間はない。苗木から話は聞いている、結果を報告しろ」
「ちょっと十神!」
『アハハ…』
「…十神君の言うことはともかく、時間が惜しいのは事実よ。アルターエゴ、結果を聞かせて」
『うん!…今回修復したデータから分かったのは、希望ヶ峰学園の学園長に関することなんだ!』
「!学園長の…」
「おお!タイミングバッチリだべ!」
「…なんかタイミング良すぎる気もするけど」
「…確かにひっかかるが、今それを気にしたところで詮無きことであろう。それより今はより多くの手がかりが必要だ」
「…それもそっか」
全員の視線を受け、アルターエゴが自身の手に入れた情報を話し出す。
『データによると、学園長は30代後半の男の人で、今現在も学園内にいる可能性が高いんだ』
「なんだと…!?」
「じゃあ、やっぱり学園長が黒幕…!?」
「………」
「名前とか分からないんか?」
『ごめん…、名前とか顔写真とかまでは分からなかったんだ。でも、気になることが一つあるんだ』
「気になること…?」
『学園長のパソコンの履歴を見たんだけど、ほぼ月に一回のペースでSPW財団の空条承太郎っていう人宛にメールをしていたんだ!』
「またSPW財団か…」
「空条承太郎…、聞き覚えのない名だな」
「…そのメールの内容は分かるかしら?」
『ううん、履歴には残ってたけど肝心の文面自体は全部削除されてたんだ。向こうからのメールも全部ね。…ただ、題名は全て『報告書』になっていたから、何かの情報交換をしていたんだと思うんだ!』
「SPW財団は希望ヶ峰学園にとって最大のスポンサーでもある。なんらかのやり取りがあっても不思議ではないが、学園長自らがそれを行うとなると、やはり希望ヶ峰学園の閉鎖や例の『人類史上最大最悪の絶望的事件』に関係することとみて間違いはなさそうだな…」
『…えっと、僕からの報告はこれだけなんだけど、どうだったかな?』
「学園長がここに居るということは大きな収穫だったけど…」
「…そうなるとやはり、学園長室に入れないというのは大きな障害と成りえてしまうな」
「うーん…、前進したのかしてないのか…」
「で、でも、学園長がいるってことはやっぱり黒幕なんじゃあないのッ!ぜ、全部学園長が悪いのよッ!」
得られた情報はそう多くないものの、学園長健在の事実は皆に黒幕=学園長という不信感を強めることとなった。そんな中、
「…学園長の事は、私が調べ上げて見せる…。必ず…ッ!」
霧切が静かに、しかし強い決意を持ってそう呟いたのを、苗木は聞き逃さなかった。
アルターエゴに引き続きの調査をお願いし苗木達が脱衣所を出ると、突如チャイムと共にモノクマがモニターに映る。
ピンポンパンポーン
『えー、皆さんお知らせがあります!至急体育館にお集まりください!!』
いきなりの招集に皆訝しげな表情をしていると
「…来たか」
と言って大神がゆっくりと体育館へと歩いていき、苗木と江ノ島も緊張感を帯びた顔つきでそれに追随する。
「あ…、待ってよさくらちゃん!」
「…どうしたのかしら?」
「さあな…」
明らかにいつもと雰囲気の異なる三人の様子に疑問を感じながらも、残った面々も体育館へと向かうのであった。
「…………」
「…………」
パチパチパチパチ…
体育館へとやって来た苗木達を待っていたのは、徳利とお猪口片手に七輪でスルメを炙っているモノクマであった。
「ハフハフハフ…いやー、やっぱり酒のお供はスルメだね!このしみったれた感じは鮭齧った時には味わえないからねぇ~。…あ、マヨネーズと一味が無いや、とってこよ…………あっ(ポトーン)」
「あ、落としたべ」
「おっさん臭…」
酒の当てを失くしたからか見られてたのがショックだったからか、どこかがっかりした様子でモノクマがこちらを向く。
「…ちょっと、来てたんなら一言声ぐらいかけてよね!こっちは日頃の監視生活の合間を縫ってのお楽しみの最中だったんだから…」
「やかましい、生物かどうかすらもあやふやな奴が一丁前に吞んでるんじゃあない」
「…はあ、やれやれ。…ではお集まりの皆さん、今回は悲しいお知らせがあります」
「悲しいお知らせ…?」
今まで人が死んでもケラケラ笑っていたモノクマの『悲しいお知らせ』という言葉に皆訝しげな顔をする。それを見てモノクマはどこか楽しそうな雰囲気でその事実を告げる。
「なんと!皆さんの中に『裏切り者』がいることが発覚しました!」
「う、裏切り者ッ!?」
「…やはり紛れ込んでいたのか」
「……」
「だ、誰よ!?誰なのよぉ!?」
混乱する皆の前で、モノクマは嘲るように笑いながらその人物を指し示す。
「うぷぷぷ、その人物とは、…大神さくらさんなのですーッ!」
「………え?」
「大神さん…!?」
「貴様だったのか…ッ!」
「………」
昨晩の事を知らない面子からの信じられないような視線を受けながらも、大神は弁解ひとつすることなく仁王立ちでモノクマを睨む。
「……これが貴様の言った『罰』か?」
「はて?何の事かなぁ?…じゃあ僕はこれで!大神さんをどうするかは、皆さんにお任せしますねぇー!」
そう言い残しモノクマは去っていった。しかし生徒たちにはそんなことはどうでもよく、ただただ大神を見つめていた。
「さ、さくらちゃん…?嘘、だよね?さくらちゃんが裏切り者だなんて…モノクマの嘘に決まってるよね?」
「………済まぬ、朝日奈」
「ッ!そんな…ッ!?」
「…聞かせて、なぜモノクマの手下になんて成り下がったの?あなたほどの人が命欲しさにアレの味方をするとは思えないわ」
「………」
「どうなんだ!答えろ大神ッ!」
「…大神さんはモノクマに人質をとられているんだ。だからモノクマに無理やり従わされている」
「ッ!苗木…」
「ごめん大神さん、けれど僕は君が誤解されたままでいられることを我慢することができない…!」
「…人質って…どういうことさくらちゃん…!?」
「…言葉通りだ。我は道場の仲間や両親を人質に取られている。あれはここに来た初日の夜の事であった。部屋で精神統一をしていた我の前にモノクマが現れ、我にその事実を告げ、我にこう言った…」
『…我にどうしろというのだ?』
『いや、別に大したことじゃあないんだよ。君には皆の仲間として一緒に行動して、僕の目が届かないような部分に関して報告して欲しんだ。あと、学園生活が膠着化し始めた時に発破をかける役割も担ってもらいたいんだ!…もし拒否するようなら、どうなるか分かるよねぇ~?』
『…ッ!!!』
「…そんな、そんなのッ…!酷すぎるよッ!!」
「同門と家族を守るためとはいえお主等を騙していたのは事実。今の話を信じなくとも構わぬしいかなる罰も甘んじて受けよう。…だが一つだけ、これだけは誓おう。我は何時いかなる時も黒幕に完全に屈したわけではない。皆と共に黒幕を打ち倒そうという気持ちには嘘偽りはない」
「…ふん、どうだかな?」
静かに話す大神に十神が吐き捨てるように言う。
「十神ッ!さくらちゃんは何も悪くないんだよ!なんでそんなこと言うのさ!?」
「当然だ。そいつがもうモノクマの手下ではないという保証などどこにもない。今こうしている間にも奴に伝える情報を探っているのかもしれんのだぞ?そんな奴をどうして信じれるというのだ?」
「……」
「…十神君、大神さんの言葉に嘘はない筈だよ。昨日だって、人質を殺される危険があったのに黒幕を倒すために一人でモノクマに立ち向かったんだ」
「それが奴との八百長でないと何故言い切れる?一度裏切った以上、大神が完全にシロだと決定するのはマヌケ以外の何物でもない!」
「…ッ!」
堪えるように肩を震わせる朝日奈を尻目に、十神は黙り込む大神に言い放つ。
「本当に黒幕に刃向う意志があるのなら、自分のスタンドの正体を白状してさっさと去れ。黒幕と闘ったということは既に持っているのだろう?これ以上俺たちと行動を共にすること自体が俺たちにとっての裏切り行為に他ならない。分かっているな?大神…」
「…承知した」
大神は皆に自身のスタンド、『キング・ナッシング』の能力を告げると踵を返して体育館を去っていった。
「…ふん、行ったか。しかし『キング・ナッシング』だったか、索敵や人探しには向きそうだが戦力としては外れだったな。まあ次に殺人が起きた時にでもうまく使えば…」
バキャァァァァァッ!!
「…ッ!!?何ィ…ッ!?」
何が起こったか、と問われれば十神の死角から殴り掛かった朝日奈が十神の顔面を殴り飛ばした。としか答えられないだろう。しかし、十神が驚いているのは朝日奈に殴られたことではなかった。
「貴様…ッ!なんだその力は…!?俺の『グレイトフル・デッド』が押し負けただと…!?」
「…答える必要は、無いよ」
そう、十神は朝日奈の行動を予測していた。故に死角から殴り掛かってきた朝日奈に対して『グレイトフル・デッド』を展開して待ち受けることができていた。十神としては、適当にガードして最悪死なない程度に叩きのめしてやる程度の算段だったのであろう。しかし現実は、十神が『グレイトフル・デッド』のガードの上から凄まじい力で殴りつけられ地に伏せることとなった。
「びゃびゃびゃ、白夜様ぁぁぁぁッ!!?」
「朝日奈さん…ッ!?」
その光景を見ていた中で、冷静さを失っていた腐川はともかく予想外の行動に思わず朝日奈を見た全員が眼にしていた。
拳を振り切った状態のまま十神を睨む朝日奈の全身を覆う、半透明のダイバースーツのような物を。
「…あれは、スタンド…?」
「完全に実体化していない所を見るに、無意識的に発現しているだけなんだろうけど、…あれは本体が身に纏うタイプのスタンドだ。しかも『グレイトフル・デッド』のパワーを押し返した限り、相当強力な近接パワータイプのスタンドに違いない…!」
驚きの表情を浮かべる苗木達を一切気にすることなく、目の端に涙を浮かべ普段の彼女からは考えられないような怒りに満ちた顔つきで朝日奈は叫ぶ。
「この…人でなし…ッ!あんたの方が…アンタなんか、死ねばいいんだよッ!!」
「…なら殺すか?貴様のそのスタンドで」
「…え?」
殴られて痺れた腕を抑えながらも起き上がり不敵にそう言う十神の言葉に、朝日奈は思わずポカンとする。
「俺が気に入らんのであればお前が殺せばいい。外とは違ってここはそれが許された場所だ。…お前のそのスタンド、まだはっきりとは見えないが気に入らんことにパワーだけなら恐らく俺の『グレイトフル・デッド』よりも強いスタンドだろう。俺が気に入らないのならばそのスタンドで俺を殺せばいい。やれよ…!」
「…そ、それは…そんな…!」
勢いで死ねと言ってしまったものの、実際に自分がそれを成すことができる力があることを自覚し、朝日奈は急に勢いを失くしてしまった。そんな朝日奈に十神は心底見下したような目を向けて言う。
「分かっただろう。貴様は所詮そこらの有象無象と同じで受け身でしか行動を起こすことができない。殺すにしても、自分に危害が及ぶ、あるいは自分の触れてはならない部分に触れた時にしか殺意を持つことができない。要するに貴様は『対応者』なのだよ。貴様には霧切のような一貫した意志も、大神のような偽善と分かってなおそれを貫く決意も、苗木のような自分の信じた道を突き進む覚悟も在りはしない。いっそ腐川のように馬鹿のように一つのことに執着しているような奴の方がよっぽどマシだ。…ハッキリ言ってやろう、貴様がどれだけ喚こうが、貴様自身にそれを成す覚悟が無い限り貴様は一生負け犬なのだよ」
「…ッ!」
「…と、十神っち?俺は…?」
「あ、あとアタシも…」
「貴様らは何を考えているのか分からん。例えに出す価値すらない」
「酷っ!」
十神の容赦ない言葉に、朝日奈はキッと睨み返すも耐え切れなくなって逃げるように体育館を出て行ってしまった。それを見送ってフンと鼻を鳴らす十神に苗木が歩み寄る。
「…少し言い過ぎなんじゃあないかな?」
「フゥン、何か間違ったことを言ったとでも?…それとも、アレはお前のか?」
「そういうんじゃあないけど…君の言いたいことは分かるし、間違っていないとも思うよ。…けど、人間はそう簡単に割り切れるような生き物じゃあないんだ。むしろ朝日奈さんのような感性の方が普通なんだよ。その辺を分かってくれとは言わないけど、人間が理屈や状況だけで行動できるような物じゃあなこと、そして時にはそう言う理屈抜きで行動するということをを覚えていてほしい」
「…じゃないと、あなたいつか足元を掬われるわよ」
「…フン、忠告ありがたく受け取らせてもらおう」
嫌味ったらしくそう言う十神にため息をつき、苗木は出て行った朝日奈を追って体育館を後にした。
「ぐすっ…えぐっ…!」
寄宿舎の自室にて、朝日奈は一人で嗚咽していた。本当は大神と一緒にいたかったのだが、朝日奈に無用な疑いを掛けられることを恐れた大神が会うことを拒否したため一人部屋に閉じこもって泣いていたのである。
「…あたしは…どうしたらいいの?…寒い、寒いよ…」
ベッドに横たわり膝を抱えて啜り泣く朝日奈は、一人でいること以上に自分が人を軽々と殺せるような力を手にしていたことに対し恐怖し、それにより心が凍りつくような寒気を感じて震えていた。
そんな時
ピンポーン
「ッ!…誰?」
「朝日奈さん…いる?」
「苗木…!」
扉の外から聞こえる自分を心配している声に、ゆっくりと起き上がって扉を開けると、そこにはお人よしそうな顔を増々人のよさそうな顔にして自分を見つめる苗木の姿があった。自分と目線は同じはずなのに、こうして向き合っていると妙に大きく見えるためか、朝日奈はその顔に安心感を覚え、少し寒気が和らいだような気になる。
「朝日奈さん、大丈夫?なんだか顔色が悪いけど…」
「あ…、う、うん!全然平気!あんなかませ眼鏡のことなんか全然気にしてないって!アハハハ…」
「……」
「ハハ…ハ………ごめん、やっぱり無理かも…」
気丈に振る舞おうとするも、苗木の凡てを見透かされるかのような視線を受け自然と本音が漏れてしまう。
「…苗木、部屋入ってよ」
「え?…いやいや、それは流石に…」
「お願い…今は、誰かに傍に居て欲しいの…」
「…分かったよ」
朝日奈に示されるがまま、苗木が部屋のベッドに腰掛けると、朝日奈はその隣に座る。
「………」
「あ、朝日奈さん?」
「…ごめん、付き合わせちゃって」
「別にいいんだけど…」
「………」
「………」
「…何も聞かないの?」
「何か聞いて欲しいことでも?」
「…ずるいよ、その言い方。話すしか無くなっちゃうじゃん。……じゃあ、聞いてくれる?」
「もちろん」
笑顔でそう言う苗木に少し微笑むと、朝日奈は独白のように語りだす。
「…私ね、もう何を信じたらいいのか分かんないんだ。さくらちゃんがモノクマの仲間になって、ずっと私たちを監視してたってことはもう分かってるの。…でも、それは家族とか友達を人質に取られてたからで、…だったらさくらちゃんは悪くない筈なのに…でも、そうだと分かっていてもどうしてもさくらちゃんを信じきれない自分がいるの。今まで友達と思っていたさくらちゃんが、モノクマに言われたとおりにする為の演技だったら。本当はさくらちゃんは、私の事なんかどうでもいいんじゃあないか…って思うと、すごく怖い…」
「………」
「…さっき十神を殴った後で少し分かってきたんだけど、私のスタンドね、『オアシス』って言うの。能力は地面の中を水みたいに泳ぐことができる。…なんだか私にぴったりなスタンドだよね、アハハ。…昨日までの私ならね、このスタンドでこれからは私がさくらちゃんを守ってあげられる、こんなところから脱出して皆を助けてあげられる。…って思ってたかもしれない。…でも今はどうしたらいいのか分からないの。力を使おうとしても、さっきみたいな幽霊みたいなままで能力を使うことができない。皆みたいにはっきりした感じにしようとすると、頭の中がこんがらがって何にも分かんなくなる。…もう私、何もできなくなっちゃった。折角、皆を…助けられると…思ったのに…グスッ…!」
半泣きになりながらも心の内を吐露する朝日奈の言葉を、苗木は終始黙ったまま聞き入れていた。やがて話し終えたのを見計らって、苗木は諭すように朝日奈に語りかける。
「…朝日奈さん。君のスタンドが実態を見せることができないのは、きっと君の心に迷いがあるからなんだ」
「迷い…?」
「スタンドは持ち主の意志そのもの。強い意志を持っていれば本来持ちえる力を大きく凌駕したスタンドパワーを発揮することができる。…逆にスタンド使いの心に迷いやトラウマのようなものがあればスタンドもそれに比例して力を失う。朝日奈さんは今大神さんを信じるということにおいてすごく迷っている。その迷いがスタンドのビジョンを薄れさせているんだと思うんだ」
「…じゃあ、あたしどうしたら…?」
「…信じれば、いいと思うよ」
「……え?」
「朝日奈さんは、大神さんを信じたいんでしょ?でも大神さんがモノクマの手先だったことを知って、どうすればいいのかが分からなくなっている。…でも、それを知ってもまだ大神さんを信じようとしているってことは、結局朝日奈さんがそうしたいと望んでいるからってことだよね」
「…うん、ホントは、私はさくらちゃんのことを信じたいよ。でも…」
「だったら、信じればいいんだよ。モノクマに無理やり言うことを聞かされていた大神さんを信じるんじゃあなくて、朝日奈さんが知ってる、大神さくらっていう友達の事を信じればいいんだよ」
「私の知ってる…さくらちゃん」
「大神さんは確かにモノクマの内通者として僕たちを騙していたのかもしれない。けれど、君の知っている大神さんは、そんな状況だからといって諦めるような人だったかい?」
「違うよ!…さくらちゃん言ってたもん!『例えどれほど絶望的な状況であろうとも、決して諦めてはならない。ほんの少しでもそこで絶望を受け入れてしまえば、きっと自分は格闘家ではいられなくなるであろう。それだけは決して許してはならない』って!」
「…そうだ、大神さんは闘うことを諦めてはいなかった。昨夜、大神さんはたった一人でモノクマに、黒幕に戦いを挑んだ」
「ッ!さくらちゃんが…!?」
「結果はまあ…モノクマが未だ健在であることから分かるだろうけど残念ながら手が届かなかった。けれど、それでも大神さんは諦めた訳じゃあない。今も僕らと会おうとしないのは、自分と関わることで余計な誤解を招かないため。僕らが黒幕と闘うために、可能な限り自分の存在が障害とならないようにする為だ。大神さんは朝日奈さんを見捨てたりなんかしない。今も闘っているんだ。だからこそ、君が信じてあげなくて誰が彼女を守れるというんだ!」
「……」
深く沈んだ朝日奈を鼓舞するかのように話す苗木。それを聴いていた朝日奈はしばし俯いて黙り込んだのち、やがて顔を上げ…その眼強い決意をもって苗木を見る。
「うん…!私、信じてみる。さくらちゃんの事を、今の私のことを信じて頑張ってみる!」
「…そうか。頑張って、その意気があればきっとスタンドもじきにはっきりしたビジョンを見せてくれると思う。もし何かあったら、僕で良ければいつでも力になるよ」
「うん、ありがと…」
「じゃあ、僕はこれで…」
と、苗木が立ち上がって部屋を辞そうとすると
だきっ
突如として朝日奈が苗木の腰にしがみつき、再びベッドに座らせる。
「ッ!?ちょ、朝日奈さん…!?」
「…ごめんね。頑張ってみるけれど、まだ少し寒いの。…今だけは、もう少しだけ、こうさせて…」
「……う、うん」
しがみつかれたまま身動きの取れない状態で、苗木は無防備に自分に身を任せる朝日奈をただただ受け止め続けるのであった。
「……(イライラ)」
『キョーコ、顔が怖えーぞ。視線で人でも殺しそうな顔に…』
「それ以上言ったら潰すわよ…」
『…すまん』
「………」
『ジュンコ、なんかイライラしてねえ?』
「…していない。私にそんな感情はないから。私をイライラさせたら大したもんだよ」
『そ、そうかよぉ~…』
今回ここまで