ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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タイトル完全にパクリで申し訳ありません(^U^)


巨星、墜つ

 あれから一時間ほど苗木にくっついた後、我に返った朝日奈のしっちゃかめっちゃかな言い訳を温かい目で聞き入れたり、赤面して顔を上げようとしない朝日奈に追い出されるように部屋を出るなり霧切と江ノ島に絡まれたり、二人に詰め寄られている間部屋の中では枕に顔を埋めたままの朝日奈が自己嫌悪でバンバンベッドを叩いたりしていたがとりあえず目立った混乱もなくその一日は過ぎて行った。

 そしてその翌日、朝食の為に食堂へと向かおうとした苗木の耳に食堂から物音が届く。

 

ドガラガラーンッ!

「ッ!?何事!?」

 昨日の今日なので嫌な予感しか感じないまま苗木が食堂に飛び込むと、そこには散乱した机や椅子の間で血が噴き出す右腕を抑えて苦しそうな表情を浮かべる朝日奈とそれを見下す腐川…もとい鋏を構えたジェノサイダー翔、そして地震でも来たかのように机の下でガタガタ震える葉隠がいた。

 

「朝日奈さんッ!」

「…苗木…」

「あらまこちー、おっはー♪良かったねーボインちゃん、愛しの王子様のご登場だよ~?」

 軽口を叩くジェノサイダーをジロリとひと睨みして苗木はへたり込んだ朝日奈に駆け寄る。朝日奈の右腕からは今も止めどなく血が流れてきており、さらにその傷口はどうやらジェノサイダーが持つ鋏で切り裂いた訳ではなくまるで内側からはじけ飛んだかのように酷い有様であった。ふと床を見れば、朝日奈のであろう血液で濡れた大ぶりの鋏が落ちており、おそらく『メタリカ』で朝日奈の血液から鋏を創り出し体内から肌を切り破ったであろうと想像ができた。

 傷の痛みに苦しむ朝日奈を気遣いながら、苗木は状況の説明を求めるべく机の下に避難している葉隠に視線を飛ばす。それには有無を言わせず喋らせようという無言の圧力が籠っており、視線を向けられた葉隠はドキッと体を震わせた後たどたどしく説明する。

 

「お、俺は関係ねーって!俺が食堂に来たら珍しく腐川っちがいると思ってたら、後からやって来た朝日奈っちと口論になって…そんで腐川っちがヒスこじらせて暴言かましたら朝日奈っちがキレて昨日のスタンド出しかけて殴り掛かったら、腐川っちが悲鳴あげながら朝日奈っちに手ぇ向けたら朝日奈っちの右腕から鋏が飛び出して、…んで血ィ見てジェノサイダーと入れ替わってこうなった訳で…そういうことだから俺は悪くねーぞ!」

『サリゲナク自分の無実ダケ証明スルとかホントオマエ人間の屑ダナ、ヤスヒロヨォ~』

 頭上で本体の事をこれでもかと貶める『ドラゴンズ・D』に苗木が呆れていると、ジェノサイダーが鋏を突出し話しかける。

 

「…そーいう訳だからまこちー、さっさとその似非清純派AV女優もどきとそこのヘたれドレッド連れて行ってくんない?アタシとしてもそいつに死なれるのは目覚め悪いんだよねー、いい男だけがターゲットのアタシの信条に反するから。まこちーなら治すの楽勝っしょ?じゃ、そーいう訳だからあとよろしく~!」

「あっ、おいッ!」

 そう言い残しスキップで食堂を去っていくジェノサイダーを憎々しげな眼で見送る朝日奈と机の下から叩きだした葉隠を伴って、苗木は仕方なく治療の為に保健室へと向かうのでった。

 

 

 

 

 

 

 保健室にて、苗木は朝日奈の傷口の消毒を簡単に済ませ『ゴールド・E』で塞ぎにかかる。

 

「…まったく、気持ちは分かるけどあんまり無茶したらいけないよ。腐川さんだって悪気が無い…訳じゃあないだろうけど、不安な気持ちになっていることは分かってあげて欲しいな」

「…ごめん、でもやっぱり、さくらちゃんを悪く言われるのは我慢ならないの…」

「ああ…、どうすりゃいいんだべ…」

 愚痴りながらも傷口の治療を済ませ、血で汚れたウインドブレーカーを着替えようとした時

 

「朝日奈ァッ!!」

 焦った表情で大神が朝日奈の名を呼びながら保健室へとやって来た。

 

「さ、さくらちゃん!?どうしてここに…?」

「先ほど腐川のやつから意味深なことを言われて、気になって来てみたのだが…ぬうっ!?」 

 大神の視線が、朝日奈の血で濡れたウインドブレーカーの右袖に向けられる。

 

「そ、その傷は…!?」

「あ…、こ、これはもう大丈夫!苗木がちゃんと治してくれたからさ…」

「(ギロッ!)」

「お、俺じゃあねーって!そのジェノサイダーだべ!あのサイコ野郎が朝日奈っちを…」

「ぬうう…ッ!我自身ではなく朝日奈が傷つけられるとは…、なんということだ…!なんということだあああああッ!!!!」

 ぶつけようのない怒りの声とともに、大神の気迫がまるでオーラの如く吹き荒れる。すると大神のスタンド、『キングナッシング』が突如出現し、大神を中心としてまるで竜巻のように旋回し始める。

 

「うえええええッ!?お、大神っちのスタンドって戦闘向きじゃあねーんだろ!?こりゃどうなってんだべ!?」

「た、多分大神さんの怒りに呼応して普段以上のパワーを発揮しているんだろうけど…流石にこれは止めないとマズイかな…?」

「さ、さくらちゃん落ち着いて!」

 怒り狂った大神の力の矛先が向かう先を想像し、いち早く退避した葉隠以外の二人はなんとか制止しようとする。とその時

 

「…何の騒ぎかしら?」

「霧切さん!?」

 大神の叫びを聞きつけたのであろう霧切が保健室の前に立っていた。そんな彼女に助力を乞おうと苗木が声をかけかけた時、大神の気迫が突如静まる。

 

「…心配は無用だ、苗木、朝日奈」

「大神さん…?」

 穏やかな声でそう呟くと大神はふらふらとした足取りで保健室の外へと向かう。

 

「ど、どこ行くのさくらちゃん!?」

「案ずるな…。お主等の危惧しているようなことはせぬ。我はただ…けじめをつけに行くだけだ」

 その言葉に、朝日奈や霧切は訝しげな表情となるが、言葉の端から不安を感じた苗木がその背に声をかける。

 

「…大神さん」

「…なんだ?」

「前にも言ったけど、僕らは犠牲の心なんか望んじゃあいない。未来の為に、君は生きて、闘うんだ。早まったことだけは、諦めるようなことだけはしないでくれ」

「…心配するな。我はあ奴になど屈したりせぬ。希望の為に闘う。…そう、だからこそ、我は行くのだ」

 そう言い残し去っていく大神の背中を苗木は黙って見送った。理由はなかったが、追わないことが彼女の為だと、そう思ったからである。

 

「あ…、さくらちゃん!」

 我に返った朝日奈が大神の後を追う。それを見送った霧切は、いつの間にか姿を消している葉隠の事など捨て置いて苗木の傍に歩み寄る。

 

「…行かせて良かったの?」

「…道を決めるのは彼女自身だ。僕が口を挟むようなことじゃあない。…できれば僕らの望まない道を選ばないことを祈りたいけどね」

「そうね…」

 お互い言葉は少なかったが、大神という人となりを知っている以上彼女の無事を祈るところだけは共通していた。

 

「…とはいえ、私たちものんびりと構えてはいられないわよ。大神さんが危険を冒す必要が無いように、私たちもできる限りのことをしておく必要があるわ」

「そうだね。…とりあえず、アルターエゴのところに行ってみようか。今は少しでも情報が欲しい」

「ええ」

 

 

 

 

 

 脱衣所へと赴いた霧切と苗木を待っていたのは、既に起動状態のアルターエゴと十神であった。

 

「十神君…!なんでここに?」

「ここにいる以上、貴様らと同じ目的に決まっているだろう。…それにこれ以上あの女のヒステリックな声なんぞ聴きたくもないからな」

「…待っていたなんてあなたらしくもないわね」

「…俺一人でも問題はないが異なる視点の人間がいるのは悪いことではないからな。精々意見を出してみろ」

 素直に助力を乞おうとしない十神に苦笑しながら、苗木はアルターエゴへと向き合った。

 

『おはようみんな!…あれ?3人だけ?他の皆は?』

「…ちょっと色々あってね。とりあえず僕たちだけで話を聞くよ。それで、なにか進展はあった?」

『うん…。とりあえずこのパソコンの中にあったデータは全て確認したよ。それで、まずこんなものが見つかったんだけど…』

 そう言ってアルターエゴが画面に映し出したのは、どこかの教室らしき場所で楽しそうにじゃれ合う山田とセレス、そしてそれを見て笑う舞園が映った写真であった。

 

「またこの手の写真か…」

「この教室にも窓には鉄板が無い。やっぱりここではない別の場所で撮られた物なのかしら?」

「…そうだとしても、僕らがそんなところで出会った記憶なんて無い以上、辻褄が合わないよ」

「…そうね」

(記憶…そうだ、確かに僕らはここで初めて出会ったはず。なのに前のも今回のも仲がいいとしか思えないような状況が映されている写真が存在している。……まさか、いや、流石にそれは…)

「…それでアルターエゴ、情報はこれだけでは無いのだろう?」

 不可解な内容の写真と自身の記憶との食い違いに、流石にあり得ないだろうと思うような結論に至った苗木の思考が十神の声で呼び戻される。

 

『えっとね、あとこの学園の封鎖に関係したことなんだけど、どうも皆をただ閉じ込める為にやったわけじゃあないみたいなんだよね』

「どういうこと…?」

『封鎖に向けた準備の報告書がいくつか見つかったんだけど、学園の設備は一般的に流通している物より数世代先の物が搬入されているし、食糧とか電気や水みたいな消耗品に関しては向こう10年は全然余裕なくらいの量が備蓄されているんだ。それに、物理室の空気清浄器や学園の浄水システムなんかから考えても、4~50人なら10数年、4~5人ぐらいなら一生暮らしていけるだけの環境が用意されていたんだ』

「…殺し合いをさせるにしては、待遇が良すぎる…ということか」

「確かに、こういうシチュエーションにおいてここまで快適な環境を用意すれば、普通だったら余程のことが無い限り殺意なんて抱く理由が無い。…外的な要因さえなければね」

「…それがモノクマが用意した『動機』…、つまり、この学校の環境自体は黒幕の想定していたシチュエーションとは異なるということかしら?」

「でなければわざわざあんな回りくどい動機なぞ用意せんだろう。恐らく黒幕はこの封鎖された環境をわざわざ創ったのではなく、用意された物を利用しただけなのだろう」

「…そうなると学園長は黒幕とは考えにくいね。でもそうなると納得がいかないのは窓を塞いでいる鉄板や正面玄関の扉、それに監視カメラとあの銃器の類だ。黒幕はあれを一体どこから調達したというんだ…?」

「…それで、他にはなにか分かったことはあるの?」

 真相への手がかりを求めて霧切がそう聞くが、アルターエゴは申し訳なさそうな表情と声で返答する。

 

『ごめんね…、僕が分かったのはここまでなんだ』

「…チッ!こんな中途半端なところで足止めか…」

「…参ったわね、学園長が黒幕ではない可能性は出てきたけれど、目的が不明な分増々不可解になってきたわ」

「なにか…このパソコン以外の情報源があればいいんだけど……あの部屋の資料は全て撤去させられてしまったしなあ」

「…?なんのことだ?」

「あ、十神君知らなかったけ?実はね…」

「…なんだと!?貴様ら、何故それを俺に黙っていた!?」

「…むやみに引っ掻き回されるのは困るのよ。それに、あなたがあの部屋に行けばほぼ必然的に腐川さんにも情報が漏れてしまうでしょう?彼女から情報が漏えいすることは避けたかったのよ」

「…チィッ!奴もいらない所で足を引っ張る…!」

『待って!…だったら、お願いがあるんだ!』

「アルターエゴ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…苗木君、くすぐったいよぉ…』

「ご、ごめん。…パソコンから感覚って伝わる物なの…?」

 苗木とアルターエゴ…正確にはアルターエゴの内蔵されたパソコンは二階男子トイレの奥にあるあの隠し部屋に来ていた。アルターエゴの頼みとはより詳しい情報を得るために学園のアクセス可能な場所から自分を学園のメインコンピューターにハッキングさせて欲しいというものであった。無茶な要望でありアルターエゴにも危険が及ぶ頼みではあったが、本人の強い意志を無下にすることもできず、どこか該当する場所は無かったかと思案した結果あの隠し部屋にコンセントがあったことを思いだし、ここまで服の中にノートパソコンを隠して連れてきたのである。

 ちなみに何故苗木なのかというと、霧切は黒幕に目をつけられている可能性があるというので辞退することになり、十神はそんな面倒なことに付き合っていられないということで消去法で苗木がその役割を担うことになったである。ちなみにこの時部屋の存在を知っている江ノ島にも協力を依頼し、今は二階の階段付近で不審な人物が接近していないか『エアロスミス』による探知を行っている。

 

「…どう?いけそう?」

『……うん!なんとかアクセスしてみるよ!しばらく連絡が取れないと思うけど、皆も頑張ってね!』

「うん、…アルターエゴも、くれぐれも気をつけて。必ず無事で戻って来てね」

『…嬉しいな。僕の心配もしてくれるんだね』

「当たり前じゃあないか。君も僕たちの大事な仲間なんだから」

『仲間…、僕も、皆も仲間になっていいの?』

「当然だよ。今更何言ってるのさ」

『だって…、僕はただのプログラムだし…』

「プログラムだろうがなんだろうが、僕たちと目的を同じとする以上、誰であってもそれは僕らの仲間さ。人間じゃなくたって、僕も、皆も、君を受け入れるよ」

『……ありがとう。えへへ…じゃあ行ってくるね!』

「ああ、いってらっしゃい」

 笑顔でそう言うとアルターエゴはパソコンの画面から消えていった。それを見送った後、苗木はパソコンの周りに『ゴールド・E』で頑丈なマングローブの根を生やしてパソコンを覆い隠し、簡単にはパソコンを取り出すことができない様にしたうえで何事もなかったかのようにトイレを辞した。

 

「おまたせ、江ノ島さん」

「もー、遅いって苗木!いつまでトイレ入ってんのさー」

「ごめんごめん、ちょっとお腹の調子が悪くてね……どうだった?」

「…怪しい奴は近づいてないよ。他の皆もこの階層には来ていない…」

「そうか…、ありがとう」

「いいよこれくらい。…黒幕の手がかり、見つかると良いね」

「ああ…」

 小声で江ノ島とそんな会話を交わしながら、苗木は得も知れぬ不安を抱いていた。アルターエゴを発見した当初、苗木達は不二咲があそこにパソコンを隠したのだと考えていた。しかし、あのモノクマが脱衣所にだけカメラが無いのを知らないのは少し引っかかる。トイレや部屋のシャワールームにもカメラが無い以上、脱衣所や大浴場にカメラが無いのはプライバシーの関係としか考えられないが、だからこそその周辺への警戒を怠っているとは考えられない。とすれば、不二咲が殺される直前にあそこに立ち入ったのをモノクマが知らない筈が無い。なのに、モノクマはそのことについて言及する素振りが無い。ただ風呂に入っていただけと考えているのか、…すべてを知ったうえで泳がせているのか、あるいは…

 

(…ッ!駄目だ駄目だ!弱気になんてなっている暇はない。今はただ信じるんだ、アルターエゴを、僕らに遺された希望を…!)

 不信感を振り払って、苗木は気持ちを強く持とうとする。自分たちの行動すべてが、黒幕の手のひらの上で踊らされているかも知れないという気持ちを隠すように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方アルターエゴは学園のメインコンピューターへとアクセスするため、セキュリティーのファイアウォールと格闘していた。

 

『うーん…、このセキュリティー物凄く堅い…!流石に希望ヶ峰学園のメインコンピューターを守っているだけのことはあるよ。…でも、なんとかやれないことはない!』

 物質に例えるなら鋼鉄の繊維を何重にも織り上げたかのようなファイアウォールを少しずつ突破する中で、アルターエゴは一つの疑問を抱いた。

 

『…でもこのファイアウォール、どうして皆ご主人タマが構築するタイプのセキュリティーばかりなんだろう?しかも性能は現行最新型よりもずっと高性能なものばかりだし…ご主人タマでも1~2年かかって完成できるような物をどうやって用意したんだろう?……ん?』

 と、ファイアウォールを突破していたアルターエゴは偶然にもコンピューターの一部に記録されていた監視カメラの映像の一部を見つけた。

 

『この映像…、この時間は確かモノクマは皆のところにいた筈だ。だとしたらもしかして黒幕が知らないことがここに記録されてるかも………ッ!!?』

 と、記録映像を確認していたアルターエゴの感情プログラムが、その映像に映っていたものを見た瞬間、観察から驚愕へと変動する。

 

『ええっ!?嘘、どうして…だって、この人はあの時死んだはずの…ッ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夕方、苗木は夕食の前に溜まった洗濯物をランドリーで洗っていた。

 

(…僕にできることはこれでやりきった。今は信じるしかない、大神さんを、アルターエゴを、…皆を信じて、前に進むこと。それが真実へとつながっている筈だ…)

 静かに回る洗濯機を眺めながら、今の自分にできることを考え込む苗木。と、いきなりランドリーの扉が勢いよく開かれる。

 

「苗木君ッ!!」

「…霧切さん?」

 そこにいたのは、普段滅多に見せることのない焦った表情の霧切であった。

 

「どうしたの?顔色が悪いけど…」

「早く来て、大神さんが…ッ!」

 

 

 

 

 ただならぬ霧切の様子に、苗木は促されるまま彼女と共に階段を駆け上がる。そして3階に上がったところで、娯楽室の前で立ち尽くす朝日奈の姿を目撃する。

 

「朝日奈さんッ!」

「あ…!苗木、霧切ちゃん!さくらちゃんが、さくらちゃんが…ッ!!」

 朝日奈の示した娯楽室の中を覗きこむと、そこにはソファーにどっかりと座りこんで項垂れている大神の姿があった。

 

「大神さん!…大神さん!」

「さっきから返事が無いの…、ドアを開けようとしても鍵が掛かってるみたいで開かなくて…!」

 鍵が掛かっている以上、無理やり開ければ校則違反となってしまう。その為にどうにかしたくても動けずにいた朝日奈を落ち着かせながら、苗木は扉に手を掛け確かめる。

 

「…確かに鍵が掛かってる。しかもどうにも内側からなにかつっかえられてるみたいだ」

「どうするの?」

「…おいモノクマッ!!」

『は~い、呼んだ?』

 苗木の呼び声にスピーカーからモノクマの声が聞こえてくる。

 

「一つ確認したい、校則の『鍵が掛かった部屋のドアを開けてはいけない』って言うのは、後から鍵が掛かった部屋も対象に含むのか!?」

『あー…、うーん、まあそれに関しては別にいいよ。最初から鍵が掛かってた部屋及び各個室のみが違反の対象となります!』

「そうか。…だったら問題はない、強行手段だッ!」

 苗木は二人を下がらせながら一歩ドアから離れると、『ゴールド・E』を呼び出し拳を叩きこんだッ!

 

「『無駄ァッ!!』」

ドゴォッ!

 無造作なラッシュではなく、ピンポイントで扉の鍵の部分だけを撃ち抜くと苗木はそのまま強引に扉を押し開ける。どうも内側になにかがつっかえていたらしく苦労しながらも扉が開くと同時に苗木と霧切は大神へと走り寄る。

 

「大神さっ…ッ!?」

 そして苗木が大神の体に触れた瞬間、苗木は理解してしまった。

 

 

 

 

 もう大神さくらの体には、欠片も生命エネルギーが残っていないということに。

 

 

 

ピンポンパンポーン!

『死体が発見されました!一定の捜査時間の後、学級裁判を開きまーす!』

 

 無情に告げられるモノクマアナウンス。それが大神さくらの死が現実であるということを物語っていた。

 

「大神さん…ッ!」

「また…起きてしまったのね」

「……嘘、さくらちゃん、死んでるの?」

 その死を悔やむ苗木と霧切とは異なり、朝日奈の言葉はどこか空虚に感じるほど力ないものであった。

 

「皆を…呼んでこなくちゃ…」

「あ、朝日奈さん…!」

「大丈夫、大丈夫だから…」

「…彼女に任せましょう苗木君、今は一人にしておいた方がいいわ」

 ふらふらと力ない足取りで外へと向かう朝日奈を心配しながらも、苗木は何もしない訳にはいかず大神の遺体へと向き直る。

 

「…外傷は頭部への打撃痕が一つ、胸元からの出血が一か所。口からは吐血した跡が見られるわ。死因はこのいずれかと見て間違いないでしょうね」

「…多分頭と胸の傷は致命傷ではないよ。出血はあるけれど頭蓋骨や頸動脈にまでは至っていない。とすると死因は吐血の原因となった物。…普通に考えれば、化学室にある毒薬あたりが凶器と見るべきかな。けど問題は…」

「どうやって彼女にそれを飲ませたか、ね。しかもこの部屋には内側から鍵が掛かっていた上にドアをあの椅子で塞いでいた。そんな密室空間で、どうやって大神さんを殺したのか。…確かにそれも疑問ではあるけれど、それ以外にもこの現場には怪しい点がいくつも残ってるわ」

 大神の遺体を調べながら。苗木は娯楽室の周りを見渡す。そこには、遺体から離れた場所にある血痕や割れたガラスの欠片などが点在していた。

 

「あの砕けたガラス片…、落ちているモノクマの人形からしてそこのボトルシップが割れたものだろう。犯人が大神さんともみ合っているうちに自然と落ちたか、あるいはこの頭部の打撃痕の凶器に使われたか…」

「…間違いなく後者でしょうね。凶器はアレ以外には考えられないし、第一スタンドを持っていたとしても大神さんと真正面からやりあう人なんて考えられないわ」

「まあそうだろうね。それに、あの雑誌棚の前の血痕も気になるところだし………………?」

 と、苗木の視線がある一点で止まる。それは、この現場において少し不自然なものであた。

 

「…髪留め?でも朝日奈さんのとは形が違う。一体誰の…?」

「おい貴様…!碌に説明もせずにどういう了見だ…!」

 と、そこに朝日奈に連れられた十神、葉隠、腐川、江ノ島の4人がやって来る。

 

「ッ!?嘘、大神…!?」

「ゲゲーッ!?お、お、お、オーガが!?」

「どどどど、どういうことよぉ!?」

「…フン、そういうことか」

 娯楽室に入るや否や目に飛び込んで来た大神の遺体に、思い思いに大神の死に対して言葉を発する中、入り口に立っていた朝日奈が口を開く。

 

「…十神、葉隠、腐川、江ノ島…しらばっくれたって、分かるんだからね…!」

「…何のことだ?」

「とぼけないでよ…!私知ってるんだから…アンタたちが、さくらちゃんに呼び出されてるのを…、犯人はッ!あんた達4人の誰かよッ!!!」

 




今回ここまで。第一部終わってからの流れどうすっかな…
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