ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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いよいよクライマックス。この先の展開に自信がありませんが、どうぞ温かい目で見守ってください


終わりの始まり

「…で、どうするつもりだ?」

 静まり返った一同の中で一番に声を発したのは意外にも十神であった。

 

「どう…って」

「このままボケッと突っ立っているつもりか?今はそれよりもするべきことが在る筈だろう」

「そ、そりゃそうだけど…十神っちは悔しくねえのかよ!?俺たちはモノクマにいいように遊ばれてたんだべよ!」

「…悔しいに決まっているだろう!この俺が、十神白夜ともあろうものがアイツなんぞに踊らされていたと思うと自分を殺したくすらなる…ッ!だが、ここで何時までも呆けていては恥の上塗りになるだけだ。ならばせめて、奴が仕組んだこの茶番をぐうの音も出ん程に片付けてやることこそが奴への報復になるのだ!分かったらさっさと動け!」

「…なんかアンタ、変わったよね。最初の頃より貪欲っていうか…ハングリーになったっていうか…」

「わ、ワイルドな白夜様もステキ…クヒッ!」

「やかましい、貴様らもぼさっとするな!…苗木、貴様も考えるのはいいが今は情報を集めることの方が優先だろう。早く行くぞ」

「あ…、うん…」

 十神に促され足取り重く苗木もまた皆と共に捜査に乗り出した。しかし、彼の心の中には未だ燻るものがあった。

 

(…分からない。何故黒幕はここでの様子をわざわざ中継しているんだ?こんなものを放送すれば騒ぎになることぐらい目に見えているだろうし、仮に僕の推測通り外がそれどころじゃあない状況…仮に戦争でも起きているとしても、学生が監禁されて殺し合いを強要させられていることを知ればそれに関する何らかのアクション…例えば回線を切断するとかがあったしても不思議じゃあない筈だ。つまり、これが長時間に渡って放送されることは常識的にも倫理的にもほぼ不可能に近い。なのに未だにこの中継は続行している…。それすらもできない状況にあるというのか…!?)

「…駄目だ駄目だ。今は目の前の事に集中するんだ。あの死体が霧切さんのものでないということを、そしてこの事件の犯人を明らかにするんだ。考えるのはそれからだ…!」

 そう気持ちを無理やりに切り替えて、苗木は捜査に乗り出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 捜査を始めたは良いものの、肝心の死体は大半が燃え尽きてしまっているため先ほど以上の発見は無く、皆は校内を散開してなにか手がかりが無いかと調べまわっていた。

 苗木もまた現場である植物庭園を見て回り、事件の状況を整理していた。

 

「…この植物庭園では毎朝7時30分にスプリンクラーによる放水が行われる。それ以前から死体があればその時の放水で死体は濡れている筈。けれど僕らが死体を発見した午前9時頃の時には死体は濡れていなかった。普通なら放水のあった7時30分以降に犯行が行われたと考えるべきだけど…」

 苗木は自分のいる植物庭園の物置、そこに置かれた片面だけが水と泥で汚れたビニールシートに視線を落とす。

 

「明らかにこれには使用した痕跡がある。犯人は恐らくこれを使って死体を濡れないようにして、犯行時刻をごまかしたんだ。そうなると犯行時刻は昨晩から腐川さんが植物庭園を訪れるまでに幅が広がる。…犯行時刻から犯人を割り出すのは不可能だな。とすれば次は凶器か…」

 苗木は電子生徒手帳のモノクマファイルを開く。

 

「死体には胸部の背中まで到達している刺突痕の他に、左胸に内蔵にまで至っている切り傷痕、そして後頭部に鉄パイプ程度の太さのもので殴られたかのような打撃痕が残っていた。…普通に考えるなら一つ目か二つ目の傷が致命傷だろうけど、刺突痕、あのナイフは白衣の上から突き刺さっていた。しかも着ていた状態じゃあなく上からかけられた状態でだ。流石にそんな状態での一撃が致命傷とは考えにくい。とすれば、あれは犯人の偽装と見ていいだろう。それと二つ目の切り傷…字面だけ見れば確かに致命傷には十分だろうけど死体を見ても血も出ていなかったし切り裂かれたような真新しい傷痕も残っていなかった。多分だいぶ古い傷なんだろう。よってこれも無し。とすれば死因は最後の後頭部への一撃…けれど鉄パイプ程度の太さの凶器なんて、しかも人を撲殺できるほど頑丈な物…」

 と、そこで苗木の脳裏をある物がよぎった。

 

「そうか…あれかも」

 

 

 

 苗木がやって来たのは武道場であった。

 

「あのジュラルミン製の矢…一本じゃあ無理だけど何かで束ねれば相当な硬さの武器になる筈…あれ?」

 と、苗木はそこで矢の入ったロッカーの鍵が無くなっていることに気が付いた。

 

「無い…。昨日まではあったのに…犯人が持ち去ったのか?けど一体誰が…」

 苗木はしばし悩んだ後、浮かない表情で顔を上げる。

 

 

「…ここに居ても仕方ない。他を当たってみよう。次は……やっぱりあそこに行ってみるか。気は進まないけれど…」

 そう言って苗木は向かう。未だ行方の知れない人物、霧切の部屋へと。

 

 

 

 

 

 

 霧切の部屋の前には既に先客がいた。

 

「あ…、十神君」

「やっと来たか、待ちくたびれたぞ」

「なんでここに?」

「決まっている。霧切はこの事件の容疑者候補にして被害者候補だ。どちらであろうが、奴の部屋にはなにかしらの手がかりが残ってるかもしれん。どうせ貴様も来るだろうと思って、わざわざ待ってやったんだ。感謝しろよ」

「え?…でもなんで待って…あ、そうか」

「そういうことだ」

 十神は懐から霧切から取り上げた鍵を取り出し、ニヒルな笑みを浮かべる。

 

「これが無いと貴様も入れんだろう?…よーく感謝しろよ」

「…はいはい、ありがとう十神君」

「フン…」

 鼻を鳴らして十神は鍵を開け、二人は霧切の部屋へと入っていった。

 

「…お邪魔しまーす…」

「…誰もいる筈が無いのに何を言っている」

「いや…、やっぱり女子の部屋に入るのってなんだか気が引けるからさ…」

「フン…、あの女をレディ扱いするのは貴様ぐらいのお人よしだけだろうな。それよりさっさと始めるぞ」

「あ、うん…霧切さんゴメン」

 二人は手分けして部屋の捜索を始めた。

 

「ん?これ…」

 と、苗木はテーブルの上に置かれた番号の振られた木の板を見つけた。苗木はそれに見覚えがあった。

 

「これ…武道場のロッカーの鍵だ。しかもこの番号はあの矢が入ったロッカーの…」

 

 バサッ、バサッ!

「…ん?」

 と、異音と風に違和感を感じて振り向くと、十神がベッドシーツを引っぺがしている最中であった。

 

「…ッ!!十神君!それはいくらなんでも…」

「おい、有ったぞ」

「…何が?」

 反省の色が全く見られない十神にため息をつきながら問いかけると、十神はくしゃくしゃになった一枚の紙を取り上げた。

 

「なにそれ?」

「どうやら生徒資料らしい。しかもこれは78期生のものだ。名前は…戦刃むくろ?」

「え!?」

「…知っているのか?」

「あ…、うん。霧切さんが前にそんな人物に気をつけろって…」

「…やはりアイツはなにか知っていたようだな。まあいい、読めばわかることだ」

「どれどれ…。戦刃むくろ、肩書きは…『超高校級の軍人』だって?」

 苗木と十神はそこに書かれていた戦刃むくろに関する資料を熟読していった。

 

 

戦刃むくろ。性別は女。希望ヶ峰学園第78期生、またの名を『超高校級の軍人』。中学入学直前に家族とのヨーロッパ旅行中に謎の失踪を遂げる。三年後、単身日本に帰国。自分の意志で傭兵部隊『フェンリル』の訓練を受けていたと告白。その類まれなる戦闘能力の高さと諜報機関並みのスパイ技術を買われ希望ヶ峰学園に入学することとなる。

 失踪中、数々の紛争地域に出現したという情報があるにもかかわらず、その体には傷らしい傷は1つもなかった。なお、入学直前の…に関する調査にて…の存在を確認。数少ない…の秘密を知る人物となる。

 

「あれ…、後半の文がいくつか消されてる…?」

「奴の仕業か?…だがこれである程度の謎が解けたな」

「…あの死体が戦刃むくろだって言うの?」

「おそらくな。奴の所属していたというこのフェンリルという部隊…聞いたことが在る。中東を本拠地とする狂った戦争屋共の集まり。紛争、戦争、デモ、抗争、…闘いとあらばどこへでも出向き一人一人が一般兵1000人に匹敵するというほどの圧倒的な戦闘能力で戦場を制圧するというその強さから、まさに終末の狼フェンリルの如く恐れられているらしい。聞くところによれば中には武器を全く使わない兵士もいると聞いていたが、今思えばそいつはスタンド使いだったのかもしれんな。…そして、フェンリルに所属する兵士たちは必ず体のどこかにフェンリルの刻印を刻んでいるらしい」

「それがあの遺体の右手のアレだと…?でもあれはボディペイントだったんじゃ…」

「フン、どうせ下っ端扱いされて碌に刻印を刻まれずあんな扱いを受けていたんじゃあないか?」

「そうなのかな……」

 苗木はそんな疑問を憶えつつも、その視線は資料にあった戦刃むくろの顔写真に向けられていた。

 

「…なにがそんなに気になる?」

「いや、…彼女の顔、どこかで見たことがあるような気がして…」

「何?」

「…ああ、そうだ。彼女の顔、江ノ島さんにそっくりなんだ」

「なんだと?」

 そう言われて十神も写真をまじまじと見る。パッと見れば戦刃むくろは黒髪、短髪、無愛想な表情と似ても似つかないように見えるが、よーく見ると目元やそばかすなど確かに共通する特徴がみられた。

 

「…よくもまあこんなことに気が付いたものだ。で、これが何だというのだ?まさか江ノ島が戦刃むくろだとでも言うつもりじゃあないだろうな?」

「…分からない。分からないけど…僕にはその可能性をどうしても捨てきることができない」

「あり得ん。だとすればあの死体は一体誰のものだというのだ?百歩譲って霧切だったとしても、何故奴は江ノ島盾子の名を語って俺たちの中に紛れ込む必要がある。堂々と混ざればいいものを、何故そんな面倒な手段を使う必要がある?」

「…そうだよね。そうなんだけど…」

 苗木は十神の言葉に渋々納得しつつも、彼女の写真から感じるその感情に戸惑っていた。

 

(なんでだ?何故黒幕と関係がある筈の彼女を、敵なのかもしれない彼女のこの顔に…何故『愛しさ』を感じるんだ?僕は彼女を知ってるのか?何時?どこで?…分からない。彼女の事も、…僕の事も) 

 苗木が感じた彼女への感情。彼は知らない。その真実を知った時こそが、このコロシアイ学園生活の真実を知る時だということを。

 

 

 

 

 

 

 

 結局それ以外の手がかりも見つからなかった二人はそそくさと部屋を片付け苗木の見つけた鍵の事を確かめに武道場へとやってきていた。

 

「成程、ここの鍵だったということか」

「うん。そして僕の記憶に間違いがなければこの中身は…」

 苗木が鍵を解きロッカーを開けると、そこには予想通りジュラルミンの矢が数本立てかけられていた。

 

「やっぱりこれだったか。多分凶器はこの矢だよ。テープかなんかで数本束ねれば撲殺するための凶器には十分な筈だよ」

「…おい見ろ。それを裏付けるものも落ちているぞ」

 十神に言われロッカーの下に目を落とすと、そこには血痕が付着したガムテープが丸められて放置されていた。

 

「どうやらお前の言うとおりのようだな。これで凶器はハッキリした。…もう捜査の必要はないな」

「え?」

「もう犯人は分かりきっているということだ。…そういう訳だ、俺はこれで失礼させてもらうぞ。学級裁判を楽しみにしているんだな」

「あ、ちょっと!」

 苗木の制止も聞かず十神は話は終わりとばかりに立ち去ってしまう。

 

「ホントにもう…。けれど十神君の言うとおり、凶器がハッキリしてこれ以上の手がかりも見つけられそうにないな。せめてあの死体の身元がハッキリすればまだ探しようがあるんだけど………ちょっと待てよ?」

 そこで苗木は昨日見つけたあの疑問が頭に浮かぶ。

 

「生物室の死体…。死んだみんなは8人の筈なのにカプセルにはランプが9つ点いていた。つまりあそこにはもう一つ僕らが確認していない死体が在った筈。…もしそうだとすれば、今あそこには…」

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

『…皆さん、時間というものについて考えたことはありますか?時間とは人間には決して干渉することができない不可侵にして絶対の事象。けれど、もしそれを自由に支配できる人間がいるとしたら…その人にとって世界はとてもつまらないものに見えるかもしれませんね。人間は、限りある世界でこそ、生きる意味を見出すことができるのですから。そして、それすらも超越した力を持った存在にとっては…もう世界なんかどうでもいいのかもしれませんなぁ。…さて、そろそろ時間なので始めちゃいましょう!お待ちかねの、学級裁判―!』

「ッ糞…!こんなタイミングで時間切れだなんて…!…もう無理か。ごねていてもしょうがないし、今はやれるだけのことをするしかないか」

 タイミングの悪いモノクマに悪態をつきながらも、苗木は仕方なく裁判場へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼が居なくなってからしばらくして、その人物はゆっくりと…天井から現れた。

 

「…どうなってしまうんでしょう…?」

『ああ…。今回の事件において、真のクロを明らかにするということはほぼ不可能に近い。いくら苗木であっても現状では無理だろう』

『でも…、クロを突き止めないと皆が処刑されちゃうんだよね?皆はどうするつもりなんだろう…?』

「そうですよね…」

『…確かに皆の事も心配だが、それよりも黒幕の動向のほうが気になるな』

『「え?」』

『黒幕としても、クロが存在しないという事態は避けたいはずだ。故に、おそらく黒幕は偽りのクロを仕立て上げる可能性が高い…』

「偽りの…クロ、ですか?」

『ああ、しかも誰でもいい訳じゃあない。黒幕はおそらくこの機に乗じて邪魔者となる人物をクロに仕立て上げることで邪魔者を排除しようとしているだろう』

『そ、そんな!じゃあ犯人じゃない人が殺されちゃうの!?』

「だとすれば…その邪魔者って、…苗木君!?」

『いや、それは無い。苗木にはあの後彼女がずっとつきっきりだったというアリバイがある。苗木を犯人に仕立て上げるということは難しいだろう』

『じゃ、じゃあ…』

『…ああ、おそらく皆の中で唯一アリバイが立証できない人物…霧切を始末するつもりだろう。』

「…それって、やっぱり彼女のあの『才能』が関係しているんでしょうか?」

『多分な。彼女の才能は放っておけば置くほどに厄介になる。黒幕はそれを疎ましく思って彼女を…』

『…?』

「…どうしましたか?」

『…何てことだ!俺としたことがッ…!』

『な、何!?』

『この程度の事に、苗木が感づかない筈が無い…。あいつはずっと一番近くで彼女を見てきた。彼女の存在が黒幕にとって脅威であるということなどとっくに気づいている筈だ。しかも彼女はおそらくこの学園に関する秘密を知っている筈。…そんな彼女が危険に晒されていると知れば、アイツは間違いなく身を挺してでも彼女を守る筈だ…!』

「そ、そしたら…どうなるんです!?」

『決まっている…!奴はおそらく自分のアリバイを自ら放棄しかねない…。そして黒幕がそんなチャンスを見逃すわけがない…。ここまで言えばもう想像がつくだろう…ッ!』

「そ、そんな…、苗木君ッ!」

『行くぞ、…!何としてでも苗木は守らねばならん…、希望の為に…!』

「はいッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方苗木達は裁判場へと続くエレベーターへと集まっていたが、皆が集まったにも関わらずエレベーターは一向に動き出そうとしない。

 

「…また故障け?」

「おい…!モノクマ!さっさと修理しろ!」

 痺れを切らした十神の一喝に、モノクマがひょっこりと現れる。

 

「うぷぷ…。安心して、別に故障とかじゃあないから」

「はあ…?」

「んじゃなんで…?」

「前にも言ったでしょ?このエレベーターは『全員』が乗らないと動き出さないって」

「全員?ひーふーみー…皆居るじゃあねーか?」

「…もしかして…!」

 

 

 

 

 

 

「…待たせたようね」

『ッ!!』

 モノクマの背後から突如聞こえたその声、聞き覚えのあるその声にハッとして顔を上げると、そこから現れたのは

 

 

「き…」

「霧切さんッ!!」

 行方知れずだった霧切響子、その人であった。

 

「遅れて悪かったわね…」

「あ、あんた何で…!?」

「霧切ちゃん!死んだんじゃあなかったんだね!」

「勝手に殺されては困るわ」

「…ありゃ?じゃああの死体は…誰なんだべ?」

「…まさか」

「…戦刃むくろ。16人目の高校生、超高校級の軍人…」

「…はぁ?」

「あの死体はおそらく彼女のものよ」

「ちょ、、ちょっと待って!16人目の高校生って…なんのこと!?」

「ってことは…この裁判って…!」

 混乱する皆に、モノクマが楽しそうに宣言する。

 

「そう!この裁判は、戦刃むくろ殺しの犯人を決める学級裁判なのでーす!…ではでは、人数も揃ったことですし、そろそろ出発しましょー!じゃあ、下で待ってまーす!」

 そう言い残しモノクマは姿を消した。

 

「…さ、私たちも行きましょう」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

「オメーだけで納得されても困るべ!つーか戦刃むくろって誰だべ!?」

「…詳しい話はエレベーターの中で話すわ。まずは下に行きましょう」

「…そうだな。これ以上油を売っていては時間の無駄だ。話は後にしろ」

「…わ、分かったよ」

 渋々エレベーター皆が乗り込むと、今度こそエレベーターのドアが閉まり下へと降下し始めた。そしてエレベーターは彼らを再び裁判場へと連れて行く。

 彼らにとって、最大の転機となる学級裁判の舞台へと。

 

 

 

 エレベーターの中にて霧切は何も知らない組の連中に戦刃むくろに関して説明を始めた。『超高校級の軍人』という肩書を持つ彼女の話に皆驚きを隠せずにいたが、一人江ノ島だけが無表情で俯いたまま話を聞いていた。それが終わると霧切もまた今回の事件の事の顛末について皆から説明を聞いていた。

 そんな中、一通り説明を終えた霧切に苗木が近づいて話しかける。

 

「…霧切さん、無事で良かった…」

「…ええ、苗木君のおかげで特に妨害もなく調査できたわ。そっちはなにかあった…?」

「へ?い、いや別に…」

「……嘘ね」

「…はい。実は昨晩黒幕から暗殺されかけたんだ…」

「ッ!?…大丈夫だったの?」

「ああ、江ノ島さんが助けてくれたから怪我はなかったよ。…それで、朝起きたらモノクマが機能停止してて…」

「今回の事件に繋がった…という訳ね。…作為的すぎるわね」

「ああ、何が目的なのか…。…そういえば霧切さん、あの鍵は何処の鍵だったの?」

「…あれは何処の鍵でもあったのよ」

「へ?」

「あの鍵は学園内の全ての鍵を開けることができる…つまりマスターキーだったのよ。私はそれで寄宿舎二階に忍び込んで、そこでずっと調査をしていたの」

「そうだったのか…。それで、何か分かった?」

「…それは終わってから話すわ。もう時間みたいだから…」

 霧切がそう言うと共にエレベーターが止まり、扉が開いた先にはいつもの学級裁判場が広がっていた。

 

「さて…いよいよ始まりますなあ」

「…どうした?やけに感傷的じゃあないか?いい加減貴様にも良心の呵責とやらが芽生えてきたか?」

「まさか!僕にそんなものは必要ないよ。…ただ今回はいつもとはちょっと意味合いが違うからね」

「どういう意味?」

「まあまあ、まずは席について!…場合によってはこれが『最後』の学級裁判になるかもしれないからね!」

「ッ!?お、おい!そりゃあそう言う意味だべッ!?」

「そのうち分かるよ。さあさあ!早く始めよう!ハリーアップ、ハリーアップ!」

「な、なんなのよ…?」

 いつもとは様子の違うモノクマに戸惑いながらも各自席へと向かう。霧切もまた席へと向かおうとした時、横を通りすがった苗木がぽつりと耳元で囁く。

 

「…霧切さん、いざとなったら僕の事は気にしないで」

「ッ!?…苗木君?」

 彼女の戸惑いの問いに答えることなく、苗木は何事もなかったかのように席に着く。そんな彼を訝しげに見つめながらも、霧切もまた席に着き、全員が所定の位置についた。

 

「えー…、ではでは!始めましょう!戦刃むくろを殺した犯人は誰なのか?ここで全滅なんてことにならないよう、皆さん知恵を絞ってお考えください!ではお待ちかね、学級裁判、開廷―ッ!!」

 

 

 

 

 そしていよいよ始まった。

 

 

 

 

 

 終わりの始まりとなる、学級裁判が。

 




今回ここまで。モンハン4Gのせいでまた筆が遅くなるお…
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