七つの感情ストラトス   作:銀の巨人

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錬金術の等価交換と三大理論

一夏の錬金術に対する楽観的な考えに怒りの片鱗を見せたノアだが千冬の言葉で落ち着いて今、錬金術について説明しようとする。

 

ノア「では錬金術を説明します。錬金術は決して魔法とか万能の力ではありません錬金術は『科学』です」

 

千冬「科学・・・だと?」

 

ノア「はい、科学です。この中の人達の何人かには説明しましたが改めて説明します。錬金術を使うには『錬成陣』と基本の『等価交換』と『三大理論』を理解しなければなりません」

 

一夏「等価・・交換?三大・・理論?」

 

ノア「錬金術はまず基本の等価交換それは、無から物質を作り出したり、性質の違う物を作り出すことは不可能だと言われています。つまり何も無い所から剣や盾などを作る事は不可能と言う事です。更に車を錬金術で修理しても性能はそのままの車しか出来ない、それが等価交換です」

 

千冬「成る程、つまりは仮に車を修理しても同じ車しか出来ず高級車に変える事等は不可能と言う訳か」

 

ノア「大体はその通りです。そして僕達、錬金術師は等価交換である言葉を心掛けてます」

 

シャルル「ある言葉?ノアそれは何?」

 

ノア「ーーー人は何かの犠牲なしに何も得ることは出来ない。何かを得るためには、同等の代価が必要となる。それが、錬金術における等価交換の原則・・・この言葉を僕達、錬金術師はいつも心掛けて錬金術を使ってます」

 

シャルル「・・・」

 

千冬「・・・」

 

一夏「・・・」

 

『・・・』

 

エマ『・・・』

 

ノアの心掛けに誰も口を出す事は出来なかった。ただノア自身も父からそれが全てでは無いと教えられてるから盲信はしていない。ただ人間社会で生きるならこの言葉が必要不可欠になる事は心得てる。

 

ノア「続き良いですか?」

 

千冬「あ、あぁ、頼む」

 

ノア「次は錬金術の三大理論について、錬金術とは理解・分解・再構築の三つで成り立ってます。原材料となる物が必要であり、その物質の構成元素や特性を理解し、物質を分解、そして再構築するという3つの段階を経て完了します」

 

千冬「・・・」

 

ノア「ただし、構築式に誤りがあったり、対価以上の物を錬成しようとすると失敗し、時にリバウンドと呼ばれる現象が起きます。リバウンドが起きると術者に多大なダメージを及ぼします」

 

鈴「ノア一つ聞いて良い?」

 

ノア「何?鈴」

 

鈴「その多大なダメージてどんなの?」

 

ノア「・・・簡単に言えば最悪死ぬ事になる」

 

鈴「!!!?し、死ぬ!!!」

 

千冬「!!!?」

 

一夏「!!!?」

 

『!!!?』

 

ラウラ「・・・」

 

錬金術の説明でノアの死ぬの事で全員が驚いたがラウラだけは驚かずノアをジッと見つめていた。

 

千冬「エルリック!!!お前やマスタングはそんな危ない事をしてたのか!!!?」

 

ノア「落ち着いて下さい織斑先生。だから僕ら錬金術師は全て理解した上でこの高度な仕組みや理論に基づき安全に使用してます。それに学べば誰でも使えるという物ではなありません。仮に使えても術者の力量による面が大きく、高度な術式を使える者は多くありません。それこそ国家錬金術師クラスでないと」

 

千冬「・・・そうか」

 

ノア「だから安心して大丈夫だよ、鈴」

 

鈴「えぇ・・・よかった」

 

ノア「では次に錬成陣です。円の中に文字が描かれた物です。魔法陣の様にも見えますが描かれて文字は構築式でその上に材料を置いてエネルギーを流す事で錬金術が使えます」

 

千冬「錬成陣とはどんな物だ?」

 

ノア「織斑の着けてるグローブの掌を見て下さい」

 

千冬「一夏、掌を見せろ・・・成る程これが錬成陣か。ん?エルリック何故左右とも違う錬成陣で描かれてるんだ?」

 

ノア「それがそのグローブの特徴です。その錬成陣は二つ合わさる事で円を作る為だけの錬成陣です」

 

千冬「円だけだと!?」

 

一夏「千冬ねぇ!!・・織斑先生何を驚いてるのですか?」

 

千冬「馬鹿者!気づかないか!円はあるが構築式が無いと言う事が簡単に言えば本自体あるが中身が真っ白と言う事だ!」

 

一夏「!!!」

 

『え〜!!!』

 

千冬はシンザスアルケミストグローブの特性に気づいたが他の者達は気付かず千冬の言葉で驚愕し、声を上げた。

 

セシリア「で、ではノアさん!構築式は何処に!」

 

ノア「それは〝此処〟だよ」

 

セシリア「頭?・・・あっ!記憶の中!!」

 

ノア「その通りだよセシリア、このグローブ、シンザスアルケミストグローブは両掌の錬成陣を手合わせで合成して円を作り記憶にある構築式で錬金術を使う事が出来るんだ」

 

千冬「つまり、シールドバリアの修復や戦闘で使った錬金術も全部、記憶してある構築式で使ったと言う事か」

 

ノア「はい、その通りです。しかし欠点があるとすれば自分の知らない物質や構築式には錬金術が使えないと欠点があります」

 

鈴「それなら、この馬鹿が使え無いのは当然ね。こいつの事だからどうせ魔法のようにノアの使った剣を出せとか壁を出せとかしか考えず、そういった構築式を考えないでに使ってただろうしね」

 

一夏「ぐっ!!」

 

ノア「それもあるけど、それ以前に織斑は根本的に錬金術使えない、いや織斑だけで無く此処いる″ほぼ全員″が錬金術を使え無い」

 

『!!!』

 

エマ『まぁ、お兄ちゃんの言う通りだね・・・』

 

ノアの発言でエマ以外の全員が驚愕した。

 

千冬「・・・それは何故だエルリック」

 

ノア「確かに構築式の知識、それこそ通常の錬金術師で日本で言えば名門大学研究員並の知識がいります。国家錬金術師ならノーベル賞を取った博士や教授並の知識がいります」

 

『!!!』

 

一夏「な、何だよそれ・・・」

 

千冬「確かに・・・一夏にそれ程の頭脳があるのかと言ったら嘘になるが」

 

一夏「・・・・」

 

ノアの錬金術師が最低どのくらいの知識が必要か全員聞いて驚愕し、それは無理と納得した。千冬も今までの一夏の成績を知ってるので納得しそれを聞いた一夏は落ち込んだ。

 

ノア「それとは別に根本的に駄目な理由ですが僕も何故か分かりませんが錬金術を使えるのはアメストリス人とシンの人間またはその血縁者だけなのです」

 

千冬「何!?」

 

『えっ!!!?』

 

一夏「な、何だと・・・」

 

ノア「確か昔はアメストリスの西のクレタと言う国と南のアエルゴと北のドラクマ現在はロシアですが、そのアメストリス周辺の国も使えたのですが・・・」

 

千冬「今では使えるのはアメストリスとシンの人間もしくは血縁者と言う訳か・・・確かに日本人である我々は根本的に錬金術が使えない」

 

ノア「と言っても先程話した様にいくら使える可能性があっても誰もかれもが使える訳でありません」

 

『なるほど』

 

一夏「・・・」

 

ノア説明で何故自分達が錬金術を根本的に使え無いのか全員納得したが一夏だけは納得できなかった。その時・・・

 

セシリア「ノアさん、それならエマさんは?」

 

鈴「そうね、付き合いは短いけどエマなら錬金術を使えても可笑しく無いわね」

 

ノア「・・・それは!『良いよお兄ちゃん私から話すよ』エマ・・・」

 

エマ『大丈夫だよお兄ちゃん♪私は私だから♪』

 

セシリアと鈴にエマも錬金術を使えるのか聞かされてノアは二人を止めようとしたがエマがインカムのスピーカーから声を出して自分の口から言うとノアに言った。

 

エマ『じゃあ答えますね。私は錬金術を使う事ができません!錬金術の才能がありませんでした!』

 

セシリア&鈴「!!!」

 

『!!!』

 

一夏「・・・使えないのか・・・」

 

千冬「・・・」

 

エマの発言に全員が驚いたが一夏だけは何か考えた。それを千冬は見逃さなかった。

 

セシリア「エマさん・・・その、ごめんなさい!!」

 

鈴「エマごめん!本当にごめんなさい!!」

 

エマ『気にしないで下さい。確かに私は錬金術を使えませんが機械に強いですし医療に関してもお兄ちゃん以上の知識と技術があるので私は私、錬金術師で国家代表候補生のお兄ちゃんを全力でサポートするだけです♪』

 

ノア「・・・エマ何時もありがとう」

 

エマ『ッ!!お兄ちゃん・・・後で・・』

 

ノア「大丈夫エマ分かってるから」

 

エマ『うん、じゃあまた後で』ブツ!

 

エマの言葉を聞いたセシリアと鈴は直ぐに謝罪したがエマは気にせず自分に自信を持ってたがノアの感謝の言葉で何かが触れて兄妹でしかわからない会話をして通信を切った。

 

ノア「と、言った理由で織斑には錬金術が使えません。時間も経ってるのでセシリアと鈴を保健室に連れて行きたいのですが他に何かありますか?」

 

千冬「いや、大丈夫だ。時間を取らせて悪かったなエルリック」

 

ノア「いえ、大丈夫ですよ織斑先生。あ!それと・・・織斑、シンザスアルケミストグローブを返せ」

 

一夏「!?な、何で返さない無いといけないんだよ!!」

 

ノア「僕の話を聞いていなかったのか?お前には根本的に錬金術が使え無い。それにいくら作れると言っても普通に考えて研究成果をそのまま他国の人間に本気で渡す訳ないだろ、だから返せ」

 

一夏「・・・嫌だ!これはお前には持ったいない!!」

 

千冬「一夏!!!」

 

ノア「ーーハァ〜仕方ない」ゴソッ

 

『!!!』

 

一夏「なっ!」

 

千冬「もう一つ・・あったのか」

 

話しが終わりノアはグローブの返還を一夏に求めたが一夏は拒否した。千冬に怒鳴られても一夏は返さなかったのでノアは溜息を吐きコートの内側から予備のシンザスアルケミストグローブを出して両手につけた。

 

ノア「返さないなら」パン!!

 

一夏「ッ!?な、何だよこれ!!」

 

ノアは錬金術で地面から一夏を土で作られた十字架でキリストの様に拘束した。

 

千冬「エルリック!何を「黙って見てて下さい織斑先生!大丈夫です危害を与えませんから」・・・」

 

千冬はノアを止めようとしたがノアに言葉を黙殺されて成り行きを見守る事しかできなかった。

 

一夏「くっ〜くそ〜離せ!」

 

ノア「ーー全くお前は本当に救いようが無いな」

 

一夏「なっ!!!」

 

黙って聞け

 

一夏「!!!?」

 

一夏は拘束から出ようとするが白式のシールドエネルギーが切れてる為、白式を展開できず拘束から抜け出せなかった。そうこうしてる内にノアは一夏に近づいて文句を言う、それに対して一夏は反論しようとするがノアの威圧一言で黙った。

 

ノア「お前が馬鹿にした僕の父、エドワード・エルリック、鋼の錬金術師は僅か12歳でアメストリス歴史上最年少で国家錬金術師の資格を取ったこれにはアメストリスの学校の教科書にも載ってる程だ」

 

一夏「!!!」

 

千冬「!!!」

 

『えっ!?エエェーーー〜!!!』

 

ノア「僕も15で国家資格を取ったが父さんの時は当時の国家錬金術師試験には年齢制限がなかったから12歳で国家錬金術師の試験を受ける事ができた。現在の国家錬金術師試験の年齢制限は″15歳″からだ」

 

一夏「!?なっな!!!」

 

ノア「分かったか、僕は新たに年齢制限された国家錬金術師試験に最年少で合格してるんだ!それ位の知識と力もある!それを錬金術の業も覚悟も無い奴が錬金術を語るな!」パン!!

 

一夏「て、手袋が!!!」

 

ノアは手合わせ錬成して一夏のつけてるシンザスアルケミストグローブをそれぞれ人差し指を付けてグローブを分解した。

 

ノア「お前にこの力を持つ資格は無い!!!」

 

一夏「・・・」

 

ノア「・・・織斑先生問題ありましたか?」

 

千冬「・・・いや、問題・・無い・・」

 

ノア「・・・そうですか、分かりました。後このままアリーナの中も修繕します。そのついでに織斑の拘束も解きます」パン!!

 

千冬「何!?」

 

『!!!』

 

千冬「あっ・・・」

 

セシリア「これは・・・」

 

鈴「なんて言うか・・・」

 

シャルル「凄すぎる・・・」

 

ラウラ(国家錬金術師か・・・凄まじすぎるな)

 

一夏「嘘・・だろ・・・」

 

一夏に断言したノアは千冬と話をしてからボロボロになって流れ弾で壁が破損したりクレーターやら穴が空いたりしたアリーナの中を錬金術で全て修復した。そのついでに一夏の拘束も解いた。その光景に誰もが唖然とした。

 

ノア「・・・フゥ〜終わった(どうやら前にエマの頼みで長時間錬金術を使ったからその甲斐があってこれだけ錬金術を使う事ができるようになったみたいだ)では織斑先生、セシリアと鈴を保健室に連れて行きます」

 

千冬「あ、あぁ・・分かった御苦労だった」

 

ノア「はい、じゃあシャルル手伝って」

 

シャルル「う、うん!分かったよノア!」

 

そして、ノアはシャルルに手伝ってもらいセシリアと鈴を支えたりして保健室に向かった。

 

『・・・・・』

 

千冬「何をしてる!お前達も早く解散しろ!!」

 

ノアの話を聞いた生徒達は呆然としたが千冬の怒鳴り声を聞いて急いでその場から解散した。そして千冬はショックを受けてる一夏を引きずりながらラウラと一緒に指導室に向かって行った。

 


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