七つの感情ストラトス   作:銀の巨人

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ノアの目的 後編

学園寮ノアの自室

 

 

 

ノアの部屋に来たエマは夕食を食べていた。だがエマは前から気になっていたノアに対する疑問をノアに直接聞いた。ノアは観念してエマに話す事に決めた。

 

ノア「エマ、確かに僕はある目的でこの学園に来た。本当は国家錬金術師になってから父さんと旅をしながら探そうとしてたんだ。僕がISを動かせなかったらこの学園に来る機会は無かった・・・」

 

エマ「お兄ちゃんの目的ってもしかして国家錬金術師になる前からなの?それって何?」

 

ノア「・・・・・僕達の父、エドワード・エルリックの″錬金術の力を取り戻す″方法を探す・・・これが僕の目的だ」

 

エマ「・・・」

 

ノア「・・・驚かないんだ」

 

エマ「そんな事無いけど・・・でもお兄ちゃんだったら何故か納得できる・・・」

 

ノアの目的それは実の父親である鋼の錬金術師エドワード・エルリックの錬金術の力を取り戻す方法を探す為だった。それを聞いたエマは内心驚いていたが自分の兄の考えそうな事だと納得もできていた。

 

ノア「この目的を決めたのは三年前エマが修行に出た日の夜からなんだ・・・」

 

エマ「あの日の夜?」

 

ノア「あぁ・・・」

 

 

 

〜三年前、アメストリス国東部リゼンブール、エルリック家、夜〜

 

 

 

エマが旅立ちノアは自室のベッドで1人眠っていた、だがエマが居なくなりいつもと違う環境のせいか中々寝付け無かった。

 

ノア「・・・んん〜あぁ〜〜!・・・あの日からエマと一緒に寝るのが基本になってから眠れないなぁ・・・」

 

目が覚めてしまい喉が渇いていたので水を飲みに部屋を出てついでにトイレに行った。

 

ノア「それにしてもシン国から流れた日本製のトイレ凄いなぁ〜正に目から鱗だね。さて、部屋にもど・・ん?明かりが漏れてる・・あの部屋は確か父さんの執務室の筈・・・」

 

部屋に戻ろうとしたノアはエドの仕事部屋から光が漏れてるのに気付いた。

 

ノア「・・・一体何をやってるんだろ・・少し覗いて見よう・・・」

 

子供故に好奇心には逆らえずノアはゆっくり近付き隙間から中を覗いた。

 

アル「兄さん!今度こそ上手く行く筈だからこれを!試して見て!」

 

エド「エマの旅立ちの日にこっちに帰って来たと思えば・・だからアル・・・もう何百回も言ってるだろ、出来ないって!」

 

アル「やって見ないと分からないだろ!僕はシンに行って気を読むと練丹術を覚えて錬金術の新たな可能性を見つけたんだ!それに兄さんも気を読む事が出来る様になったじゃないか!!」

 

隙間の奥にはエドとアルが何か話し合い口論になっていた。

 

ノア「(一体・・父さんと叔父さんは何を話してるだろ?)」

 

アル「今度こそ・・今度こそ上手く行くよ!だから・・兄さん・・・」

 

エド「・・・分かった!・・やって見よう・・」

 

アル「ハッ!兄さん!・・「静かにしろ〜ノアが寝てるんだぞ〜」あっご、ごめんない・・」

 

ノア「(・・僕、今起きて絶賛覗いてるんだけど・・・)」

 

アルの必死に呼びかけてに遂に折れたエドは何かをやる事に了承した。2人はそれに集中し過ぎて覗いてるノアに気付かなかった。

 

アル「・・・良し!これで描けた・・」

 

エド「これが?例の錬成陣か?」

 

アル「うん!スカーさん・・老師の錬金術と錬丹術を合わせたハイブリットの構築式を参考に作った新たな錬成陣・・兄さん気の流れは読める?」

 

エド「・・あぁ、大丈夫だ。俺は何時でも良いぜ!」

 

アル「じゃあ・・やってみて」

 

エド「行くぜ!」パン!!

 

アルは床に何かの錬成陣を描き終えエドに準備は良いかと聞いてエドも準備万端だと答えアルからのGoサインでエドは両手を合わせて地面に着けた。

 

アル「・・・」

 

エド「・・・」

 

ノア「(父さんが・・錬金術!?・・でも・・)」

 

エド「・・・やっぱり・・何も起こらないか・・・」

 

アル「そ、そんな・・これでも・・駄目なんて・・・兄さんごめんなさい・・・」

 

エド「気にするなアル・・お前は俺の為に錬金術がまた使えるようにやってくれたんだろ?だから気にするなって!」

 

アル「・・・兄さん」

 

ノア「(!!どういう事!?・・確かに父さんの口から錬金術を使えなくなったって言ってた筈だけど・・・)」

 

エド「何度も話たけど俺はあの時、お前を取り戻す為に錬金術の根本の力を代価にしたんだ。だからいくら性質が違う錬丹術でも系統は錬金術と同じなんだ、だから俺は使う事が出来ないんだ・・・」

 

ノア「(えっ!?そんな事聞いて無いよ!じゃあ父さんが錬金術が使えなくなった原因って、もしかして・・・!!)」

 

アル「・・・分かってる、何度聞いてるから・・・でも、僕自身は今でも後悔してるんだ・・・」

 

エド「・・・」

 

アル「兄さんは僕を助ける為に錬金術を代価にして助けてくれた・・僕は・・・兄さんがやって来てくれて凄く嬉しかった!でも・・兄さんは自分で気づいて無いかもしれないけど、僕や他の人、特にノア君が錬金術を使うと・・・寂しそうな顔をする時があるんだよ」

 

エド「・・・」

 

ノア「(!?父さんが・・・でも確かに父さんは褒めてくれるけど・・・暗い感じもした・・)」

 

アルの口から語られた内容は驚愕の事ばかりだった。それをエドは黙って聞き、ノアは驚いたが自分が錬金術をした後、エドは褒めてくれるが何か違和感も感じるのに気付いてたから納得が出来た。

 

アル「その顔を見てしまうと・・僕は辛いんだ!!」

 

エド「・・・全くお前は・・・」

 

アル「兄さん・・・」

 

エド「アル、俺にとって錬金術よりも家族が大事なんだ。錬金術はあくまでも手段、それと掛け替えのないたった一人の弟を選ぶならお前を選ぶ・・・分かってくれるだろ?」

 

アル「・・・」

 

エド「そんな顔を無意識にしてたのは俺も驚いたが、今の俺は妻が居て2人の子供にも恵まれた・・俺は今でも十分に幸せだぞアル・・・」

 

アル「・・・兄さん・・ありがとう・・ありがとう・・・」

 

ノア「(・・・部屋に戻ろう)」

 

アルの告白を聞いたエドは自分の本心をアルな話し、後悔はないと語りアルは涙を流しながらエドにお礼の言葉を述べた。それを見たノアは静かに自室のベッドに戻った。

 

ノア「・・・」

 

自室に戻ってベッドに座ったノアはある事を考えていた。

 

ノア「・・・エマだけじゃ・・無かったんだ・・・父さんも錬金術が使えない事が辛いんだ・・・父さんの言ってる事は本心だって僕でも分かる・・・でもやっぱり辛い事は捨てきれないんだ・・・」

 

ノアは先程のエドの本心を語った時の顔を見て、エドは気にしてないと言ってるが無理してるのに気付いた。

 

ノア「・・・決めた!・・僕は国家錬金術師になって、もっといろんな錬金術を覚えて、必ず父さんの錬金術の力を取り戻す方法を探す!それまでは″僕のあの夢″は封印だ・・・」

 

こうしてノアはエドの錬金術の力を取り戻す決意をして1ヶ月後あの運命の錬金術をした。

 

 

 

〜現在 学園寮ノアの自室〜

 

 

 

ノア「これが僕の目的だ」

 

エマ「・・・私が修行で旅立った日の後にそんな事があったんだ・・・」

 

ノア「それから僕はホムンクスを身体に宿し、三年の修行して国家錬金術師になりISを動かして、今此処にいる」

 

ノアの口から語れた内容はエマの想像絶する内容だった為、僅かな事しか言えなかった。

 

エマ「でも、お兄ちゃん何でISなの?」

 

ノア「僕が国家代表候補選手に任命されて訓練をしてた時、アル叔父さんからISの座学を教えられたんだ。エマにも話したし、知ってると思うけどISには意思があり自己学習プログラムがある」

 

エマ「確かにあるけど・・・あっ!」

 

ノア「そう、僕はそこに目を付けた。更に織斑が使う《零落白夜》は人よって様々な力が発源する単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)、もしこれが錬金術の能力が使える力が発現したら!」

 

エマ「確かにお兄ちゃんの考え通りならISを中継に錬金術が使える。でもそれには問題が一つ」

 

ノア「だから国家錬金術師になった僕の研究テーマだよエマ」

 

エマ「!!」

 

ノア「僕の研究で錬金術と合わせる研究と平行に僕や織班以外の男性にもISが使える様に研究すれば!」

 

エマ「お父さんもまた錬金術が使えようになるかも知れない!でもそれは雲を掴むような話しだよ失敗の方が・・」

 

ノア「分かってる、でももう決めたんだ!僕は必ず父さんの錬金術の力を取り戻す!」

 

エマ「・・・ハァ〜全くこの馬鹿兄は・・・」

 

ノア「エマ?」

 

エマ「お兄ちゃん1人でやったって無謀過ぎるし無理だよ。人間1人の力と言うのはたかが知れてるんだよ」

 

ノア「・・・それでも・・僕は「だけど!」・・」

 

エマ「2人ならどんな事でも超えられる筈」

 

ノア「お前・・まさか!」

 

エマ「私も手伝うよお兄ちゃん♪私とお兄ちゃん2人ならどんな事でもやれる!」

 

ノア「エマ・・・」

 

エマ「私とお兄ちゃんが揃えば無敵だよ♪」

 

ノア「・・・フッ、宜しく頼む!エマ・・」

 

エマ「うん♪宜しくねお兄ちゃん!」

 

エマにISの可能性でエドの錬金術の力が取り戻せる可能性があると言ったノア。それを聞いたエマはノアだけでは無理と言い、ノアはそれに反論するのがエマは自分も手伝えば出来ると良い、一緒にやる事を決めてエマも笑顔で答えた。

 

ノア「ん?何だ?・・・大総統からの連絡だ」

 

エマ「あっ!お兄ちゃん応答には今日渡したインカムを使って!あれには盗聴防止もあるから!」

 

ノア「分かった」

 

突然ノアの携帯から来たロイ・マスタング大総統の連絡。ノアは出ようとしたがエマからインカムを使うように言われ、ノアもそれに頷いて答えた。

 

ノア「はい、エルリックです」

 

ロイ「ノア・エルリック、私だ」

 

ノア「こんばんは、大総統閣下」

 

ロイ「今、此方は昼なのだが」

 

ノア「・・・大総統、日本とアメストリスの時差はおよそ5時間ですよ・・」

 

ロイ「おや、そうだったなフハハハハっ!」

 

ノア「(このクソ大総統!そのすかし顔殴りたい・・・!)」

 

インカムでロイと連絡するノアはロイにからかわれ、怒りを抑えながら連絡した。それを見たエマは苦笑いしていた。

 

ロイ「さて、冗談はここまでにして本題だが以前、貴様が頼んだデュノア社の件だが」

 

ノア「はい、どうだったんですか?」

 

ロイ「調べた結果だが・・・・・・・・・と言う事だ」

 

ノア「!?じゃあシャルルは・・・」

 

ロイ「そうだノア・エルリック、貴様の考えてる通りだ」

 

ノア「くっ・・・(分かってはいたが、まさかここまでの大規模の話だとは・・)」

 

ロイから連絡は以前ノアが代価を払って依頼したデュノア社についての調べだった。その内容はかなり驚くべき事でその規模はノアの力を使っても困難な事だった。

 

ロイ「・・・ノア・エルリック、この件は後は我々が引き継ごう」

 

ノア「・・えっ?何故ですか大総統!」

 

ロイ「実はこの件を私の部下が直接フランスで調べてた時、フランス政府の者が接触して来たのだ」

 

ノア「フランス政府が・・・」

 

ロイ「その時の内容が非常に興味深い内容で、我が国にとってかなりの利益になる内容だったのだ。それなら貴様より我々が動いた方が良いと判断したのだ。どうする?」

 

ノア「・・・すみません。僕の力ではどうにも出来ません・・・お願いします」

 

ロイ「・・・よかろう!では結果については数日後のIS学園のトーナメントの日、私も来日するその時に話そう」

 

ノア「はい・・・分かりました」

 

ロイ「では失礼する」

 

ノア「・・ハァ〜・・・僕も織斑の事、言えないな・・・」

 

ノアが思案する中、シャルルの件はロイ達が引き継ぐと持ち掛けて来た。それにノアは驚くが理由を聞くとフランス政府の者が接触して来て、その時の内容がアメストリスに多大な利益ををもたらす内容だった為、その理由なら国が動く事になったようだ。喜ばしい事の筈だがノアは自分の無力に落ち込んでいた。それも分かった上で後の事は全てロイ達に任せた。連絡が終わるとノアは自分も一夏と何も変わらないと思い自己嫌悪した。

 

エマ「そんな事ないよ!だってお兄ちゃんはデュノアさんの・・・″彼女″の為に自分の出来る事をしたじゃない!あの男は自分のプライドを優先した!お兄ちゃんとは全く違う!・・・だから、自分を責めないで・・」

 

ノア「エマ・・・」

 

そんなノアをエマは否定した。ノアは自分の出来る力を全て使い彼女を助けようと頑張って動いた。一夏の場合は言葉だけで何もしてないそんな一夏とノアを比べるのは違うと言った。それを聞いたノアは少し心に余裕ができた。

 

ノア「ありがとう・・・って、エマ!?シャルルが女って事気づいてた!?」

 

エマ「え?最初から気づいてたよ?」

 

ノア「何で!?それだけじゃなく織斑の行動の事も!?」

 

エマ「それはあの男の日々の行動を見たら直ぐに分かるよ。それにデュノアさんの事はもっと簡単だよ?」

 

ノア「何?」

 

エマ「お兄ちゃん・・私、医者でもあるんだよ。え?忘れてた?」

 

ノア「あっ!(そうだった、普通に考えたら分かる事だった!!)」

 

ノアはお礼を言った後、何故エマが知ってるのか気付きエマに聞くとエマが医者でもある事を忘れていた。

 

ノア「あ、エマ・・シャルルのことは・・」

 

エマ「心配しないでお兄ちゃん、私は誰にも言わないよ」

 

ノア「ありがとう、エ・・「但し!」・・?」

 

エマ「条件として、今日此処に泊まっても良い?♪」

 

ノア「・・・好きにしろ・・・」

 

ノアはエマにシャルルの事は内緒にして欲しいと頼もうとしてエマはあっさり了承したが条件としてエマは今日、ノアの部屋に泊まりたいとノアに聞いた。いつのまにか用意したお泊りセットが入ってるボストンバッグを持って、ノアも疲れた声で了承した。

 

エマ「やったー!お兄ちゃん大好き♪」

 

ノア「どういたしまして・・・」

 

ノアは正面からエマに抱きつかれて強く抱きしめられた。

 

エマ「あっ!そうだ、お兄ちゃん!トーナメント当日に整備室に来てね♪」

 

ノア「何でだ?」

 

エマ「お兄ちゃんの専用機の改修作業終わったんだよ!」

 

ノア「そうか!終わったのか!でも何でトーナメント当日なんだ?」

 

エマ「ンフフフッそれは・・・サプライズだよ♪」

 

ノア「・・・(サプライズってエマ何を企んでいるんだ・・全くこの妹は・・・)」

 

そんなノアを尻目にエマはノアの機体が改修が終わった事を思い出してトーナメント当日に来る様に話した。それを聞いたノアは機体が戻って来ると喜ぶ反面、何故トーナメント当日なのかエマに聞くとエマは一度離して、ノアの顔を見て笑顔でサプライズと答えた。


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