七つの感情ストラトス   作:銀の巨人

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あけましておめでとうございます


銀の決意

保険室

 

 

 

ラウラ「・・ううっ・・・」

 

保険室に運び込まれた彼女やっと意識をとり戻した。

 

ラウラ「(白い・・天井)・・此処は・・何処だ?」

 

千冬「目を覚ましたか?」

 

ラウラ「きょ、教官・・一体・・何が?・・ぐっ!?(何だ?・・体が・・)」

 

千冬「お前の体は全身に無理な負荷が掛かった事で筋肉疲労と打撲がある。・・暫くは安静にしていろ」

 

ラウラ「っ・・何が・・起きたのですか?」

 

ラウラは千冬の言葉を聞いて激痛の走る体を無視して無理矢理上半身を起こした。

 

千冬「・・一応重要案件で機密事項何だが・・お前は知ってもいいだろう・・」

 

ラウラの疑問を千冬の口からゆっくりと話し始めた。

 

千冬「【VTシステム】は知ってるな?」

 

ラウラ「はい、【ヴァルキリー・トレース・システム】・・過去のIS操縦者の動きをトレースするシステムですよね?」

 

千冬「そうだ、IS条約で研究、開発、使用の全てが禁止されているシステムだ。それがお前のISに積まれていた」

 

ラウラ「そ、そんな・・」

 

ラウラは言葉が出なかった。そんな違法システムがラウラの機体に積まれていたなんて彼女は知らなかったからだ。

 

千冬「調べたら巧妙に隠されていてな。機体のダメージ、操縦者の精神状態、願望等の条件が揃うと発動するようになっていた」

 

ラウラ「・・・あの時私が望んだから・・発動したんですね・・」

 

千冬「そう言う事だ・・唯、お前の機体の【VTシステム】は通常の物とは大きく違っていた事を除けばな・・」

 

ラウラ「えっ?・・どういう事ですか?」

 

千冬「エルリックがお前を助け出す事はやってくれた・・だが問題はその後だ・・」

 

ラウラ「!?(思い出した!アイツが私を助けてくれた!だが・・その後と言うのは、一体・・)」

 

千冬「お前を引きずり出した後、抜け殻になりボロボロに崩れたお前の変化した機体が元の変化した姿に戻り勝手に動き出してな」

 

ラウラ「えっ!?」

 

千冬「更にその数を30体にまで増やし通信センサー類を妨害し破損しても再生する機能を持ってた」

 

ラウラ「(何だそれは・・そんなの見た事も無いし、聞いた事も無い!?)」

 

千冬から口から出た話にラウラは一気に混乱した。その後無人機となったラウラの機体はノアとシャルルの働きにより倒されたと千冬から教えて貰った。(ロイの件は本人の希望により伏せられた)

 

千冬「・・と言う事だ。その後、エルリックとデュノアは力尽きて倒れてな、今は軽い事情聴取をして寮で休んでる」

 

ラウラ「・・教官・・何故アイツはそこまでしてくれたんですか・・私は以前、生身のアイツに銃を向け軍人紛いと馬鹿にしました・・トーナメント前にも私は都合の良い事にパートナーになる様頼みました・・そんな私を、何故助けてくれたんですか・・」

 

千冬「・・奴は・・エルリックは本当の意味で誰よりも優しいのだ」

 

ラウラ「優しい・・たったそれだけの理由で?」

 

千冬「お前も知っての通り奴は国家錬金術師だ。国家錬金術師は国家に服従して研究を進め、その見返りとして莫大な研究資金と軍で少佐相当の地位そして様々な特権を与えられる。だが戦争時は強制的に人間兵器として戦場に駆り出され、敵を殺さねばならない。これは軍人であるお前も知ってるな?」

 

千冬はロイから聞いた国家錬金術師についてラウラに話した。

 

ラウラ「はい」

 

千冬「人間兵器・・私の知り合いにも国家錬金術師がいる・・奴は軍の狗とし、本当は戦争もしたく無いし人を殺したくも無い優しい奴なんだ・・」

 

ラウラ「・・・」

 

千冬「だがそれをしなければ自分の大切な仲間や親しい者達が殺されてしまう・・奴は誰かの為に優しさを隠して例え、嫌われ者になっても自分を捨て無かった」

 

ラウラ「自分を捨て無かった・・」

 

千冬「エルリックもそうだ彼奴は隠してるが何かの目的でこの学園に来てる・・だがそれは自分の為で無く誰かの為だ。そう言う目をしてる」

 

ラウラ「ヤツが・・自分では無く誰かの為に・・」

 

千冬「それが彼奴らの自分である事の証明と強さだ。誰かに成るのでは無く誰かの為に例え自分が傷ついてもそれを通す覚悟と本当の優しさが彼奴らにある」

 

ラウラ「・・・」

 

千冬の話を聞いてラウラは考えてた。

 

千冬「ラウラ・ボーデヴィッヒ!!!」

 

ラウラ「はっ、はい!」

 

千冬「・・お前は誰だ?」

 

ラウラ「わ、私・・私は・・・」

 

千冬「誰でも無いのなら、お前はこれからラウラ・ボーデヴィッヒに成れ!」

 

千冬から誰でも無いならラウラに成れと言われた。

 

千冬「それから、お前は私には成れないぞ」

 

最後に千冬はそう言って保険室から退室した。

 

ラウラ「・・私は教官に成れないか・・そうだな・・その通りだ・・(そんな当たり前の事に今更気づくなんてな・・・)」

 

ラウラ「誰かに成ろうとしていた私が・・自分自身であり続ける事を信じてたアイツに最初から勝てる訳ないか・・(完敗だな・・ノア・エルリック・・だが・・私は憑き物が落ちた様に清々しい気分だった)」

 

ラウラ「軍人とかそれ以前に・・力も・・心にも・・私の負けだ・フフッ・・アハハハハハハッ!!」

 

ラウラは自分の中で完全に区切りが付いた。

 

ラウラ「まずはエルリックと・・後は織斑一夏に謝らないとな!フフッ♪気分が軽い・・何で私はあそこまで織斑一夏に拘ってたんだろうな?教官は教官、アイツはアイツなのにな・・まあいいか!もうアイツに絡む理由も無くなった事だしさっさと謝ってしまおう!!」

 

ラウラはまず自分が何をするかを決めたのだが、それと同時に一夏に対する今までの拘りや興味も消えてしまっていた。

 

ラウラ「後はクラスの全員にも謝る必要があるな!良し!まずはそこから始めよう!!その後はノア・エルリックに感謝を伝えないとな・・だが、只ありがとうと言うのもな・・良し!此処はアイツに連絡を・・」

 

確かにラウラはいい方向に変わったが変わり方がとんでも無い事になったのはまだノアも千冬ですら知らなかった。


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