大部屋では対福音の作戦会議が行われていた。
千冬「福音は現在も超音速飛行を続けている為偵察も出来ない。アプローチは1回が限界だろう」
シャル「チャンスは1回・・・それも出来るだけ早く倒せる様な攻撃・・・」
ラウラ「出来れば一撃必殺が望ましいが、やはり難しいな。まず標的に追いつける速度が出せるISである事は大前提だ。超高感度ハイパーセンサーも必要だろう」
意見を出し合うが中々纏まらないタイムリミットは刻一刻と迫って来ている。
シャル「現状専用機持ちの中で最高速度が出せる機体はセシリアのブルー・ティアーズだよね?」
セシリア「はい、ちょうど本国から強襲用高機動パッケージ『ストライク・ガンナー』が送られて来ていますし、超高感度ハイパーセンサーもついてます」
全てのISはパッケージと呼ばれる換装装備を持っている。
パッケージとは単純な武器だけでなく、追加アーマーや増設スラスターなどの装備一式を指しその種類は豊富で多岐にわたる。
中には専用機だけの機能特化専用パッケージ『オートクチュール』というものがある。
一夏「なぁ、俺の零落白夜なら行けるんじゃないか?」
一夏が初めて意見するが、もちろんそんなもの最初から分かっている。つまり敢えて出さなかった答えだ。
セシリア「確かに織斑さんの一撃なら”落とす事”自体は可能でしょう」
一夏「ならーー」
鈴「今回は前と違って人が乗ってるのよ?ってかあんたの実力じゃまず当たらないわよ」
一夏「そ、そんなのやってみなきゃわかんないだろ!」
鈴「いいえ、分かるわ。普段の行いを見れば一目瞭然よ。さっき織斑先生が言った通り、あんた信用無いのよ」
一夏「ぐっ・・・そんな事ねぇ!ノアに頼らずとも俺だけでやれる!」
束「うんうん!いい意気込みだねぇ、束さんは嬉しいよ!」
口論をしていた時、天井から束が登場する。その姿はまるで財宝を盗みに来た怪盗の様だ。
束「ちーちゃん、ちーちゃん!良い作戦が私の頭の中にナウ・プリンティング!」
千冬「・・・出て行け」
頭を押さえ、真耶につまみ出すよう指示するが束はするりと躱されてしまう。
束「聞いて、聞いて!ここは断・然!紅椿の出番だよ!」
千冬「なに?」
束の言葉に反応した千冬は束が見せて来た数枚のディスプレイに目を通す。
千冬「束、この展開装甲と言うのは何だ?」
束「説明しましょう!そうしましょう!展開装甲って言うのはね、この天才束さんが作った第四世代型ISの装備なのです!」
説明しながら中央の大型ディスプレイをハッキングし紅椿のデータを映し出す。
第四世代、と言う単語を聞いて全員が驚愕する。しかしそんな事もお構い無しに束の説明は続ける。
第一世代が『ISを完成』を目標とした機体。次の第二世代は『後ずけ武装による多様化』、第三世代は『操縦者のイメージ・インターフェイスを利用とした特殊兵器の実装』、空間圧作用兵器、BT兵器、AIC等が該当する。
そして第四世代というのが『パッケージ換装を必要としない万能機』らしい。
束「ーーこれが第四世代!いっくん分かったかな?先生は優秀な子が大好きです」
一夏「え、えぇーと・・・」
一夏が理解できないのも無理はない、専用機持ち達どころか教師陣も理解が追いついていない。
現状で第三世代の一号試験型ができた段階なのに束はそれを無視して第四世代を作り上げてしまったのだ。
束「因みに展開装甲は白式の《雪片弐型》にも採用されてまーす」
千冬以外「「「えッ!!!?」」」
流石に声を上げて驚く専用機持ちや千冬以外の教師陣。
零落白夜が発動すると開く雪片弐型の構成がまさかそれだったとは誰も予想出来なかった。それ故に不憫だ。操縦者がこのざまでは宝の持ち腐れだろうと、鈴やセシリア達は心の中でそう思った。
束「それで上手くいったのでなんとなく紅椿の全身アーマーを展開装甲にしてみたんだ~」
一夏「ちょ、ちょっと待ってください!全身?全身が雪片弐型と同じ!?そ、それって・・・」
束「うん、めちゃくちゃ強いね。まさに最強の機体!イエイ!」
千冬以外の部屋にいた全員がぽかんとしており開いた口が塞がらないようだ。
束「因みに紅椿の展開装甲はより発展したタイプで攻撃・防御・機動と用途に応じて切り替えが可能なのです!つまりこれが第四世代の完成体、
笑い飛ばす束の言葉に全員は沈黙で答えた。
世界各国が多額の資金や優秀な人材を揃え、寝る間も惜しんで他の企業と競い合っている第三世代型ISの開発を更に進めたISを完成させてしまったのだから無理もない。
千冬「束、言った筈だろう・・・やり過ぎるなと」
束「てへぺろ☆」
普段の千冬なら今のてへぺろで殴りかかるが流石にそんな気力は残っていなかった。
束「と言っても紅椿はまだ未完成、その性能を100%引き出してようやく完成する機体なので、箒ちゃんには今までよりもっと頑張ってもらいます!」
箒「・・・」
束の話しを聞いた箒は拳を握りしめ姉の期待に答えようと覚悟を決めた。
束「うんうん、その調子!っと、話しがだいぶ脱線しちゃったね。話しを福音に戻そうよ」
千冬「そうだな・・・現状最速で出撃できそうな者はオルコットと篠ノ之か・・・少し不安要素は残るが作戦は決まった」
専用機持ち達は再び集中し話を聞く体勢に入った。
千冬「まずオルコットと篠ノ之が福音に接触、足止めを行い、デュノア、ボーデヴィッヒ、鳳が遅れて2人と合流し福音の無力化。合流しだいオルコットと篠ノ之は戦線を離脱し周辺に被害が出ないよう警護しろ。ISにとって2キロ先等すぐそこだ。オルコットの場合は隙があれば援護射撃を加えろ。良いか必ず最低でも二対一の状況を意識しながら戦闘を行え。以上!」
因みに箒がすぐ戦線離脱する理由は専用機を手に入れてから日が浅い故に経験不足だからだ。
一夏「ちょっと待ってくれ!何で俺が入ってないんだ!?俺の零落白夜なら一撃で落とせるのに!」
編成に自分の名前が無かった事に納得出来なかった一夏は千冬に詰め寄る。
千冬「何度も言っているがお前は信用が足りない。加えて実力も不足している。これが訓練ならば成長させる場として参加させるがこれは遊びじゃない、実戦だ。だからお前を参加させる訳にはいかない」
一夏「そんなの納得出来るかよ!「一夏ッ!!」・・・千冬姉・・・」
千冬「・・・お前が参加しても他の者の邪魔になるだけだ!」
出来れば言いたくはなかったと千冬は思うが、これが一夏の為だと信じここは敢えて身を引かせる。最愛の弟をわざわざ戦地に向かわせたくないが為に千冬に心を鬼にする。
一夏「・・・くっ!」
箒「あ、一夏!」
逃げるように部屋から出て行く一夏を箒が呼び止めようと声を出したが、その声は一夏に届く事は無かった。
千冬「・・・作戦会議は以上だ。各自準備に取り掛かれ!特にオルコットはパッケージの量子変換を手の空いた者は手伝ってやれ!ではーー「待ってください!」お前は・・・」
勢いよく襖を開けて駆け込んで来たのは、この作戦から離脱した筈のノアだった。当然その事に皆は驚いてる。
ノア「はぁ・・・はぁ・・・僕も、僕も作戦に参加させて下さい!」
千冬「し、しかし・・・」
ノア「断っておいて都合のいい話しですけど・・・僕は、救える命は救いたいんです!逃げたくないんです!だからどうか、僕を使って下さい!!」
目の前の少年が頭を下げて頼み込んでくる。そしてその瞳には強い意思を感じた。千冬はそういう目を何度か見て来た。
そう、これは・・・”火のついた目”だ。
何かを決意し、真っ直ぐその道を突き進む者の目だ。
千冬(そういえばあいつも、そんな目をしていたな・・・)
千冬が思い出したの数年前、ドイツとアメストリスの合同訓練でロイが”国を変えてみせる”と語っていた時の目にソックリだった。
千冬「・・・分かった。お前のその意思、十分に伝わった。参加を認めよう」
ノア「ありがとうございます!皆もよろしく頼む!」
ラウラ「待っていたぞ、嫁よ!」
シャル「よろしくね、ノア!」
鈴「来るのが遅いのよ!」
セシリア「これで不安は無くなりましたわ。必ず勝ちましょう!」
それぞれが笑顔で答えると千冬からノアに作戦を説明された。と言っても先程とあまり変わった初撃部隊にノアが加わっただけだ。
千冬「それでは作戦会議は以上!」
専用機持ち達「「「はい!!」」」
それぞれ退出して行き、教師陣は必要な機材の設営を始めた。様子を見詰める千冬に束が話しかける。
束「いやぁ~。若いってのはいいね~。よっ!色男!」
ノアに向かって叫ぶが当然その声は届いていない。
千冬「・・・早く篠ノ之の所へ言ってやれ。調整が必要だろう」
束「はいはーい」
呆れられた束は両手を後頭部に当てて箒の後を追う。
一呼吸おいて千冬は先程の事を反省する。
千冬(一夏の為とはいえ、きつく言い過ぎたか・・・任務に私情を挟むとは、私は教師失格だな・・・)