私はヴィラン…多分   作:まったいら

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12.マナーの先生

ふかふかのベッドにくるまれて、生きてきた中で一番心地よい眠りから覚めた。

 

昨日はご飯食べた後何したんだっけ?幸せすぎて覚えてない。これが幸せボケというものか。

 

「お嬢様、お目覚めでしょうか。」

この声は、執事の紅羽さん。

 

「はい、起きてます。おはようございます。」

 

「マナーの先生がお見えです。」

 

…マナー。マナー…行儀作法の事。

 

今、船の上だよね?どっから来たんだ。

 

「いかがされますか。」

 

「3分下さい、支度を整えます。」

 

隣のベッドに寝ているベラを起こす。顔を洗って歯を磨き、二人でテキトーにタンスやらを開いて服を探す。

 

「ベラ、早く。あと10秒。」

9、8、7、6、5、4、3、

 

「「紅羽さん、お待たせしました。」」

ギリギリセーフとはこの事。

 

 

「ギリギリセーフ…ではありませんわ!乙女の支度が3分で終わってたまりますか。」

誰だこのおばちゃん。

 

「お嬢様方、こちらマナーの先生、「血まみれ婦人」です。」

 

血まみれ?どっかの蛇寮の幽霊みたいな名前だな。

 

「血まみれにはみえませんけど。」

「シッ、馬鹿ね。血まみれになるほど虐められた事があるのよ。きっと。…ほら、あの体型だし。」

 

「聴こえていますわよ。血まみれ婦人とは敵名ですわ。」

 

…血まみれになるほど弱いのか。

 

「相手を切り刻んで、返り血で血まみれになるんです!二人とも何て失礼なのでしょう。少しはお父上を見習ってはいかがです?」

 

お父上?あぁ、すいませんね、まだ見習う程話した事ないもので。

 

「オホン、まぁ下の世界(ダンプ)出身者はこんなもんですわね。」

何かさっきから失礼なおばちゃんだな。このブタ子ちゃんが。

 

「ですが、ご安心を…この、私が、貴女方を立派なレディへと変えて差し上げるわ!」

ヤダな。この人にマナーを教わるのか。

 

「ではまず初めに…そこの貴女!」

ビシッと手のひらで指された。私か。

 

「なんです「レディがズボンなんて履くんじゃありません!」」

 

ズボン履いちゃいけないの…つまりスカートを履けと?

あんな脚がスースーするヒラヒラを?まるで襲ってくれと言わんばかりのあの服を?冗談じゃない。着るわけないだろう。

 

「スカート舐めちゃいけません!」

「そうだそうだ!」

 

ここでベラが先生側に着いた。裏切り者め。

 

「そんなにズボンがよろしいのなら、いいでしょう。紳士マナーでも習ったらいかがです?そこのスカートの貴女だけついてらっしゃい。」

 

紳士マナー…金払ってもらってる先生が授業放棄していいのかよ。

まぁ、お父上殿が満足いく上品さがあれば紳士マナーでもいいや。誰に教わろうかな。身近に思い当たる人いないな。

 

「、…お嬢様、まだ間に合います。追いかけてはいかがでしょう?」

 

…、

いるじゃん、近くに。お父上殿が満足いく上品さを持っていて人に教えられそうなの。

 

「紅羽さん、マナー教えて下さい。」

 

「私は一介の執事にございます。」

 

「執事でも物事を教える事は出来ますよね。」

 

「失礼ながら私は紳士マナーと執事教養しか存じ上げてません。」

 

「ならば紳士マナーを。」

 

「紳士マナーは男子が教わるものです。それにお嬢様にはもう先生がいるでしょう。」

 

「その先生に紳士マナーをしろと言われたので。」

 

…お父上様に言いつけるぞ。

 

「…かしこまりました。この紅羽、喜んでお嬢様にマナーをお教えしたくございます。」

 

勝った…!ダディパワー良いね。

 

 




物語始まってからはじめての平和な1日。

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