私はヴィラン…多分   作:まったいら

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13.船旅

「お嬢様、ナイフの持ち方が違うと何度言えばわかるんですか。」

 

「今のは、…すいません、間違えました。」

 

「間違えてはいけません。この後はダンスのレッスンがありますので五分後までにお召し物を変えて下さい。」

 

あれから紅羽さんとひたすらマナーのレッスンをした。最初は優しい紅羽さんがどんどん鬼先生スイッチが入っていくのを見るのは結構辛かった。こんな筈じゃなかったんだ。もっと甘やかしてもらう予定だったのに。

中でも紅羽さんに教えてもらう事になって一番辛かったのは、

 

「あぁ、あと、ダンスの後は帝王学がございますので。」

 

これだ。とにかくこれが辛い…

 

私が習っているのは古帝王学というもの。現代の歪んだ帝王学ではない。昔の帝王学だ。現代のと違うところは、

逃げ、言い訳、責任転嫁は絶対に許されない事とか。今のとは結構違う。まぁ、ベラも習ってるんだけど。

 

紳士マナーは淑女教育よりは結構簡単なので、私は帝王学さえなければハッピーだった。

 

淑女教育に勤しんでいるベラは見ていて本当に可哀想だったよ。

 

何が悪いのか歩いてるだけでおこられてたりする。朝から晩まで、

食事マナーが〜、足を開くな、姿勢がなってない、口が悪い、編み物の柄が庶民的、淑女にあるまじき〜、常に上品に〜、ダンスが出来ないなど論外等々正直うるさい。

 

 

まぁ、ベラほどではないが、私も紅羽さんには怒られた。

常に上品であれ。怒鳴るな、平常心を失うな、じろじろ見ない、話をさえぎらない、年上を敬へ、女性への対応がなってない等。

 

私も一応は女だってーの。

 

私のこの船での生活は、

午前中はマナーや他の勉強。午後は個性の訓練や帝王学。個性の訓練では以前同様ベラと戦ったり、最近は父に言われた通りに他人と戦ったり

する。罪悪感が相変わらずあるが、慣れた。ただ、止めをさす時の感触は嫌いだ。

 

ちなみにベラはこのような事はしてない。罪悪感云々の話ではなく、単純に時間があまりないからだ。

彼女は船旅が終わり次第学校という所で学業に精を出さなくてはいけないらしく、今から行く国の勉強をずっと午後はさせられている。彼女曰く、滅茶苦茶つまらないらしい。

 

国についたら私もベラ同様学校というものに行かなくてはいけない。けど私の場合は母がその国の出らしく、その国の言語が喋れたので、まだ勉強はしない。でもいずれはしなくてはいけないのでそれまでにマナーを全て覚える予定だそうだ(紅羽談)。

 

「お嬢様、お手が止まっています。お食事はお早めに。」

 

「…しかしそれでは品位が落ちてしまいます。それなら早く食べては、「その速度で食べている事が品位を既に下げております。そして!お嬢様、あと3日程で船旅は終わるんですよ?貴女はそれがどういう意味かわかりますか。」

 

「…。」

 

「お返事は人間として返さなくていけません。この三ヶ月、私は貴女に紳士マナーをお教えしました。なのにどうして」

 

「わかってる、わかってますから。マナーはちゃんとこの船旅中に覚えるつもりです。」

 

「お嬢様、話を遮ってはいけません。私、名君とは、聞くことなり。とお教えしましたが…」

 

「…覚えてます、しかし、貴方の話は必要以上に長い。言われた事はやるのでもう下がって下さい。」

 

口うるさくなってきたなぁ。

ん?微妙に喋り方が違うって?

上の立場にいる人間らしく常に上品するよう言われたんだよ。紅羽さんの調教の賜物だね。

 

「貴女、そのキャラ板についてきてるわよ。」

 

正面でご飯を食べていたベラがケラケラ笑いながら言う。何となく褒められた気がしないので言い返そう。

 

「ベラもその悪役令嬢みたいな顔と服、板についてきてるね。趣味の悪いおばさんに教わると趣味の悪い服が好きになるのか。」

 

「数ヶ月前の私なら今、貴女の顔面にフォークを投げていたところね。大先生を馬鹿にしないで。」

 

ベラが澄ました顔で答える。が、額には青筋が浮かび上がっていた。ちょっと面白い。時間外授業だ。習った範囲のやり方で、煽ってやる。

 

「おや、顔色が優れませんね。それに目も少し赤い…昨夜は寝付けませんでしたか?(顔に白い粉塗りたくって…ちょっと目に入ったんじゃかい痛そうw)」

 

「フフッ、そのように見えますの?…私、今とても元気よ?貴女が笑わせてくれるから面白くて。それに、レディは病弱な見た目の方が良いじゃない。(目大丈夫?あ、貴女には良さがわからなかったわね。このレディのなり損ないが。)

あら、貴女スプーンは奥から手前に動かさないと。(マナー大丈夫?)」

 

「おや、それは大変失礼した。私のマナーと貴女が教えられたマナーはどうやら違うようだ。先生が違うからでしょうね。(マナーが通用しないね。ヘッポコ先生に教わってるからじゃない?私が習ってるのはフランスのマナーじゃない。時代はアメリカなんだよ!)」

 

ピキッ

 

あ、怒った。

 

「フフッ……フフフ。。」

 

ヤバ。怒らせすぎたかも。ベラが席を立ち私の近くににじり寄ってくる。

 

「鯉影、…貴女…大先生を」

 

…ど、どうしよう。口論だけのつもりだったのに。ベラの手がどんどん近づいてくる…

 

「そこまでだよ、二人とも。」

 

この声は!

 

「「父様/お父様」」

おぉ、救世主よ二度も私の命を救ってくれるとは!

 

「ケンカはご飯を食べ終わってからにしなさい。」

 

…え。いや、助けてよ⁉︎

 

「そうですわね。みっともないところをお見せしました。申し訳ありません。…鯉影、食べ終わったら覚悟しなさい。」

 

…ノォー

 

………

 

でも、結局ご飯を食べた後は忙しくてお互い別々の部屋で別々の事をして1日が終わった。

 

「お嬢様、明日は5時に起こしにまいります。ではおやすみなさいませ。」

 

「わかりました、おやすみなさい。」

 

…、…

 

"錬金術師よ大衆のためにあれ!"

 

…。何だ…

 

"〇〇、道を誤ることがあれば撃ち殺してくれ。"

誰…

……ッは!夢か。

リアルな夢だった。どっかの戦場に私はいて、銃を持った兵士になっていた。変な夢だ。

 

カチッコチッ

 

夜中の四時か、もう一眠り出来そうだな。それにしても、

「青い隊服、戦場、銃。何か変だけど、懐かしく感じる。それに、

 

"錬金術師よ大衆のためにあれ"

これ、よく聞いた気がする。…寝ぼけてるのか。」

 

"大衆のためにあれ"っか。大衆のためにあってその先に何があるのか、夢なのでわからない。

 

「もう一度寝よう、続きが見られるやもしれない。」

 

次は、大衆のために誰かが頑張った世界を見て見たい。現実は常に闇がある。しかし、夢の世界ではそうとも限らないだろう。

 

 

 




ハガレンわかる人は主人公が元々誰だったのかあたりをつけて見てください。

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