「おはようございます。」
「やぁ、おはよう。」
父に挨拶をして食卓につく。今日はデニッシュパンとエッグベネディクト、それに…うぇ、海藻サラダか。
「揃った事だし、食べようか。」
「はい、いただきます。」
カチッ…キンッ
静かな食卓。ベラは別室で食事マナーを血塗れセンセーに教わってて朝は一緒に食べない。ちょっと前までは私もそうだったけど、紅羽さんからオーケーが出たので今はこうして父と朝食を食べる事を許されている。
…昨日みたいに怒られる事もあるけど。
「そうだ、鯉影。食後にイザベラを連れて僕のところにおいで。」
「わかりました。」
一体何のようだろう。そっちから話しかけてくるのは珍しい。
「それじゃあ、僕は先に失礼するよ。」
そう言って父は席を立った。…てか食べんの早。ハっ、これが紅羽が言っていたちょうどいい早さか。
「お嬢様が遅いんです。」
「…紅羽さん、心を読まないで下さい。」
「大体、年上より後に食卓につくのは人間として」
「ご馳走さまでした。」
紅羽さんの話を遮って席を立つ。目指すはベラの部屋だ。さっきの話をベラにも伝えなきゃ。
コンッコン
「…ベラ?居ないの?」
…しーん
留守か。まだ食事マナーをやってるのか?まぁ、良い。物色するか。
ギィィイィィ …ドアうるさ。
さてさて、お部屋はどんなか…対して汚れてないだとッ!何かつまらないな。もっと実はレディにあらず!ってのを求めてたのに。
ん…私の後ろに影?
「勝手に部屋に入らないでくれる?」
「いつからそこに?」
「入らないでくれる?」
「だから」
「入らないでくれる?」
「ごめんなさい。」
おかしいな。生まれてこのかた雪山で遭難なんてした事ないのに、今遭難したかのように身体が寒い。凍る。
「弁解は?」
「…あ、あの、父様が呼んで来いって…」
「ッチ。」
お嬢さん今舌打ちした⁉︎
不機嫌なベラと二人並んで父の書斎に行く。まぁ、書斎兼船長室だけど。この船父様のだから。
「やぁ、待っていたよ、二人とも。わかってると思うけど後2日で目的の地につく。…大丈夫かなと思って。」
え。そんな事?ならさっきの食事中に言えばよかったのに。
「お父様、ご安心下さい。私も鯉影も、心の準備はとうに出来ております。」
そうだ。心の準備なら、島を出た時からしている。なんで今更そんな事を聞くのだろう。
「残念。[心の準備]の話じゃない。鯉影はわかるかい?」
大丈夫って心じゃないの?てっきりそうだと思ってた。じゃあ身体的な準備とかか?
「どうやら二人ともわかってないようだね。[心]じゃなくて、僕は[覚悟]の話をしているんだ。」
心じゃなくて覚悟?何を言っているんだろう。心の準備と覚悟は一緒の意味だろう?少なくとも私はそう思っていたが。
「確かに一緒だと言う人がいる。だけど、僕は違う意味だと思っているよ。
心の準備とは、何かが起こった時それに対処しようとする事を言う。けど、覚悟は違う。覚悟には二つの意味がある。」
父様はそう言って椅子から立ち上がった。
「君達は幼くして悪事に手を染めた。ヒーローは一度でも罪を犯した者を、警察に突き出すまで許しはしない。」
コツンッコツンッと足音を鳴らしながら近づいてくる。
「これから行くのはヒーローを多く輩出する国、ジャッポーネ。二人は生きる為に罪を犯した。だが、それは表の世界では許されない事だ。例え、仕方なかったとしても。
覚悟とは、危険なこと、困難なことを予想して、それを受けとめようとする事。」
悪いと言われた事は沢山やった。父様に大丈夫?って聞かれたって事は、罪を受け止めろと言われたようなもんだ。
なら、捕まる覚悟は出来てるかって意味か?…父様は私を警察に突き出すつもりなのか。
「…私達を捕まえるおつもりですか。」
「…僕が?君達を捕まえる?…、ハハッ、僕はただ困難な事を受け止めろって言っただけじゃないか。人の話は最後まで聞きなさい。覚悟のもう一つの意味は、迷いを脱し、真理を悟ること。だ。」
迷いを脱し、真理を悟る?迷いって何だ。私は迷ってなんていない。真理なんて悟ってないし、悟る必要性を感じない。
「私達は迷ってなどいません。」
「いや、君達は迷っている。何が正義か、何が悪か。何を守るべきか、何と敵対するべきか。」
正義だの、悪だの、そんなものわからない。てか頭痛い。知恵熱出てきたかも。真理を悟る?真理ってそもそも
ー私は[世界]と呼ばれる存在ー
何だ…よ…?
ーあるいは[宇宙]、あるいは[神]ー
何処かで聞いた事がある声だ
ーあるいは[全]、あるいは[一]ー
いつの記憶だ。
ーあるいは[真理]ー
…何処だ、この声は誰の声だ…私はこの声を何処で聞いた?頭が痛い、爆発しそうに。てか真理って喋らないだろ⁉︎
うっ…視界が歪む。何もかもが白く見えてきた…
「そして」
「私は"貴女"よ」
ちょっと内容が難しかったかもしれません。次話でもう少し何がやりたかったかわかると思います。