私はヴィラン…多分   作:まったいら

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20.初仕事

日本に来てから一週間が経った。

今日は、ベラがいよいよ学校という所に通う日だ。

 

昨日からベラは緊張してるのか、全く相手をしてくれなかった。なので私も、昨日は家の中で大人しく小学校の勉強をしていた。が、すぐに課題を終わらせてしまったので今日は暇だ。

 

チュン チュン

 

 

この一週間、ここで過ごして来てわかった事が2つある。

 

1つは、この日本という国が平和で暮らしやすい非武装国だと言う事。

 

もう一つは、私の置かれた環境が最高だと言う事だ。お城のような大きさの家。いや、屋敷と言った方が良い。そこで毎日暮らせて設備も最高級。

 

特に、最高級寝具の寝心地はまさに最高級であった。広々としたベッドは眠り心地抜群だし、皺ひとつない真っ白なシーツは清潔感バリバリで肌触りも素晴らしい。流石使用人たち、いい仕事をする。

 

ふと私の部屋のドアが開く音がした。使用人や父はノックをするのでおそらくベラだ。それか私の寝込みを襲いにきた誰か。

 

「鯉影、そろそろ起きなさい。」

 

ベラの声を聞き、もそもそとベッドから起き出す。が、はたと気が付いたことがある。これからどうしよう、今日はやる事がない。

掃除や洗濯は使用人がやってくれるから…勉強?いや、昨日全部終わらせた。なら二年のものに手を出すか?いや、あまり勉強に力を入れなくてもあの程度いつでもできるし。今日は個性の訓練でもしようかな。でも一緒にやる人が居ない。

 

「ベラぁ、やる事がない。」

 

「知らないわよ。公園でも行けば。」

 

「公園って浮浪者が居るって聞いたけど。」

 

「全ての公園にいるわけじゃないでしょ。じゃ、私は学校行ってくる。」

 

薄情なベラは行ってしまったし、どうしようかな。…よし、もう少し寝るか。

 

コンッコンッ

「そろそろ起きたらいかがです。」

 

ノックの後に聞こえた声に私は敏感に反応した。奴にやる事が無くて困ってる事がバレたら、色々なレッスンをするハメになるに決まってる。

 

「何用ですか。」

 

「旦那様にお伺いした所、本日お嬢様はご予定がないと聞きしました。」

 

どうしよう。紅羽に既にバレていた。夜着のまま腰に手を当て周りを見回す。きっと何かやる事がある筈だ。片付けとか、掃除とか、

 

「お嬢様、部屋の中でやる事はない筈です。仮にあったとしても使用人にやらせて下さい。では、下で待っているので着替えてきて下さい。」

 

立ち去ったか。

今日は白いシャツに黒いズボンにしよう。出かける予定もないし。

…ん?…あ、やる事ないし出かけよう。そうと決まれば帽子も被って、紅羽にバレると邪魔しようとするに決まってるから窓から出よう。

 

窓を開けると遠くに地面が見えた。ここは3階だったっけ。でも個性を使えばなんてことない。よっ、着地成功。あれ、父様なんで目の前に?

 

「君に限って無いだろうけど、サボってる?」

 

「父様…やだな。ただの朝の運動ですよ。」

 

「…へぇ、そうなんだ。じゃあ運動ついでに、苦手を克服するバイトをしないかい?」

 

…?どういう事だかよくわからないな。でも苦手を克服できてお金も貰えるならやってみたい。

 

 

 

 

「辞めてくれ…嫌だ!…るな、来るな、来るなぁぁぁあぁあ!」

 

ザシュッ

 

「…はぁ。」

苦手を克服ってこれかよ。まさか暗殺をする事になるとは。確かに人殺しは苦手だ。感触に嫌な感じがする。

 

ピロピロ ピロピロ

 

「…もしもし。…えぇ、終わりました。え、脅迫文ですか。…はい、わかってます。じゃあ。」

 

この死体は回収される予定だった。が、警察がここを嗅ぎつけたらしく自殺に見せかけるようにと父からお達しがあった。剣で首から腰まで切ったのに、今更自殺になんて見せられるわけないじゃないか。しかもここはそこそこ良いところにあるビルの50階。

 

「はぁ、どうしよう。」

 

…少しでも捜査が難航するように死体を隠して、脅迫文でも書こうかな。

 

『お前らのボスはあずかった。返して欲しければ警察に相談せずにアリーナまで5億持って来い。』

 

こんなもんかな。まさか五歳児が書いたとは思うまい。あとは、この男を持ってずらかるだけだ。むっ、意外と重いな。

窓から投げて、風を下から吹かせ…よし、流れに乗ったな。私ももう行こう。

 

ビュゥゥウウゥゥッ

 

ふふっ、空を飛ぶのは楽しいなぁ。表の人間を見下ろせる。

 

ん…。空を飛べる個性が警察側にもいたか。厄介だな。この男が既に息絶えているのを報告されると困る。

 

「待て、ヴィラン!」

 

「待たない。」

 

「その人を解放しろ!」

 

「断る。」

 

「なら、多少荒くなるが…先制束縛!」

 

飛んでる警察が羽を弾丸みたいに飛ばしてきた。嫌だねぇ、危ない。

 

「…!ヴィラン、お前よく見たらまだ子供じゃないか。危ない事は辞めなさい!」

 

何だコイツ、急に偉そうにして。ムカつくな。追いつけない速さで飛んで実力の差を教えてやろう。

 

「っな、待て、ッ待ちなさい!」

 

「だから待たないって。」

 

どんどん離れていく警察。やがて見えなくなったので速度を落として着陸した。重い死体をこれ以上持つのは辛い。結果、どうするか数秒迷い、近くにあった茂みの中に放っぽっといた。

 

…。さ、仕事も終わったし帰ろー。

 




主人公、悪の道を突っ走ってる模様。
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