私はヴィラン…多分   作:まったいら

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いやぁ、久々の投稿。
言い訳はいいません、すいませんしたッ!!(土下座)


21.噂

「ただ今帰りました。…?」

困惑する。

ドアの前には父とイザベラ、紅羽に血塗れ夫人と我が家のメイド7人の総員が集まっていた。皆気のせいか苛立っている。

 

「…馬鹿が帰って来た。」

 

「イザベラ。喧嘩売ってるの?疲れてるし買わないよ。」

 

「違うわよ。コレ、何だと思う?」

イザベラがラジオの様なものを指差す。ラジオじゃないのか?何でこんな古い機械がこの家に。

 

[ザッザザーッ、発見しました!常実株式会社社長に間違いありません!]

 

「…言いたい事わかるよね、鯉影?」

 

「別に私だとはバレてないでしょ。」

 

[ザーッ、本当に観たのかね?」

[ハッ!犯人の後ろ姿をしかとこの目で見ました!犯人は遺体を持って窓から逃亡、飛行を可能とする個性を持っておりました!]

 

しまった、あの羽の生えた警察官か。余計なことを言ってくれたものだ。しかし闇夜に紛れて姿形は、

[犯人は目測およそ100cm程、黒いソフトハットをかぶっていて性別はわかりませんでした!]

 

なんだ…と。

しまった。そんなにしっかり見られていたとは。本当に余計なことを言ってくれたな、あのフクロウ警察官め。何でそんなに目が良いのか…そういえばフクロウって夜行性だったな。

 

「もう一度言うわよ。この大馬鹿者が!!」

 

「次からは善処しよう。」

 

「いや、残念ながら次はないよ。」

お父様が話に入ってきた。次が無い…まさか、私を無能と評価し、捨てようとなさっているのか?それは駄目だ。そんなことになったらまたあの地獄に戻されてしまう!

「お父様、私はまだ「だから、鯉影はもっと強くならなくてはいけない。」、もっと、強く…ですか?」

 

「そう通り。今回の件で警察は君の存在を知った。次はヒーローが来るかも知れない。今回は初めての暗殺だったからターゲットは無個性にしたけど、いつまでも無個性をターゲットにしておくわけにもいかない。警察側に過剰に評価されている可能性もあるから、今よりもっと強くなるんだ。」

 

お父様の言いたい事はわかる。次はターゲットが反撃してくるかもしれない。そうなった時、相手の動きを完璧に封じられなければ、このご時世だし直ぐにヒーローが来てしまうだろう。

 私にはまだヒーローに勝つ力は無い。ターゲットに助けを呼ばれてしまった時、逃げきる事ができるかさえも怪しい。

 

「僕が手伝ってやろう。そうだな、手始めに気に入った個性を持つ人をここに連れておいで。僕がその個性を君に移してあげよう。」

 

個性を移す⁉︎

そんな事が可能なのか?…でもそう考えると、脳無やお父様の個性に納得がいく。

 

1度目に戦った脳無は少なくとも身体強化系の個性と回復系の個性を持っていた。お父様だって空間系の個性を複数使用していた。

 

可能なのかもしれない。だとしたら私が求めるのは、錬金術の四大元素だ。この世界の物質は、火・空気もしくは風・水・土の4つの元素から構成されるとする。科学が解明された今は違う事がわかるが、個性が錬金術という非現実的な物なのだ。その錬金術の世界だと四大元素で全て作れるそうなので、是非ともこの元素達を手に入れたい。四大元素を成さしめる「熱・冷・湿・乾」の4つの性質である四性質でも全ては創れるという。その事が本当なら火は雷で代用でき、空気も風を起こす事が出来るのだからクリアしている。

 

後は水と土なのだが、これも水でなく氷でもいいのかもしれないし、土も砂とかでもいいのかもしれない。

 

「お父様は水や土の個性を持った人を知りませんか?」

 

「それなら一つ心当たりがあるが、今の君ではまだ無理だね。

 

 「土砂の鯉焉(りえん)」という人を知っているかい?彼は裏社会でも指折りの悪でね。ヤクザ。わかりやすく言うと、ジャパニーズマフィアのトップなんだ。土蜘蛛家のボスだ。

 彼はとても厄介な相手でね。マフィアの癖に一般人を守る、ヴィジランテなのさ。」

 

ヴィジランテと言えど、マフィアか…確かにそれはヤバそうだな。

 しかし、土砂というなら、水と土の個性という事だろう。素晴らしいじゃないか。例え今は敵わなくとも、頭の中に入れておくに越した事はない。

 

「ちょっと、お父様が忠告してるんだから相当不味い相手だって。変な事考えない方がいいわ。」

 

「大丈夫。一時の欲望で全てを無くす様な事はしないよ。」

 

「ならいいけど、その顔は何か企んでない?」

 

「私が敵う相手じゃないかどうかは、私が決める事。大丈夫、ちょっと探って見るだけだから。」

 

 

 

 

あれから何日か経ってお小遣いもだいぶ増えた。特に何か買いたいわけではないが、目の前にお金をぶら下げられると取ってしまいたくなるのは人の性。罪悪感も最初ほどではなくなってしまった。

 

今日はバイトも無く時間がたっぷりあるので、土蜘蛛組の屋敷近くの木の上にいる。

…何故かって?相手を知らなきゃ何も出来ないからだ。奪うにしろ奪わないにしろ、相手を知らなきゃ負け戦になる。

 

土蜘蛛組が住んでいる家は、今はもう珍しい日本家屋だった。平たく広い家の為、木の上からだと全てが見渡せる。

 

さっきから見ていた感想だが、何というか緊張感のない人達だ。子供が作った落とし穴に大の大人が引っかかってたり、ご飯つまみ食いしてる人がいたり。

こういうの、何か心地よくて、嫌いじゃない。けど、無防備だ。

 

さっきから警戒は解いてないが何とまあ、呑気な人達である。これじゃあ、襲われるどころか気付かれもしないだろう。

 

今日はこの辺で帰ろうと思い、乗っている木と微弱な電気でスケボー擬きを作った。今日は個性の練習も兼ねて風だけで移動しようかな。

当然材料に使った枝は消え、私の体は落下する。

風を操って空中に階段があるかのようにゆっくり着地し、そのまま風で楽に帰路につこうとした所、前方から子供が飛び出してきた。

 

む、コイツ土蜘蛛家で落とし穴を作った子だ。こんな所で何してんだ。

 

「あの、さっきね、木から落ちる所見たの!」

 

あぁ。

子供ってよくどうでも良いとこを見てるから、ある意味大人よりも面倒なトコあんだよね。

見られた事が妙に悔しい。

コイツは殺そうか。

 

「あのね、とってもかっこよかった!

服も、個性も、全部!」

 

ほう。かっこいいか。あんま言われた事ないな。ちょっと気分が良い。やっぱり生かそう。

 

「もっと話したいから僕の家に来てよ!皆に紹介するよ!」

 

爆弾発言とはまさにこれの事。唐突すぎるし今日はちょっと準備出来てない。また今度にしてくれ。

 

「今日は予定があるんだ。」

 

「皆んな、いつもそうだ…僕ん家が怖い人多いからって。でも別に怖く見えるだけで悪い人なんていないんだよ!爺ちゃん達はただの強面ってやつだよ。」

 

ほう。コイツ友達いないのか。なら孫を懐かせたらひょっとして爺の個性を奪えるんじゃなかろうか。

 

「…じゃ、ちょっとだけお邪魔する。」

 

「え、いいの?

  …やったー! 初めてのお友達!来て来て。」

 

手をグイグイ引っ張られながら土蜘蛛家につくと、思いの外歓迎された。下っ端に。

 

偉そうな奴らは私を警戒している。この警戒っぷりを見るに木の上で見張ってたのバレてたかな。無防備だと油断したが、そうでもなかったわけか。

 

「お前さんがわしの孫の一番のお友達かね?」

 

威厳たっぷりのお爺さんが私を上から下まで見る。嫁入り前の娘の男友達に接するかの様な何処かで聞いた様なセリフを言う爺。

顔は笑ってるが「目は口ほどにものを言う」。笑ってない目だなこりゃ。…ははっ、絶対バレてやがる。

 

鯉山(りざん)…この子と爺ちゃんは幹部連中とちょいと話してくるから待ってなさい。」

 

警戒してんの隠す気ゼロかよ。

 

「えぇー、僕の友達に何するの!」

 

「話してくるって言うてるじゃろ。」

 

マズい。逃走経絡を確保しなくては。

 

「じゃ、行くぞ。」

 

孫と一緒で手を引っ張るスタイルかよ爺さん!

ズルズル引っ張られてたどり着いたのは

メッサ強そうな人達がずらっと並んだ部屋。

一番奥の少し高い所の席が空いてる。

お爺さんは私の手を離してそこに座った。

あれ、結構ピンチじゃない?

 

「オールフォーワンの所にいる、殺し屋「黒帽子」じゃな?幼いのに腕が立つと噂はかねがね聴いておる。…そんなのが何故わしの孫に近づいた?殺しの依頼でもあったのかね。」

 

ん…殺し屋?黒帽子⁉︎

ていうか、そんなのって言ったお爺さん?

 

「どうやらそう呼ばれている事に気付いとらんかったようじゃな。超新星ヴィラン、

殺し屋「黒帽子」。わしの耳にも入ってくる悪党じゃ貴様は。」

 

わたしが悪党?…まぁ、正解なんだけど。

 

でも人を一人殺しただけで悪党呼ばわりされるとは。じゃあ、この人達にとって昔の英雄は全員悪党なのか。

 

「無個性ではあるが、警備用品を数多く開発している警戒心の強い常実株式会社の社長。彼の発明のおかげで一体何千人の命が救われたか。

 

そんな彼を警備が万全であった社長室で嬲り殺し、畜生どもに喰わせ、無惨な姿にした。姿も警察官一人にしか見られていない正に凄腕の殺し屋。貴様の事は、警察が血眼になって探しているだろうよ。」

 

あれ?そう言われると本当に酷いヴィランに聞こえるな。だが今回の事で疑われるのは心外だ。

 

「…別に貴方の孫に近づいたんじゃない。貴方の孫が勝手に近づいて来たんだ。」

 

「…つまり、孫には興味ないと?」

 

「そうとってもらって構わない。」

 

「主が木の上から我々を観察していた事はわかっている。何が目的だ?」

 

やっぱバレてたか。舐めすぎたな。

さて、どうする。本当の事を言うわけにはいかない。

 

「だんまりか!やっぱ若旦那の倅が目的だったんじゃないか、えぇ!?」

 

…二番目に強そうなのが私を怖がらせる為に怒鳴る。やっぱ何処かで聞いたかの様なテンプレな言葉。主従揃って会ったことあったっけ。

 

てか、

「怒鳴るとは紳士に非ず。」

紳士のマナーを日々習ってる身からするとただただ、下品。その一言につきる。例え相手を怖がらせる為だったとしても、他の方法はなかったのかね?

 

「お前女見てぇな声しやがって男を語るんじゃねぇ!喧嘩売ってんのかワレェ⁉︎」

 

「私は女みたいではなく女だ。女子に声を荒げ、女子を男呼ばわりか。貴方は私より年配の筈だが、ここまで尊敬できる所が見つからない人は久しぶりだ。」

 

ブチっ…お、何か聞こえた。

 

「…大丈夫だ、黒帽子。痛いのは一瞬だからよぅ。」

 

下品な男はそう言って何処からか私の二倍程の大きさの棍棒を持って振ってきた。

 

しかし、私が避ける前に皺くちゃな誰かの片手が危なげなく止めた。

 

「うちの勇士が失礼したのう。…じゃが、お前さんが家を見張ってたのは事実。わしは孫と同じくらいのお前さんを痛い目に合わせたくないんじゃがな。」

 

暗にこれ以上は力づくにすると言われた。

が、私は全く別の考え事をしていた。

 

ずっとここに来た事があると思っていた。

何となく心地良いと感じていた。

聞いた事がある声だと思った。

「勇士」と呼ぶこの声を。

 

『おぉ、女子かぁ。めんこいのぉ。お爺ちゃんだぞ!』

 

『ガハハハ、若旦那のお嬢は元気じゃな!

わしは勇爺じゃぞ』

 

『お前が男子を産まなかったからだ!』

 

『貴女の事は、私が必ず守ります。命に代えても。何たって母親ですもの。』

 

『 ごめんね、鯉影。…ごめんね…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目的は、今、変わった。

 

「…母親を捨てた男を、見に来た。」

 

 

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