私はヴィラン…多分   作:まったいら

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驚いた、ランキングに載ってるだと…⁉︎

読者の皆さま、ありがとうございます!!!


22. 土蜘蛛組

爺の目が泳ぎ、勇士は明らかに動揺した。幹部連中もある者は、視線をずらし、またある者は騒ぎ出した。

 

 そりゃそうだ。自分の家の者が殺し屋(?)の身内に手を出したんだ。報復されても文句は言えない。

 

爺どもは先ほどまで泳がしていた目を幹部連中に移し、何やらアイコンタクトで話し合っている。

 すると、覚悟を決めたのか、鯉焉が話しかけてきた。

 

「…お前さんには悪いんだが、その、どの女の事を言ってるんだ?」

 

長い沈黙が流れた。どの女の事を言っているかだって?フザケテルのか。というか、あの男はそんな事ばかりやっていたのか。

 

「あ、いや、悪いな…何でも無い。

そいつなら、女遊びしすぎてな。…そのツケで刺されて、今は奥で休養中よ。」

 

爺が取り繕ったように言う。

 

「…そうでしたか…、。」

 

その言葉を絞り出すだけで精一杯だった。何というか、呆れてしまった。だがそれ以上に、自分がそんな男の血を継いでいるのが忌まわしい。

 

「…、、あぁ〜。鯉山のお友達はお疲れだ。誰か車を用意して送ってやれ。」

 

さっきまでやいのやいの言ってきていた勇士も、今は空気を察したのか黙ってた。土蜘蛛家は私がショックを受けて意気消沈しているように見えるんだろう。事実その通りだ。

 しかし、別に母親が遊ばれたから怒っているわけじゃない。こんな男を選んでしまった母と、同じ血を継いでいる私にショックを受けているのだ。そこん所、間違えないで欲しい。

 

 

気を遣われたのか、家の近くの表通りまで送ってもらった。フラフラと帰路につく。生みの父親の話を聞いた時、忘れようとしていたお母さんの事を思い出した。

どんなにボロボロになっても守ってくれた母と、

生まれたその日に私と母を捨てた父。

 

 

私には、産まれた時からの記憶がある。

 辛うじて覚えていた記憶で、忘れたかった記憶。どうして私はこんな記憶(もの)覚えていてしまったのか。自分の優秀な頭が今は恨めしい。

 

 

 

 

 家へは門を通って入るのだが、私はいついかなる時も裏門から入る様に言われている。そして、裏門は路地裏をクネクネと曲がらなければならず、よくヴィランの溜まり場となっている。

 

 今日も家への道中、路地裏のだいぶ奥の方で女性がチンピラ3人に囲まれていた。いつもはめんどくさがって無視していたが、今日は胸の奥がムシャクシャして何かにあたりたくて仕方がなかった。

 

「おいチビ。こんな暗い時間に何してんだぁ?ママに習わなかったかよ、こういう場所にくるとボコられるってなぁ!」

 

私に気付いた一番近くにいた男がそう言いながら振りかぶった。

 

ママ?、今それで悩んでたってのに。

 

  たいな。

…いや、私は大丈夫。平常心、冷静に。

 

"見知らぬ相手と戦う時は、まず相手の個性を見極める事が大事だよ"

 

お父様の教えは頭に入っている。

 言葉通り、攻撃を仕掛けてきた男の動作に注意すると、それが酷くスローモーションに見える。怒りや悔しさが逆に冷静さを呼び、頭が冴えていく。

 

腕が一度前に出てから後ろに引かれ、

胸の高さ、顎、唇、鼻、目線と高さが上がっていく。その腕は酷く太く、一見鍛えられているかのように見えるが、よくみると無駄な筋肉が沢山ついてるだけだ。

 

「ぅおおお‼︎」

 

加えて対して必要なさそうなかけ声。無駄が沢山あるこの動き。声に一番力を入れているんじゃないかと思う程、重くない拳。

 

「だっはっはー!見たかオイ、めっちゃ飛んだぞ。

おいおい、オメェ良く見たら随分良い成りしてんじゃねぇか。金目の物は置いてけや」

 

 呆れたな。相手が気を失ったわけでも地に手をついたわけでもないのに油断して笑うとは。おまけに殴った後に相手の身なりに気付く。目的が無いのが明白な発言。取り敢えず金目の物を奪ってみるってか?

 

「きゃぁあ! 誰かぁ!」

 

ありきたりなセリフを女性が叫ぶ。

 

「おいおい黙ってろよネーチャン。大丈夫だって、ガキと違ってアンタは気持ち良くしてやるからよ!」

 

あぁ、つまらないな。こういう奴等を見ていると、むしゃくしゃしていた自分が情けなくなる。こんな奴等に八つ当たりしようとした自分が。

 

落ち着け自分。いつもの、お父様の娘の鯉影になるんだ。

雷で砂鉄を集め、錬金術で砂鉄の刃を作る。

 

「貴方は、敵成り立てかな?」

 

とりあえず片足を切る。それが理解出来なかったのか、男は近寄ろうとしてバランスを崩した。くっついていないのに気付いたのか、痛みにのたうち回る。

 

あぁ、やってしまった。こんな低レベルな奴でも同士(ヴィラン)だ。お父様にも同士を狩るのは行けない事だと言われていたのに。

 

でも、先にふっかけたのはアッチだ。

 

「殴る相手はよく考えないと。敵の相手がヒーローだけとは限らないんだから。」

 

理解できるように、のたうち回る男の頭に足を置いて動きを拘束し、ゆっくりと話す。

男は私の言葉を一生懸命聞いてるのか泣きながら頷いていた。

 

「君達も、私がヒーローとかだったら、今頃皆捕まって豚小屋生活をする事になっていたかもしれない。捕まった奴はよっぽどの事がない限り助からないから、そういう時は見捨てて、とっとと逃げなきゃダメだよ。」

 

男の仲間に言い聞かせるように喋る。

少し父さんに似てきたかな、私。

 

「長ったらしいのは嫌いなんだ。裏の世界の先輩からのアドバイス、頑張って生きてね、雑草諸君。」

 

父さんより良い人の様に見える様に無邪気に笑って男の頭を解放する。もう行って良しと判断したのか男共はこぞって暗闇に消えていった。

 

残ったのは私と女の人だけ。

私が彼女を見ている事に気付いたのか震えながら泣いている。あれ、気のせいかアンモニア臭が…

 

うーん。ここで大通りに返してもこの人恥かいちゃうし。正直丸腰の女の人を殺したり、放っておいたりするのは憚れる。

 

仕方なくきていたコートを錬金術で下着とスカートに変え、その人に手渡した。チビな私のコートにズボンは無理だったのさ…

 

女の人は最初は唖然として泣いてたけど、自分の下半身が濡れている事に気付き、受け取ってくれた。

 

「…ありがとう、僕。」

 

少し冷静になり私が子供と気付いた女性が礼を言った。

 

すぐに礼を言えるのは良い事だ。

 

まぁ、「僕」じゃないんだが…

男だと思ってるんなら、もう男で通そう。2度と合わないだろうし。

 

いつまでもこの人につきっきりというわけにはいかない。壁に背を預け、目を閉じた。布の擦れる音の後、着替え終えた彼女の手を引いて、時々現れる、弱小スライムならぬ不良から守りながら、大通りまで送り届ける。いざ帰ろうと思った時

 

「あの、名前を、名前を教えて頂けませんか!」

 

助けた女性からキラキラした目で聞かれた。けど本名なんか言えない。

…そんなキラキラした目で見るなよ。

 

「…訳あって本名は言えませんが、「黒帽子」と呼ばれています。」

 

「黒帽子君…うぅん、黒帽子さん、有難うございました‼︎」

 

この場合の「さん」は別に女って気付いたんじゃないよね。

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