私の個性である「風雷」の雷は、量によって落とすのに時間がかかる場合がある。静電気程度ならほぼノータイムで出せるが、雷のような大規模な攻撃は3時間毎にしか落とせない。それも、狙った所に落とすにはかなりのコントロールが必要で、莫大な演算がいる。
私でなければ、雷を落とす前に脳がショートしていた筈だ。
…自分の脳が弄られている事に感謝する事になろうとは。
まぁ、雷を落とすには、3時間待つ他にも裏技があるのだが…
例えば雲のある場所では落雷が起きやすいというように、現象に働きかける事で早く落とす事もできる。
「お前好みの「一瞬」じゃあ!」
勇士が刀を思いきり振った。
その威力はとても強く、先程まで私がいた所が屋根ごと吹き飛ぶほどだった。まぁ、当たらなければ意味はないが。
「俺が何で留守を守ってるか、わかるか黒帽子。
それは守手という場合、俺が一番強いからだ。
先手必勝!逆さ坊主!」
勇士が刀の鋒を下に向け、叫ぶ。
一撃で倒せる相手だ。
「貴方が一番強い、ね。
なら、土蜘蛛は大した事ないな。」
ポツンっポツンと音がする。
これは、雨?
予報では曇りのち雨だが、降るのは午後8時からの筈だった。今はまだ午後2時である。なのに雨が降り始めた。それも、どんどん雨音が強くなっていく。
勇士が屋根を壊した所為で服がずぶ濡れになってしまった。
ザーッザーッ
「逆さ坊主っつー技はな。二つ意味がある。こんな異常な雨、騒ぐ奴等が居るだろ?
仲間に緊急が起こったって知らせる狼煙の様なの
と、」
…、先程の技は雨乞いか!
こんな急に大雨が降ったら不自然すぎる。私が出した雷も相まってマスコミが騒ぎ、西日本に行った奴等がすぐに気づいてしまう。狼煙とは上手く言ったものだ。
「もう一つは、ここを俺のフィールドにするっちゅう意味だ。」
雨がさらに激しくなり、空が更に暗くなってゆく。
ザァー
ダメだ、雨が邪魔をして、相手が見えない。
チッ…これでは、雷落としたら自分まで巻き添えになってしまう。
「…お気に入りの帽子が濡れてしまったじゃないか。」
「ふんっ、だったらとっととAFOの所に帰ったらどうだ⁉︎
まぁ、後日お礼参に行くけどな!」
お礼参りね…お父様に迷惑をかけるわけにはいかない。
この豪雨。確かに水使いにとっては願ったり叶ったりなフィールドだろう。辺り一面が水だ。
コイツの個性はどんなのだ…刀を持っていたという事は、個性が接近戦向きではないのか…?
チッ情報が足りないな。
コイツは今私の目の前にいるのだ。
ギリギリ人影は見える、落ち着いて観察しよう。
何処から攻撃を仕掛けて来る?
右か、それとも左、
…不意をついて正面から?
グサッ
「…後ろ、、、目の前にいるのに、どうやって⁉︎」
「俺の個性の名は「水刃」!
自分の半径10メートル以内にある水なら触っていなくとも刀にする事ができる。それも、指の数だけな。
…俺は、一刀流じゃねえ。十一刀流なんだよッ!
さて、急所を外したのはお前さんが何者か知る為。その顔といい、風と雷の個性といい、、、お前さん、もしかして」
刺された脇腹から血がドクドクとでる。早く塞がないと死ぬな、これ。
敵は水圧も制御できる。
そして半径10メートルは制御下にある。
加えてこの豪雨。
「あんたの個性、チートだね。」
「…、、、いや、デメリットはある。俺は
鯉焉様が力をくれたんだ。
力が無きゃ、日本一のヤクザ名乗れねェ。
俺は、この
ここいらの水全てを扱う俺を、
弱点らしい弱点のない俺を、
この俺を倒せるか、黒帽子⁉︎」
勇士が水の形をした巨大な龍を造りながら怒鳴る。それは一度天に昇ってから、一直線に私を飲み込まんと口を開けながら突進して来た。
おいおい、10メートルの制限は地上だけかよ。
避けきれない。
こうなったら一か八かだ。さっき勇士が言っていた事が嘘じゃありませんように!
竜の口に手を突き出して、それに答える。
バリィッバリィイイィ‼︎
よかった、、
間違ってなかった。
錬金術をする時の方法は理解→分解→再構築の三つ。万物の根源の一つである水。個性で生み出された物は理解分解再構築の、理解が出来ず、もろに食らうしかなかった。だが、それが自然の物で形を成しているだけならば、分解で形を崩す事ができる。
その後大量の水に暴風で穴を開け、そこに入る。
バッシャァアアァン
ザッパァーン…
「…嘘じゃろ…俺の、龍雨天昇が、、、
…!う、うぷ」
重力に従って水は地面に落ち、辺り一面が津波が来たかのように大洪水とかした。
その後、空が晴れて虹がかかる。もう雨の脅威は無いな。
風で全身を乾かす。
勇士は何処だ?流されたかな。そうだと良いな…調べた情報によると、体重軽いってあったし。
「ふぅん!」
頭があった所を刀が通り過ぎる。危なッ。
「どうやった!どうやって俺の最強の技を抑えた…答えろ⁉︎」
「貴方程お喋りじゃないんで。」
またびしょ濡れにはなったら、振り出しに戻ってしまう。
「クソォ!行くぞ黒海丸!」
勇士が刀を大きく振りかぶる。避けたつもりだったが、浅いが一撃入れられてしまった。
「痛ッ、、けど、時間切れだ…さっきと同じで悪いな。」
そうして、本日二度目の轟音と共に目の前が真っ白になった。