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あれから一年。
お母さんと過ごしていた頃とは全く違った生活をしている。
どうして変わったかというと生活費がかからなくなったからだ。何故かって?
個性が発現したからだ。
私の個性が誰からの遺伝かはわからない。が、とにかく便利なんだ。
私は個性に勝手に名前をつけている。
一つは「風雷」。もう一つは「錬金術」だ。
風雷は漢字の通り、雷を遠くで落とす事ができ、風を自由自在に操れるとても強い個性だ。
…が、風は強い風限定であるし、雷は自分に近ければ近いほど、威力が落ちる。遠くに放てば威力が高くなるが、五分に一つ放つのが限界。正直使い方がわからない。
役に立つのはもう一つの方。錬金術だ。
本当に錬金術かどうかわからないけど、遥か昔に私は誰かが錬金術を使っていたのを見た事がある気がする。この個性の構造がそれに似ていたから、錬金術と名付けた。
この個性は、物質の構成や形を変えて別の物に作り変える事ができるのだ。しかし、作り方が分からないと何も出来ないので、人によってはポンコツ個性でもある。
が、私の状況にとっては願ったり叶ったりな個性だ。別に私は高度な物が必要な訳じゃない。素材さえあれば、短い時間で作れる錬金術は最高だ。
例を挙げるなら、木の皿、木のスプーン、フォーク、まな板等々。
そういうものを安値で売り、得た金で身嗜みを整え、近場の糸工場等を金払って見学させてもらったり、文字の読み方を教わったりする。
そこで新しい知識を蓄え、新たな商品を作って、また売る。その金で知識を高める。その繰り返しで、随分お金に余裕ができた。
最近はスリなんかは辞めて真っ当なお金が入る仕事に力を入れている。
「あの…これ、ちょうだい。」
木のコップを手にとった客の手はまだ小さい。
3歳くらいだろうか。まだ、ダンプの子が受ける頭の手術の跡が残ってる。
「3ベルだよ。」
「これで足りる?」
「…それじゃ足りない。」
申し訳ないが、その値段じゃ売れない。この子には悪いけど、私も自分の為にお金が欲しい。
「そっか…」
男の子のどんよりとした顔が、いつか鏡で見た母さんが居なくなった頃の自分の顔にそっくりだった。
「どうしてコップが欲しいの?」
気がつくと、男の子を引き止めていた。
「ママがね、元気なくてね、ガッチャーンって、コップ落としちゃったんだ。」
「お母さんの為に新しいの買いに来たんだ…偉いね。」
そういうとはにかむように笑いながら、
「だって僕、もう直ぐお兄ちゃんだもん!」
男の子の顔は、いつのまにかさっきまでのどんよりとした表情から、満面の笑みに変わっていた。子供は表情がよく変わる。
あ、私も子供か。
「お兄ちゃんか…兄弟が生まれるんだ。おめでとう。」
「お姉さん、ありがとう!」
未来への期待。
良い事しか起こらないと思ってる顔だ。
かつては自分も似た様な顔をしていたんだろう。
「…そのコップ、値下げしてあげるよ。」
買ったコップを大事そうに抱えて帰った男の子。あの子はきっと未来は明るい方にしか行かないって信じているんだろう。かつての私のように。
けど、
未来は明るい事ばかりじゃない。例えば明日、親と離れ離れになる事だってあり得る。ある日突然奴隷の様に売られる事もある。私達は
私はこの世界に生まれて知った。
この世界の名前は弱肉強食。ここは、権力者にだけ優しい世界。
それを見て、思う。
人は、生まれながらに平等じゃない。
それが、齢五歳にして知った、社会の現実。
ヒロアカの試し読みの最初の言葉を使ってみた。