今回は主人公じゃなく、イザベラ視点です。
イザベラside
「ちょっと貴女、こんなに片付けできない子だっけ?」
鯉影の家についてドアを開けると、目の前には大量の服、服、服。一つ一つが私が着てる服よりも高値で少しゾッとする。
「あ…時間なくて。だから家事は頼んだ。」
私の後方に居た幼馴染は抑揚のない声でそう言ってきた。が、微妙に口角が上がってるのは見間違えじゃないだろう。コイツ面倒臭かっただけだな。
「だいたい何でこんなに服があるの、必要ないでしょ。」
「身嗜みが綺麗だと仕事に採用されやすいんだよ。」
「貴女、5歳の癖して何を語ってんのよ。」
「ベラは8歳の癖してもう女になって。」
「うるさいよ。」
たわいない会話をしながらも私は服をたたみ、鯉影は晩御飯を作る。…が見てられなくて慌てて服をたたんで晩御飯作りを代わった。
…あの子は右手におたまと左手にフライ返しで何を作るつもりだったんだろう。
「出来たら呼んでね。」
そう言って鯉影はとっとと風呂場に行った。
あったもので適当に調理する。あ、パン発見!こんな貴重な物をテキトーに置くなんて…あ、牛乳もある!え、これってチーズ…⁉︎
私に夕食を頼むって事は全部使っていいって事よね?じゃあ、チーズ使っちゃおっと。
…
…
もう煮込むだけなので改めて部屋を見回してみる。前に来た時より色々なものがあった。お父ちゃんと過ごして居た頃でも見なかった物が沢山だ。その中で一際目立つ物が一つ。
ソフトハットだろうか。物凄く高価そうだ。
「それ、私の宝物だよ。」
びっくりした。まだ髪びちょびちょじゃないの。
「私の一番の財産。」
「ふぅーん、売らないの?」
「それを売らずに成り上がったらカッコいいじゃん。」
カッコいいって。そんなんでよく今まで生きてこれたわね。名前でも書いて値段下げてやろう。
ん…名前?
「あれ。私鯉影の苗字知らないや。」
「あー、私も知らない。」
この子苗字ないの?
「ま、こんなゴミ溜めじゃ対して必要ないから気にしなくて良いんじゃないの?」
そういうと、鯉影は少し思案顔で、
「ベラ…私って戸籍あんのかなぁ。」と言ってきた。
父親に母子ともに売られたんだしなさそうだけど、
「さぁ。」と答えとく。
…表の世界には憧れる。ヒーローが来るのを待っていれば助かるんだから。
でも、私はいつかヒーローが助けに来てくれる、なんて希望はもう捨てた。だって敵がやる様な事沢山したけど、ヒーローは私を捕まえに来なかったもの。
ヒーローって実在するのかしら?
ぶくぶくぶくぶくぶくぶく!!
「っほら!夜ご飯できちゃったから早く髪拭いてきなよ。」
風呂場に入ったのを確認して服をタンスの中に入れる。チャチャっと部屋も履こうかな。
ご飯を器によそって食器を机に並べる。
?机に何か彫ってある。丸い何か。
「お。美味しそう。」
後ろから声が聞こえた。
「全く、音もなく後ろに立たないでよ。めちゃくちゃ速いけど、ちゃんとお風呂入ったよね?あ、いい匂い。」
この家石鹸あるんだ。後で使わせてもらお。
「じゃ、ご飯食べよう。誰かに食べて貰うのなんて久しぶりだから腕がなったよ。」
「ん。頂きます。…美味しいよ。」
もきゅもきゅと必死に食べる様は年相応で余程お腹が空いてた様だ。
「貴女って本当、年齢不詳よね。」
「さっき、ちゃんと私の年齢言ってたよね?」
「そうじゃなくて、早熟すぎるって事。かと思えば年相応の顔する時もあるし。いくらリミッターが外されてるとしても、皆が皆貴女みたいにはならないと思うんだけど…」
「ステラ候補ですから。」
「…はいはい。」
「でもそんな事言ったらベラだって早熟じゃない?むしろオバさんみたい。」
「黙らっしゃい!」
初めて鯉影に会った時は、母親から離れないマザコンに見えた。お母さんの前ではニコニコ。お母さんの前でないと無表情な子。
この子の母親が買われて、一人になったって噂で聞いた時は、すぐにのたれ死ぬんだと思っていた。けど今もこうして生きてる。
とても太々しくて、マザコン。
でも、こんなゴミ溜めにさえ居なければヒーローになれるだろう才能に溢れた子。
「何。人の顔ガン見して。」
「いや、何でもないわよ。」
私を救ってくれた優しい子。こんなゴミ溜めに居続けるべきじゃない。もっと広い所で活躍するべきだ。誰でもいいから、この子をここから出してあげて。