私はヴィラン…多分   作:まったいら

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一二三之七氏様、田無火様、評価ありがとうございます。


8.鬼はどちらか

「ギョァアァアァア!!!」

…なんだ、コイツ…

 

「…鯉影…この人、」

どの本でも見た事ない生物だ。

人間の様に二足歩行だけど私よりはるかに大きい。顔に鳥の様な嘴みたいなのがくっついていて、上半身裸で裸足だ。

最大の特徴は、

「この人、脳がむき出しだ。」

 

バケモノか、それとも個性か。どっちにしろ、一切感情を感じないこの表情で、しかも奇声しかあげないとなると話し合いは無理だ。

 

「ベラ、出口に向かって!あの門番連れて来て!」

 

「あの門番、絶対強くないよ!」

 

「時間稼ぎくらいにはなるでしょ!」

 

さっきの門番には悪いが、逃げる時間稼ぎくらいにはなってもらう。

 

「ベラが走った1分後に私も出口に向かう!」

返事がだいぶ遠くで聞こえる。

 

「ぎょぁぁあぁ!!」

 

脳剥き出し男がこちらを見る。何か不気味なオーラを感じた。

 

……やっぱ1分なんてとても、もちそうにない。こんな化け物どうしろっていうんだ。

 

とりあえず、ベラが行った方以外に逃げよう。後でUターンすれば良い。コイツの見た目からして足はそんな速くないはず…

 

ドスッドスッドスッドスッ

 

…訂正、足は普通に速い。

何コイツ。何でこんなに速いの。

 

「ぎょぁぁぁあ!」

 

うわ、コンクリートの塊投げてくる!

 

「このっ!」

地面に手をついて錬金術でコンクリートの壁を作る。

 

ドカァァアアン

 

壁は1秒ももたなかった。あとちょっと遅かったら、この威力が自分にぶつかっていたと思うと末恐ろしい。後ろ確認しておいて良かった…

 

「ぎょぁあぁあぁあ!」

 

…逃げなきゃ!

 

後ろを確認しながら走る。

チッ…また何か投げてきた。けどこれで何となくわかった。どうやらコイツが化け物並に強いのはパワーだけのようだ。後ろに注意して攻撃を避け続ければ、ベラが連れてくる門番にバトンタッチするまで持ち堪えられる。

 

あ、曲がり角発見!

 

ドンッ

 

「さっきからうるさいぞっ、何だね君は。」

不味い、上の世界の住人(ノーブル)か!

 

「…脳無、何で声帯がまだ?…まさかコイツ例のッ!やめ、誰ぎゃゃやぁああ」

ブチッ

………………

…………、ッ…マジか…

人ってこんな簡単に千切れるんだ。

昔、スリ仲間が上の世界の住人(ノーブル)にぶつかって殺された時だってまだコレよりはマシだった。イシュバール戦だって…

ん…イシュバール戦って何だ?

 

「ギョァアァアァア!!」

 

…!変な事考えてる暇じゃない。マジで死ぬ気で逃げないと、私もこのおじさんみたいな死に方する!

 

グリィイン

 

「うわっ」

脳剥き出しの男、脳無のアッパーをギリギリでかわす。が、壁を背中に感じた。逃げ場がない…もう無理、死んだ。

 

ブワッ

 

余波で被っていた帽子が飛んでいく。それが視界に入り、妙にスローモーションに見えた。

"ごめんね、…ごめんね鯉影。"

 

この帽子をくれたのはお母さんを連れて行った男。でも何故かお母さんと最後に別れた時の事を思い出した。あの時私、お母さんに何ていったんだっけ。

 

「私は平気だから。」

確かお母さんが私を心配した時にそう言ったんだ。けど、このザマ。壁に追い詰められて、拳が振られるのを待ってる。全然平気じゃない。

 

「ギョァアァアァア!!」

何やってんだよ、自分…

 

「嬢ちゃんから離れやがれ、化け物!」

「鯉影、大丈夫⁉︎」

 

ベラ…と門番の人、間に合ったんだ。けど、門番じゃすぐにやられるだろう。さっきのおじさんのように。

 

そうしたら、また生と死をかけた鬼ごっこがスタートする。私はただ、また逃げ続けるだけ。

 

「ほら、早く逃げるわよ!」

門番が化け物の注意を引いてるうちにベラに腕を引っ張られた。

 

「俺の個性は石化!俺が固くなってコイツを止めててやる!」

 

無理だ。あの脳無とかいう化け物は超人的なパワーを持っている。石程度の硬さじゃもたない。

 

「鯉影、あの人が足止めしてる代わりに!」

 

…どうせ死ぬまで追いかけられるんだ。

「先行ってて。」

 

「へ、貴女何言って…」

 

この勝負、私の体力が尽きるまでだと思ってた。けど、

 

「あの化け物には知能がないんだ。どうせおじさんがやられたら、また命がけ鬼ごっこの始まりだよ。」

 

「鯉影ちょっと、どうしちゃったの。」

 

「いつまでも走ってたら、私達の体力がつきる。」

 

「それはわかってる!だからって、、」

 

なら、

「おじさんが注意を引きつけてる間にアイツの脳をかっ切ってやる!」

ベラがわめく。無理だって。でも、お母さんに言ったんだ。平気って。

死ぬまで化け物に追いかけられる事を、平気な人生って呼ぶか?私は呼ばない。

 

「私は、ステラ候補なんだ、簡単には死なない。死んでやるか…!」

 

近くにあった大きめのガラスの破片をもって、脳無の背中に回り込み、奴の背中に飛び乗る。反応は無い。

「やっぱ、知能も感覚もないか。でも、どんな化け物だって生物なら…」

 

ヤツの肩近くまで登って隠し持っていたガラスの破片を取り出す。あ、手がちょっと切れた。が、構うものか。

 

「流石にここを刺されりゃ死ぬだろ⁉︎」

 

ヤツの脳天に持っていた物を突き刺した。

 

「ギュァアアァ…ァア…ァ」

 

バタァァン

 

やった…感覚はあった。

 

ふう。返り血で手がベトベトする。初めて大きい生物を殺したけど、罪悪感ないな。

「…鯉影、やったの。…?」

 

「…ケッ、スゲェな嬢ちゃん。助けようと思ったのに助けられちまった。」

 

そうか…そうだ。私がやったんだ。あの化け物と対峙して、まだ生きてるんだ…

「ふふっ…あははは!私は無事だ、生きてる、平気だ!」

 

お母さん、私は生き残った!

 

「そうね、貴女は無事ね…疲れた。もう帰ろう!」

 

ベラが緊張をといて大きくため息をはいた。

ここには居たくないのか、いや居たいわけないか。

化け物から背を向けて、出口に向かう。

 

「よし、ならオッちゃんが門まで護衛してやる。お前さんにゃ結構な金額貰ったしな。」

 

「え!…鯉影何ベルあげたの?…ちょっと貴女聴いてる?」

 

うーん、まださっきの刺した感覚が手に残ってるなぁ。うぇ…

 

「嬢ちゃんに貰った金で俺ァ、娘に薬買ってやれたんだ。感謝してんだよ。」

 

ふーん…良い親だな。

 

親と言えばさっきはお母さんが…あ

 

「帽子忘れた!」

 

「帽子?嬢ちゃんそんなの気にすんなや。」

「そうよそうよ。命があったんだからいいじゃない。」

 

「いや、大事な物なんだ。取ってくる!」

 

二人の反対を無視して後ろを振り返る。

 

あれ…何か目の前に…

「ギョァアァアァア!」

 

ズドォオォオオン

 

ピキッビキッバキ

廊下の床にヒビが入る。

マジかよッ

あっ、

 

「うわあぁぁぁ!」




最初に出てきた原作キャラは、何と脳無でした。
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