さっきの一撃で床が抜けた様だ。脳無の攻撃を直に受けた気がしたけど、何故か擦り傷くらいしか怪我してない。
「よっこら…しょ…あ、帽子!」
瓦礫と一緒に落ちたので立ち上がると、目の前の瓦礫に帽子が引っかかっていた。何たる偶然、奇跡だ。
被ると、やっぱ、しっくり来るな。
"きゃぁぁぁ"
!ベラの声。向こうから聴こえる…あの化け物に追われてるのか?
「ベラ…?」
声がした方に警戒しながら行く。するとベラがしゃがみこんでいた。近くにアイツは居ない。なら、どうしたんだろう。
……ん?ベラ。石ころなんて持って何してんだ。それも、変なかた…ち…の
これ、顔か?
「鯉影…門番さん。死んじゃった。」
私かベラか、両方か。この格好は守ったんだ。私達を。だから、床が抜けたのに目の前にいた私達は怪我をしてなかったのか。
…
門番さん、 ありがとう。
"ギョァアァアァア!"
「…ッ。さっきの悲鳴に惹かれてこっちに来る。ここから離れよう。」
「…鯉影は、どうして平気なの。」
どうしてって。門番さんの事?
確かに、何でだろう。門番への感謝や寂しさはあるけど、気持ち悪いとか吐きたいとかはもう思わない。もっと惨たらしいの見たから?こういうのは多分慣れだ。
「ベラ、時間がない。行こう。」
顔が下を向いていて、どんな表情をしてるかわからなかったけど声をかけた。
何秒かたっても動かなかったので置いて行こうかと思い始めた時、
「そうね。行きましょう。」
そう言って顔をあげたベラは、さっき泣き喚いていたベラとは別人の様だった。
いや、顔は一緒だけど、何か全体的に冷たい感じ。
「もう泣き喚くのは辞めたの?」
「誰が死のうが、誰が泣き喚こうが、誰も助けてくれない。貴女見てて気付いた。泣き喚くだけ、無駄だって。」
皮肉げに笑った顔が悪役チックだ。本当に同一人物か。ま、同じベラでもこっちの方が頼りになりそうなのは確かだ。
「ギョァアァアァア!」
来たか…
すると、ベラが急に立った。
「仇をとる。…鯉影は手を出さないで。」
やる気になったか。でも、
「真正面から行っても無駄に死ぬだけだ。私が注意をひくよ。」
ベラが黙ったので無言の肯定と捉えた。錬金術で瓦礫の山を脳無にぶつける。
「こっちだ、全身グロテスク!」
「ギョァアァアァア!」
相変わらず速度速いな。
っ右の大振りが来る。ならしゃがんで股抜け!
グルゥウウン
ザザッ
よし!何となく精神が落ち着いてきて、戦闘のコツが掴めてきた。ベラの冷静さが移ったみたい。
「ちょっと、後ろ回り込めないでしょ!」
間違った。ベラの冷静さを奪ったみたい。
…避けるのに股抜けや横避けはダメって事か。え、縦しかダメなの?
今度は鉄槌だ!…横避け!
「ちょっと⁉︎」
鉄槌を横も股抜けも無しにどう避けろと?
「バックステップ!」
あ、後ろがあったか。ごめんごめん!
脳無が大きな瓦礫を持ち上げる。
「ベラ、今なら行けるんじゃない⁉︎」
しかしベラはまだやっと背中に飛び乗ったところだ。
なかなかチームワークが合わない。けど、逃げてた時よりもずっと自分達がこの化け物に通用してる事がわかる。
!今度はアッパーか…後ろ…いや、上だ!
ビュゥゥウウウウ
強風を操って、上に飛ぶ。いや、吹き飛ぶ。
「せ、成功!」
…人間とは簡単に戦闘スタイルを変えられる生物じゃない。攻撃こそ最大の防御だと信じてる私は普段後ろにさがらないのだ。否、下がる癖をつけてないので急にはできない。無事に家に帰れたら一通り戦闘フォームを見直そう。
さぁ、だいぶ時間が稼げたはずだ。
「ベラ、行け!」
「わかってる……死ね、化け物!」
イザベラの声とともに脳無の脳が指で貫かれた。
勝った…?
いや、さっきも同じ事をしたけど生きていたんだ。ベラも同じ事を思ったのか指は抜いたが警戒は抜いてない。すると、
「鯉影、これ、回復してない?」
回復とはちょっと違うだろう。地面に落ちた血が戻ってく…
「時間が戻ってる?…逆再生か!」
何て厄介な…いや、回復じゃないんだ。逆再生できる時間が限られているはず。
「死ぬまで殺し続ける。単純明快ね。」
ちょっと怖いよイザベラさん。やる事はあってるけど。
それから五分程度経つと、逆再生が発動しなくなった。
勝ったんだ。今度こそ。
でも、やっぱ、殺すのはいい気はしないな。