斗流血法継承者のオラリオ生活 作:SS葛餅
痛い、いたい、イタイ……。
ここで死んじゃうのか?
「死に がけた 童 か……」
しわがれた声が聴こえてくる。
誰だ、……アンタは……。
「ほぉうわじの 声が ぎごえる童か、まだ
い 、イヤだ……。
まだ、何もしていない!
こんな場所で……何もないここでなんか死にたくない!
「ならば 選べ 意 思を持づ なら ば、運命に爪 痕を 残ず や 否 やを 」
イノシシの骨の被り物とボロボロの布と皺のある左腕で持つ杖、足が見当たらない。ハッキリと言って異常の塊が居た。
重くなった目蓋を無理やり開いて意志を示す。
「じ がじ 言っで おぐぞ 爪痕 を残ず には 生半か な鍛錬 では 名は のごぜ ない 事を」
そう、だ。
生半可な事をしたって名は刻めない……。
このじーさんの様な人が名を刻むのだろう……。
このじーさんに付いていけば、何か掴めるだろうか。
「わじに 付いで 来る づもりが なら ば 言いで おぐ わじ に 付いで ぐるご と は ごのま ま 死んで おげば よがっだ と思え る 地獄 がまっで いる おど なじく ごごで 死ぬ 事を 勧める」
付いていくのも地獄なのか……。
「諦念ど 共 に 死に 行ぐ 地獄か 爪痕を 残ず 為に 生にじ がみづ いて 地獄を見 るが 二つに 一つ 貴様 が 歩む 地獄は どぢらだ ? 」
決まっている……そんなこと。
意識が薄れ行く中で、手をじーさんの方へ伸ばす。
歩いてやる。
じーさんが言う地獄を歩いてやる。
絶対に生きて、俺の、爪痕を残してやる。
あの後、オレは助かった。
血を出しすぎていたが、じーさんが血を分けたようだった。
助けてくれたじーさんに付いて行き、じーさんの使う斗流血法を文字通り叩き込まれた。
そこからは修行の毎日。
人が住めない秘境に連れてかれて化け物と追い駆けっこしたり、グルグル巻きにされて落とされたり、寝ている時に岩を落としてきたり、何度も千回以上は死ぬ思いをした。
修行を続けて、斗流血法・シナトベを継承する事ができた。
本来の斗流は、火と風の二重属性だがオレは風の方しか扱えなかった。
火の方も教えてくれって言ったら……。
───身の程をわきまえろ、愚昧が。
───己が器も測れぬか。
───次に貴様と儂を並べて語らば耳鼻を削ぎ落とし野良犬に食わせるぞ。
───万謝を以て自らの技を研鑽せよ。
───何処までも深く鋭く。
───貴様の敢え無き一生などそれで終わる。
───二兎なぞ追えば何にもなれはせん。
───何にもなれぬのなら、この先貴様を待つのは陰惨な死のみだ。
───ならば今ここで儂が楽にしてやるが、どうだ?
……って言われた。
血法が使えるようになってからは、片手間で相手を殺す位に成れって言われた。
それは師匠だから言える言葉だろ……。
師匠に師事してあれから十年余り……。
俺は、今オラリオを見て回っている。
そこら辺を旅していたら迷宮都市の話を聞いて直ぐにその迷宮都市に行くことにした。
そこから一月程で着いて観光しながら情報を集めようとしたら……。
「おうおう、新参者か?」
「ボロい布纏って浮浪者か?」
「うん?ああ、自分ついさっきここに着いたばかりなもんで勝手が分からないんです」
路地裏で何か変な人たちに絡まれた。
「冒険者じゃあねぇのか、おい、ちょい有り金全部渡しな」
「は?」
「は、じゃねぇよ。金を出せっていってんだよ」
「冒険者の俺たちに逆らうのか?恩恵も無い雑魚がよぉ」
面倒な相手に絡まれたな。
これが冒険者ねぇ……。
ただのガラの悪いチンピラとかわんねーな。
無視してギルドってとこ行くか。
「おい、無視してんじゃあねぇよ」
剣を抜いて突きつけてくる。
へぇーやる気があるってことでいいんだな?
「おいおい、剣を抜くなんて穏やかじゃあないな……。
「レベル2の俺に勝てると思ってんのか?恩恵も無いざ───」
そこから先は言えない。
オレが吹っ飛ばしたからだ。
「斗流血法・シナトベ 刃身ノ拾伍 穿龍棍」
刃身ノ伍突龍槍の派生型で刃を持たない珍しく斬り殺すより撲って殺すを目的とした刃身。
突龍槍よりは少し太く、両端の石突が少し丸みを帯びた形状をしている。
……まあ、使い方次第で撲殺から刺殺が出来るけどな。
「どうした?冒険者さんよぉ~?恩恵とやらもない雑魚に尻尾巻いて逃げちまうのかぁ~?」
「紛れだ!油断してなきゃ負けるわけねーだろうが!囲んでやっちまえ!」
あ~あ~。有り難いな。
囲んでくれたお陰で一瞬で制圧出来るな。
「青龍薙!」
穿龍棍をぶん回してオレを囲んでいた奴ら全員を吹っ飛ばす。
通りに出たやつがいるから追い掛けねーとな。
穿龍棍を脇に挟むように持ち、通りに吹っ飛ばした奴の前に立って穿龍棍を相手の腹に体重を掛けるように置く。
「さぁーてと、まだやるか?雑魚野郎」
「そこまで……」
金髪の女が割って入って来た。
この女……強いな、この雑魚共とは違うな。
「アァ?知るかよ。これはコイツらが売って、オレが買った喧嘩だ。部外者は黙ってろ……」
「周りの人が迷惑するから」
確かに少しやり過ぎたか?
まぁいいか。
「チッ、命拾いしたな雑魚の冒険者さんよぉ」
刃身を元に戻して体に入れる。
ギルドってとこに行くとしますか。
……さっきの金髪が付いてくるな。
「おい、金髪。何で付いてくんだよ……」
「フィン、気付かれてた……」
「気配は消して筈だけど、よく分かったね」
小人か……。コイツも金髪女と同じで強い方だな。
師匠と比べるのはダメか。師匠より強い奴なんているのかな……。
「まあ、鍛えてるんでそういうのは普通に出来ますので……と言うよりどちら様でしょうか?」
「僕たちの事、知らないってことはオラリオに来たばっかかい?(さっきとの雰囲気が違い過ぎないかい?)」
「ええ、今日来た所です」
「なら自己紹介しておこうか。僕は、フィン・ディムナ。こっちは、アイズ・ヴァレンシュタイン」
「…どうも」
「自分は、ザッド・レンフロって言います。これからギルドってとこに行くつもりなんですが……」
正直に言って、場所が分からん。
「ファミリアは決めているのかい?決めてないなら自分達のファミリアに来るかい?」
「良いんですか?そんなこと決めて、そういうのって団長とかが決めたりするものでしょう?」
「フィンは私達の団長だから問題ない」
……ってことは、団長自らのスカウトってことか。
「では、お言葉に甘えても良いですか?」
「ああ、大丈夫さ。君は腕に自信があるみたいだからそういう人材は歓迎するよ」
フィンさんとアイズさんの後を付いて行き彼らのロキ・ファミリアのホームに到着した。
「団長、アイズさん、おかえりなさい」
フィンさんって本当に団長なんだな……。
あ?門番がこっち見てるな。
「それで団長。そこの小汚いのは……?」
「彼かい?僕がスカウトして付いてきてもらったんだよ」
「団長自らスカウト!?」
そんなに驚くことなのかよ。
デカイ館に入って中庭に通された。
「さて、今から入団試験としてザッドにはアイズと模擬戦をしてもらうよ」
「はぁ、別に構いませんけどそれだけですか?」
「他は追って言う事にするから、今から準備をしてくれ」
準備と言われたから、ボロい外套と荷物を隅に置いて準備する。
強い奴と模擬戦なんて久しぶりだな。
最近は弱い奴ばっかだったし。ちゃんと闘えるかな。
「模擬剣は使わないのか?」
ドワーフのおっさんが言ってきた。
斗流にそんな物は必要ない。
「大丈夫ですよ。ちゃんとお見せしますので……」
「それじゃあ、二人共良いかい?」
「大丈夫です」「大丈夫……」
二人同時に返事を返す。
アイズさんの得物は、細剣か……速さ重視ならこっちも速さ重視で手数を多くしていくか。
「斗流血法・シナトベ 刃身ノ拾 双翼刃」
ククリナイフ型の刃身を二つ作って手に持つ。
外野が驚いた声を出してんな……。
まあ、どうでも良いか。今は、目の前に集中しねーとな。
「それでは、はじめ!」
合図と同時に間合いを詰める。
一撃、一撃が速く鋭い。
双翼刃にしておいて正解だったな。
重さのある穿龍棍や紅蓮骨喰じゃあ詰むな……。まあ、技を出せばそうでもないがな。
……にしても、コイツ対人戦闘に馴れてねーな。魔物相手ばっかで人に向けて本気で剣を振った回数が少ねーな。師匠が居たら罵倒の嵐が来るレベルだ。
「おい、金髪。オメー対人戦闘全然してねーな?」
「……どうして分かるの?」
一旦離れて言葉を交わす。
分かりやすいなコイツ。わざわざ大怪我しない場所を選んで攻撃してくる事ぐらい分かるっての。
「オレの事を試すのは良いが、そんなんじゃあオレは倒せんぞ?」
「君が勝てると思ってるの?」
「ああ、思うね!神の恩恵がある事で死ぬ思いせんくても強くなるアンタら違って十年以上死ぬ思いして鍛えたオレとの経験が違うからな……と言うより神の恩恵が無くても規格外の力を持っている奴を知っているからな。比べちゃあ悪いが、アンタら全員が掛かってきても片手間で殺すだけの力持ってるからなオレの師匠はな」
「その人、ヒューマー?」
「ああ、人間だぜ。人間の限界を軽く超えてる規格外だけどな。確かどっかの国の兵士を一人残らず殲滅したとか、黒竜を隻眼にしたとか言われてる化け物だ」
おうおう、さっきからざわざわと五月蝿くなってきたな。そろそろ決めた方がいいか?
「さて、金髪。そろそろ終わりにしようぜ」
「アイズ」
「あ?」
「私の名前は金髪じゃない。アイズ」
「わーったよ、アイズ。行くぞ」
同時に動いて接近するがオレの狙いは鍔迫り合いすることなんだよ!
鍔迫り合いになって押し返そうしてくる。予想以上に力強いな。細い体でここまで力が出せるのか……もったいないな。
師匠の地獄を経験すればもっと上に行ける素質があるだろうに……。
取り敢えずこれで決める。
「斗流血法・シナトベ 天羽鞴弐連!」
双翼刃から二つの竜巻を発生させてアイズを吹き飛ばす。これで良いか?
アイズの周りに風が集まった?魔法か……。アイズも風を操るみてーだな。
「まだ終わってない」
「そうみてーだな。アイズも風を操るとはな……。カグツチがありゃ楽できたかね。まあ、いいや。ラストは奥義で決めてやる、そっちも魔法とか使って全力で来な!そうしないと負けるぞ」
「分かった」
また距離をとって奥義を出す準備する。
「斗流血法・シナトベ 刃身ノ参拾六 月輪剣」
「【目覚めよ】」
チャクラムと呼ばれる円型の武器を複数体の周りに作り出す。
あちらも魔法の風を纏って準備万端のようだ。
「あの、ちょっと二人共?もういいんだけど……」
「おい、フィン。闘いに熱中して聞こえてないぞ」
「この際だ、好きにさせたらどうだ」
「奥義・轟天招来!」
「リル・ラファーガ!」
風を纏って突進して来るアイズ。
突撃する突き技か……。相性が悪かったな。轟天招来は、複数の竜巻をオレの周囲に発生させるモノ。
自分から飛び込んで来るなんてな。
抜けられるもんなら抜けてみやがれ!
結果的に言えば、アイズはオレの轟天招来を破ることができなかった。
念のために六重にしておいて良かった。
もし、破られてたら師匠に拉致られてまた人が住めない秘境に連れて行かれて地獄を見るはめになる所だった。
六重にした事で威力が倍増してしまい、中庭や近くの窓が割れたりヒドイ有様になってしまった。
「あー、すみません。どうも闘いになると集中し過ぎてしまうんです」
「うん、見てたから分かるよ」
「それにしてもスゴい力じゃな。力が弱い者は吹き飛ばされとったぞ」
「まったく……アイズ、お前まで熱中してどうするこの戦闘狂どもが…」
「……だって…ザッドが…」
「あの、自分が悪いみたいに言わないでください。自分が吹き飛ばした時点でアイズが止めていればこうはならなかったんですよ」
「ザッドが挑発したのが悪い。あれがなかったら私は攻撃しなかった」
「嘘ですね。闘って分かりましたけど、アイズは負けず嫌いな筈です。レベルがない自分に吹き飛ばされた時点でアイズは悔しくて攻撃をした筈です」
「……そんなことない」
「今の間はなんですか?それは肯定と言う意味ですか?」
「うるさい」
「いい加減にしろ!この金銀頭ども!!」
「「痛い!?」」
イッテェ~。くそっ、師匠みてーに杖で頭ブッ叩いてきた~。
「フィン…似た感じの戦闘狂だがいいのか?性格は理性的だが戦闘時はそれが一切なくなったぞ。もう私は疲れたぞ……」
「まあまあ、リヴェリア。アイズを吹き飛ばすほどの力を持っているんだ。彼が他のファミリアに行ってしまうのは惜しいと僕は思うよ、ガレスはどうだい?」
「力が強い奴は何時でも儂は大歓迎だぞ?」
「じゃあ、決まりだ。ザッド・レンフロ、君のロキ・ファミリアへの入団を認める。ようこそ、ロキ・ファミリアへ」
差し出される右手を自分は握り返した。