バディファイト ZERO   作:無料太郎

10 / 28

前回とは打って変わって、零人たちのお話しです!

難しい話しや、暗い話しは無い、はず?




大会に向けて

 チーム結成から僅か1日。1時間目が始まる前に、俺たちは生徒会室に来ていた。校内ファイト大会は生徒会の主催になっていて、岡流斗先生が休み時間に受け付けを担当している。

 

「はい、4人チームで『フューチャーゲイザー』。これで登録完了です。大会まで2週間、頑張ってください!」

 

 パソコンを操作した先生が笑顔を向けてくる。こちらも笑顔で返そうとするが、上手く笑えているかは分からない。

 

「ったりめーだ!絶対、優勝してやるぜ!」

 

「……お、音峰くん……あの、あ、朝なので、声を、落として……」

 

「お前はニワトリか?」

 

「すみません、岡流斗先生。騒がしくしてしまって」

 

「いえ大丈夫。謝らなくてもいいですよ、戸村さん」

 

「ほら、行くぞ」

 

 俺たちが生徒会室を出ようとすると、先生が「あ、無我くん」と呼びとめた。皆を先に行かせて、先生の方に戻る。

 

「どうしましたか」

 

「いや。まさか無我くんが大会に、友達と一緒に出るなんて、と思いましてね」

 

「何かまずかったですか?」

 

「とんでもない!むしろ嬉しいんです。君が一歩、前へ踏み出してくれたことが」

 

「そうですか?……そんな感じは無いですけど」

 

「まあ、無我くんらしいですね」

 

 俺らしいってどういうことだろう。あえてそこには触れなかった。考えても分からない気がしたからだ。先生に挨拶をして部屋を出ると、3人が待っていた。

 

「よっし、零人も来たし、大会に向けて活動予定を立てるぞー!」

 

「お前は具体的にどうしたいんだ?」

 

「まずは皆の実力が見たいなー。七瀬ちゃんとトウカ先輩はどんなデッキかなー」

 

「棒読みは無視するが、確かに気になるな」

 

「そうだ、放課後に『キャッスル』に行こうぜ!そこで作戦会議だ!」

 

「ソウタくんにしては悪くない考えだね」

 

「……わ、私はバイト、お休みなので……その、だ、大丈夫、です……」

 

 まあ確かにその方が良い。俺も少し、デッキの調整がしたかったし。

 

「……お前の考えに乗った」

 

 

 *

 

 

 放課後。俺たちは店長に頼んで、『キャッスル』の一部のテーブルを使わせてもらえることになった。

 

「じゃあ最初は、七瀬ちゃんのバディについて!紹介してくれぃ!」

 

「テンションがおかしいな、このバカ」

 

「いつものことでしょ。じゃあ出てきて、《ケットシー》!」

 

 七瀬の合図に合わせて、彼女のカバンが輝きだした。

 

『ニャニャせ!やっとお披露目ニャのだ!』

 

「……猫だ」

 

「猫がバディかよ!?」

 

「……猫さん、かわいい……」

 

 帽子を被り、剣を携え、長靴を履いた、人語を話す猫が現れた。

 

『猫じゃニャいのだ!僕はケットシー。レジェンドワールドで鍛冶仕事を任されていた、立派なモンスターニャのだ!』

 

 突然、背後から異様な雰囲気を感じ、振り返る。そこにはトウカ先輩がいた。なぜか目を輝かせ、頬が緩んでいる。と思ったら、いきなり猫……もといケットシーに向かい、駆け出していた。

 

「……猫さん!その……もふもふして、いい、ですか……?」

 

「えーと、トウカ先輩?落ち着いてください、ね?」

 

『もふもふしていいのはニャニャせだけニャ!後、僕はケットシーだニャ!』

 

「ソウタ。先輩を止めるぞ」

 

「先輩、猫好きなのか?」

 

 2人がかりで何とか、トウカ先輩の進撃を抑え込んだ。まさかここまで積極的になるとは。

 

「じ、じゃあ次は先輩のバディをお披露目ってことで、よろしい?」

 

「猫さん……もふもふ……ハッ!す、すみません……私は、その、バ、バディが、いなくて……」

 

「……ファイトは出来ますか?」

 

「は、はい……」

 

「なら問題ないな」

 

「トウカ先輩!私たちのチューナーになって下さい!」

 

 ファイターがデッキ調整をする時には大抵、実戦形式で行う。その際の相手役がチューナーだ。

 

「……わ、私で……よければ」

 

「トウカ先輩がチューナーか!よろしくっす!」

 

「……は、はい……!」

 

「じゃ、早速なんだけど、七瀬ちゃんとファイトしてもらえないっすか?2人の力が見たいからさ!」

 

「いきなりすぎるだろ……」

 

「……わ、私は、大丈夫……です……。と、戸村さん、は……?」

 

「私も準備オッケーだよ!ファイトしましょう、トウカ先輩!」

 

 お互いにデッキを取り出すと、シャッフルを始める。

 

「さっきのを見ると、七瀬ちゃんはレジェンドワールドの[妖精]軸かな」

 

「……問題はトウカ先輩だな。どんなデッキなのか」

 

「楽しみだな!」

 

「先輩、お互いにシャッフルしましょう!」

 

「あ、……は、はい……」

 

 そうしてお互い、念入りにシャッフルを行なう。その様子を見ながらズボンのポケットからコアデッキケースを取り出す。エンペラーにもこのファイトを見てもらおうと思ったからだ。

 

「ん?何か落ちたぞ」

 

「え?……本当だ、サンキュー」

 

 ソウタが拾ってくれたそれは、お守り袋だった。俺にとってすごく大切な代物だ。

 

「何か、ボロっちいな」

 

「……ああ。昔、入院してた時に、ある人にもらってな」

 

「入院?何かあったのか?」

 

「まあ、いろいろと。正直あまり、覚えてないけどな。これをくれた人のことも、俺が入院してたってことも」

 

「ふーん……。んでさ、その中身、何が入ってんの?」

 

「カードだよ。エンシェントワールドの《竜撓不屈》って魔法だ」

 

 俺は中身を取り出す。俺自身、久しぶりにこのカードを見る。

 

「確か【対抗】で、ライフを+2するんだっけ」

 

「そうだ。そしてこのカードの名前の元は、“不撓不屈”という四字熟語だ」

 

「フトウフクツ……どういう意味?」

 

「強い意志をもって、困難にくじけない……だったかな」

 

 なぜこのカードをもらったか、よく分からない。誰がくれたのかも判然としない。ただ、少なくとも《ワールディアス》が関わっているのだろうとは思う。だからこそ、ソウタにそこまで伝える義務は無い、はずだ。

 

「おい、2人とも、準備できたみたいだぞ」

 

「マジか!よく分からん話し聞いてる間に終わってた!」

 

 ……こいつがバカで良かった。心からそう思った。

 

「トウカ先輩、特殊フラッグじゃなさそうですね」

 

「う……。と、戸村さんも、……普通の、フ、フラッグ、ですね……」

 

 互いに手札6枚、ゲージ2枚、ライフ10からスタートするみたいだ。どちらも通常のフラッグ。内、七瀬はレジェンドワールドだろう。

 

「じゃ、お互いに準備できたみたいだね。先攻と後攻は俺が決めてやんよ」

 

 そう言うとソウタは、ポケットからコインを取り出した。どうやらコイントスで決める気らしい。協議の結果、七瀬が表を、トウカ先輩が裏を選択した。

 

「んじゃ行くぞ、そーーれっ!」

 

 高く上がったコインが回転しながら落ちてくる。ソウタは素早い手捌きで、左手の甲を押さえた。ゆっくりと右手を退けると、コインは裏を向いていた。

 

「裏ってことは、トウカ先輩の先攻っすね」

 

「ひゃっ!……わ、私の、先攻……」

 

「負けませんよ、先輩!」

 

「……わ、私の、方こそ……!」

 

「じゃ、始めるぜぃ!バディ……ファイッ!!」

 

「「オープン・ザ・フラッグ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回、七瀬とトウカの卓上ファイト!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。