大会編までの繋ぎのようなものなので、小難しく考えないで頂けると幸いです。
ゼロの地
この俺、竜神シオウとバディのイデア。そんで預かり物のエンペラーは今、ゼロワールドにいるぜ!俺たちはこの世界で行なう調査の為、エンペラーは仲間たちを地球に連れていく為に行動してんだ!
「……おい、エンペラー殿。本当にここはゼロワールドなんか?」
『うむ。間違いなく、我が故郷である』
『シオウよ。これは本当に世界と呼べるのか?』
「どうだかな。少なくとも俺は、そうは思わないけど」
見渡す限りの荒野。点在する簡素なテントや、シートの上に置かれた僅かな物品。ボロボロになった建物。紛争地帯のそれに近いこの世界が、ゼロワールドなのか?
「……よし。ここで一旦、別れようか」
『我は仲間を連れて来よう。今は恐らく、食事の最中だろうからな』
「なら少し話して来いよ。久しぶりなんだから、つもる話しもあるだろ?」
『我らはその間に調査したいことがある。後々、貴殿らにも話しを聞く予定なので、そのつもりで』
『了解した。感謝するぞ、シオウ。そして創造神竜よ』
俺たちは6時間後にこの場所で落ち合うことにした。エンペラーを見送ると、それとは逆の方向へ移動を始めた。
*
「想像と違うな。もっと世界として成り立ってるもんだと思ってたが」
『戦でもあったのか?でなければ災害か』
「さあな……ん?何だ、あの建物?」
『あれだけが、やけに新しいな』
違和感しかなかった。周囲の建造物は程度こそ違うが破壊されているのに、ここは綺麗なままだ。
「よし、入ってみるか。イデア、先に行け」
『いやシオウ。お前に譲ろう。我は創造神竜だからな!』
「だったら先に入った方が神様っぽくないか?威厳あるよな、なあ?」
『断る!罠の可能性が高すぎるだろう!貴様は何か?バディを危険に晒すつもりか?』
「その言葉、そっくりそのままお返ししてやるよ!」
口論の末、俺が先に入ることになった。……後でこのSDチビ竜は焼いて食ってやろう。そう思いながらゆっくり、扉の前に立つ。少し早く、大きめに手を振った。反応は無い。どうやら動きを感知して作動する類の仕掛けは無さそうだ。
『シオウ、あの力は出さなくて良いのか』
「んー、あんましやりたくないんだよ。強制発動って色々、問題になるし」
『ちなみにその扉、触れるとまずいぞ』
急に真面目な口調になりやがった。イデアがそういうことを言うときは大体、本当に危険な場合が多い。
「どっかから撃たれるのか?それとも扉からビーム?」
『即死する』
「雑な上に怖いわ!誰が触るかこんなもん!」
触らずともまだ、やり方はある。気は進まないが、解放するしかない。持ち合わせのカードから1枚を選び、扉の前にかざす。
「フューチャーフォース、解放!!」
宣言に合わせてコアデッキケースが拳銃型になり、更に光が溢れだす。かざしたカードも同じく、光に包まれる。
「キャスト!《竜坤一擲りゅうこんいってき》!!」
カードから放たれた光が、右腕を包み込んで、まるで巨大なドラゴンの拳の様に変化していく。右腕を大きく引き、構えを採る。
「いっけええええ!!」
全力でパンチを繰り出す。光の拳がぶつかると、いとも簡単に扉は壊れてしまった。轟音と共に土煙が立ち込める。
『シオウ、加減をしろ!建物まで吹き飛んでしまうぞ!』
「分かってるよ。あくまで扉と、そこに付いてる罠をぶっ飛ばすだけだからな。ほれ、見てみんしゃい」
カードから光が失われると、拳も消滅した。普通の腕に戻った所で足元に落ちていた物を拾い、イデアに見せる。
『ぬ!これは、罠か!』
「ああ。とは言ってももう、構造も何も分からんがな」
推測では多分、円筒状だったのだろう。心配していた罠とやらは完全につぶれていた。配線が千切れて、飛び出てしまっている。もう作動しないのは明らかだった。
『だがシオウよ。扉に罠を仕掛けるということは、中に入れさせないようにする為であろう?』
「万が一、入られたら……。俺なら更に罠を仕掛けるね」
『我もそう思う。だがこの建物、他にそのような物の気配が無いのだ』
「あくまで、俺らならそう考えるってことじゃね?ここのオーナーさんはそんなこと、これっぽっちも考えてないらしいけど」
『どういうことだ?』
「ここを作り、放棄したヤツは罠を突破されることを見越して、あえて内部に罠を仕掛けなかった。恐らく中を見せて、調査をさせる為にな」
室内を歩きながら説明する。しかしイデアは困惑しているのか、口数が極端に減った。
「つまり俺たちは招かれたんだ。そして招いたヤツは、『ワールディアス・インシデント』に絡んでいる可能性が高い」
『な……。一体誰なんだ、その者は?』
「ヒントその1。“そいつは『ワールディアス・インシデント』に絡んでいる”。ヒントその2。“この場所を捨てなければならない程、そいつは追い詰められていた”」
『むう……。全く見当も付かん』
「じゃあヒントその3。“ここはゼロワールド。ゆかりのある人物は?”」
そのヒントにイデアの顔が、困惑から驚愕へと変わっていった。
『まさかこの場所は……』
「俺の推測では、無我夫妻のアジトだろう」
『どうしてそんなことが言える?カグラオサムの可能性もある!』
「ゼロワールドに繋がるゲートは特殊で、フューチャーフォースを持つ者かモンスターしか往来が出来ないようになってるんだと」
零人とエンペラー殿が出会ったあの日、実はタスクちゃんがステラちゃんに頼んで、ゲートの解析をして貰っていた。曰く、「謎の敵と戦った後だったので、連絡が遅れた」らしい。
解析の結果、このゲートは人工的に作られたものであることが判明した。同時にモンスターと、フューチャーフォースを持つ人間以外は弾かれるように、結界が張ってあることも分かった。そのゲートも結界も、無我夫妻が考案した物と一致したことも……。
『つまり、零人の両親は科学者だったと?』
「そーなるわな。ほとんど記録は残って無いのは残念だね」
『じゃあ、フューチャーフォースを持つ人間に限ったのは何故だ?通れる味方は多い方が良かろう?』
「さあ。もしかしたら特定の人間しか通れないようにしたかったのかもな」
イデアが更に首を傾げる。そして、何か思いついたような表情を見せた。
『息子を……零人を匿う為か?彼がフューチャーフォースを使えるとか』
「確かに俺もそう思ったよ。でも確証が無かったから、今回は確実なメンバーにさせてもらったんだ。まあ、イデアの能力で保護、とか嘘を吐いちまったのは申し訳なく思ってるけどな」
『我にそんな能力は無いからな。黙っているのも苦しいものだ』
「おしゃべりなお前にしては頑張ったよ。後で焼き肉、奢ってやるから許してちょ?」
『許す!ただし高級な物に限る!』
財布の中身が無くなることは想像できるが、仕方ない。イデアの功績は本来なら、この程度で済む訳が無いのだ。
「何が起ころうとしてんだ、一体……」
『シオウ!これを見てみろ!』
後ろでイデアが叫ぶ。振り向くと、上を見ながら固まっていた。何事かと思い、同じ方向を見る。
「おいおい、意外な名前の登場だぜ?イデアよぉ」
そこにあったのは、ゼロワールドのフラッグに描かれた絵と同じ物。そして、ある一文だった。
“
次回、また語り手が変わるかも?