以前にもやりましたが、今回は途中から場面が変わります。
一体、誰に変わるのでしょうか?
久しぶりに来た我が世界。何も変わりが無いようで安心した。
『ふむ。しかし地球とは違うものなのだな』
地球は空が青い。草木も生い茂り、存在する建物も大きい。食も豊かで娯楽も多い。全てが、この世界と違う。
空は曇っている。草木が生えるような地面は無い。建物は物心付いた時から倒壊している。食べられる物は僅か、娯楽と呼べる物もほぼ無い。それでもここが、我が故郷なのだ。
『あーー!!エンペラー様だーー!!』
突然、名前を呼ばれた。声のした方を向くと、3人の子どもたちがいた。
『元気にしていたか?ちびっこ共』
『うん!』
『でもエンペラー様いなくなっちゃったから心配だったー!』
『僕、デューク様にお伝えして来るね!』
『行こう、エンペラー様!』
相も変わらず子どもは元気なものだ。彼らに引っ張られ、城へと向かう。
*
『何!エンペラー様がお帰りに!?』
ゼロ・デュークが目を丸くする。城に来た子どもによると、突然開いたゲートにより消えたエンペラーが、これまた突然、戻って来たというのだ。
『うん!あ、ほら!エンペラー様だよ!』
『エンペラー様もっと急いで~~』
『皆、心配してるよ~~』
『こらこら、あまり引っ張らないでおくれ』
聞き慣れた声がした。窓辺に移り、下の道を覗く。2人の子どもが誰かの手を引いている。それはデュークにとって、この城にとって、そしてこの世界にとっての主の姿だった。
『エンペラー様!!』
その声にエンペラーが反応する。
『久しいな、デューク!!』
その顔は、これまでに何度もデュークが見て来た、屈託の無い幼子のような笑顔だった。
*
『エンペラー様、ご無事で何よりです』
城に入るなり、デュークが跪く。以前から「堅苦しいのはやめる様に」と言ってきたのだが、ほとんど効果は無い。
『デュークよ、そのような態度はやめてはくれないか?』
『いえ、そのような訳にはいきません。あなた様はこの城の主、ひいてはこの世界の王なのですから』
『……うーむ。頑固者は相変わらずだな』
その時、城内を駆ける音がした。何事かと思い振り返ると、2人の見知った顔がそこにはあった。
『うおおお!エンペラー様ぁぁ!お帰りなさいぃぃぃ!!』
『うるさいですよ、カウント。失礼しました、エンペラー様』
『おお、2人とも。今、帰ったぞ』
ゼロ・カウントにゼロ・バロン。普段は良い争いが絶えないが、いざという時には最高の力を発揮する名コンビだ。
『ところでエンペラー様。今までどちらに行かれていたのですか?』
『そうだよ~。どこにいたの?』
デュークが訊ねる。待ってましたと言わんばかりに、子どもたちも騒ぎ始める。
『うむ。街の方を散策していたら急に、ゲートに飲み込まれてしまったのだ。街の住人もろともな』
『ゲート?ということは、まさか地球に?』
『うむ。そこでバディが出来た。その者と共に戦う仲間もいる』
それからは地球で体験したことを話した。その1つ1つにデューク達は驚き、子どもたちは目を輝かせながら、聞き逃さないように耳を傾けていた。
『……という訳で我は、このゼロワールドに戻ったのだ』
『ま、まさかその様なことがあったとは……』
『予想もしていなかったですね、カウント』
『途中から付いていけなかったからよく分からん!』
『そ、そうか……』
地球での出来事を全て話し終えた後、皆に本題を伝えた。
『単刀直入に言おう。皆に地球へ来てほしい。そして我と、我がバディと共に戦ってほしい!』
『無我零人とやらと結託して戦え、ということでしょうか?』
『ああ。皆、会えば分かる。零人は信頼に値する男だ』
しかし彼らの顔は浮かない。
『エンペラー様、申し訳ありません。このデューク、そのご命令は聞けません!』
『な……何故だ!?』
『すまねぇが俺もデュークと同じ意見だぜ』
『カウントと意見が合うとは、珍しいこともあるものですね』
デュークのみならず、カウントにバロンまで……。しかしよく考えれば、彼らの意見も分からないでもない。行方知れずの主が戻って来たと思ったら、急に地球へ来いと言っているのだ。彼らだってこの世界での生活がある。反発するのも当然だろう。
『皆、申し訳ない。しかし我らには皆の力が必要なのだ。どうか、分かってほしい……!』
しかしそう簡単に彼らは折れない。それだけ大切なのだ、このゼロワールドが。
『申し訳ありません。やはりこのデューク、今回ばかりは命令を聞けません!』
『俺らもですよ、エンペラー様』
『私たちはこの世界で生まれ育ちました。長きにわたり我らを守り、育んでくれたこの世界を捨てることなど、私には出来ません……!』
『……そうか。確かにその通りだな』
彼らは何も間違ってはいない。むしろ間違っているのは我の方なのだ。そんなことは端から分かっている。しかしこのままでは、一向に話しが進まない。こうしている間にも時間は過ぎて行く。零人が、待っているのだ。
『皆の言うことは正しい。誰だって、急に地球へ来いと言われてすぐに、納得できるものではないからな。だが我らには時間が無い。我は3日後、再び地球へ戻る。もし気が変わったなら教えてほしい』
その言葉に、誰も返すことはなかった。予想していたより皆、意志が強い。ふと外の方を見ると、やはり空は厚い雲に覆われていた。
*
「ほう、竜神シオウがゼロワールドに……」
男がいた。暗く、しかし広い場所で、彼は青年と話している。
「それで?《ゼロ・エンペラー》が同行したのか?」
「はい。僕の調べでは現在、無我零人とゼロ・エンペラーは別行動。竜神シオウと創造神竜も地球にいません」
男と会話する青年は、黒いパーカーを着用している。見たところまだ10代後半だろうか。口調は大人しく、背丈は平均より低い。初対面の印象では「草食動物」が妥当だろう。
「そうか。なら丁度いいじゃないか。なあ、ドラコくん?」
「丁度いいって、まさか……!本当にいいのですか!?」
「ああ、竜神シオウになら使っていいよ。君の本当のバディ。本当の、君自身を」
男が不敵な笑みを浮かべる。青年はデッキを取り出すと、《システミックダガー・ドラゴン》のバディレアカードを破り捨ててしまった。
「悪いな……せっかくのお許しだし、お前みたいな温いヤツ、気に食わなかったんだ」
青年から殺気が漏れ出している。男はその様子を見て、必死に笑いを堪えていた。
「さあ、龍炎寺タスクでは楽しめなかった分、存分に楽しませてもらおうか。なあ、《パラダイス・ロスト》?」
懐から取り出したカードに話しかける青年は、血走った眼をしていた。殺意に満ちたその姿は、先程までの「草食動物」とは思えない。いわば「肉食動物」だ。
「あいつらは例の駐車場からゲートを開いた。まだ種が残ってるはずだ。押さえている間にこじ開ければいける」
「分かってるよ!早く行かせろ、俺の血がたぎっちまうだろ!」
「フッ……行って来い」
男の声には耳を貸さず、青年――ドラコ・アルマードはカードを使い、空間を歪める。素早い動きで歪みに入るとそのまま消えてしまった。
「全く。荒々しい方は実に面倒な男だ」
男が背後を見る。それに合わせ、発光が始まる。
「無我有作、無我春菜。お前たちの息子は、同じ轍を踏もうとしているぞ……フッ、クフッ、フハッハッハッハ!!」
男は笑いを堪え切れずに、吹き出してしまった。顔を押さえ、身もだえしながら笑うその姿は、どこか発狂しているようにも見えた。
「はぁ、よく笑った!……さて、始めようか、ワールディアス。全てを統べる為の戦いを」
その言葉に発光するもの――《ワールディアス》は眩い光を1回だけ点滅させた。それは、彼らにとって、「了承」の意味だった。
敵も遂に動き出します!
そして予告!近々、シオウがファイトする……はず!