前回の調査から、いろいろあった後のお話です!
俺たちがゼロワールドに来て6時間。最初にエンペラーと別れた地点に戻って来た。
「……まだかよ、あいつ」
『もしや、腹を空かして倒れているのか!?』
「んな訳あるか!お前じゃねーんだよ!」
『そうか分かった!道を間違えたな、あの男』
「よーし、日が暮れて来たからお前は寝てろ」
『良いのか!?ではお言葉に甘えて……』
いやずっと曇ってるだろ、と思った矢先、背後から声がした。
『お前たちは騒がしくないと、やってられないのか?』
振り返るとそこにエンペラーがいた。何故か傍には、鎧を纏った子どもの様なモンスターが付いている。
「おお、遅かったな、エンペラー殿。んで、そいつらは?」
『お主の隠し子か!』
『この世界の者だ。まだ子どもだが、実力は十分だぞ』
会ってまだ日が立っていないのに、エンペラーのスルースキルが上がっている……だと?こいつ、なかなかやりやがる……じゃなかった。
「んでエンペラー殿。なんでガキんちょが引っ付いてんだ?」
『おお。この者たちが付いていくと聞かなくてな』
「そいつらだけか?他のヤツはどうしたんだ。家臣とかいるんじゃないのか?」
そこでエンペラーの顔が暗くなった。何かあったのだろうか。
『……はは、断られてしまったよ。皆、地球には行かない、とな』
「……そっか」
『だが話しはつけた。シオウ、イデア。お前たちを城に泊めてやる事はできるぞ』
『本当か!流石は王様、話しが早いな!』
それなら確かに都合が良い。俺たちもエンペラーや家臣に聞きたいことがあった。野宿の準備はあるが見知らぬ土地だ、何が起こるか分からない。
「サンキューな、エンペラー殿。そんじゃお言葉に甘えるとしますか!」
*
「……でっけぇ……」
『う、うむ……。これは予想外、だな……』
城に着くなり俺たちは、ただ見上げるしか出来なかった。いや、ある程度の予想はしていた。調査した例の建物――いや、施設か――からも眺められたから、相当の大きさだろうとは思っていた。
「完っ全に見当違いだったな。マジでけぇ」
『いやはや全く。我らももっと精進せねばな』
「精進してどうするんだ?こんなご立派な城でも建てるのか」
『そうではない。このくらいの建物、大きさも測れないとは、不覚……!』
「どこ目指すつもりだよ!?」
『痴話喧嘩は終わったか?』
「「いや、違うからな!?」」
そうこうしている内に、城内から2体のモンスターが現れた。彼らもまた鎧を纏っている。
『イデア様、シオウ様。お待ちしておりました。私、《ゼロ・デューク》と申します。遠路はるばる地球より、我らがゼロワールドへようこそお越し下さいました』
『俺の名は《ゼロ・カウント》。異世界のカミサマにニンゲン!わざわざこんなとこまでよく来やがりましたな、コラァ!』
ああ、何故だろう。片方は問題ないが、もう片方はどことなくアホ竜を彷彿とさせる。
『我が名は《創造神竜 イデアライズ・ドラゴン》!遠路はるばる、地球から来てやったぞ!褒美をよこせ、家臣ども!』
ああ、メンドくせぇのが2体になりやがった。何だ今日は?ウザさ2倍デーなのか?
『シオウ様、イデア様はいつもこの様な態度なのでしょうか?私にはカウントが2人いるようにしか見えません』
「あー……いつもよりはまだマシかな。ま、類は友を呼ぶってやつだ。アホが2人に見えても、視覚に問題は無い」
『シオウ!この者、妙に気が合うぞ!』
『エンペラー様!デューク!コイツ、おもしれーぞ!』
『よし、皆の者、城に入れ。面倒くさい』
ナイス、エンペラー!無駄に威厳のある声で、言いたいことを言ってくれた。
『ごっはん!ごっはん!』
『美味な飯!美味な飯!』
うるさいアホ共が城に入っていく中、エンペラーが子どもたちに近づいていく。そしてゆっくりと屈むと手を差し伸べる。
『さあ、お前たちも。一緒に食べよう』
『僕たちもいいの?』
『うむ。たんと食え、やんちゃ坊主ども!』
『わーーい!!』
子どもたちが嬉しそうに笑いながら駆けて行く。その様子をエンペラーも嬉しそうに見つめていた。
「優しいんだな」
『当然のことをしただけだ。腹を空かせた子どもを放っておくほど、下郎になり下がってはいないからな』
王としての自覚、ってヤツか。流石にエセ創造神のアホ竜とは違うな。さて、俺も飯へ向かおうかな。
*
案内された部屋には高級そうなテーブルに、背もたれの高いイスがあった。テーブルには食欲をそそる美味しそうな料理が並んでいる。絵に描いたような豪華そのものだった。
「なんだこりゃ、めちゃくちゃ美味そうだな!」
『何をやっているのだシオウ!早く席に座らぬか!』
見るとイデアがご丁寧に着席していた。更によく見ると、創造神の力で造ったのか、タキシードを着ている。
『わーい!』
『ごちそうだーー!』
『お子様たちよ、落ち着くがよい。ここは城内、マナー良くしなければな』
おお、アホ竜が珍しくまともなことを言ってやがる。うっすらとだが神々しさも……。
『イデア。そう堅苦しくするな。好きなように食し、騒いでくれ。食事は楽しくなければな』
『本当か!ならばこんな物はボッシュート!』
掛け声に合わせて、タキシードが消滅した。と思うより早く、イデアは犬食いを始めた。……うん。神々しさなど微塵も無かった。
『イデア、ナイフとフォーク使うんだよー』
『食べ方汚いよー』
『よく噛んで食べないとダメって、デューク様が言ってたよ?』
うわぁ……。子どもたちの方がまともなこと言ってるし。
「つーかその食い方止めろ!子どもの手本にもなってねーから!」
『フッ、シオウよ。かの皇帝も言っていただろう。食事は楽しくなければ、とな』
「おう、そうだな。そんで?」
『我は今、猛烈に楽しい!!そして、もっと食う!!』
「楽しいのはいいが、犬食いは許さん。子どもたちにマナーを教わってこい」
『任せろ!よしお子様よ、教えてくれ!』
結局、よく分かってなかったのか。優秀なのかアホなのか、釈然としないヤツだ。
「っと、忘れるとこだった」
俺としたことが、食事に気を取られていた。先程の調査の報告を、エンペラーにしようと思っていたのだ。
「エンペラー、あとデューク。ちょっといいか」
上座に座るエンペラーと傍らに立つデュークに近づく。2人も何か察したらしい。緩んでいた顔を引き締めた。俺も息を吐き、真剣さを出す。
「とりあえず今日は、ゲート付近を見て回った。そこで少ーし気になる建物があったんだ」
『気になる?シオウ様、それは一体?』
「施設、いやもっと言うと研究所かな。廃墟の中に一棟だけ、真新しかったんで目立ってたよ」
反応を見る。エンペラーは表情も態度も変わりなし。デュークは……。
『あの施設を、調べる事が出来たのですか……?』
「ま、ちょっと頑張ったからな」
ビンゴ!何か事情を知ってるな、デュークのヤツ。よし、だったら小細工はいらない。直球ストレートで聞いてみよう。
「なあ、アンタは知ってんの?あの建物が何なのか」
『……ええ、少しは』
「もしかして、《ワールディアス》ってのと、関係あったりする?」
『……全く無い、とは言えないかと』
「資料や天井の図形、その近くにあった名前……。3人ほど聞いたことはあるけど、教えてくんない?出来れば最初から、全部さ」
『ふむ。全部は難しいが、知っていることを話そう』
やはりエンペラーも何か知っているのか。これで、こっちの仕事も終われるかな。……とか思っていたのが間違いだった。ここで手を引いておくべきだったと気付かされるのは、もっと後のことだ。
次回へ続く!
そして予告!皆さまもお馴染みの、あの人が登場します!
ヒントは《アポカドラス》。お楽しみに!