今回は再び、シオウ達の物語です。
少しだけゼロワールドについての謎が明かされます。
では、どうぞ!
さて、ようやく話しが進むと思ったが……。
「さすがにここで、込み入った話はまずいか」
『む、確かにそうだな。子どもたちもいる』
『ならばあの子たちはカウントに。彼なら適任かと』
そう言うとデュークはカウントと更にもう1体、別のモンスターの名を呼んだ。
『バロン、カウントを見ておいて下さい』
『お任せ下さい。あの者は何をしでかすか分かりません……。十分に注意致します』
「デューク殿、そちらは?出迎えのときには見なかったけど」
『これは失礼。私は《ゼロ・バロン》と申します。料理を作っていたので手が離せず……。申し訳ありません』
これはまた真面目そうなのが現れたな。しかもあの豪華な料理を、1人で作ったのか?
『では任せましたよ。シオウ様は私たちと共に。話すにはうってつけの場所があります』
「城内にそんなトコがあるのか?」
*
部屋を出た俺たちは、長い廊下を無言で歩いていた。中庭に目をやると色鮮やかな花が咲いていた。
空は変わらず曇ったまま。それでも先程より少し暗いと感じた。先頭にはエンペラー、その横にデューク。そして少し離れて、俺がいる。
「なあ、まだ着かないんかー?」
返答は無い。先程より歩幅が狭く、心なしか動きが固いように思える。無視ではなく精神統一のような、そんな雰囲気だ。そんなことを考えている間に、ある扉の前で2人は止まった。
『到着しました。こちらが先代の王の間でございます』
「先代……。っつーことは、エンペラーの前のエンペラー?」
『具体的に言えば、我が父ということだ』
父親!?エンペラーは直系の王族ってことなのか。でも退いたってことは父親は、もう……。
『先代は11年前に亡くられました……』
やはりそうか。でも、だとすると何故、先代の部屋で話しをするんだ?
『見せたいものがある。できれば零人にも立ち会ってもらいたかったが』
そう言いながらエンペラーが扉を開ける。2人が部屋に入るのを見計らって、俺も足を踏み入れた。
瞬間、強烈な力が室内から、向かって来るような気配がした。
何らかの力で髪が揺れ動く。これは風じゃない。もっと強い、プレッシャーのような……。
『シオウ、どうした。入ってこい』
「あ、ああ」
エンペラーの呼びかけで我に帰った。脂汗が顔を覆っている事に気付く。何だったんだ、今の感覚は?飯を食った部屋では何も感じなかった。明らかにここだけが違う。
『まさか、感じ取ったのですか?《ゼロフォース》を……』
「《ゼロフォース》?ああもう、またよく分かんないのが出てきやがったよ」
『まあ落ち着け。とりあえずそこの椅子にかけてくれ。立ち話では疲れるだろう』
想像していた豪華なそれとは違い、大量の本や資料が棚に収納されている。量が多いからか、床にも雑多に置かれていた。
エンペラーに言われた椅子を見ると、高級そうな材質のものが幾つもあった。彼は悠然とその1つに座る。……ブルジョワすぎて何も言えねぇ。まあ容赦なく座るんだけどね!
「そんじゃお言葉に甘えて、よっこいしょっと。さて早速お話しと行きましょうか、お2人さん」
『そうだな。しかし我らも分かる範囲しか答えられない。そこは勘弁してくれ』
「百も承知だよ。そんじゃあ最初は、この世界について教えてくれ」
『ああ。では聞くがシオウよ、お前はゼロワールドとは何を指しているのか、分かるか?』
不意に投げかけられた問いに、思考が一時停止してしまった。何だ急に?
「え……。何って、ここじゃないのか?今、俺たちがいるこの時空が、ゼロワールドだろ?」
『それは違う。お前の言うこの時空には、名前は無い』
「名前の無い時空……?つーことは、ゼロワールドってのは一体……」
『世界の名前ではなく、コミュニティの名前……と言ったところか』
「なっ……。どういう意味だ、それ!?」
『我らはそもそも、別のワールドから来たモンスターが集まっただけ。故に出身も種族も違う。だが我らは今、“ゼロワールドのモンスター”で属性“ゼロ”となっている。何故か?』
その質問が意味することは何か。少し考えてふと、あることを思い出す。それは部屋に入った時の感覚。それは驚いた表情のデュークの発言。
「まさかさっき言ってた、《ゼロフォース》ってのが関係してるのか?」
その単語にデュークは驚き、エンペラーは目を閉じて微笑む。やがてエンペラーから『正解だ』と告げられた。
『やはり感じていましたか。この部屋に残る《ゼロフォース》を……』
「軽くだけどな。それでも凄く強いチカラだったよ」
『それもそうだろう。我が父の力だからな、我とは比べ物にならん』
『《ゼロフォース》には選んだものを無に帰す、つまり消してしまう作用があります』
「そうか。その力で他のワールドから来たモンスターの持つ情報を失くして、新たに属性を与えたのか」
そこまで話して、新たな問いを投げかける。
「なあ、どうしてモンスター達は他のワールドからこの世界へ来たんだ?何故、ゼロワールドなんて集まりを作った?わざわざ情報を消して、何が目的なんだ?あの施設は誰が建てた?あそこで何をしていた?天井の名前の意味は?」
散々言い終えた後で気付いた。聞きたいことが多すぎだろ、俺。つーか謎すぎだろ、こいつら。
『疑問が山積みだな。まあいい、答えられる分は答えよう。まず施設の件は済まない。我らはあれが人間によって建てられた、としか知らない』
え……?今、さらっと重要なこと言わなかったか、こいつ?
『確か6年前。父のバディの友人が建てたと記憶しているが……』
「おい、それって無我
『……無我とはまさか、零人の亡くなった両親か!?その名は聞いたことは無いが……。デューク!』
『いえ、そのような方々はいませんでした。名前は確か……
オサム……。その名前に聞き覚えが2つあった。1つはあの施設の天井にあった名前。そしてもう1つは……。
「カグラオサム……!」
ワールディアス・インシデントに関わる資料、カグラレポートを書いた人物。現在は生死不明のその人物と同じ名前が出てくるとは……。しかも、闘導オサムは無我夫妻とも繋がっている可能性がある。カグラオサムも同じく、2人を協力者としていた。
「コミュニティ、ゼロフォース、オサム……。まだはっきりとした繋がりは無いが、何かあるな。間違いなく」
『そう言えばゼロフォースについて、先代が仰っておられました。“我らは集まるべくして集まった。あの敵と戦う為に”と』
「敵……まさかワールディアスか!?」
そうなると11年以上前、ワールディアスと戦う為に各ワールドから集ったモンスターに対し、ゼロフォースを使ったということか?そして11年前、事件が起きた。同じ頃に先代も死亡。そこから5年後にこの地に闘導オサムがやって来て、施設を造った……?
『全てはワールディアスとやらに繋がっているようだな』
「もうちょい情報が欲しいな。後でもう一度施設に行くつもりだけど、エンペラー殿とデューク殿も付いて来てくれ――」
その時、不意に窓が揺れた。間髪いれず、大きな音が耳を劈く。
俺はこの現象を知っている。爆発だ。外を見ると、件の施設の方が赤く輝いている。
『何が起こったのだ!?』
『あれは爆発!?あの方向には施設があります!』
「確かめに行くぞ!ガキ達は……」
『すまんシオウ、カウントとバロンに子どもたちと城の守護をするよう伝えてくれ。我とデュークで現場に向かう!』
「分かった。俺はイデアを連れていく。チンタラしてらんねぇ、先に行ってろ!」
扉を乱暴に開け、元来た道を走る。くっそ、何が起きた?あの付近に爆発物なんて無かったぞ?暴れるようなモンスターもいなさそうだし……。
零人たちや応援のバディポリスではないハズだ。ゲートが完全には閉まっていないのを知っているのは、俺とイデアだけ。となると他の誰かががゲートをこじ開けて来たのか!?そうだとすると考えられるのは――。
「まさか、敵?」
ワールディアスかその仲間に知られたことになる。ゲートも、この世界も。
最悪の数歩手前ってとこか……。
いよいよ事態が動こうとしています。
過去と現在を繋ぐ謎。ワールディアスの、作者の目的は何なのか?そもそも作者にそんなものあるのか!?
次回へ続きます!