仕事に追われて、投稿がかなり遅れました。すみませんでした。
正直、今年いっぱいは不定期の更新になってしまうかもしれません。ご了承ください。
では、本編スタートです!
――目覚めよ、少年。時は来た。
……誰だ?いや、この声、どこかで聞いた覚えが……。
――我は皇帝。無を司り、邪を滅する者。
確か昔……。そうだ、子どもの頃に、父さんの近くで……。
――今、再び、邪なる者が蠢いている。お前の能力が必要だ。
俺の能力?何だよそれ?
――《ゼロフォース》。父より受け継いだ能力を、解き放て。
ゼロ、フォース……。そんなものが俺の中に?というか、ちょっと待て。お前は何者だ?
――いつか思い出す。時が来れば、必ず。
なあ、まさかアンタ……。
――頼んだぞ。有作の息子……零人よ。不甲斐ない我らの代わりに、世界を救ってくれ……!
待てって!アンタは、父さんのバディだろ!?
――目覚めの時だ。君の世界へ戻れ。そして始まりの、ゼロの地へ向かえ。
おい!聞きたいことが山積みなんだよ!教えてくれ!何で父さんと母さんは死んだんだ?俺はあの時、何を忘れたんだ?今、何が起きようとしてるんだ?
――息子に、よろしくな。
無視すんな!勝手に終わらせようとするなよ!頼むから教えてくれ!……分かんないんだよ、何も。もう嫌なんだ。知らないうちに失くすのは……。だから!
「だから!」
目を開けると、世界は暗闇で覆われていた。全身が汗で湿っている。呼吸は乱れて、少し苦しく感じる。時計の動く音が聞こえる。ここは俺の家か、とかろうじて思い出す。あの後、疲れて帰って来て、寝室に入って……。
「……寝ちまってたのか」
今は頭が回っていないらしい。口の中が渇いている事に気付くのに、割と時間がかかった。
「……水」
仰向けから起きようとするが力が入らない。少し意識して上半身に力を加えてやると、起き上がることが出来た。同様に右腕にも指令を出す。今度はすんなり動いてくれた。息を吐きながら立ち上がる。
少しふらつきながら、冷蔵庫に目もくれず、洗面台の方へ向かった。水を飲むついでに顔を洗いたいからだ。扉を開けるとまず、鏡で自分の顔を見る。正に寝起きそのものだ。
「……ひでぇな」
蛇口を捻り、水に口を近づける。思っていたより冷たくはないが、渇いた喉を潤すには十分だった。気分が満たされた所で今度は手で受け、それを顔に擦りつける。同じ動作をもう一度繰り返して、近くのタオルに手を伸ばす。
「……何だったんだろう、あの夢」
顔を拭きながら考える。間違いない、あれは父さんのバディモンスターだ。“我は皇帝”、“無を司る”か……。何かエンペラーみたいだな。あいつ、今頃どうしてんだろう。シオウさんやイデアとちゃんとやれてるかな。仲間と話しが出来てるといいな。
“――始まりの、ゼロの地へ向かえ”
脳内でふと、その言葉が気にかかる。ゼロの地って何だろう。向かえと言われてもどこへ?聞いたことも無いし、当然ながら地図にも載っていないだろう。
「……ただの夢、なわけ無いよな」
まず、ゼロの地は存在すると仮定する。じゃあどこに?考えられるのは2つ。案直だがゼロワールドか、もしくはこの地球だ。向こうの世界はよく分からないから地球だとしよう。
「もしかして、エンペラーと行った場所か?」
いや、それは特定できないか。“ゼロ”という言葉でエンペラーやゼロワールドを連想するのは、やはり単純すぎかな?でもあの夢の声や発言……。関連はあるはずなんだ。
――言葉通りに受け取ってみるか。
“始まりの、ゼロの地”。俺にとってのそれはあの場所しかない。エンペラーと、ゼロワールドと初めて出会った駅裏の駐車場。始まりというのが出会ったことを指すのなら、そこで間違いないだろう。
「……行ってみるか」
結論に達した時、玄関の前まで来ていた。右手に相棒のいないデッキを握りしめて。いつの間に出て行く準備をしていたのか分からない。無意識だった。
何だよ。俺は結局、皆の前で格好つけてただけか。寂しいのをやせ我慢して、見栄張って……。そんなことを考えながら靴を履き、ドアノブを回す。そのままゆっくりと押すと、外はすっかり夜になっていた。さあ、確かめに行こうか。ゆっくりと前へ歩きだすと、少しだけ、風が吹いた。
*
「はっ、はっ、はっ……」
何だか分からないが、強い衝動に駆られていた。急がなければと焦ってしまう。その焦りが俺を走らせていた。
「……はぁ、はぁ、……着いた……」
やっと駐車場の入口だ。立ち止まって呼吸を整える。奥の方には日中と同じく、空間の歪み――ゲートが見えた。そしてその傍には……。
「……タスク?」
目を凝らして見たが、やはり龍炎寺タスクと《超星竜 ジャックナイフ》だ。ちなみに俺が初めて見たときは《逆天星竜 ジャックナイフ》だった。タスク曰く、「通常は超星竜で、必要に応じて能力が変化する」らしい。
「タスクーー!!」
「え、零人さん!?何故ここに?」
彼らの元へ走って近づく。タスクはどうやら本当に焦っているようだ。俺がこの時間、この場所に現れる事は予想外だったらしい。
「何故って、ねぇ……」
夢で言われた事を確かめに来た、なんて言えない……!伝えた所で信じてくれる保証は無い。そもそも俺が勝手に見た夢の話しだ。現実とリンクするなんて有り得ない。
「……んーと、あれだ、散歩してたんだ。そんで2人が見えたから来ちゃった」
「ハァ……。零人さん、嘘はつかない方がいいですよ」
『エンペラーの事が心配なのだろう?』
うっ……図星だ。だが会いたくて仕方ないとか、そういう感じじゃない。もっと何か、言い表せない不安が心の奥で渦巻いている。
「それもあるけど……夢を見たんだ」
話してみようと思った。タスクはきっと、バカにしない気がする。
「どんな夢ですか?良ければお話ししていただけますか?」
「……聞いた事のある声で、“ゼロの地へ向かえ”とか言ってた。何か気がかりでさ、もしかしたらここかと思って来たんだ」
「“ゼロの地”……聞いた事も無いですね。でも、確かに言葉から考えると、この場所は候補の一つにはなりますね」
やはりタスクは優秀なのだろう。少しの会話でここまで推測できるとは正直、思っていなかった。ここまで来ると、俺とは頭の作りが違うとしか思えない。
「そういやタスクは何でここにいるんだ?仕事で帰ったんじゃなかったか?それによく考えたら……」
『何故、イデアが閉じたはずのゲートが開いているのか。だろう?』
ジャックが口を挟む。確かにあの時、ゲートが閉じるのを確認した。なのに今、それが開いているのはどういう事なんだ?
『実は私たちも、それを調べに来たのだ』
「確かにあの後、一旦バディポリスに帰りました。ですが40分ほど前に緊急のアラームが鳴ったんです。確認するとこの場所で、何らかの手段によってゲートが開けられた事が分かりました」
「開けられた?」
という事は、もう皆が帰って来たのか?いや違う。もしそうなら、エンペラーが家に来ないのはおかしい。つまり“開けられた”とは……。
「別の、誰かが……?」
タスクが静かに頷く。肯定。それは漠然とした不安が、現実になった瞬間だった。
エンペラー達に何かが起きている。それは間違いない。
「それじゃあ、皆は?」
「分かりません。それを確かめる為に、今から向こうへ行こうとしていた所です」
「……タスクは行けるのか?」
「一応は。何で来たんだ、ってシオウさんに怒られるかもしれませんけどね」
「……それ、俺も付いていくのはダメかな?」
『どういう意味だ?』
ジャックが俺の発言を訝しんだ。バディポリスの仕事に便乗したいと言っているのだ、無理もない。
「ダメだ!!」
タスクの強い口調に気圧される。その表情はどこか強張っているようにも見えた。
「零人さん、あなたは事態を甘く見過ぎている!何が起きているのか分からない以上、一般人が深入りするのは危険すぎるんだ!怪我をしてからじゃ遅い。最悪の状況も有り得る。あなたはそれでも……!」
「行くよ。あいつの所に。大切なバディだから」
今の俺には力は無い。送り出したのも、本当は独り善がりな『強さへの濁望』が根底にあったからだと、気付いてはいる。それを高いプライドで覆い隠している事も。
「だからタスクが何と言おうと、俺も行く」
気付いたからこそ譲れない。醜いプライドを、ただのプライドで終わらせたくない。あいつともう一度ファイトがしたい……。
言い訳ばかりの自分を、少しでも変えてくれたバディの為に、力になりたい。
「ここ、くぐれば向こうに行けるんだよな?」
「……そんな事で納得がいくと思ってますか?」
『お前のそれは勇気でも信頼でもない。プライドが高いだけの、幼稚な考えに虚言を混ぜた男が拗ねて、癇癪を起こしているだけだ!』
「……それでもいい。進まなきゃ始まらない」
「零人さん!いい加減にしてください!あなたのワガママに付き合っている時間は無いんだ!」
「おお!?……気色悪い感触だ。ゾワッとしやがる。タスク、先に行くぞー」
『おい!話しを聞け!!』
「……仕方ない。ジャック、僕たちも行こう!」
*
ゲートの中は意外に広く、全身が浮いた感覚に襲われる。濃い赤色を基調に黄・黒・オレンジが混ざった異空間は、どこまでも続いているようにも思えた。
「うわっ!天地が分からねぇ、ぐるぐる回ってるなぁ~」
「零人さん!」
タスクが俺の手を掴み、引っ張る。そのおかげで体制を直す事ができた。
『全く……気をつけろ!大口を叩いて、癇癪を起こして、結果はその有様か!』
「その程度なら、今ならまだ帰す事も出来ますよ?」
「悪かったよ、ワガママ言って。……そうじゃねぇとお前ら、絶対ダメって言うだろ?」
そう言ってタスクを見る。出来るだけ、笑顔で。
「……まさか僕たちを、ワザと怒らせた……?」
「……2人とも必ず正論で立ち塞がる。そう思ったんだ。だから判断を少しでも逸らせる為に、感情を昂らせたんだ」
『成程。怒りで正常な判断が出来ない状態で上手く誘導すれば、自分の土俵に持っていける。そういう事か』
「……ジャックの言うとおりだよ。まあ、冷静に誘導できた訳じゃないから、42点って所かな?」
そう、実は失敗だった。タスク達の怒りが予想外に本気だった事。そして俺が熱くなって、本心を言いすぎた事。この2つが原因だ。
「ハハッ、そうか。僕たちは零人さんにしてやられたんだね」
「ゴメン。いくら何でもやりすぎたよ。それに任務の邪魔しちまって、本当に悪かった」
『全く、何て男だ……。まさかバディポリスを騙すとはな。本来は公務執行妨害も含めて、即、逮捕だぞ?』
「……はい。反省しています。すんませんでした……」
とにかく平謝りしか出来なかった。これは彼らの任務、本来は自分は居てはいけないのだから。
「仕方ない。彼の策略に嵌まった、僕らのミスだ。零人さん!情状酌量の余地があるとして、今回は不問とします。代わりに1つだけ約束してください」
約束?一体、何を誓わせられるのだろうか?かなりの無理難題とか?
「この先の世界で何があっても、死なないでください」
何も言い返せなかった。自分の事しか考えられなかったのが恥ずかしく思える。タスクは怒りを鎮めて、俺の心配をしてくれているのだ。
「……分かった。お前らも、生きろよ」
『言われずとも、そのつもりだ!』
「当然です!」
その時、正面の空間が輝きを見せた。いよいよゼロワールドだ!
「エンペラァァァ!!」
叫んだ瞬間、3人揃って空間から飛び出た。俺は着地に失敗し、不格好に転んだ。タスクは……多分、大丈夫だろう。ジャックに至っては飛べるし。
『な、零人!?何故ここに?』
「はは、来ちまった」
あからさまにエンペラーは驚いていた。その中に、困惑の感情が混ざっている気がした。
『何だ貴様らは!何故この地に来た!』
え、誰?モンスターなのは分かるけど、鎧を着けている?てことはエンペラーの仲間なのか?
「シオウさん!大丈夫ですか!?」
『助太刀に来たぞ!』
「零人!?タスクちゃんにジャックまで……ぐぅっ!」
『シオウ、無理をするな!』
上から声がしたので見ると、シオウさんが宙に浮いていた。その横には……イデア?なのか?巨大な白竜が彼を守るかの様に、傍に付いている。
そして彼らが向く先に目を向ける。黒いパーカーの金髪男が、黒と白の体色をした竜に支えられていた。シオウさんも相手も、満身創痍と言った様子だ。何があった?バディファイトならどちらかが勝ったはずだが……。
「……何で2人とも、苦しそうなんだ?」
「……後で、説明する……。今は退くぞ、イデア!」
『分かった!タスク、ジャック!零人たちも手伝え!』
手伝うって何を?と考えていると、タスク達はイデアの元へ飛んで行ってしまった。ジャックがSD化を解いている。まさか手伝うって、イデアを押して、逃げる速度を上げるってことか!?
「零人さん!エンペラー!早く来て下さい!」
ああ、それっぽいな……。なら行くしかねぇ!俺はエンペラーにしがみつく。
「エンペラー!ジェット噴射だ!」
『うむ!久しぶりだな、行くぞ!』
家の屋根を突き破って以降、基本的に禁止してきたジェット噴射がまさか、こんな所で役に立つとは……。どんな物にも使い道はあるという事か。
『テイク、オフ!』
エンペラーと俺の身体が急速に浮いた。そのままイデア達の方へ向かう。
「……さ、せ……るかぁっ!!」
男が叫ぶと、白黒の竜が口を大きく開けた。何か来る!
「キャ……スト!」
シオウさんの声だと思った瞬間、白黒竜から光が発せられた。同時にシオウさん側からエネルギーの塊が現れる。
『お前たちは逃がさない!食らえぇぇッ!!』
「《正義の鉄槌!》!オラアァァッ!!」
「「うわああああっっ!!」」
光とエネルギーがぶつかり合う。一瞬にして消滅したかと思う間もなく、衝撃波が襲う。
「ぐ……っ!エンペラー!出力最大でいけるか!?」
『当然だ!何としても届かせる!』
言うが早いか、急激に推進力が上昇する。それは衝撃波を物ともしない程の力強さを誇っていた。
「「届けぇぇぇっっ!!」」
エンペラーの肩に移動して、背負われている様な状態になる。そこから俺は必死に手を伸ばす。
「零人さん!」
タスクが、その手を掴む。強く、そしてしっかりと握り返す。
「サンキュー、タスク!さあ、行こうぜ!」
『ならば城へ!案内は私が務めます!』
『頼むぞ、デューク!さあ、イデアを押すぞ、ジャック!』
『おう!進めぇ!!』
俺はジャックに飛び乗った。エンペラーが、自分に掴まったままでは危険だと判断したからだ。乗り心地はかなり良い。しがみ付かない分、腕も休ませる事が出来る。
あいつらから、何とか逃げ切らないとな……。
ついに零人もゼロワールドへ入りました。これで彼は直接、エンペラーの仲間と対話が可能になりました。
次回へ続きます!