今回は、逃亡を始めた零人たちとドラコ・アルマード=ラグナの追跡劇から始まります。
今更だけど主人公が主人公してないなぁ。
では、どうぞ!
なんやかんやあって俺は、タスクとジャックと共に、ゼロワールドに来た。と思ったらいきなり逃亡の手助けをすることになった。あの金髪黒パーカー男、あからさまに敵だけど……。一体、何者なんだ?
「ぶわぁぁぁ……。風、強ぇよぉぉぉ……」
ただいま絶賛、超高速飛行中。前からイデア、ジャック、エンペラーの順で飛んでいる。イデアに掴まっているデュークというモンスター曰く、『これなら、約2分で城に着く』らしい。時間に換算してもらえて分かりやすい事この上ない。だがしかし風圧が凄い。
「敵は!?追って来てますか?」
「ばばばばば……」
「何て言ってます、それ?」
後ろを振り返ると……うわぁ、追って来てる!でもその像は思いのほか小さい。どうやら距離はとれているようだ。だがしかし風圧が凄くて、口で伝えられない。とにかく身振り手振りで後ろを示す。
「そうか、まだ追って来ているのか……。少し待って下さい」
そう言うとタスクの身体が光に包まれる。そして、髪が伸びた!?何それ、超常現象!?
「フューチャーフォース解放を申請します!……よし、許可が下りたよ、ジャック!」
『久しぶりだな。何を使う気だ?』
「とりあえずこれだね。キャスト!《バーレカル・バレット》!ターゲットロック……ファイア!」
タスクの掌に赤い球状のエネルギーが作られる。そして、“ファイア!”の掛け声でそれが相手に向かって発射された。……おい、カードが実際に発動したぞ?
『ぐはぁっ!!』
白黒の竜に当たった……!すげぇ、本当に効果があるのか。つーかシオウさんもカード名を言ってから、エネルギーが飛んでいって……。何者なんだよ、こいつら。
「……ん?どこに行く気だ?」
白黒の竜が急に降下していく。その手の中で、男がこちらを睨んでいるのを感じた。
「どうやら、退く事を選びやがったな……!」
「シオウさん!無理しないでください!」
『皆様、城に到着します!減速してください!』
「ばばばばば……」
「どうしたんですか?」
『零人、言いたい事は分かるぞ。我らはどうやって止まればいい?』
『エンペラー、マズイではないかぁぁぁ!!』
おい、バカしか居ないな、俺ら!もうちょい賢いヤツは……。
「ジャックとイデアは直立の体勢に変えて、羽ばたいて!エンペラーはジャックにぶら下がって逆噴射をお願いします!」
『『おう!』』
「タスク……ちゃん!俺と、シールド、張らない……?」
「仕方ない……。無理しないでくださいね?」
「「キャスト!《ドラゴンシールド 青竜の盾》!!」」
2人が叫ぶと、青い竜の顔をした盾が2つ、結構大きめなのが出てきた。しかも俺たちの後ろに、反りかえった裏面を見せて、縦向きに並んで。
『羽ばたけ、ジャックーー!!』
『うおおおっっ!!』
『逆……噴射!ハァッ!!』
3体が進行方向と逆向きに力を放出する。すると、それまで出ていた速度が一気に抑えられる。俺はジャックに掴まったまま、悲鳴すらまともにあげられない。急な体勢の変化に急停止、感じた事の無い程の重力が襲いかかる。
「ぬ……ぐっ……!」
やがて空中で身体が一瞬、静止する。かと思った矢先、直ぐに逆方向へと動き出す。まずい!羽ばたきと逆噴射の勢いが強すぎる!?少しずつ後ろに戻される……!!
「いっけぇぇぇ!!」
「とまれぇぇぇ!!」
その時、背中に固い何かが触れた。まさか、これは……。
「……青竜の盾……か?」
先に張った2つの盾が、縦向きになった俺たちを包む。衝撃はほとんど無い。もしこれが無かったら、後ろへ吹っ飛ばされていただろう。張る場所が離れていたら、勢いが付きすぎて叩きつけられていたかもしれない。
絶妙な位置に、間違いなく盾を並べたのか。あの一瞬で減速・後退・停止の方法を考えつき、適切に指示して、実行に移した……。しかもちゃんと城の前で止まった。すげぇな、バディポリス。
*
超スピードで城内に到着した俺たちを待っていたのは、これまた鎧を装着したモンスター達だった。
『エンペラー様、早くこちらへ!皆様も……?』
『おいおい、何者だ、テメェら?』
片方がどこからともなく槍の様な武器を出す。明らかに俺とタスク、ジャックを警戒している。
『よせ、カウント。この者たちは我がバディと、そしてシオウの仲間だ』
『え!?……それは失礼した。んで、どっちがエンペラー様のバディだ?おい、空色の髪のイケメン!お前か?』
『当然でしょう。エンペラー様ならば、バディポリスを選ぶはずですよ』
『ならばこの男は襲撃者の仲間という事か……。デューク様、戦闘許可を』
……まあ、そうなるわな。自分の王のバディはイケメンの方がいいに決まっている。つか物騒な事になりかけてる!
「……すまん。俺がエンペラーのバディだ」
『嘘だ!こんな見るからに薄っぺらいガキが、ありえねぇ!』
『貴様を選ぶ様な真似、エンペラー様がするはずが無い!』
『バロン、カウント。この者を消せ』
「ちょっ、待て待て!信じてくれよ、な?カッコいいお2人さん?」
そんな言葉に惑わされず、彼らは武器を出して向かってくる。槍に、もう片方は短剣みたいなヤツか。いやそんな事を言っている場合じゃない。詰んだな、俺の人生……。
『待て』
荘厳な、そして威圧感のある声だった。
『まずはシオウを横にさせる。タスク、ジャック、手伝え。皆も武器を納めろ』
「……エンペラー?」
怖い。初めてエンペラーに対してそう思った。これがコイツの本当の姿、なのか。
『はっ、直ちに。2人とも、武装を解除。シオウ様を運んでくれ。私はこの男と……少し話しをする』
『了解。おっさん、大丈夫か?』
「……おっ、さん……言うな……っ!」
『デューク様、お気を付けください。その男、怪しすぎますから』
そう言うと彼らは行ってしまった。後を追うタスク達と目が合う。頷くと、2人もまた頷き返してくれた。大丈夫、という意味が伝わったらしい。そのまま俺はデュークというモンスターと2人きりになってしまった。
「……えーと、デューク……さん?」
『まずは自分の身分を名乗るべきじゃないのか?』
ごもっともな意見だ。と言っても紹介するほどの高い地位ではないけど。
「……無我零人。16歳で一応、普通の高校生をやってる」
『私は《ゼロ・デューク》だ。単刀直入に聞く。貴様は襲撃者とどのような関係だ?事と次第によっては……』
デュークが右腕を変化させる。銃、と気付いた時にはすでに、銃口を突き付けられていた。何もできない。俺は両手を上げて、無抵抗をアピールした。
『撃つ。貴様が丸腰だろうと構わず、消す』
「……はは、めっちゃ怖ぇ……」
『質問に答えろ。貴様と襲撃者の関係は?』
「……多分、関係無いと思う。自信は無いけど」
本当によく分からない。少なくとも記憶の中では……あ。
「……なあ、あいつ、黒のパーカーだったよな」
『そうだが、それが?』
思い当たる節はあった。エンペラー達と出会ったあの日、タスクとファイトをした奴だ。確か黒いパーカーを着て、フードを被っていた。怪しい……。
「……もしかしたら出会った事はあるかもしれない。エンペラーと話さないと何とも言えないけど」
『エンペラー様を呼び捨てにするな!それに、やはり敵か!?』
「……あぁもう!どうして二択しかないかな、あんたは!ただ前に会ったかもって言ってるだけだろ!?仲間ですなんて言って無いからな、勘違いすんなよ!?」
『え……ちょ、ちょっと……』
「会ったばっかで失礼だが、言わせてもらう。お前は考えが凝り固まってんだよ!お前の周りには味方か敵しか居ないのか?状況からして仕方ないが、少しはエンペラーの言う事も、俺の事も信頼しろ!」
『お、おい……キャラが違うぞ?』
「誰のせいかな!?人の事、頭から疑ってかかって……」
そこで我に返った。まずい、カッとなって言い過ぎた。とりあえず謝らなきゃ……。
『……武装解除』
はい?何か腕が戻った?というか鎧が無くなった?つか、え?
「デューク、お前……女の子だったの?」
泣きそうな顔をした少女がそこにいた。ブロンドのポニーテールに碧眼、外見は人間そのもの。俺とそう変わらない位の年齢に思える。
『うわぁぁぁん……。そんなに怒らないでよぉ……』
ついに泣き出してしまった……。いかん、女性陣のおぞましい顔が見えてくる気がする。
「す、すまん。言い過ぎたよ。お前も仕事だもんな、疑ってかからないとだよな?」
『……こっちに来て』
優しくしたのが効いたのか、先程よりは泣きやんだデュークが歩きだす。皆が向かった方じゃない?
「何処に行くんだ?」
『私の部屋……。そこでしっかり、話しをしよう。もう泣かないから』
そう言うと彼女はさっさと行ってしまった。話しって……何か嫌な予感しかしない。でも……。
「……行くしかないか」
彼女を追うように歩きだす。今、俺が動かなければいけない。直感がそう囁いた気がした。
今回も様々な事が起こりました。ついに零人がフューチャーフォースの存在を知ったり、デュークが女の子だったり。
次回は多分、2人でイチャイチャ……しないな、うん。
ではまた、お会いしましょう。