基本、零人はリア充にさせないようにしていましたが、結構エンジョイしてるなぁ。
リア充はサツキさんだけでいいのに。もしかしてハーレムとかってオリ主の宿命なんですかね?
「ここが……」
城内を少し歩き、中庭を抜けて、無骨な感じの扉を前にしている。ここが噂に聞く女子の部屋……!成り行きで付いてきてしまったけど、本当に入っていいのか?
『どうぞ、入って』
デュークが扉を開ける。理解はしている、これは覚悟を決めなければならないヤツだ。心の中でソウタに敬礼する。
我が友よ、俺は今から、女子の部屋に入るぞォォォ!!
「……失礼しま、す……?」
扉を通った先には本の山……。古そうな、しかし高級そうな椅子が倒れている。あれ、想像より女子らしくは無い?というか何か、来る……?
“来たか、ゼロを継ぐ者……有作の子よ……”
「……え?」
夢の中で聞こえた、あの声だ。何故か一瞬で理解した。そしてふと、デュークと目が合う。彼女はこちらを見ていた。まるで観察でもしているかのように。
『何か感じた?』
背筋が凍るような気配を、しかし同時に、温かい優しさを感じた気がした。
「……何つーか、父親みたいな……感じ?」
『そう。やっぱりあなたが、エンペラー様のバディなのね……』
え?え?どういう事?今ので何か納得したの?
『薄々、感づいてるとは思うけど……ここは私の部屋じゃない』
「……じゃあ、誰の部屋なんだ。エンペラーか?」
『そう。ただし、先代のね』
先代……それってエンペラーの前の皇帝って事か……。視線を外すと、机の上に写真立てが見えた。そこに映っていたのは、椅子に座るモンスターと、その横に立つモンスターの姿。そして……。
「なぁ……その写真」
『あぁ、これ?座っているのがエンペラー様で、立っているのが先代様』
「……若いな。いつ撮ったんだ?」
『んーと、確か15年前じゃなかったかな』
そうか……。あの事件――父さんと母さんが死んだのは11年前。その4年前に撮られたって事は……。
「やっぱり、父さんが先代のバディだったんだ……!!」
写真に写っていた2体のモンスター。その横に、笑顔を向ける人間の男女がいた。女性の方は赤ん坊を抱いている。
この2人を俺は知っている。いつも優しく、時に厳しく、いつも笑っていてくれた人達。父さんと母さんだ。抱かれているのは、幼い俺。
「そっか……。だからさっき、声がしたんだ」
『声?誰の、どんなか分かる?』
「“ゼロを継ぐ者”――そう言ってたよ。……なぁ、さっきから気になってんだけど、机の引き出し、見てもいいか?」
『何で?何もないと思うよ?』
「……俺もよく分からんが、見ないといけない気がするんだ。頼む!」
手を合わせ、彼女の目を見つめる。次第に彼女の方が目をそらし始めた。
『ま、まあ、いいんじゃないかな?……ていうか、あんまり見つめるな~!』
「悪い悪い。サンキューな、デューク」
礼を言うと、今度は口をパクパクと動かし始めた。多分、男慣れしていないのだろう。ソウタみたいにからかい甲斐のある、面白い子だな。
「さて、と。直感だと……ここだな」
上から2段目の引き出しを開ける。頭の中で、何かが囁いた気がした。
――それでいい。それが我らの、そして君の道だ――
うん、そうだな。これが俺の新たな道、新たな力だ。目を閉じ、息を吐いてから、瞼を開ける。
「……これは……!」
そこにあったのは、カードの束。恐る恐る触れてみると、自分でもわからない程の早さで理解できた。これは父さんの、いや、両親と先代の使っていたデッキだ。手にとって見てみると、知らないカードが沢山ある。
『嘘……そんなの今まで無かったのに!?』
「多分、何かの力で隠れてたんだろ?そんな気がする」
『何かの力って……まさか、《ゼロフォース》?』
「ゼロフォース?……あ、あった。それってこのカードか?」
それはデッキの中に入っていた。アイテムの様だが、名前以外の情報が分からない。よく見ると情報はあっても、イラストの無いカードも何枚か混ざっている。
「このままじゃ使えないなぁ……。どうしよう?」
『私に聞かれても……。そうだ、エンペラー様なら何か分かるかも!』
確かにそうかもしれない。しかし……。
「うーん、今はあまり話しかけない方がいいかもなぁ」
『あ、そっか。今はシオウ様の治療中だよね……』
「……まあ、後で聞いてみるさ。とりあえずエンペラー達の所に行こう。シオウさんが心配だし、何か手伝えることがあるかもしれない」
『そうだね。私はあなたにゼロフォースを感じてほしかっただけだから。あ、でもゴメンね、私の部屋とか言って騙しちゃって……』
ああ、そう言えばそんな様な事があったっけ。時間としてはそこまで経っていないのに、何年も前の様にも思える。考えてみればサツキさんや美奈さん、シオウさんと出会ってまだ1日も過ぎていないのだ。ストレスフルにも程があるだろ、俺。
「うーん、そんなのいいよ。浮かれて注意しなかったのは事実だし、何かもうそんなのどうでもいい位には疲れてるし」
『あはは……。お疲れ様、だね』
「……まだ終われなさそうだがな……」
カードを上着のポケットに入れると、俺たちは皆のいる部屋に向かった。先代の部屋を出る時、優しい声で“ありがとう”と聞こえた気がした。デュークに気付かれないように、俺は右手の親指を上げた。
*
『うむ、これで大分、良くなるだろう。皆も力を貸してくれてありがとう』
「……悪ィな、迷惑、かけちまって……」
「シオウさん、大人しくしていてください。完治した訳じゃないんですから」
『すまなかったな、エンペラー。シオウの治療に当たらせてしまって……ん?』
俺たちが部屋――寧ろ、大広間か――に着いた時には既に、シオウさんの処置は終わっていたらしい。床に寝かせた彼を皆が囲んでいた。イデアは汗まみれで倒れていた。タスクとジャックも流石に疲労した様子だ。そして……。
『おお、零人。こちらはもう終わったぞ』
『ったく、遅ぇーんだよ!すげーバタバタしてたんだからな!』
『カウント!止しなさいって!』
『いやぁ、向こうは向こうでやる事があったんだから。仕方ないですよ?』
えーと、誰?それぞれの口調から何となくは分かる。しかし全員が鎧を外しているから、初めてみる顔ばかりだ。しかもその内の3人は、さっき少し会話した程度なのだ。
とりあえずエンペラーだけは判別できた。金髪碧眼、長身で若さ溢れる優男風のイケメンさん。しかし口調や風格は他者と明らかに違う。
『あ、もしかして誰が誰だか分かってない?』
「……デューク、教えてくれ」
『了解!ちょっと待ってて!』
デュークは敬礼すると、エンペラー以外の3人の方へ向かった。どうでもいいが皆、武装を解いているという事は、今までずっと鎧を着ていたのか?
俺って信頼されてなかったんだな……。そんな事を考えている間にデューク達が集まって来る。彼女に促されて一列に並ばされている。
『さぁ、皆様、自己紹介の時間です。はりきってどうぞ!』
『では私から。挨拶が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。私は《ゼロ・バロン》と申します』
エスキモーみたいな髭を生やした壮年の男性。中肉中背で、立っているだけなのにまるで隙が無い。その堂々とした姿は歴戦の勇士を思わせる。
『そんじゃ次は俺だな!《ゼロ・カウント》だ!シオウとかいうニンゲンが来たと思ったら、今度はガキかぁ!?頭悪いから覚え切れねーけど……ま、許せ!』
黒髪の筋肉ムキムキお兄さん登場。日焼けした肌に、喋る度に見える白い歯がよく映える。初対面ながら相手にグイグイ迫る性格らしい。
『じゃ最後は私……と言ってもさっき話したよね。ま、いいか!改めまして《ゼロ・デューク》です!』
「……よし、取りあえずは覚えたつもりだ。サンキューな、デューク」
「自己紹介は終わったかい?」
そう言ったタスクの顔に、ほんの少しだけ疲れが見えた。この短時間に色々と起こり過ぎている。無理もない、流石にバタバタしすぎなんだから。
シオウさんは倒れた。謎のファイターがいた。その人物による襲撃から何とか逃げた。ゼロワールドで、エンペラーの仲間と出会った。今、分かっている情報はこの位しかない。
「零人さん、大丈夫ですか?」
「ウェッ!?……あぁ、何ともない、よ……?」
言うが早いか、視界が急に歪む。脚から力が抜けてまともに立っていられない。
「……あ、れ……?」
まずい。これは意識を失うパターンだ。少しずつ世界が、黒色に塗り潰されていく。膝をつき、両手で身体を支えようとするが、力が上手く入らない。そのまま床に伏せてしまう。
『零人!ゼロワールドのカードに触れろ!』
『そうだ、さっきの!ちょっと失礼!確かポケットに……』
慌ててデュークが上着を弄る。取り出したのは先代の部屋で手に入れた、両親の残したデッキ。彼女に支えられながらそれを受け取った。
瞬間、内側から力が湧きあがる感覚が襲う。これなら立ちあがれる。そんな確信と共に、倒れたままの身体に動けと命じた。
*
それは嘗て、僕も経験したことがある。モンスターとファイターが強い絆で結ばれた時に起きる奇跡。ある相棒は「怒りの感情」、別の相棒は「悲しみの感情」。そして僕は「喜びの感情」が引き金となった。
《ドラゴンフォース》と名付けられたその力は、他者からすればバディモンスターを模したオーラを、ファイターが身に纏っている様だったらしい。
彼――零人さんがデッキに触れた瞬間に起こった現象はドラゴンフォースのそれに近い。ただ、赤や青といったオーラでは無かった。純白で、しかしエンペラーを模していない、全身を覆うだけのオーラ。それを発現した彼は即座に立ちあがれるほどに回復していた。
「零人さん、一体何が?」
確信できるほどの物は無いけれど、間違ってはいないだろう。零人さんは何らかの力を覚醒させた。
「……分からん。でも」
「でも?」
「身体の中から力が湧く……ってどういう感じなのかは分かった気がする」
あぁ、成程。それなら僕も知っている。ジャックと共に戦える……そんな当たり前だった感情が、幾度となく僕を立ちあがらせてくれた。忘れかけていた“喜び”が僕たちに力をくれた。思い出すと今でも、自然に笑みが零れる。
『そうか。確かに体験しないと分からない感覚ではあるな。そうだろう、タスク?』
ジャックもまた微笑んでいる。きっと嘗ての出来事を思い出しているのだろう。
『《ゼロフォース》が覚醒したようだな、零人。カードを見てみろ』
「カード?……あぁ、あのよく分からないやつか」
そう言ってデッキからカードを取り出した零人さんの表情に、僅かな喜びが見てとれた。近くに寄って覗いてみると、真っ白なそれ――僕らは“ブランクカード”と呼んでいる――は少しずつ詳細が浮き上がって、やがて正確に情報が読み取れる様になった。
「これが、ゼロフォース……。やはり《ドラゴンフォース》と似ているね」
『私にも見せてくれ。……ふむ、確かに【解放条件!】となっている辺りはそっくりだ。しかし何か違う』
「……話の途中に失礼。ドラゴンフォースって、何?」
『そう言えば私も知らないなぁ……。タスク様、教えてはくれませんか?』
『俺も知りてェぞ!!教えろ、バディポリス!!』
零人さんだけでなく、ゼロ・デューク、ゼロ・カウントも詰め寄って来る。これは参った。三人とも、好奇心をむき出しにしている。
「おいおい、タスクちゃんが困ってんじゃんよ?しゃあねぇから、俺が説明してやんよ!」
『……とドヤ顔を決めて、皆の方に指を向けるシオウであった。第三部、完!』
「いや、終わらすな!つか三部でもねぇし!」
振り返ると、シオウさんがしっかりと自分の脚で立っていた。しかもかなり元気そうだ。先程までの苦しそうな様子からは想像もできない。
「シオウさん!?もう大丈夫なんですか?」
「ああ。エンペラー殿に治療してもらったからな、もうバッチリだ!」
『シオウは』
静観していたゼロ・エンペラーが口を開く。
『シオウは“ゼロフォースに中てられていた”のだ。分かりやすく言えば中毒症状に近い』
『中毒症状だと?ならばゼロフォースとやらは、人間に対して有害なのか?』
『そうではない』
ジャックの問い掛けに、エンペラーは強く反発した。
『人体に有害どころか、寧ろその逆。ゼロフォースには治癒能力が備わっているんだ』
「治癒……その話し、もっと詳しくお願いします」
『うむ。しかし覚悟しろ。長くなるぞ』
「……そのつもりだ」
「零人さん……?」
急な横槍に、彼の方を振り向く。その顔はこれまで会って、話して来た中で最も真剣だった。零人さんも全てを知りたいんだ。自分の身に起こった事も、今、周囲で何が起こっているのかも。
「頼むぜ?相棒」
『……うむ!』
こうして僕たちは情報交換を行う事になった。各々が知ったピースを繋ぎ合わせて、1つのパズルを組み上げる。そして敵の正体や目的をはっきりさせる為に。
一応、“オールスターファイト”から2年後という事で、“DDD”からドラゴンフォースについて出してみました。
似たような、でもどこか違う力、ゼロフォース。今後どうなっていくのか、見守って頂けたら幸いです。
では、また次回!