バディファイト ZERO   作:無料太郎

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何だかんだで延ばしてきた「ゼロの地」編もそろそろ終盤となってきました!

具体的には残り2話くらいですかね。今回もまた、自分お得意のファイト無し展開でございます。

それではお願い致します!


追い詰められる者たち

 謎の青年、ドラコ・アルマードことラグナによってゼロワールドの城が襲撃された。俺とエンペラーは彼にバディファイトを申し込み、激闘の末に勝利を収めた。だけど、まさかこの後、あんな事になるなんて、想像もしていなかった──。

 

 

 

 *

 

 

 

「勝った……零人さん達が……」

 

「当然だろ? アイツらは常識なんか知らない。それどころか、自分たちの力で新しいモンを創っちまうような連中だからな」

 

『……ラグナはゼロワールドへの対抗策を練らずに戦った。或いは練れなかったか……』

 

『イデア、何が言いたい?』

 

『ジャック、タスク、シオウ、皆の者、警戒しろ。外から何か、来る』

 

「──そうだな。お前がそう言うなら、すこーしガチモードに入るか!」

 

 彼らの言わんとしている事が一体何なのか、私はまだ理解できていなかった。ただ、シオウ様とイデア様の目付きが変わった事だけは分かった。

 

 

 

 *

 

 

 

 気付いた時、俺はラグナに肩を貸していた。相当の衝撃だったのか、彼は目を瞑ったままだ。

 

「ラグナ? おい、ラグナ!? しっかりしろ、目ェ開けろ!」

 

 身体から微かに鼓動が伝わる。一定のリズムで肌に息が触れる。よかった、どうやら気絶しているだけらしい。

 

『零人!!』

 

 エンペラーが叫んだ。直後に背後から殺気を感じる。何となく気配で分かった、パラダイス・ロストが俺の息の根を止めようとしている事に。

 

「く……っ!」

 

 自分でも分からないが、咄嗟に右手を突き出していた。勿論、そんな事で殺意を持った相手を止められる訳がない。覚悟は決めた──つもりだった。

 

「……え……?」

 

 不思議な感覚だ。身体の内側から溢れる力が、全身を駆け巡る。そんなイメージを浮かべると同時に、また頭の中に、あの声がした。

 

 “その力を、今は使わないで。使えば大変な事が起こるかもしれないから”

 

 心なしか優しい口調のそれは、声の高さから察するに、大人の女性だろうか。しかし俺はこの力の止め方を知らない。

 

 それよりもまずはラグナを、そして皆を守る事が優先だ! 声に逆らい、力を込めると、右手が白いオーラに包まれるのを感じた。

 

「零人! お前、その力は!」

 

 分かっている、これが何なのかは、もう既に。先代エンペラーと両親が残してくれた力。

 

「……ゼロ、フォース……解放!!」

 

 前方に、白いオーラが膜のように拡がる。パラダイス・ロストの突進はオーラに阻まれて届かない。

 

『ふざ、ケル、ナぁァァァっッ!! ヌァガァァァ!!』

 

 この白黒竜、かなり荒れてやがる。完全に鎮圧するために、更に力を込めて、膜の強度と柔軟性を上げてみる。オーラが強く発光すると、パラダイス・ロストは気絶してしまった。

 

『グッ……。ブガぁッハっ……』

 

「はぁ……やっと止まったか……」

 

 結構疲れた……。ゼロフォースが解けて、膜が無くなる。パラダイス・ロストの方を見ると、彼に付いていた傷は塞がっていた。ラグナを横にしようと腰を下ろすと、ある事に気付いた。

 

 ラグナの傷も塞がっている。激しいファイトだったからお互い傷だらけだったのに──。

 

『零人。無事か?』

 

「ああ、何とかね。ていうかエンペラー、何か嫌な気を感じるんだけど……」

 

『そっちは終わったみたいだね、零人? お疲れの所にゴメン、もう一踏ん張り、してもらえないかな?』

 

 デュークが城壁に空いた穴の外を見て呟く。いや、彼女だけじゃない。カウントにバロン、シオウさんやイデア達、果ては子どもたちも空の方に注目して……。

 

『ボロボロのお前には悪いが、かなりマズイ気配だ』

 

「……この感じ……」

 

 押しつぶされるようなプレッシャー。ラグナ達とは別次元の、明確な殺意。俺は知っている、過去の絶望と恐怖を。あの地獄の場において、常に発せられていたこの重圧を。

 

 俺も空を見上げると、次の瞬間、空間にヒビが入った。いや、それどころじゃない。

 

「空が割れた……!」

 

 シオウさんが呟く。その顔を見るに、どうやら彼にとっても予想外の事態らしい。空には真っ黒な穴が空いている。その奥から、大きな光る腕が現れた。

 

『おい、ニンゲン……何だよ、アレ……』

 

『カウント、デューク。構えましょう』

 

『ゴメン、零人も動けたら、動いてくれない? 私たちだけだと流石にヤバそう……』

 

 エンペラーの従者とも言える立場であろうデューク達が、ここまで警戒するとは。まぁ、無理もない。相手が相手だからな。

 

「……分かった。エンペラー、ちょっと肩、貸してくんない?」

 

『無理はするなよ、零人。もう分かっているだろうが、あの光る腕──只者じゃないぞ』

 

「……気付いてたか。お互いに……」

 

 肩を借りながら、尚も腕の方を向き続ける。全ての挙動を注視しなければ危険すぎるからだ。掌を見せて来る、軽く100メートルはあるであろうそれが、何をしようとしているのか。全く油断できない。それにあの腕には見覚えがあるような……。記憶の断片、無意識に消そうとした過去の中に、それを見た気がする。

 

「お前ら、退いてな」

 

『ここからはバディポリスの出番だ。タスク、ジャック、用意は出来ているか?』

 

『臨戦態勢なら整っているぞ』

 

「僕も覚悟はしています。しかしあれは一体……?」

 

 タスクの質問にシオウさんもイデアも答えない。その反応の意味は多分、二択。知らないか、知っていて「あえて」喋らないか。俺としてもタスクやジャックには深入りしないでほしかったが、彼らもバディポリスの一員。あの事件についてある程度は知っているのだろう。

 

「……あれは、ワールディアスの腕だろう?」

 

「え……?」

 

 シオウさん達は反応しなかった。いや、反応しないように努めたのだろう。それはつまり、事情を知っているからこそ成せる行動だ。

 

「……バディポリスはどこまで知っているんですか?」

 

「……さぁな。ただ、俺とイデアに関しては、今のお前よりも真実に近い場所にいると思ってた」

 

『今回の事でまた混乱の最中に戻されたがな』

 

 そうなると、タスクとジャックはシオウさん達よりも情報を与えられていない事になる。サツキさんと美奈さんに至っては恐らく、殆ど何も知らないはず……。あくまでも勝手な予想だが、そうあってほしいと願ってしまう。

 

『ゴメン、取り込み中に悪いんだけど……状況が変わっちゃったみたい……』

 

 デュークの不安そうな声でふと気付く。いつの間にか腕から注意を逸らしてしまっていた。再び意識を戻すと、腕は先程よりも高い位置、空の穴の方に戻っている。今は拳のみが見えるだけ──。

 

「──拳、だけ……?」

 

 何故あの位置まで戻した? 開いていた掌を握る意味は何だ? 考え始めた矢先、シオウさんは飛び出していた。イデアも外に出るなりSD化を解いて、彼を乗せて羽ばたいた。

 

 タスクとジャックも後を追うように空へ向かう。彼らが何を察知したのか、未だに理解する事は出来ないでいた。しかし先程から感じる胸のざわめきは、間違いなく俺たちに危険を伝えている。

 

「……まさか!」

 

 人間であの動きを例えると、対象に向かって拳を振り上げている事になる。光る腕が狙う対象、それは、

 つまり──。

 

『──零人!! ゼロフォースを使ってこの場を守れ!!』

 

「……っっ!! ゼロ……フォース!!」

 

 シオウさん達は地上に拳が下ろされるのを防ぐために向かっていったのだ。しかし間に合うかどうか……正直に言って分からない。だからエンペラーは最悪の事態を想定したのだろう。シオウさん達が止められなかった場合、俺達は自分の身を守らなければならない。だからこそ、ゼロフォースで守る事が出来る俺に、発動を促した。

 

 

 

 *

 

 

 

「タスクちゃん、ジャック! これ以上あれに近づくのはまずい、遠距離射撃で一旦、様子見だ!」

 

「了解!」

 

『解った!』

 

 シオウの命令に、後ろに付いていたタスク達が応えた。彼らが見上げる先の空には、漆黒に染められたかのような大穴──別空間と繋がるゲート──が開いている。光る腕は拳を握ってその中へと上昇を続ける。腕だけで100メートル以上もあるそれが、地上に打ち付けられたなら……。タスクやシオウはそんな“最悪の事態”を危惧していた。

 

『シオウ、急ぐぞ。さっきから嫌な予感がする……』

 

「あぁ……。しかし、先走っても事態の悪化は避けられない。まずはやれるだけやってみねーと……」

 

「シオウさん! 準備が終わりました!」

 

『いつでも発射可能だ!』

 

 タスクはフューチャーフォースを発動、その力を持って、ジャックに幾体かの《竜装機》を【星合体】した。頭部のブレードによる攻撃を得意とするジャックが遠距離攻撃を行うには、こうした配慮が不可欠なのだ。現在はトリプルバスター、J・アーセナル、J・ギャラクシオンと合体しているジャック。背中に大量の砲門を積み、かなりの重武装となっているが、変わらず悠々と浮遊を続けている。

 

 既にシオウも準備は整っていた。あわよくばゲートを破壊可能な策も練っている。しかしそれでどうこう出来るほど、状況に余裕は無い事を彼は気付いていた。

 

『どうかしたか、シオウ?』

 

「……なぁイデア。仮に拳が打ち付けられたら、この世界はどうなる?」

 

 その問いにイデアは答えない。口を開き、淡々とエネルギーを収束させていくが、シオウはすぐに察した。答えたくないのだ、と。

 

 拳の一撃で間違いなく地上は壊滅する。地形を大きく変えてしまうであろう事を……。

 

『……チャージ完了! シオウ、発射態勢に移る!』

 

 そのテレパシーを受けてシオウは我に返る。今はまず、拳が下りてこないように、あのゲートを閉じる事が先決なのだ。顔を横に振って気合いを入れ直す。

 

「これより状況を開始する! 各員、目標確認、構え……発射!」

 

 イデアの光線とジャックによる重火器攻撃が、ゲートに向かって放たれる。この破壊力なら、本来であれば一発で破壊できる。早い段階からシオウはそう踏んでいた。しかしその予測はまたしても覆る事となる。

 

「な……に……?」

 

 その場にいた全員が息を飲んだ。2体のモンスターによる全力の攻撃は、見えない何かに着弾した。透明な壁のような物によって阻まれてしまったのだ。当然、腕もゲートも、破壊どころかダメージすら与えられていない。

 

『我らの力でも無傷か……』

 

『どうする!? このままでは対処できないぞ!』

 

「シオウさん、別の案はありますか?」

 

 シオウは答えられなかった。第二のプランとして、フューチャーフォースによる《シャイニング・パニッシャー!!》の実体化があった。パニッシャー系列の威力は凄まじく、また、系列のカード全てが“ゲートを強制的に閉じる力”を有しているからだ。しかし相手が防御策を用意しているとなると話しが変わる。

 

 幾ら強力なカードでも、威力が落ちれば効果もしっかり発動出来ない。パニッシャーは阻害されずに当たらなければ、その力でゲートを閉じる事は出来ないのだ。

 

『どうする、シオウ! このままでは──』

 

 イデアが言いかけた時にはもう遅かった。巨大な腕は強く輝き、遂に地上へ向けて拳を下ろしてきた。そのサイズに見合わないスピードはシオウの予想を遥かに上回る物で、判断に費やす時間はまともに残されていない。

 

「くっそ、退避だ……うわああぁ!!」

 

『シオ……ぐ、ぬぅ……!!』

 

 シオウとイデアは拳を避けたものの、風圧に耐えきれずに吹き飛ばされてしまった。タスクの脳裏にある言葉が蘇る。

 

 “……なぁイデア。仮に拳が打ち付けられたら、この世界はどうなる? ”

 

 その答えはもう決まっているようなものだった。タスクは《シャイニング・パニッシャー!!》のカードを右手に取ると、そのまま頭上に掲げる。

 

『タスク! 私たちがやるしか無さそうだぞ!!』

 

「あぁ、行くよジャック! キャスト! 《シャイニング・パニッシャー!!》」

 

 カードが光り輝くと、タスクの背後に巨大な剣が現れた。未来の機械的な要素と、竜の持つ幻想的な要素が組み合わさったそれは正に“高貴”と言わざるを得ない代物だ。彼が掲げたカードを振り下ろすとその動きに合わせてパニッシャーが動き出す。

 

「いけぇぇぇぇぇ!!」

 

 拳とパニッシャーが空中でぶつかり合う。空に浮かぶ雲は吹き飛び、地上に向かって突風が吹き荒れる。あまりにも強い衝撃に対し、タスクとジャックもその場でバランスを保つのが精一杯だった。彼が倒れたらパニッシャーも連動する。だからこそここで踏ん張らなければならないのだ。

 

『ぐ……頑張れタスク! 私も全力で君を護る!』

 

「ジャック……ありがとう。その期待に、僕は応える……っ!! はあああっっ!!」

 

 タスクの気合いに同調するかのように、《シャイニング・パニッシャー!!》のカードが一層強く輝き、そしてそこから2つの光が放出された。浮遊する光は彼の手元に来ると、パニッシャーに重なる形でカードに変化した。

 

 それはかつて龍炎寺タスクが受け取り、使用して、進化させて来た姿。闘神の力を宿した《ガルガンチュア・パニッシャー!!》、星の力を宿した《レディアント・パニッシャー!!》だった。そしてそれらもまた、フューチャーフォースによって実体化を果たす。

 

「これは……」

 

『タスクの“護りたい”という感情にパニッシャーが応えたのか……!』

 

「うおおおおお! さっすが、タスクちゃんだね~! 最強ファイターの呼び声が高いのも分かるなぁ~、うんうん!」

 

 タスク達の背後から巨大な白い竜と人間が猛スピードで突っ込んでくる。時と場を弁えない、その呑気な物言いを聞いた彼らの顔は、言いしれぬ安堵に包まれた。

 

『ジャック! タスク! 我らも援護する、全力で行け!!』

 

「そーいうこった! お前たちの紡いだ軌跡を、ヤツにぶつけてこい!」

 

 いざという時に頼れる先輩からの圧倒的な信頼。それは2人を更なる高みへ引き上げるのに十分すぎる程の力を持っていた。

 

「行くぞ! トリプレット・パニッシャァァァッッ!!」

 

「そんじゃこっちも……キャスト、《竜の豪雷》! 更に《竜坤一擲》もだ!!」

 

 タスクが叫ぶと、2本のパニッシャーも光る腕に相対する。空中でぶつかり合う3本の剣と拳。シオウの放った魔法も含めて形成は……変わらなかった。この腕は大きさに見合わず、秘めた能力の容量が半端ではないらしい。数秒は両者とも拮抗したが、徐々にパニッシャーが押され始めた。

 

「くっそ、これでもまだ、なのかよ……!!」

 

『シオウ! あまり無茶はするな、私とタスクである程度は止められる……』

 

『バカ者!! “ある程度”ではいかん。結果を出さねば、死ぬぞ!!』

 

 イデアの檄が飛ぶ。普段はマイペースで、食欲に忠実な彼も流石に危険を察知したらしい。いつになく本気の叱咤にタスクも驚きを隠せない。

 

「し、しかし、どうすれば……」

 

 “我が煉獄の力、使うがいい……”

 

 どこからともなく現れた紫色の光球が、タスクの左手に納まる。頭の中に響いた声を、その輝きが持つ寂しさと温かさを、彼は知っていた。

 

「……ありがとう、ディミオス──いや、オルコス。この力を使わせてもらうよ」

 

 紫の光は1枚のカードとなり、実体化した。その姿は闘神の物に近いが、実体は全く非なる物。後悔と願いを司る剣だった。タスクが下方に左腕を伸ばしていたからか、他の3本とは離れた位置に現れた。

 

「《ディストーション・パニッシャー!!》」

 

 伸ばした腕を、物を投げるように動かす。連動して4本目の剣がソニックブームを出しながら、空の穴に向かって射出された。瞬間、剣から紫の輝きが広がり、そして──。

 

「──時は、止まる!」

 

 世界の色が反転する。全ての時間が停止する。それは3本のパニッシャーだろうと、光る腕だろうと関係ない。《ディストーション・パニッシャー!!》以外のあらゆる物が、時間停止──つまり、全く動けない状態になったのだ。これがこの剣の持つ固有の能力だ。

 

 唯一動けるディストーション・パニッシャーが真っ黒な穴に深々と突き刺さる。直後に世界の色が元に戻り、再び時間が動き出した。

 

「シオウさん!」

 

 パニッシャーが刺さった箇所から元の空間が上書きするように、黒い穴が消滅していく。パニッシャー共通の能力によってゲートが強制的に閉じられたのだ。同時に光る腕が空間から切り離される。

 

「やっべ! タスクちゃん、避けろ!」

 

 腕は輝きを失い、そのまま落下してくる。タスクは4本のパニッシャーを操ろうとするが、しかし、突如としてそれらは消えてしまった。

 

『タスク、ジャック──!!』

 

 イデアの叫びに辛うじて反応はしたが、バディスキルで浮遊するのがやっとだった。その様子を見て、シオウは直ぐに気付いた。タスクがフューチャーフォースを使い過ぎているという事、積み重なった負担でまともに動けない事。そしてジャックもその影響を直に受けている……。

 

「タスクちゃん! 掴まれ!」

 

『ジャックも来い! ここは退くぞ!』

 

 うなだれるタスクとSD化したジャックを抱え、シオウ達は零人の元へと戻る。その途中でシオウとイデアは、背後から発される悪意を察知してしまった。そして後悔した。

 

 光を失ってもまだ腕の効力が消えていない……。まさか、あの腕はワザと切られた、のか──? 

 

 しかし、今の彼らではそれを止める事は出来なかった。それを成し遂げる為の力を持つ者は、現状では1人もいない。全員が疲労困憊、あるいは能力が未成熟だからこそ、今は退くべき……とシオウとイデアは考えていた。

 

 

 

 *

 

 

 

 巨大な空の穴が4本の剣で断ち切られた……。俺が知る限り、巨大な剣を振るえるファイターは龍炎寺タスクのみ。さっきのあれは多分、彼が能力──フューチャーフォース──を発動した事による物だろう。これで最悪の事態は避けられる! ガッツポーズをしつつ、心の中で歓喜の声を上げていた。

 

 だが、次の瞬間にはその希望が打ち砕かれた。落ちて来る腕から途方もない量の悪意が溢れ出している……眩い光が消えたにも関わらず。本能か、或いは直感と言うべきかは分からないが、全身が粟立つのを感じた。

 

「ん? あれ……シオウさん!?」

 

 何かがすごい速さでこちらに向かって来ている。それがシオウさん達である事はすぐに理解したが、タスクとSD化したジャックが抱えられているのを見て、一気に不安が押し寄せて来る。

 

「タスク、ジャック!? どうしたんだ、大丈夫か!?」

 

「零人、逃げるぞ!」

 

 城に降り立つなりシオウさんは語気を強める。どうやら相当、事態が悪化しているらしい。彼の傷だらけの姿や意識を失っているタスクとジャック、明らかに疲弊しているイデアがそれを物語っている。

 

『零人よ、シオウの言うとおりにするぞ……!』

 

「……エンペラー?」

 

 予想外の事で驚いてしまった。この世界を愛し、仲間を思いやり、王としての役割を成そうとするエンペラーがこうも早く決断するなんて……。不安を抱えつつ、それでもしっかりと顔を見据えると彼の思いが分かった。

 

 王としての決断と優しすぎるが故の迷い。揺るがない決意も、全てを護りきれない悔しさも、口を結んだ表情からにじみ出ていた。

 

「すまん、エンペラー。こうなったのも俺の見立てが甘すぎたせいだ……」

 

『……誰も予想できなかった事だ、謝るな』

 

 この事態に対して責任を感じているのだろうか、シオウさんも苦い顔をしていた。

 

「……シオウさんがいなかったら」

 

「?」

 

「多分、俺たちはとっくに死んでるさ。こんなもんで済んでるのはシオウさんがいたからだと思うよ」

 

 本心を伝えるのは照れ臭いものだが、それでも感謝の意はしっかりと伝えたかった。この人の的確な判断が無くては今が無い。それをこの一件で実感せざるを得なかったのだ。

 

「もちろんタスクとジャックにも感謝してるけどな。……ありがとうな」

 

 意識が戻らない2人の頭を感謝を込めて撫でてやる。まるで先輩のようにも思えていた彼らは、よく考えれば年下でまだ子どもなのだ。護られたり庇われたりしているだけじゃいけない。俺だってコイツらを護ってやんなきゃな。

 

 




はい!という訳で次回、やっと皆でゼロワールドから脱出します!

光る腕やら何やら言ってますけど、小難しい事はあまり考えずにいきます。

因みに《トリプレット・パニッシャー!!》と『4振りのパニッシャー』について、カード化予定は今の所、一切ございませんのでご了承ください。

次回へ続きます!
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