少しテンションがおかしいです、主にソウタくんが。
ソウタとのファイトから一週間。俺は少しずつクラスに馴染もうとしていた。
「エンペラーでトドメ……!」
「うわっ、マジか!結構、自信あったんだけどな」
「これで何勝目なんだよ?」
「え……7連勝、かな」
「よーし、次は俺とやろうぜ!」
放課後の教室で、ルミナイズをしない通常のファイトをしている。ステージの使用には学校の許可がいる為、基本的にはこうして、実際のカードに触れていることの方が多い。
「零人のヤツ、すっかり人気者だな」
「だってあんなに格好いいファイトしたんだもん、当然だよ。ところで音峰くん」
「ソウタ、な?七瀬ちゃん」
「そうだったね。ソウタくん、いつの間に零人くんのこと、名前で呼ぶようになったの?」
「あっはっは、知らん!気付いたらそうなってた!」
「そ……、そうなんだ」
近くで見ている2人がそんな会話をしている中、俺は8人目を倒した。
「やっぱソウタを倒した実力は本物だな~」
「それほどでも」
「なあ、俺らのチーム入らねぇ?1枠空いててさ」
「あ、ズリィ!無我、俺らの方に来てよ!」
「いやいや、私らと組もうよ!」
何だこれ?夢、なのか?モテ期でも来たのか、俺?と思った矢先、2人が止めに入った。
「はいはーーい!ちゃんと並んで!言うこと聞けなきゃ次から俺らが相手するよ!」
「できれば勧誘は無しでお願いします!」
*
「……はぁぁぁぁ……」
「お疲れ様、零人くん」
「ホントに疲れた……」
一通りファイトが終わった俺たちは、先程まで使っていた机を使い、会議をすることになった。
「ほいほーーい、ジュース買ってきたよーー!」
「……サンキュー、ソウタ」
「ごめんね、ソウタくん」
「いいのいいの。俺が言いだしっぺだもん、これくらいやらねーと」
ゼロワールドの力を試そう!と言いだしたのはソウタだった。あのファイトの後、俺たちを取り囲む集団に対し、そんな不用意なことを口走ったのだ。それから毎日、放課後にこんな状態が続いている。ちなみにソウタがジュースを買ってきたのは、単にジャンケンで負けたからだ。
「んで、今日は何勝したんだ?ほい、お前オレンジジュース。七瀬ちゃんはカフェオレね」
「いや見てろよお前」
「確か12戦中、9勝3敗、だったかな?ありがとう」
「すごいな、七瀬。よく見てるよ」
「ぅえっ!?い、いやいや、零人くんをしっかり見てたとかじゃなくてね、その、あれ、ミスが減ったなーとか思ってただけでその」
「はいはい、そうだねーー!確かにミス減ったねーー!ちくしょーー!!」
「……お前、何を叫んでんの?」
よく分からんが脱線の予感がある。ソウタにはさっさと話しに戻ってもらおう。
「……なあ、何でまたこんなこと始めたんだ。目的でもあるのか?」
急にソウタの目が輝く。すごい勢いでこちらに顔を寄せてくる。
「当たり前だ!まさか何も考えてないとか、思ってたのか!?」
「おう」
「違った?」
「ひでぇ!七瀬ちゃんまで!」
「そんなことはさて置き、お前の考えって何だよ?」
「よくぞ聞いてくれました!」
もう立ち直りやがった。ポジティブなのかアホなのか、よく分からんヤツだ。
「じ・つ・は!来月、校内ファイト大会がありまーーす!!はいチラシどーーん!!」
「校内ファイト大会……どういうことなんだ?」
「いやね、この間のファイト以降、大会開こうって動きが活発化したんだと。んで校長が、じゃあやろう、と許可したそうな」
「なるほど……3人以上で、チームの代表1人が戦う。つまり試合は1対1で、各試合ごとに1人を代表として選んでファイトを行なう、ってことだね」
「詳しい説明ありがとう!だけど俺の解説用に残しておいてよ?」
「まさか……お前」
あ、いやな予感。この場にはちょうど3人。募集要項には3人以上……。
「そう!この3人で出場したいと思っております!」
「楽しそう!出よう、みんなで!」
「いや、七瀬はバディポリスの仕事があるだろ?」
「大丈夫!ちゃんと指令が出てるから!」
「指令?差し支えなければ……」
「零人くんとゼロワールドの護衛、だよ」
なるほど、と思った。七瀬をしっかり学校に通わせつつ、こちらの動向を探るには、その指令は中々正しい判断だろう。まして彼女は見習い。余程の人手不足か大きな事態でない限り、現場に呼ばれない。
「零人くんは、出ないの……?」
七瀬が上目遣いでこちらを見る。くっそ可愛い、だが面倒なことこの上ない事態……。
「私とじゃいや?」
目がウルウルしてやがる。分かっている。これが、俗に言うおねだりだ。分かって、いる、のに……。
「一緒に、出よ?」
「はい、喜んで!」
折れる以外に答えなど無い。可愛いのが罪なんだ、可愛いのが……!
「そんじゃあチーム名決めようぜ!」
「チーム名?」
「出場したいならチーム名決めろ、だとさ」
それから暫く、俺たちはチーム名に悩むこととなる。いかんせん、これというものが出ないのだ。
「ソウタWithゆかいな仲間たち」
「全力投球組」
「ザ・フラワーブルーム」
うん、微妙。七瀬の「ザ・フラワーブルーム」がすごくよく見える。ただ問題をあげるとするならば、七瀬はともかく俺たちは全く華々しくない、という所か。後の2つは言わずもがな。
「あぁもうしゃーない!一回『キャッスル』に行こう!」
「一夜城にでも行くのか」
「うん、そうそう。さっさと出来てさっさと潰して……な訳ねぇだろ!」
「超商店街の中にあるショップだよ。沢山のファイターがいるんだ」
「へぇ……。面白そうだな」
「七瀬ちゃん、俺の超絶ツッコミを途中で切らないで~~!!」
「もう腹一杯だわ。七瀬、案内してくれないか」
「ふぇっ!?ももも、もちろん!えっとまず学校を出て」
「いや、それはさすがに分かるぞ?」
「零人どきやがれ、なんか腹立つ!」
こうして俺たちは喚きながら『キャッスル』へ向かった。いつの間にかファイトの疲れは無くなっていた。
日常回って書くの、難しいですね……。