妖怪こと青波お爺様は孫に弱い   作:ブハラ

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第1話

 「東道家」ーそれは日本に存在する名家だ。その歴史は古く、明治時代には既に東道財閥を興し、皇室とも繋がりがあるなど日本の政財界において昔から強い影響力を有している。

 そんな東道家は2080年の某月某日ーとある出来事に沸いていた。

 

 何かと言うと、東道家に新しい命が誕生したのだ。

 

 東道家の1人息子であるその赤子は、東道青信と名付けられた。命名したのは東道家現当主の東道青波だ。東道家の面々はそれはそれは新しい命の誕生に沸いていた。

 何しろ東道家の跡取りとなる赤子が誕生したのだ。歴史ある東道家が途中で途絶える事などあってはならない。喜ぶのも当然だろう。

 

 東道家の皆が新しく誕生した赤子の下に集まり喜ぶ中、一際喜んでいる者が居た。もしかしたら青信の両親よりも喜んでいるかもしれないその者はと言えば、現当主の青波である。

 青波は赤子が誕生したと聞きつけると、すぐさま青信の母親の下へと駆けつけた。孫の顔を早く見たいが為だ。

 

 事実、青信の所へ駆けつけた1番乗りは青波である。

 

 そして、青波は母親の横でスヤスヤと眠る青信を見てこう思った。「何て可愛い赤子なのだ」と。

 

 青波は日本のフィクサーとも呼ばれる男だ。赤子との触れ合い方など知る由もなかった。

 しかし、どうにかして青信と触れ合いたい青波は、恐る恐る青信の頬に触れてみる。まるでプニプニの餅を触るような赤子の肌の感触に一抹の感動を覚える青波。

 

 当の青信はまだ赤子。そんな祖父の思いなど露知らず、母親の隣で幸せそうな表情をしながら眠っている。青波はそんな青信の顔を見て自然と笑顔を零していた。

 そんな青波を信じられないモノでも見るような顔をして見る青信の母親。母親は東道家に嫁いで来てこれまで、そんな顔をする青波を見た事がなかったからだ。

 

 青波と言えば「政財界に巣食う妖怪」の異名を持つ権勢の権化だ。左目は白く濁り、相対する者に異様とも言える圧迫感を与える。そんな異相の持ち主の笑顔に驚愕する母親を尻目に、青波は孫の事で頭が一杯であった。

 

 この時青波は決意したー孫の為なら何でもしようーと。

 

 その様はただの孫バカの老人だった。

 

 

 +++

 

 

 それから5年ー青信は5歳になっていた。青信は母親の方に似たのか、祖父や父とは違い綺麗な顔つきをしている。

 

 5歳と言えば1番元気がよく遊び回る年頃だが、青信にはそれが許されなかった。青信は東道家の跡取りなのだ。習い事を始めとしてやらなければならない事は腐る程ある。

 習い事は、数学や外国語や帝王学などの勉強から始まり、更にはピアノやテニスなどの運動の他数多くの種類が存在するが、やはり1番特殊なのが「魔法」だろう。

 

 東道家の者たちは、基本的に政治家や企業家の為殆ど知られていない事なのだが、魔法師の家系でもある。

 魔法演算領域を有し、魔法を実用的に使える魔法師。

 東道家の人間は全員が魔法という技能を学んだ魔法師であり、身を守る術として魔法を学ぶ事になっているのだ。

 

 しかし、基本的に東道家の人間は魔法師であるが、魔法を使う事はない。使う必要がないからだ。

 だからこそ、魔法に関しては基本的な事を学ぶだけなのだが、青信はかなり事情が違う。

 

 一言で言えば、青信にはとてつもない程の魔法の才があった。

 

 普通の魔法師を遥かに上回る魔法演算領域とサイオン量。そして普通の魔法師には使う事の出来ない特殊な魔法。中でも青信の使う事の出来るその魔法は世界に2人しか使い手が居ない。

 その魔法とは「流星群」だ。空間の光分布に作用する収束系の系統魔法であり、光の分布を偏らせる事で対象物に光が通る穴を穿つ。

 

 そんな事もあり、東道家特に現当主の東道青波は青信に備わっている魔法の才を腐らせるのは勿体無いと考えたのだ。

 それに、当の本人である青信も魔法に強い興味を抱いているという事も大きかった。

 そういう経緯で、青信の習い事には大きな割合で魔法が加わった。

 

 これにより、青信は魔法師として成長する事になる。それは本来の物語を大きく変化させる事になるのだが、青信はそんな事を知る由もなかった。

 

 

 +++ちなみに

 

 

 東道家の跡取りとして、習い事などやるべき事が多い青信。そんな青信はまだ5歳。名家の子供とは言え、やはりまだ子供だ。

 

 とある日ー習い事の余りの多さに嫌気が差し、専属の家庭教師から逃げた青信は、祖父である青波の下へと来ていた。

 敷地がアホみたいに広い東道家を慣れた足取りで青波の居る地下の部屋へと向かう。

 青波の居る部屋へと着くと、重厚な扉をコンコンとノックした。中から聞こえたのは、青波の厳かな声だ。

 

 「誰だ」

 「青信ですお爺様」

 「おお!青信か!入って来い」

 

 ノックをしたのが孫である青信だと分かると、途端に声に潤いが出る青波。入室の許可を得たので、青信は背伸びをしてドアを開ける。

 そこでは、青波が笑顔で青信を待っていた。

 

 「どうした青信。習い事の時間ではないのか?」

 「えっと……お爺様に会いたくて」

 「!そうかそうか。それなら仕方ないな」

 

 青信の「お爺様に会いたくて」という発言に、思わず笑顔を零す青波。習い事を逃げ出して来た事も、孫が会いに来た事と比べれば青波にとっては些事らしい。

 

 「どうだ青信。儂の事は好きか?」

 「うん!お爺様大好き!」

 「おおそうか!儂も青信が好きだぞ」

 

 そんなバカな会話をする祖父と孫。普段の青波を知る者からしたら信じられない光景だろうが、これは現実である。

 青波は孫バカを悪化させていた。

 

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